『G』の日記   作:アゴン

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今回からボッチも天獄篇本編に参加!(主人公達と合流するとは言ってない)


その136

 

 

 

 

 

 

Z月※日

 

ブリタニアの元皇族であるシュナイゼルと、トレーズさんの忘れ形見であるマリーメイアちゃん達を救出して早数日。現在自分はブロッケンとギュネイ君を連れてはおらず、単独で各地を転々としている。

 

何故一人なのか、その事を踏まえた上でこれまでの事を整理しようと思う。まずシュナイゼルとマリーメイアちゃんを新地球皇国軍の基地から救出した後、シュナイゼルは自身を中心に部隊を編成。元ブリタニアの宰相であり、軍師としても強力な力を持っているあいつは、その智力と智謀を以て皇国軍と戦う事になっている。

 

助けたばかりであまり派手な行動は慎んで貰いたい所だが、地球の勢力図は未だ此方側に好転しない状況だ。多少なりとも地球政府側に貢献した方が今後の自分の為になるとシュナイゼルは語る。相変わらず口の減らない奴で安心した。

 

おまけに相応な拷問を受けた筈なのにケロッとしてやがる。シュナイゼル曰く、再世戦争の時に受けた自分の拳に比べれば何ともないらしいが、それでも言い方というモノがあるだろう。…………まぁ、別に心配はしていないから構わないけどさ。

 

しかし、如何にシュナイゼルが奇策や謀に秀でた軍師だとしても、相手は次元力という強力な力を操る大規模組織だ。元ラウンズのお三方やジェレミア卿が守りについていても、不安は取り除かれる事はない。

 

戦力は多いに越したことはない、そんな訳でギュネイ君をシュナイゼルに一時的に預けることにした。本人にも一応確認を取ったし、快く承諾してもらったから問題はないのだが…………なんだろう、シュナイゼルに預けたい旨を伝えた際の、やけに晴々としたギュネイ君の表情が何故か引っ掛かるのは。

 

────ともあれ、シュナイゼルには現在元ラウンズ三名と、元ネオ・ジオンのエースが側に控える事になる。彼等の実力ならば無人機程度に遅れを取ることもないし、幹部クラスの戦力が投入されない限り、早々負ける事はないだろう。尤も、だからと言って常勝でいられる保障もないのだが…………まぁ、そこら辺はシュナイゼルの采配に任せよう。アイツならば下手な犠牲を出すことはないだろうし、仮に負けそうになってもそうなる前に決断しそうだしな。

 

投降して再び捕らえられても、その時はまた救出すればいいし。そうなったら盛大に煽ってやるとしよう。グヌヌな顔をしたシュナイゼルにNDKと挑発するのもそれはそれで面白そうだ。

 

次にマリーメイアちゃんだが、正直こっちの方が自分としては心配だ。何せ彼女は自分に出来る事を探すと言って、レディ=アンさんと一緒に旅に出てしまったのだから。

 

皇国に攻めいられているこの状況でなんつー無茶な事を言いだすのか。勿論自分は止めようとしたのだが、父親に似て強情なマリーメイアちゃん。私は大丈夫ですの一点張りで此方の話を聞いてくれやしない。これが単なる子供の我が儘なら尻を叩いてでも言い聞かせるのだが、これがそうでもないから質が悪い。

 

この情勢で自分の出来る事を見つけ、少しでも手助けをしたいと訴えるマリーメイアちゃん。以前の起こした戦いも含め、少しでも事態が好転するように協力したいと申し出る彼女に、自分はそれでも承諾出来かねた。そんな自分に意見を投げ掛けてきたのは意外にもシュナイゼルだった。

 

シュナイゼル曰く、現在の地球の現状は皇国軍とそれに抗う地球政府軍で混沌としており、戦渦に巻き込まれる危険性はあっても、ピンポイントでマリーメイアちゃんが狙われる事はないという。

 

そもそも、今回マリーメイアちゃんが捕まったのは皇国軍に寝返ろうとした際にその引き換えとして売り渡そうとした材料に過ぎない。もっと言えば、連中にとってマリーメイアちゃんはさほど重要な存在ではないらしい。今回起きた出来事は全て自分の身内に起きた不始末で、そこまでの行動力は無いだろうと侮った自分の責任だとシュナイゼルは語る。

 

そういう問題ではないと自分は勿論反論した。レディさんという頼もしい付き人がいるからって、戦渦に巻き込まれるマリーメイアちゃんを放っておくわけにもいかない。けれど、先にも述べた通り今の地球の勢力図はサイデリアルと地球政府の軍隊で戦争が起きている状況だ。絶対に安全な場所など何処にも存在しないだろう。

 

本当なら自分の手の届く範囲に彼女を置いておきたかったが、先のルキアーノ=ブラッドリーとの戦闘の件で、自分の存在は向こうに知れ渡る事になる。連中がどれだけ自分の事を障害と認識しているのかは分からないが、それでも基地一つ潰されてただ黙っている事はないだろう。最悪の場合は幹部クラスの奴が刺客として自分に送られてくるかもしれない。そうなった時、グランゾンの無い今の自分だけではマリーメイアちゃんを守りきれる保証はない。

 

以上の理由で、不本意だが自分はマリーメイアちゃんの行動を黙認する事にした。シュナイゼルからは過保護だと呆れられたが、マリーメイアちゃんはトレーズさんの一人娘、それは自分にとっても娘も同然であることを意味している。父親面をするつもりはないが、心配する程度の権利はあってもいいだろうと思う。

 

そんな訳でマリーメイアちゃんの行動を黙認する代わりに、護衛としてブロッケンを彼女につけることにした。曲がりなりにブロッケンはサイボーグ、最低でも楯位にはなる。それに各地を巡るマリーメイアちゃんと行動を共にすれば、何かしら有益な情報が手に入るかもしれない。先の救出作戦の際に現れたアマルガムの動向とか、最近見かけるマーティアルの残党とか。

 

そして念の為にブロッケンには、自分に直通で繋がる通信機を渡しておいた。防水防塵、防盗聴と自分が出来る限りの事を尽くして仕上げたお手製の品である。手掛けた材料はサイデリアルの使う通信機械の部品を拝借したものだから、下手すればブロッケンの現在の体よりも高価な一品だ。いざとなったらこの通信機を使ってもらい、自分を呼び出す手筈となっている。また、同じような通信機をシュナイゼルにも渡している。此方にも何か分かったことがあったら随時連絡するよう、ギュネイ君に言い含めてある。

 

そんな訳でマリーメイアちゃんに迫る危機を限りなく考慮した上で、彼女を見送る事になった。あまり自分から危ない事に首を突っ込むなよと忠告をしたが…………果たして聞き入れてもらえたかどうか。

 

そして最後に、今度逢うその時はトレーズさんの事を話そうという約束をした自分とマリーメイアちゃんはそれぞれ別れて出発、シュナイゼル達から見送られながら現地から飛び立った。

 

再び一人となった訳だが、まぁ気にする事でもない。いつものことだと割り切り、今日はひとまずこれで終わることにする。

 

そうそう、忘れていたが今回主犯だった元皇族とシュナイゼルと一緒に囚われていたオデュッセウスさん、彼等は後からやって来る地球政府の人間に引き渡される手筈になっている。主犯格である彼女は地球を売った売国奴、相応の報いを受けることになるだろう。

 

本当は他にも一人主犯の元皇女がいる筈なのだが…………どうやらルキアーノを倒した際に放った自分の一撃が原因で、倒壊した基地の瓦礫に押し潰されていたのだとか。

 

対してオデュッセウスさんは今回の様な事態に巻き込まれないよう、比較的安全な所へ送られる事になるだとか。そんな様々な経緯を経て幕を下ろした今回の戦い。

 

今後、自分はサイデリアルについて調べながら各地を転々する事になるだろう。特にルキアーノに力を施した輩、そいつは多分これ迄とは別格な手強い相手になりそうだ。

 

他にも未だ完全に直しきれていないグランゾンの対処、そして余裕があったらリモネシアの様子も見ておきたい。相変わらずやるべき事は多いが、慌てずに一つずつこなしていこうと思う。

 

 

 

Z月β日

 

今日、久し振りに時空震動を観測した。それも現在の地球圏で一番の安全地帯とされる日本で。

 

日本といっても蒼の地球には日本が二つ存在しているからなんと言えばいいか…………取り敢えず今は第三新東京にあるNERV本部のある方と言えばいいか。

 

そんなNERV本部の基地で起きた時空震動、自分は現地にいたわけでもなく、噂を聞いた程度なので詳しくは分からないが、何でもあの時空震動でNERV本部は消失。EVAもそのパイロットであるシンジ君達もあそこから消えてなくなったらしく、とどめにあの赤い海も無くなったのだとか。

 

個人的な見識で考えると、シンジ君達は多分自分達の世界に帰ったのだと思う。蒼の地球は度重なる時空震動で世界が重なりあった特異な星だ。恐らくは時空震動を引き起こさせるだけの何かをあそこの地で引き起こし、異物として認識されたシンジ君とその世界だけが蒼の地球から消えたのではないかと考えられる。そう思えば基地やEVA、そのパイロットだけでなく、赤い海も消えた事に説明がつく筈だ。

 

何れにしても、シンジ君達がこの世界からいなくなった事実は変わらない。当事者ではない自分には彼等が無事である事と、いつかまた出会える事を楽しみに待ちわびるだけだ。

 

そして、これも聞いた話だが、どうやらZ-BLUEの青い機体、ジェニオンは結構危ない戦いをしているらしい。何でも、常に前に出て敵を容赦なく叩き潰しているのだとか。

 

………………もしかしなくてもコレ、俺の所為だよね。やっべぇ、思っていた以上にヒビキ君追い詰められてんじゃねぇのコレ。

 

ど、どどどどどうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減にしろヒビキ!」

 

マクロスクォーターの格納庫、そこでは怒り心頭といった様子の早乙女アルトが、同じ部隊で同級生であるヒビキに掴み掛かる。

 

先の戦いでNERVは消失、EVAも、そのパイロットである碇シンジも消え、残されたのは第三新東京都市を深く抉ったクレーターのみ。敵も撤退し、Z-BLUEもその場から退去する事となった。

 

そんな中アルトがヒビキに突っ掛かるのは、彼に対するアルトなりの元気付けでもあった。時獄戦役の終わりから今日まで意気消沈としていたヒビキは、敵をただ殺す為の機械へとなりつつある。

 

敵は殺す。それだけが自分の存在意義だというようにただそうあり続けたヒビキは、歪んでいるの一言に尽きた。学校にも顔を出さず、ただ目の前の敵を倒し続けるヒビキ、そんな彼を気遣ってきた彼等だが、それももう限界に迫ってきた。

 

「一体いつまで引き摺ってるつもりだよ。確かにお前は奴を手に掛けたのかもしれない。けどそれはあの状況じゃ仕方がなかった事だろ。…………別に忘れろなんて言わない、けど! もう少し周りを見てやってくれよ」

 

怒鳴り、懇願し、遂には泣きそうになるアルト。自ら兄貴分であるシュウジを殺し、それを踏み台にして得られると思った平穏。しかしそれは新たな侵略者サイデリアルを呼び出すだけに終わり、結局戦いは終わることはなかった。

 

分かっていた事だった。シュウジを倒した事で得られる平穏はなく、寧ろそれは時獄戦役の頃から予感してきた戦いの始まりに過ぎない事など…………ヒビキ本人も分かりきっていた。

 

「…………あぁ、すまない。次は気を付ける。後でスズネ先生にも謝っておくよ」

 

だが、それを心から納得したわけではない。心を許した兄貴分の裏切りと殺害、その事実がヒビキの心を深く傷付けている。

 

瞳から光を失った目で謝るヒビキ、胸ぐらを掴まれていながら無気力にそう口にする彼に言葉を失ったアルトは何か言うわけでもなく、乱暴に手を放す。ヨロヨロと力なく格納庫から去っていくヒビキを痛々しく見送った彼等は、今後ヒビキをどうするか話し合う。

 

「…………ヒビキの奴、やっぱりまだ立ち直れてないか」

 

「シンジも以前までヒビキには気遣っていたのにアイツ、全然反応出来ていなかったからな」

 

「ヒビキ、このまま潰れちまうのか?」

 

「それは分からん。が、ヒビキをジェニオンから降ろす事も視野に入れた方が良いのかもしれんな」

 

「そうだね。ヒビキには悪いがアタシ達も自分の事で精一杯なんだ。これ以上余計な荷物を抱えるのは勘弁願いたいよ」

 

その場にいる誰もがヒビキの事を心配するなか、非情とも言えるオズマとマオの提案にその場にいる全員が凍り付く。

 

それは無いだろうと反論する者もいるが、二人の言葉を正しく論破出来る者はいなかった。当然だ。サイデリアルというこれまでとは桁違いな力を持つ組織を相手に、自棄になったままの人間を作戦行動を共にさせるのは、同じ作戦にいる仲間を危険に晒す事。部下を持つ立場にいる彼等にとって、ヒビキの戦力外通告は当然の選択と言えた。

 

「待ってください」

 

「宗介……」

 

そんな二人に異を唱えるのはアルトと同じ同級生であり、ヒビキと最も親交のある人間、相良宗介だった。

 

「自分がヒビキのフォローに入ります」

 

「だからヒビキを部隊から降ろすのを止めろと? 幾らお前とヒビキが親しいからと言って…………」

 

「奴の搭乗している機体、ジェニオンはサイデリアルに対する切り札になり得ます。奴が少しの間ヘタレているからといってその判断は些か早急だと自分は具申します」

 

言い回しは少々乱暴だが、宗介の言うことも一理ある。サイデリアルという次元力に秀でて、更にはスフィアを所有する組織に対抗するには、同じくスフィアを持つヒビキとジェニオンの力が不可欠になる。だが、それを加味しても今のヒビキを戦場に出すのは躊躇われる。

 

難しい判断だ。マオとオズマ、部隊のまとめ役である二人が頭を悩ませていると、格納庫に艦長であるジェフリーが入室してくる。

 

「話は難航しているようだな」

 

「ジェフリー艦長、そちらの話はもう着いたのですか?」

 

訊ねてくるオズマに、ジェフリーは頷いて肯定する。

 

「これより我等は翠の星、もう一つの地球へと向かう。各員、速やかに準備に取り掛かれ」

 

二手に別れるZ-BLUE。翠の星、そこでヒビキは、殺した筈の兄貴分の足跡をその目で目撃する事になる。

 

 

 

 




ガルガン勢「シュウジ? 知ってる知ってる! (ほぼ)全裸でサイデリアルをボコってた人でしょ?」
ヒビキ「」

次回もまた見てボッチノシ

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