友人B「欲しかったって、諦めたのかよ」
友人A「うん、そうだね。CCCコラボは期間限定で手に入るチャンスは今回しかない。そんな事、分かりきっていた筈なのに…………」
友人B「そっか、なら…………しょうがないよな」
友人A「そう、仕方がないんだ」
友人B「しょうがないから…………俺がやるよ」
友人A「え?」
友人B「諦めたお前の変わりに、俺がその夢叶えてやるよ」
友人A「あぁ、安心した」
自分「お前等リップとメルトそれぞれ宝具5にしてるだろうが。やめとけやめとけ」
なんてやり取りがあったりなかったり。
混沌とした宇宙、多元世界とは異なり美しくも儚いその空間に一柱の神が産声を上げる。身悶え、捩り、全身で誕生の喜びを顕にしているその様子は正しく生まれたての赤子のソレである。
だが、対照的にその宇宙は悲鳴を上げていた。こんなものを生み出すな、何故こんな化け物を呼び覚ました。この宇宙の主たる彼等に対し、まるで責め立てる様にその
その事に反応をしたドクトリン、怒りを司り、同時にこれまでの自分達の行動を決めていた彼は反射的に目の前の魔神を屠る様、周囲のアンゲロイとアシュダンガに命令を下す。
『─────消せ!』
震える声で命令を下す。真徒達にとって天意そのものである
心が叫んでいる。アレと敵対してはならない、相対してはいけないと。自ら選ばれた存在であると自負する彼等だが、しかしその胸中は一つの感情に支配されていた。
“恐怖”それは生命の本能、自分の身を守る為に必要な自己防衛。自らの生命を守る為に、真徒達は絶対とされる筈の御遣いの命令を破る事を無意識に選んだ。
果たして、自らが絶対と信じて疑わない御遣いの言葉を無視した己の所業を理解する日は来るのか…………いや、御遣い同様目の前の魔神に対しソレ処ではない彼等に、その事を期待するのは無理かもしれない。
そんな真徒達に変わり、感情も命も無い、機械的に動くアンゲロイと、アンチスパイラルの忘れ形見であるアシュタンガ、ハスタグライ、パダという超級規模の戦闘兵器が、率先して魔神へと押し寄せる。
8つの手足という異名を持つアシュタンガ、移動するだけで星々を砕き、伸びる手足は魔神の逃げ場を無くすように四方八方から攻めていく。
既にその宙域に魔神の逃げ場は無かった。アシュタンガが覆い、後詰めにハスタグライとパダ、そして止めにアンゲロイ達の総攻撃が、魔神ただ一体に降り注がれていく。
覆い被された魔神、微動だにせず、ただ攻撃を受け入れるその様子にドクトリンは思う。やはり、あの真化はまだ不完全な状態だったのではないか? 僅かな希望を胸に光に呑み込まれていく魔神を見て────。
『─────不動、砂塵爆』
瞬間。内部から吹き飛び、周囲の機体が纏めて消えていく光景に、ドクトリンの表情は固まる。爆散し、欠片も残さず消滅するアシュタンガとその取り巻き達、星よりも巨大な反螺旋族の主力艦が、それに属するアンチスパイラルの主戦力達が一撃で粉砕されていく様は、彼等に恐怖を叩き付けるには充分過ぎる光景だった。
『悪いなアンスパさん、あんたの忘れ形見はここで全部消していくよ』
魔神から聞こえてくる声、その声に同調するかのように背にした日輪が輝きを放つ。甲高く、そしてどこか美しさを感じさせる金属音、生きているかのような発光にその場にいる全員が目を奪われる。
────瞬間、真徒達が駆る機動兵器が消滅した。
『な…………ニィっ!?』
今し方自分達を守りに着かせていた護衛の真徒、彼等は真徒達の中でも特別優秀とされ、その誉れに数少ないゼル・ビレニウムを与えた歴戦の勇士だ。
その彼等が音もなく消滅している。反撃も、抵抗らしい抵抗も出来ないまま、魔神の手によって消されてしまっている。…………恐らくは、消された本人も消された事を認識出来ないままで。
拳を突き出してその場に佇んでいる魔神、グルリと首だけ此方を向き、その眼を光らせる。
『おい、どうした。何をそんなに怯えている。お前等は人類を超越した御遣い様なんだろ? 俺達人間はチンケな虫ケラにしか思っていないお前等が一体俺達のナニに怯えてるんだよ』
『っ! おっ、ノレェェッ!!』
『ドクトリンッ!?』
『おのれおのれおのれおのれおのれおのれェッ!! 人間如きが、下等生物が! 我等の想いなど欠片も解せぬ下賎な輩がぁっ!』
“我等を、見下ろすなァァァッ!!”
怒り、ただ怒りしかなかった。自分を見下す姿勢が気に入らない。自分達を理解しない事が許せない、自分達の気持ちを察しない性根が腹が立つ。自分達を上回るその力が憎い。
全ての怒りを総動員してドクトリンの操る黒い玉座が力を溜める。圧縮し、収束させていく力の奔流、それに合わせて周囲から真徒達の信仰の叫びが響き渡る。
“サルース”
“サルース”
“御遣い様に勝利あれ、御遣い様に祝福あれ”
真徒達の想いを束ね、連ね、圧縮し、生み出されるのは、先程魔神を追い詰めた黒い太陽だった。宇宙を揺さぶり、次元を震わせる天からの落涙。
『原初の魔神よ。今度こそ、完全に消滅するがいい!!』
『お前が居座る場所なんて、この世界の何処にもありはしないんだよ!』
消えろ、消えてくれ、万感の想いを込めて放たれる黒い太陽は空間を焼き、星を溶かして魔神へ落ちていく。
その様子をただ眺めるだけだった魔神は────。
『第三の目、開眼』
不意に、その背にある日輪を輝かせる。
魔神の額の部分、縦に裂き、そこから覗かせるのは破界の意志を持った第三の目。
『グランゾン、お前の光で過去を焼き、今を貫き、未来を照らせ』
光が集まり、圧縮され、窮まっていく。
『ゼロ・グラン────ビーム』
放たれるは破界の光。過去、現在、未来と射線上に存在する全てを壊す極光は周囲の真徒達を、黒い太陽を空間ごと消滅させ────
『ば、バカな。そんなバカな、こんな…………バカなぁぁっ!!』
黒い玉座…………プロディキウムの半分を焼失せしめた。
◇
残されたのは、グランゾンの放つ光の範囲から偶然外れた真徒達のみ。魔神の放つ破界の一撃は、その場にいる全員に細胞レベルで恐怖を叩き込み、遺伝子レベルで絶望を刷り込ませた。
『嘘だ。こんな事はあり得ない。あってはならない』
半壊した
『何故だ。何故源理の力が働かない。ここは我々の宇宙だ。何人たりとも我等の法には抗えない筈…………なのに』
この力を使えば如何なる損傷も巻き戻り、攻撃されなかった事象に変わる。今回も同様、事象を操る源理の力を用いてプロディキウムを修復しようとするが…………。
『何故、プロディキウムが復元されない!』
『違うよドクトリン、源理の力は働いている。私達の力は正常に働いているわ』
『何だと!?』
掠れた声でそう口にするテンプティにドクトリンは激昂し、次いで理解する。源理の力が働いていながら、それでも復元されないプロディキウム、そして未だ修復されない空間を見て、その理解は確信へと変わった。
『まさか、消したのか!? 我々を、この宇宙を
声が震える、体が凍てつく、魂が消えそうになる。
源理の力、事象を制御する力が正しく働きながらも作用されない理由、それは至極単純、目の前の魔神が過去現在未来と在るモノ、ソレそのものを破壊したからだ。
重力の魔神は元々は破壊に特化した機体、それが真化へと至り、太極へ到達した事により、その力の質はより上位と呼べる段階へ移行した。
破壊から破界、文字通り世界を理ごと壊す事が可能となった破界の魔神、あまねく万物全てを
────当然、魔人ことシュウジはその事に気付いてはいない。現段階でまだ力に慣れていない彼は、目にしたものにしかその力を振るえていない。もし彼の力が目にしたものではなく、
『────さて、終わりにしようか。いい加減この空間から出たいし』
そう言って魔神の前に黒い穴────ワームホールを展開させる。出てきたのは一振りの刃。柄もなく、鍔もない無骨な一振りの刀。
その刀に銘は無く、在るのは敵対するモノを切り裂くという本来の役割を担う性能のみ。ただ一つ言えることは、その刀身は何処と無く、以前トールギスが愛用していたモノと似ている気がした。
手にした刀を上段に構え、プロディキウムに狙いを定める。最早避けられぬ自分達の末路に、ドクトリンは最期の毒を吐く。
『貴様、貴様こそが人類の…………いや、全生命体全ての敵、根源的災厄に他ならない! 悪よ、大いなる暗黒よ、貴様の行く手に呪いあれ、貴様の行く末に災いあれ! いつの日か、必ず貴様は報いを受け────』
瞬間、プロディキウムは原初の魔神の一振りにより、その存在ごと両断された。
◇
─────静寂、そこに残されたのはただ静寂のみだった。生きとし生ける命は無く、怒りも、楽しみもそこにはなかった。
『あぁ、なんという…………なんという事、私はただ私達の事を知って欲しかっただけだというのに』
同胞が消滅した事を契機に楔から解き放たれた哀しみの乙女、永い時の中共に生きてきた盟友の突然の消滅に乙女は戦いのあった場所に辿り着くとそこで起きた惨劇にただ嘆き、哀しみ、涙を流す。
残されたのは怒りと楽しみだったモノの残滓、それを慈しむように抱き締め、取り込み、一つとなった乙女はある決意を己に刻む。
『─────許さない』
涙を流す乙女の瞳には全てを憎悪する怒りの炎が。
『グランゾン、原初の魔神。そして…………シュウジ=シラカワ! お前という存在は絶対に許さない』
その口元には全てを楽しむ歪んだ笑みがそれぞれ宿っている。
怒りと楽しみ、そして哀しみとなった彼女の目の前に在るのは切り裂かれた空間、その先に映るのは蒼い星─────地球があった。
ボッチ&グランゾン「やっちゃったぜ★」
そんな訳で色々とはしゃぐお話でした。次回からは久しぶりの日記での物語、果たしてボッチはZ-BLUEに合流出来るのか。
次回もまた見てボッチノシ