『G』の日記   作:アゴン

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今回のCCCイベント、最高だったなぁ。
リップもメルトも御前様も揃い、言うこと無し。
いやぁ、本当に楽しかった。

だからキアラ、大人しく座に帰れ。自分が欲しかったのはデミヤであってお前じゃないんだ。




その150

 

 

 

 

 

 

 

「何ですって!?」

 

「蒼のカリスマ…………シュウジ=シラカワが生きてる?」

 

「確かなのか?」

 

Z-BLUEの艦の一つ、プトレマイオスⅡのブリーフィングルーム。あの混沌とした宇宙から脱出し、それぞれ地球圏で合流を果たした彼等は、クロウ=ブルーストと相良宗介の二人からもたらされた情報に、集まった各艦長達は皆驚愕し、大なり小なり動揺していた。

 

「ハッ、肯定でありますブライト艦長。以前自分は東南アジアにあるナムサクという街で奴と思われる人物と遭遇、接触しました。当時は記憶喪失と吹聴してましたが…………」

 

「あの空間────黒いアンゲロイとやりあっていた時に見掛けたアイツはそんな様子は微塵も無かったな。二、三話しただけだが別に記憶喪失って訳でも無さそうだし、誰かに操られているって感じもしなかったぜ」

 

クロウと宗介、二人のそれぞれの証言に各艦長達は思案する。二人とも蒼のカリスマの生存していたという共通した証言ではあったが、記憶関係の所は幾つかチグハグしている部分がある。

 

「相良軍曹の証言が正しいのなら、クロウ=ブルーストが出会った蒼のカリスマは記憶を失っていながら我々の手助けをしてくれた事になる」

 

「でも、それなら何故彼だけはあの場から逃げられなかった? 私達を欺く為のブラフ?」

 

「いえ、そもそも軍曹に言った記憶喪失という話すらブラフなのかもしれないわね」

 

「もしくは記憶喪失だったのは本当で、何かの拍子に記憶を取り戻し、その後我々に協力、クロウ達を逃がす為に殿を努めたのかも…………」

 

「そもそも、記憶喪失だった人間が記憶を取り戻して日も浅いのにMSを乗り回せるのか?」

 

出てくるのは疑惑と混乱、考えれば考えるほど分からなくなってくる蒼のカリスマの行動。どんなに議論を交わしても彼の男の目的と思考が何一つ理解出来ない。何故記憶喪失と偽ったのか、本当に記憶を失ったのか、何故敵対した自分達を助ける真似をしたのか、それらの行動も自分達を騙す罠なのか。

 

蒼のカリスマ─────シュウジ=シラカワの行動に今一つ理解出来ていない各艦長らは遂に音を上げ、降参する様に肩を竦めたり、お手上げとばかり力なく両手を挙げる。

 

「───やはり、考えても今一つ分かりませんな」

 

「彼は破界事変の頃からその存在を明らかにしていましたが、その言動は今一つ計りかねない所がありましたからね」

 

深々と溜め息を溢す艦長達、彼等が悩んでいる姿を見て立場的に何も言えない宗介は、黙したまま隣の少女──C.C.へ目を向ける。

 

宗介に口止めを強いて、今も静観に徹している彼女は宗介の視線に気付いていながら、それでも尚平然と黙秘を続けている。

 

肝の据わった女だ。この状況で今も尚何も口にしない彼女の態度に宗介は素直に感心した。だが、いつまでもそれを見逃す訳にもいかない。分不相応な態度ではあるが、宗介はC.C.に情報の提言を求めようとした時。

 

「C.C.、君なら何か知っているんじゃないのか」

 

日輪の快男児、破嵐万丈と共にアムロ=レイがブリーフィングへと入ってきた。タイミング良く切り出してくれたアムロに内心で感謝をしながら宗介は姿勢を正す。

 

「アムロ、ヒビキの容態は?」

 

「少し混乱しているが問題はない。医務室で今は安静にしている。容態も快復に向かっているし、数日もすれば元気になるだろう」

 

これまで部隊の皆の様子を伺いに行っていたアムロ、彼から告げられるヒビキの現在の様子を聞いて、ブライトは一先ず問題の一つが片付いた事に安堵した。

 

ヒビキは戦力的にも人材的にも非常に重要な人間だ。彼の機体に備わっているスフィアの力はセツコやランド、クロウのスフィアとは異なっている。彼の力は今後のサイデリアル攻略に不可欠な要素になることは間違いない。

 

そんな彼がこれまで不安定な状態から脱出し、今は落ち着きを取り戻そうとしている。これ迄にない彼の大きな前進に、他の艦長たちも胸を撫で下ろしていた。

 

特に、一番ヒビキと付き合いの長い宗介は親友の無事に、己の立場も忘れて安堵する。が、此方を見てクスクスと笑うテレサ=テスタロッサに気付き、慌てて姿勢を正す。

 

「フフフ、構いませんよ相良軍曹。友人の無事に安堵するのは人間として当然の事、気になさらないで下さい」

 

「ハッ、失礼しました!」

 

相変わらず堅苦しい宗介、そんなある種微笑ましいやり取りを眺めていたオットー艦長は表情を引き締め、アムロに…………いや、C.C.を問い質した。

 

「それで、C.C.…………さん? アンタは一体奴について何を知ってるんだ?」

 

「なんだ。もうその話か? 良い歳なのだからもう少し余裕を持ってもいいんじゃないか?」

 

「生憎、我々には貴方に付き合える程余裕も時間も持ち合わせてはいない。そして、それは地球にも同じことが言える」

 

現在、蒼の地球はサイデリアルの侵攻により、その全土の七割以上が奴等の支配下に置かれている。重要拠点も幾つか占拠され、他にもアマルガムを始めとした裏世界の秘密結社達もサイデリアルへ付いている。

 

既に背水へと立たされている蒼の地球、その状況下で魔女の言葉に付き合える程、彼等には余裕が無かった。

 

「C.C.、頼む。君の知る全てを話してくれないか。君の情報の有無で俺達は彼に対して態度を決めなくちゃいけない」

 

「成る程、確かに奴の動きを客観的に見ればお前達が焦るのも仕方がない。アイツは自分の行動が及ぼす影響というものを顧みないからな」

 

「なら────」

 

「だが、残念ながらまだ言えん。言うわけにはいかない」

 

アムロからの頼みもすげなく断るC.C.、だが彼女の言い方に何かを感じ取ったのか、アムロの目には落胆の色はない。

 

「…………理由を訊いても?」

 

「理由は単純だ。そういう風に口止めをされたからな。他ならないアイツ自身に」

 

「………………」

 

「納得出来ないのも分かる。信じて欲しい等と都合の良い事も言うつもりもない。だが、ソレスタルビーイング号の現在の行方と情報を教えてくれたのも奴である事も…………忘れないでやってくれ」

 

そして確信する。奴は、蒼のカリスマは、シュウジ=シラカワは自分達と完全に敵対していた訳ではないのだと……。

 

C.C.の話を耳にしても誰も信じてはくれないだろう。彼女の言葉に納得出来ないのも無理はない、しかし残された可能性にすがる事しか出来ないのもまた事実。

 

Z-BLUEは不安と動揺を呑み込みながら、シュウジがもたらしたとされる情報を下に────次の目的地、ソレスタルビーイング号の奪還に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『チクショウ! コイツら、ドンドン湧いて出てきやがる!』

 

蒼の地球、その領域の七割以上が皇国に支配された世界、Z-BLUEという最大の戦力を失っていた地球圏は日々サイデリアルの湧いて溢れてくる戦力に苦戦の毎日を強いられていた。

 

中東方面に展開された最前線、残された弾薬と仲間達で皇国の強攻を阻もうと躍起になっているパトリック=マネキン。

 

ライフルで撃ち抜き、サーベルで切り裂いても続々と増えてきている敵の増援に対し、彼はすれ違い様に敵を撃墜しながら悪態を溢す。

 

状況は圧倒的に此方が不利、勝つことが出来ないと分かった以上、最早この前線を維持する意味はない。どうしようもない状況と自身の力不足に苛立ちを覚える。

 

そんな時、パトリックの所に友軍機のジンクスⅣが接近してくる。

 

『マネキン准尉』

 

『その声、スミルノフ中佐か!』

 

『この戦い、最早我々に勝機はない。撤退の準備を…………』

 

ロシアの荒熊の異名で知られる男、再世戦争以来息子のアンドレイ=スミルノフと共に姿を消した彼が何故今この場に現れたのか。元来細かい事は気にしない性質であるパトリックは全くそんな事など気にせず、送られてきた通信に即座に返答した。

 

『そうしたい所だが、連中の勢いを殺さない事には動きようがねぇ。せめてもう少し此方に戦力があれば撤退の一つも出来たんだが…………』

 

ハリネズミの如く打ち出される弾幕、味方諸とも撃ち抜かれる事を承知で襲い掛かってくる無人機の群れと、此方の技術力を遥かに上回るサイデリアルの兵器群、戦況は既に此方の撤退を余儀無くさせていた。

 

だが、撤退させようにも今の状況ではそれも叶わない。背中を連中に向けたら最期、瞬く間に此方の戦力は奴等の攻撃に晒され戦線は瓦解、今後皇国に抗う戦力は大きく削がれてしまう事だろう。

 

それだけは避けねばならない事態であることはパトリックもよく理解している。しかしこうしている間にも味方機は一機、また一機と墜ちていく。泥沼に嵌まったこの現状、抜け出すのはほぼ不可能となっていた。

 

『そう、だからこそ私が来たのだ』

 

『スミルノフ中佐?』

 

『マネキン准尉、軍を抜け、生き恥を晒してきた私だがそれでも通さなくてはならない意地がある。今日ここへ来たのはそれを為す為にある』

 

『お、おい。アンタ、一体何を…………』

 

『この場は私が受け持った。マネキン准尉、君はすぐに部隊を纏め戦線から離脱するんだ』

 

『なっ! それじゃあアンタは!』

 

『既に君の奥方…………マネキン准将には話を通してある。君はまだ若い。私の息子、アンドレイと共に未来を繋いでくれ』

 

制止するパトリックの声を振り切り、単独で敵陣に突っ込んでいくセルゲイ、止めなくてはと機体のスラスターに火を灯そうとするが、彼の行く手を遮る赤い壁が突如として出現する。

 

『こ、コイツは!?』

 

機体の名はベヒモス。ラムダ・ドライバ搭載の巨大ASが複数体彼の眼前に現れる。

 

『コイツら、確かアマルガムとかいう秘密結社の奴か!』

 

『ハッハー! 見付けたぞ不死身のコーラサワー! いや、今は幸せのコーラサワーだったか?』

 

『っ!』

 

上空から聞こえてきた声、その声に悪意と敵意を感じ取ったパトリックは鍛えられた己の直感に従い、いない筈の頭上に向けてビームサーベルを振り抜く。

 

瞬間、火花が散り、機体に重みが掛かる。機体を通して伝わってくる衝撃に驚きながら見上げると、光学迷彩が解け、その姿を現す赤いASの姿があった。

 

『ほう? まさか今の奇襲を読むとはな。流石は歴戦の猛者、その実力は折り紙付きか』

 

『テメェ、何処のドイツだ!』

 

『ハハハのハハ! おまけに乗りも良いと来ている。…………そうさな、俺は人呼んで“モミアゲのゲイツ様”とでも名乗っておこうか!』

 

『この野郎、ふざけてんじゃ───』

 

突如として現れたアマルガムの増援、その事実にアマルガムと皇国が繋がっている事に気付くパトリックは機体の出力を上げ、ゲイツのAS────コダールiを弾き飛ばそうとする。

 

が、既にこれ迄多くの戦場を潜り抜け、それなのに満足に整備をしてやれなかった弊害が形となって現れてしまう。

 

『っ!?』

 

推進力の要であり動力源であるGNドライブ、そのスラスターから小さな爆発が発生し機体の出力が大幅に低下する。この土壇場に置いての機体の不備、そして当然敵はそれを見逃す筈もなく。

 

『隙アリィッ!』

 

『ガっ!?』

 

これ見よがしにラムダ・ドライバを発動、その力場から繰り出される圧力によりパトリックは機体ごと大地に叩き付けられる。

 

これがラムダ・ドライバの性能か、身を以てその力を体験したパトリックはすぐに機体を起こそうと操縦桿を握り締めるが……。

 

『クソッ、こんなときに腕が…………』

 

ラムダ・ドライバの力は強力、機体を通してパイロットにまでダメージを通した事によりパトリックの右腕は折れ、パイロットスーツ越しでも分かるほどに腫れ上がっていた。

 

『パトリック=マネキン、お前の不死身っぷりは聞いているぜ。幾度となく激戦を潜り抜けその度に撃墜されながらも奇跡的に生還を果たした男、けどなぁ、アンタは幸せになりすぎた。不死身ではなく幸福を選んだ事によりお前は自らの不死身性を放棄したって訳よ』

 

『ハッ、確かに今の俺は幸せさ。良い女に出会えてその(ヒト)と結ばれたんだからよ。いつまでも裏世界で腐っているお前じゃどんなに望んでも手に入りはしねぇ』

 

『くー! 最期の最期までリア充自慢しよってからに! …………だが、そのリア充人生もここまでだ。お前を殺し、不死身の名前はこのゲイツ様が頂く。既にあの魔人と二度もやり合ってるんだ。既にその資格は修得済みなんだよ』

 

『ハッ、モミアゲ頼みのお前にそんなもんあるかよ。真の不死身は譬え選択肢が無かろうと最期の最期まで足掻き続ける奴にだけ与えられる称号なんだよ!』

 

『ご教授サンクス、お命頂戴!』

 

単分子カッターを手に飛び掛かってくるコダールi、このまま串刺しにされて溜まるかとパトリックは足掻く。痛む右腕に鞭を打ち、操縦桿を握り締め、機体を動かそうと躍起になる。

 

自分はまだ死ねない。先行しているセルゲイを止めなければならないし、まだ皇国軍の連中から地球を取り戻していない。

 

それに────。

 

(俺はまだ、カティとイチャイチャしたいんだ!)

 

愛する女の為に絶対に生きて帰る。そんなパトリックの想いに答えるかのように────死んでいた筈の機体に光が宿る。

 

一瞬の出来事、しかしその一瞬に全てを賭けたパトリックは、GN搭載機の切り札であるトランザムシステムを作動させる。

 

赤く、燃えるように輝くジンクス。手にしたライフルを手に打ち出される一撃は今の彼の機体が出せる最高の出力。その一撃を放つと同時に機体を動かして離脱しようとするが、今度こそ機体は力を無くし、動かなくなってしまう。

 

『く、クッフフフ。まさか最期の最期に反撃を喰らうとはなぁ。これが鼬の最期の屁をかまされた者の気持ちか…………成る程、確かに腹が立つ』

 

砂塵の向こうから姿を見せるのは装甲の一部が剥がされたコダールi、聞こえてくる通信の音声からパイロットの無事が伝わってくる。モミアゲのゲイツ、ふざけた奴だが確かに不死身を名乗るに相応しい男なのかもしれない。

 

『だが、今度こそ終わりだ。お前を殺し、不死身の名を手に入れ、行く行くは幸せの文字も奪う。ゲイツ様のウハウハハーレム人生はここから始まるのだぁ!』

 

今度こそ打つ手がない。迫り来るコダールi、狂喜と妄想を垂れ流すゲイツにパトリックは悔しそうに口許を歪ませ─────”。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ワームスマッシャー』

 

 

 

 

 

 

 

────光の槍がゲイツのコダールとパトリックのジンクスの間に降り注がれた。

 

『なぁっ!?』

 

『なぁんだとぉっ!?』

 

無数に降り注がれる光の槍、それは一ヶ所に留まらず、サイデリアル側の無人機やアマルガムのベヒモス達、その全てに突き立てられていく。

 

抵抗らしい抵抗もできないまま爆散していく戦力達、その非常識な光景に皇国、アマルガム、そして地球側、全ての人間が停止した。

 

『な、なんだぁ? 何が起こった!?』

 

余りの非常事態に素に戻るゲイツ、同時に折角の獲物を前に横槍を入れられた事に焦りと怒りが彼の思考を染め上げる。

 

『地球側の秘密兵器か!? それともZ-BLUEが戻ってきたのか! クソッタレめが、出てくるなら出てきやがれ! この出鱈目な世界だ。今さら何が出てきたって驚きは─────』

 

言葉が詰まった。息が止まった。思考が止まった。心臓が止まった。

 

だって、だって、だってだってだってだってだってだってだってだってだってだってだってだってだってだってだって…………。

 

『残念ながら、貴方が不死身を名乗るには今一つ品性が足りません。出直してきなさい』

 

目の前に居ない筈の蒼の魔神(グランゾン)がいるんだもの 。

 

『前言撤回、驚きましたぁっ!』

 

混沌とする戦場の中でモミアゲ男の悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 




ボッチ&グランゾン「ただいま!」

地球「来ないでくださいお願いします」


それでは次回も、また見てボッチノシ

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