『G』の日記   作:アゴン

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ボッチ、遂に禁断の領域へ……。



その162

 

 

オペレーション・エクリプス。それはZ-BLUEによる、翠の地球を支配するサイデリアルへの反抗作戦。これまでの戦いの中で得られた仲間達と共に遂行される大きな作戦、部隊を二つに分け、それぞれ中央大陸と残されの海へ向かった一行だが、その作戦行動の最中、ある奇妙な噂を耳にする。

 

なんと、Z-BLUEを様々な卑劣な作戦で貶めて追い詰めようとした、サイデリアルの自称知将のギルター=ベローネが、サイデリアルを裏切ったというのだ。

 

典型的小物で自己保身と顕示欲にまみれ、サイデリアルという虎の威を借りる事しか能がないギルター、そんな奴が何故今になってサイデリアルを裏切るのか、失敗続きで最近は影も形も無かったギルターが遂に自棄を起こしたのかと、誰もが最初はそう思った。

 

しかし、奴が関わったとされるレジスタンスはその作戦の悉くを成功に納めている。局地的基地の制圧、人質の無血解放、更には基地の損害を最小限に食い止め、サイデリアルの機動兵器を基地丸ごと略奪に成功している。

 

戦術予報士であるスメラギや元黒の騎士団総帥のゼロ、傭兵組織ミスリルの指揮官でありダナンの艦長であるテスタロッサ、彼等はその作戦を成功に導くには多大な労力が必要と断じている。

 

Z-BLUEの中でも軍師の役割を担う彼等が口を揃えてそう言うので、もしかしたら何か間違って伝わっている誤情報なのではないかとも考えられた。しかし、実際に制圧された基地を目の当たりにして、中央大陸組はちょっとしたパニックに陥った。

 

何故ギルターはサイデリアルを裏切ったのか、分からない事は多々あるし、納得出来ない部分も多い。もしかしたらこれまで恥将ぶっていたのはフェイクで、本当はサイデリアルに反旗を翻そうと虎視眈々と狙っていたのかもしれない。そんな微粒子レベルで存在するかどうか分からない可能性すら出てきたギルターへの試行錯誤の考察は、残されの海に向かったもう片方のZ-BLUEの情報によって彼方へと吹き飛んでいく。

 

何でも、これまでクジライカという残されの海に生息される生物は、レドがこれまで敵対してきたヒディアーズであると判明、人類銀河同盟の兵士で宿敵と再会したレドは、即刻クジライカなるヒディアーズを殲滅しようと動き出した。

 

しかし、そんなレドの暴挙を彼に想いを寄せるエイミーが止め、Z-BLUEの面々も取り敢えず様子を見ようとレドに制止を呼び掛けた。彼等の言葉に渋々と言った様子でレドは一先ずクジライカの殲滅を止めるが、妥協案としてクジライカの生息する海域の調査を進言した。

 

ヒディアーズと類似するクジライカ、レド少尉が混同する程に両種族は似ていて、銀河の中心部でヒディアーズと実際に遭遇した他のZ-BLUEの面々も気にしている事から、残されの海のまとめ役であるジェフリー艦長は、戦闘の禁止を条件に許可を出した。

 

クジライカの後を辿り、その先で巣を見付けたレド。クジライカを刺激しない程度に巣へ侵入したレドはそこでクジライカの…………ヒディアーズの起源を知る。

 

そこでヒディアーズが元々は人類が進化した姿であると知ったレドは自らの戦う意味を失い、戦意を喪失した。対して彼の愛機であるチェインバーは、本能のまま動くヒディアーズを文明を自ら放棄したとして、彼等は最早人類ではないと断じる。が、既に人類銀河同盟から外れ、単独で行動しているレドに強制するべきではないと語るチェインバーは今後自分達はどうするべきか、その判断の全てをレドに預ける事にした。

 

相棒に委ねられ、全てを自己責任で判断する重みに耐えながら彼が出した決断は────戦う事だった。

 

自分達が戦うべき相手はヒディアーズだけじゃない。サイデリアルや他の根源的災厄も自分達が相手にしなければならない奴等だ。人類銀河同盟も関係ない、これからは自分の意思で闘うことを決めたレドは、皆と共に前に進むことを決意した。

 

その騒動の中でガルガンティアの長であるフェアロック船長が死亡、後釜はリジットに託され、その最中にガルガンティアの秘密に触れることになる。

 

その秘密から、絶滅から免れた人類は絶望に挫けてはいなかったと知ったガルガンティアは、前船長の遺志と共にこれからもこの航海を往くと誓うのだった。

 

その後、襲い掛かるサイデリアルを何とか退けた一行、サイデリアルの主力艦隊のトップであるストラウスを相手にヒビキはかねてより特訓していた成果を引き出し、ランドはガンレオンの真の力を解放する事に成功、戦いを終えた一行は中央大陸の別働隊に合流するべくガルガンティア船団を発つのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

δ月δγ日

 

破竹の勢い。ギルター=ベローネというサイデリアル最大の軍師を迎え入れられたお陰で、ここ最近の翠の地球におけるレジスタンスの勢いは凄まじいモノがある。

 

基地の制圧自体はこれ迄のやり方と然程変わりはしないから大した事じゃないように思える。けれど事前に情報を知る事ができれば、それは作戦開始時に大きな武器となり得る。

 

そう、ギルター=ベローネは自分やレジスタンスに対し情報提供を用いる事でサイデリアルに反旗を翻すことを決めたのだ。それもただ単純に情報を話す訳ではない、リアルタイムの────現在進行形の形でギルターは自分達に常に新しい情報を提供してくれている。

 

情報というのは流れる水の如く、時間が経てば経つほどその価値を失っていくのに対し、有益な情報というのは重要な内容であればあるほど、その収集に要する時間は大きくなっていく。

 

それなのにギルター=ベローネは常に最新の情報を与えてくれる。基地に配備された敵の数やその配置、機動兵器の数や各施設の割り当てまで事細かく伝達してくれる。

 

基地内部の情報は把握するのに別にそこまで難しくはない。サイデリアルの基地内部はどれも大抵似た構造をしているし、管制室に潜り込めばその全容を把握するのは容易い。それに彼は元々サイデリアルの人間だ。元自軍の基地の事情なんて、彼の人間性を考えればそれこそ翠と蒼の二つの地球、その双方を知り尽くしていそうだ。

 

だが、ギルター=ベローネに驚いたのはそこではない。自分がギルターを驚愕に思ったのは、まるで未来予知をしているのではないかと思えるほどの鋭い観察眼だ。注意しなければ分からない、そんな日常レベルのやり取りで彼はサイデリアルの現在の行動を瞬時に理解し、基地に捕まった人質の存在を導き出す事に成功しているのだ。

 

僅かな情報を頼りに答えを導き出す。…………いや、恐らくは違う。ギルター=ベローネ、彼は多分翠の地球の全ての基地の状況を常に先読みしながら思考し、そこに敢えて不確定要素を盛り込みながら常に目まぐるしい計算をその頭脳で行っているのだ。

 

凄まじいまでの並列思考と高速思考、戦場の先読みという一点だけでいうのならシュナイゼルすら上回っているんじゃあないのか? スカウトする前から只者ではないと思っていたけど、どうやら自分はギルター=ベローネという男に対し、まだまだ認識が甘かったらしい。

 

そんな事もあって順調に翠の地球を解放に導きつつある現在、バルビエルというスフィアリアクターを取り逃がし、翠の地球をサイデリアルから解放する事しか現状やることがない自分としては、この順調さは嬉しい誤算だった。

 

けど、だからこそおかしい所がある。これ程見識のある男がどうしてあんな量産機に乗っていたのか、ギルターを捕まえる際の状況を思い出した自分は、ふと同時にある推測を思い付く。

 

恐らく、ギルターはZ-BLUEや自分といった地球の勢力に接触した事で、サイデリアルに反旗を翻すにはこの地しかないと直感的に理解したのだろう。同時に自らを無能として貶めることで部隊から孤立させ、上司であるバルビエルの手から逃れる事を目論んだ。

 

Z-BLUEや地球の勢力と戦い、下手に疑われないように加減しながら戦場をコントロールし、結果的に負ける様に促す。満足に戦果を上げられないギルターは次第に立場を追われ、遂には捨てゴマとして扱われる様になる。

 

けれどそれこそが狙いだったギルターは量産機に乗り込み、自らを死んだことに見せ掛けようとした。その後、レジスタンスに協力してZ-BLUEを裏から支援してやろうと言うのが、ギルター=ベローネという奇策士の策略だったのだろう。

 

けれど、そこで唯一奴の誤算だったのが自分に見付かった事、恐らく死んだふりをするのに必死で自分の存在にまで気を使う余裕が無かったのだろう。あれほど驚愕し、慌てていたギルターを見るのはあの時が最初で最後だった。

 

自ら死を選ぶという難しさと恐怖は自分にも覚えがある。そこら辺りは流石のギルターも余裕が無かった様だった。まぁ、恐るべき策士といっても奴も人の子だと知ってある意味安心しているけどね。

 

そんな訳で、ギルターの勧誘に成功した自分は翠の地球をサイデリアルから解放するために、近場の基地拠点に襲撃しては占拠、制圧を繰り返している。自分というイレギュラーに出会し、一度は命を差し出そうとしたギルターも、今では本来の奇策士として充分に活躍している。

 

時々、啜り泣いたり、怒鳴り散らしたりと情緒不安定な時があるけど、恐らくそれは脳を酷使したことにより起こる一種の疲労困憊な状態なのだろう。ギルターという指示役を得られた事で少し働かせ過ぎたのかもしれない。

 

自分達はあくまでサイデリアルを地球から追い出すという目的で手を組んだ間柄だ。どちらか一方に負担を強いるのはフェアじゃない。ギルターという貴重な戦力を失わない為にも、少し自分も気を遣うべきなのだろう。

 

…………しかし、バルビエルも馬鹿な男だ。あれほどの逸材を捨てゴマに扱うとは、どうやらスフィアリアクターは力は強くても、そういう搦め手の策略や裏の読み合いは苦手らしい。

 

ま、自分も得意じゃないから言えないんだけどね。

 

 

 

δ月※δ日

 

どうやらZ-BLUEも翠の地球をサイデリアルから解放しようとしているらしい。レジスタンスの人達からZ-BLUEらしき機体を目撃したという情報を耳にしたので詳しく聞いてみると、何でもZ-BLUEは自分達が制圧した基地を訪れているらしく、そこで色々と詳しい事情を集めているとの事。

 

…………そろそろ、彼等にも本当の事を話すときが来そうだなぁ。イヤだなぁ、怖いなぁ。絶対ヨーコちゃんヒビキ君を通して俺の事知ってるよなぁ、カレンちゃんも知らない筈も無いだろうし、会ったら絶対痛い目に遭うんだろうなぁ。

 

土下座してもその上から踏み潰されそうで怖い。下手すればそのまま電磁ライフルでズガンッされそう。ニュータイプで自分の事情を何とか察してそうなアムロさんやカミーユ君に助けを求めるのも…………無理っぽいなあ。

 

────止めよう。これ以上この事を考えても仕方がない。その時が来たらその時に考えよう。現実逃避ともいう。

 

怖いと言えばグランゾンもだ。最近使ってやらない時が多い所為か、此処の所機体の駆動音がヤバイの何の。重力の底、ワームホールに仕舞い込んでいる筈なのにそれを通して訴えてくるのが分かっちゃうんだもの。

 

こう、《早く私を暴れさせろ》って感じで訴えてくるの。真化融合を果たした影響か、そういうグランゾンの心の叫びを最近特に強く感じ取れるようになった。

 

お願いだからもう少し待って、あと少し耐えたら好きなだけ暴れさせてやるから、そう相棒に言い聞かせるとそれが効いたのか、グランゾンはそれ以降愚図る事もなく大人しくなった。

 

何だか利かん坊な子供をあやしている様な、そんな気分になる。矢澤家の姉妹達を相手にするような感覚にまさかまた味わえるなんて、ふと懐かしく思う。

 

まぁ、その後恐ろしい逆襲にあって偉い目にあったりするんだけどね。それもまた矢澤家の人々との交流の楽しさでもあるわけなのだ。…………みんな、今頃何してるかなぁ。

 

 

 

ヤバい月ヤバーイ日

 

ヤバい。ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。

 

何がヤバいってマジヤバい。

 

これもグランゾンと真化融合を果たした影響なのかはたまた別の理由があるのか。

 

なんか、何気なく人気の無い森に手を翳したら…………森、潰れたんだけど?

 

こう、ストレッチ感覚で力を伸ばしがちにしてたら、手から重力波みたいなの出ちゃったんですけど……。

 

……………………え?




喜び野郎との激突…………近い。

次回もまた見てボッチノシ

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