『G』の日記   作:アゴン

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今回は地味回


その138

 

 

 

Δ月*日

 

インダストリアル7の奥にあるビスト財団の屋敷、そこを通って更に奥にあるメガラニカ中枢、そこで来るべき時を待ち続けているビスト財団の宗主、サイアム=ビストさんと話をして数日、現在自分はソレスタルビーイング号を探すべく、宇宙を彷徨っていた。

 

本当ならサイアムさんから直接話を聞きたかったのだが、何でも今教えたら色々台無しになるみたいで、然るべき若者達が訪れるまで口外したくはないのだという。

 

しかもクロノの教義と呼ばれるモノはラプラスの箱に隠された秘密を暴くと同時に明らかになるので、迂闊に話すことは出来ないとサイアムさんは言う。

 

別に口にするぐらい良いと思うが、次に彼が語る過去の自分の所業の中で気になる単語(ワード)を耳にした時、自分は納得することになる。

 

“テンシ” 昔、サイアムさんが当時首相であったリカルド=マーセナスをテロでラプラスと呼ばれる宇宙コロニーごと爆破した時に目にしたと言う超常の存在。彼の存在を目にしたサイアムさんはテンシの持つ恐ろしい力を本能で察知し、テンシに悟られないよう協力者と共に秘密を隠してきたのだという。

 

テンシ、その存在に少なからず関わりのある奴を知っている身としては納得せざるを得ない話だった。しかしそれだけで引き下がるわけにもいかないので、自分はクロノやラプラスの箱以外の情報を彼に求めた。

 

その内容は先程サイアムさんが供述した協力者の事。同じ目的を持ち、テンシに対抗しようとしたその人物に付いて訊ねた所、意外な人物の名前が出てきた。“エルガン=ローディック”嘗て国連平和理事委員会代表という結構な役職にいた人物。

 

自分が知る限りでは彼はZEXISというZ-BLUEの母体となった組織を創設し、その後もZEXISの為にアレコレ裏で動いていて、再世戦争の時にはイノベイターであるリボンズ=アルマークに捕らえられ、最期はリボンズに撃たれて亡くなった人。何故その人の名前が出てくるのか、そもそもエルガンさんは元々はADW側の人では無かった筈ではないのか。

 

サイアムさんがUCWの人間である事は彼自身から聞かされている。自分を混乱させる為のブラフか何かかと疑ったが、彼が自分にそんな事をする意味が無い。よって、自分はサイアムさんの語る話を全て事実である事と受け入れて、その上で考えを纏める事にする。

 

そして考えを纏め、今後の方針を定めるためメガラニカを後にしようとする自分だったが、振り返り様に目にした石碑、そこに刻まれた宇宙世紀憲章…………その最後に書かれた一文を目にした時、ラプラスの箱の持つ意味とクロノの教義と呼ばれるモノ、その全てを何となく理解してしまった。

 

あー、これは確かにアカン奴やと、下手な関西弁を内心で溢しながら、失礼しましたとサイアムさんとその付き人さんに頭を下げ、メガラニカとインダストリアル7に施されたシステムの全てを元に戻して自分はその宙域を後にした。

 

さて、そんな訳で意外な所で意外な情報を手に入れた自分だが、何故ソレスタルビーイング号に行くことに繋がるのか。理由は単純、其処は自分が初めてエルガン氏に関心を示した所であり、彼が自分に死ぬ間際にサイデリアルの事を伝えてきた場所だからだ。

 

彼はあの頃から…………いや、もっと前からサイデリアルに付いて何らかの情報を知っていたのだろう。何故彼が自分にだけサイデリアルの事を知らせてきたのかは疑問に残る所だが、リボンズ=アルマークが直接拉致る程に重要視する人物だ。恐らくソレスタルビーイング号には外宇宙への探査という目的だけでなく、他にも隠された機能が付いている可能性がある。

 

例えばソレスタルビーイング号にはヴェーダという量子型演算システムが備わっており、ヴェーダを通して全世界に一つの情報を公開させるとか。

 

それにサイアムさんはエルガン氏と旧知の間柄だった。だとするなら、ADW側の天才科学者であるイオリア=シュヘンベルグもエルガン氏と何らかの関わりがあるのかもしれない。

 

…………うーん、いつも推測や憶測が多い自分だが、エルガン氏に関する情報をあまり知らない今の自分では、これだと言える確信を持つのは難しいな。だからこそソレスタルビーイング号に向かい、情報を少しでも得ることにしようと思う。

 

まぁ、当然閉鎖されているだろうがそこはハッキングで。天下の情報管理システムにハッキング仕掛けるのは些か緊張するが、こっちにはサイデリアルから拝借した情報端末が幾つもある。これらを使い潰すつもりで直接ハッキングすれば機密情報の一つや二つ入手出来るだろう。勿論、楽観視するつもりはないけどね。

 

 

 

Δ月δ日

 

危機一髪、今日の出来事を一つに纏めるならこの一言に尽きるだろう。

 

サイアム=ビストさんと繋がりのあったエルガン=ローディック、彼の事を知る為に多くの情報を管理しているソレスタルビーイング号の中枢を担うヴェーダにハッキングを試みようと彼の艦を探していたら、自分が乗艦しているサイデリアルの艦にある人物から通信があった。

 

自らをクロノのクイーンと名乗る女性と思わしき人物からの一方的な通信、内容も「ソレスタルビーイング号に向かうならここに行きなさい」と短いもの。当然罠かと迷いもしたけど、ソレスタルビーイング号は再世戦争以来その姿を確認したことの無い自分としてはそれ以外頼れるモノが無いのも事実、なし崩しではあるが仕方がないので従う事にした。

 

送られてきた座標に向かってみると、其処には見た事のある巨大航空艦ソレスタルビーイング号が確かにあった。不思議なことに其処はもぬけの殻だったが、中に入ると同時にサイデリアルの戦艦部隊が到来、しかもその中には地球圏から出ていく際に遭遇したサイデリアルの旗艦らしい金色の艦まであった。

 

幸い連中とは反対側の所へ艦を停めたので見つかりはしなかったが、見つからない事に越した事は無いので急いでソレスタルビーイング号に潜入、端末を片手に予めスキャンして得た艦内のデータを頼りにヴェーダ内を探索、然程時間を掛けること無くソコへたどり着くことが出来た。

 

しかしここからが大変だった。ヴェーダにハッキングする所までは順調だったがそこから先、レベル7から先の区画への侵入が結構キツかった。限られた時間という状況で焦っていたのもあったが、中々有力な情報を得られず、危うく連中に見付かるかと思いちょっとドキドキした。

 

それから少しして、漸くエルガン=ローディックに関する情報を得られた自分は直ぐ様ソレスタルビーイング号から脱出、その際にとうとうサイデリアルの幹部に見付かりやむ無く戦闘を繰り広げる羽目になったが、生憎此方は既にやるべき事を終えた身、一通り相手をした後連中を無視してその宙域から離脱してやった。

 

まぁ、そのお陰で奪ったサイデリアルの艦を再び捨てることになったんだけど、得られた情報に比べれば大した事もないので気にする事はないだろう。地球圏までもうすぐだし、トールギスも地球に降り立つくらいのエネルギーは余裕で残っている。

 

今頃ソレスタルビーイング号はサイデリアルの支配下に置かれる事になるだろうが、まぁZ-BLUEなら何とかしてくれるだろう。必要とあれば自分も手伝うし。

 

それまでは端末に記録したエルガン=ローディックの情報をこれ迄の話と一緒に纏めて考察していこうと思う。

 

 

 

 

 

…………そう言えば、ソレスタルビーイング号という巨大航空艦を見て思い出したのだが、大グレン団の超巨大戦艦である超銀河ダイグレンはどうしたのだろう? サイズの桁違いの艦だからあれがあればサイデリアルにも早々遅れを取ることは無いと思うのだが─────なんか、嫌な予感がするな。

 

 

 




ティエリア「…………ハッ!」
ロックオン「どうしたティエリア?」
ティエリア「今、何者かにヴェーダが荒らされた気が……」


次回もまた見てボッチノシ

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