♯月√日
月を占拠するサイデリアルの精鋭部隊、ハイアデスの連中との戦いを終えて数刻、現在自分達は連中に占拠されていたD.O.M.E.に向けて足を進めている。
そんなに時間が無いので簡潔に言わせて貰うと、結果は勝利。Z-BLUEはハイアデスの副官であるダバラーンが率いる艦隊に打ち勝ち、見事サイデリアルを月から追い出す事に成功したのだ。
奴等の親玉でもある総司令官ストラウス改め────エルーナルーナと雌雄を決した訳ではないから完全勝利とは言えないが、それでも勝ちは勝ち。最小限の被害でサイデリアルの主力部隊を退けたという事実はZ-BLUEにとっても、地球人類にとっても大きな意味合いを持っている。
その最中でもヒビキ君も愛機の新しい力を使いこなしつつあるのか、然程労せず新形態に変身できるようになってきたし、それに合わせてZ-BLUEの各面々も実力を上げてきている。本当、心強い限りだ。
そんな戦いの中で自分がしてきたのは後方からの援護射撃、ワームスマッシャーによる波状攻撃でハイアデスの足並みをバラバラにした程度だ。
以前艦長達に自分の意見を通してもらい単機で出撃したから、今回は自重して後方で大人しくしていた。だが、どうやらグランゾン的にはそれが面白くないのか、戦闘中ずっと自分にもっと戦わせろと訴えてくるのだ。その所為かワームスマッシャーの一発一発がやたら高威力で、ハイアデスの主戦力と思われる戦艦を二、三発で沈めてしまった。
援護が援護になっていない。後方支援の筈なのにやり過ぎな気がしないでもないが、ここ最近グランゾンのフラストレーションは溜まっていく一方、少しはその発散をさせてやろうと言うことで、自分はそのまま各機体の動きに合わせてワームスマッシャーを叩き込んだ。
そしてランドさんがダバラーンを退けた事で今回の戦いは終了、無事ディアナさん所の住民とD.O.M.E.共々奪還する事に成功した。
で、その後月の女王と呼ばれるディアナさんの案内の下、自分達はD.O.M.E.に案内される事になった。
なんでもそこには黒歴史の真実が隠されているのだとか。個人的には余り興味の無い話だけど、以前再世戦争の頃、シュウ博士の情報を集めていた際にロージェノム氏から言われた言葉が今になって引っ掛かるので、それらを解消する意味でも自分も付いていこうと思う。
あ、勿論許可は頂きましたよ?
◇
D.O.M.E.。そこで彼の者によって明らかにされる黒歴史の真実、黒歴史とそこに纏わる最悪の未来と、其処から新たに生まれる可能性の未来。それによって数々の疑問疑惑が証明、或いは解明されるに連れて、Z-BLUEの面々は決して少なくはない衝撃を受けた。
「成る程、その黒歴史が記録されたモノが黒の英知であり、それに触れた者が
『そうだね。少し誇張が混ざっている気もするがその認識で大体合っていると思うよ』
D.O.M.E.から聞かされる衝撃の数々、その話をこれまで静かに聞き入っていた蒼のカリスマことシュウジ=シラカワは何気なくそう口にする。D.O.M.E.もそれに同調し、肯定した。
「つ、つまりどういう事?」
「アマタ君、後で教えて上げるから今は静かにね」
「あっはい」
D.O.M.E.が肯定した事によりシュウジは頭の中で幾つかの欠片が組合っていく様な、そんな感覚を覚えた。黒歴史を含めた宇宙の全てが記されたアカシックレコード、それに類似する黒の英知と次元の力───
そしてその二つは元々は一つの起源から生まれたという。
その一言にシュウジは直感で確信する。黒の英知とスフィアは決して別々の存在ではなく、元々は一つの存在だったのだと。嘗てはこの宇宙に存在し、君臨していたナニかだったのだと、これまで培ってきた知識が、見聞が、情報が、それが間違いでないと語っている。
だとすれば、その一つだったモノの存在は宇宙に影響を及ぼす───なんて小さな話ではない。正真正銘宇宙そのものだ。
(こうして見ると、まるで神様だな。それもミケーネやミカゲの様な邪神じゃない。少なくとも奴等よりも神性はずっと強そうだ)
太極、源理の力を扱える迄に至ったシュウジだからこそ理解できる、起源となったモノの存在の大きさ。いや、シュウジだけではない。ヒビキもその事に気付いているのか、その表情は何処か青ざめている様にも見えた。
「シュウジ? どうかしたの?」
突然口を開いたかと思いきや、再び沈黙するシュウジを不思議に思ったカレンが覗き込んでくる。どうやら考えに耽り過ぎたかと思い、シュウジは一旦思考を中断する。
「いえ、なんでもありませんよ。どうぞ続けてください」
あからさまに話題を逸らしたが、今はその事に追及する者はいない。次の話に移ろうとD.O.M.E.に質問を投げ掛けようとした時、衝撃が彼等を襲った。
外部からの攻撃、サイデリアルではなくミカゲからの横槍だと知ったZ-BLUEは、崩れるD.O.M.E.に別れを告げながらその場を後にする。名残惜しそうに佇むティファもガロードに手を引っ張られ、彼女も漸く覚めることの無い眠りに就けるD.O.M.E.を見送りながら彼の地を後にした。
────その時だ。
「あれは」
ふと視界の端に仮面の男、蒼のカリスマが佇んでいる姿を目にする。早く逃げろと言いたい所だが、相手はあの魔人、この程度の窮地を抜け出す事など訳はない。一体何をしているのか気になる所だが、今はここから避難する事が先決だ。
去り行くティファ達、D.O.M.E.に残る最後の少女を見送り、自分以外居ないことを確認したシュウジは、崩れる天蓋に向けて口ずさむ。
「なぁ、D.O.M.E.さん。あんたは知ってるのか? アンタの知る黒の英知の中にグランゾンがいた事を」
それは、嘗てカミナシティでロージェノムから言われた一言、何故今になってその事を思い出すのか、何故それが今更気になったのか。ここに来ればその事も分かるのではないか、そんな淡い期待を抱いていたシュウジに返ってきたのは、物言わぬD.O.M.E.の静寂だった。
やはり無理か。達観し、まぁいいかと気持ちを切り替えるシュウジ。いい加減自分も離れないとな、と呟きながらその場を離れようとするシュウジの背後に───複数の映像が浮かび上がった。
何だと思い振り返る。そしてそこに浮かび上がる映像にシュウジは絶句した。
「なんだよ………………これ」
画面一杯に浮かぶ超巨大なゲッターロボ、巨神を思わせる白と赤の巨人、黒い天使と黒き銃神、禍々しい姿となった鉄の城と超弩級艦超銀河ダイグレン、獅子の顔を胸に宿した破壊神、他にも様々なロボット達が映像に浮かび上がり、それらが取り囲む様に展開される映像の中心にはネオ・グランゾンの姿があった。
彼等が敵対している? いや違う。彼等はまるで何かと戦うように一点を目指して進軍している様に見える。一体何と戦うのか、そしてこの後何が起きたのか。追及しようにも既にD.O.M.E.からの応答はない。シュウジの前に映し出された映像も崩れる瓦礫と共に消えていく。
────疑問を解消するつもりがドデカい疑問が新たに出来てしまった。考えをまとめようにも、今の状況にそんな余裕はない。
後ろ髪を引かれる処ではない。強い衝撃を受けたシュウジは戸惑いながらもD.O.M.E.を後にした。
D.O.M.E.が見た黒歴史(ボッチ関連)は一言で言えば………混沌ですね(ニッコリ
それでは次回もまた見てボッチノシ