♯月Ω日
ミカゲから神話型アクエリオンを取り返し、いよいよサイデリアルから地球奪還を目標に動き始めたZ-BLUEは、新地球皇国の戦略を崩す為に部隊を三つに分ける事にした。
一つは日本防衛に、一つはネオ・ジオン牽制、そして最後にアマルガムの追跡にそれぞれ分ける事にしたのだ。当然自分達にもどの部隊に組み込むべきなのか各艦長達と話し合いをしたのだが、自分は今回どの部隊にも属さない自由編成という形になった。
自分はグランゾンの力を使えば、地球上であれば時間浪費など考慮せずに瞬時に各部隊に合流できる。つまり自分の仕事は、不利になった部隊に赴いては援護するという内容になっている。
他にも蒼の地球に置いてきたギュネイ君も拾っておかなきゃいけないし、シュナイゼルにも今後どうするか話を聞いておく必要があるし………それになにより、マリーメイアちゃんの動向も気になる。
彼女にはレディさんが付いているから心配はないと思うが、アドヴェントやいつぞやの皇族達みたいにゲスのやり方を講じる輩が今後出てこないとも限らない。出来れば見つけ出して保護してやりたい。
そんな訳でZ-BLUEが部隊を分けて行動する間、自分は遊撃ポジションとして自由に動くことを許可してもらった。─────一応言っておくが、これは別にどの部隊からもハブられた訳ではない。
各部隊の戦力バランスを考慮し、考えに考え抜いた提案である。そもそも、この話を持ち掛けたのは自分なのだからハブられたという事は全く無いのだ。………まぁ、提案を出した瞬間、各艦長達から即答で了承されたのが気になるけど。
兎も角、これで明日からの自分の行動は定まった。他の部隊からも常に連絡を取れる様に通信回線は開いてあるし、これならZ-BLUEの皆が窮地に陥った時に即座に対応出来る。
いよいよサイデリアルを地球から完全に追い出すための作戦、その第一段階が始まろうとしている。作戦の足手まといにならないよう充分に気を引き締めて行こうと思う。
あ、因みにヒビキ君がアマルガムの追撃部隊で、ギルターがネオ・ジオンの牽制部隊に配属されることになった。ギルターは勿論だがヒビキ君も最近は調子が良さそうだし、今後も彼等の活躍は期待できそうだ。
特に牽制組のギルターは情報分析のスペシャリストだ。彼の的確過ぎる分析力はきっとオットー艦長の役に立てる事だろう。別れ際に応援のエールを二人に送るとヒビキ君は元気良く返事してくれた。
ギルターは相変わらず自分と話すときは目が死んでいるが………まぁ、あれは彼なりの精神集中の仕方だ。変に追及するのは無粋というモノ、彼は言葉には出さず結果で語る仕事人、その一辺倒な在り方はきっと牽制組の力になる事だろう。
そんな訳で一旦部隊を分けたZ-BLUE、自分は己の出来る事を為すために単身地球に降下した。
♪月Δ日
先日Z-BLUEと別行動を取ったばかりで速攻で合流するのって、思ってた以上に恥ずかしいモノがあるね。
先に述べた様にギュネイ君やブロッケンを拾ってZ-BLUEに合流させながら、シュナイゼルやマリーメイアちゃんと顔を合わせておこうという今回の自分の行動、その最初の目的となったのがギュネイ君だった。
何でもギュネイ君はシュナイゼルと共に行動していたが、サイデリアルの侵攻が激しくなるに連れてレジスタンスを分けていき、その時に二人は別れて其々の戦場で頑張る事にしたらしいのだ。
上手く行けば二人と合流出来たのではないか期待していただけに、少しガックリとしてしまった。とは言え当時の二人の判断は間違っておらず、自分の落胆は彼等にとって失礼なモノであるから、決して口には出さないけどね。
その謝罪という訳ではないが、その時ちょうど攻めてきた皇国軍をグランゾンで蹴散らす事で、レジスタンスの人達に助力する事にした。
レジスタンスの人達に協力した後、ギュネイ君に現在のZ-BLUEの状況と、どの部隊に合流するかと訊ねた所、彼が選んだのはネオ・ジオン牽制組だった。今の自分ならネオ・ジオンとも向き合えると語る彼に、自分は彼が良ければと思い、ギュネイ君の愛機であるヤクト・ドーガと共に牽制組のいるソレスタルビーイング号へと向かった。
そこで自分達を待っていたのは、ネオ・ジオンを迎え撃つZ-BLUEの戦場だった。事前にこの事態も考慮していた為に然程動揺せず戦線へ参加するギュネイ君、嘗ての同僚であるジオンの兵達を限られた兵装で無力化していく様は、流石の一言に尽きた。
折角のギュネイ君のZ-BLUE初参戦、邪魔にならない程度にワームスマッシャーで蹴散らしながら自分はオットー艦長とブライト艦長に通信を繋いでギュネイ君の事を報告、その後彼は無事にZ-BLUEに合流する事となった。
で、その直後なのだがどういう訳か突然シャア大佐が投降を宣言、彼はフル=フロンタルの側近らしき人物とそのMSにより捕縛され、現宙域から離れていった。
途中参戦の為話の流れが読めず、どういう訳かとアムロ大尉に訊ねてみた所、何でもシャア大佐はフル=フロンタルに思う所があるらしく、自身の可能性とその決着の為に敢えて連中に捕まったのだとか。
相変わらず回りくどい人だ………とは思わない。彼はネオ・ジオンに属していた際、フル=フロンタルという男の危険性を肌で感じ取った人だ。自らを器と評し、人々の受け皿となることを豪語する男の言う事に、少なからず思うところがあるのだろう。
だったら自分はこれ以上言う事はない。ギュネイ君も自分と同じ意見なのか、シャア大佐の件については自分が訊ねた事以上の問い詰めはしなかった。
そしてその後ギュネイ君をブライト艦長に預け再び地球へ向かおうとするのだが、いやーギュネイ君、暫く見ない間に随分と腕を上げたな。
今のヤクト・ドーガはこれまで地球で激戦を潜り抜けてきた為に限界が迫って来ており、マトモに稼働するのは後数回にまで疲弊していた。
合流する前に応急処置を施したとは言え、今のヤクト・ドーガは自壊寸前、あんな状態で良くもまぁ彼処まで見事に戦えたモノだよ。カミーユ君も相当驚いていたし、今のギュネイ君の実力は下手したらアムロ大尉並なんじゃないか?
………そう言えば彼、シュナイゼルに酷く使われたとゲンナリしていたし、恐らく地球での激闘の日々が彼に力を与えたのだろう。強化人間としてではなく純粋な人としての成長、その成長の土台となったギュネイ君の日々はきっと彼にとって血肉となっているのだろう。
ギュネイ君の思わぬ急成長振りに感心しながら、自分は彼にエールを送り、困った事があればギルターを頼れと言い残して今度こそ地球へ向かった。その際にギルターが何か言っていた気がするがその頃にはワームホールへ突入していた為、彼の言葉は聞こえなかった。
さて、次の自分の目標だが………マリーメイアちゃんの居場所を探す事にした。流石に長い間連絡を取れなかったのは不安だし、彼女が今何をしているのか気になるのが本音だ。
シュナイゼル? アイツは大丈夫だろ。ギュネイ君もアイツに関しては殆ど心配してなかったし、今頃はどっかの穴蔵で立て籠りZ-BLUEが暴れまわる日を虎視眈々と狙っているだろう。
マリーメイアちゃんにはブロッケンが付いている。奴に持たせた通信機は自分が作った特別製だ。それを使えば今すぐにでも彼女達の居場所を割り出す事が出来る。
そう思いブロッケンが持っている筈の通信機に回線を繋いだのだが………出てきたのは久し振りに聞いた老人の声。
自分に空手のノウハウを教えてくれた────ガモン先生の声だった。
◇
「ほう? ではシュウジ君、近々此方に来るのじゃな」
「みたいじゃのう。こんな小さな機械で此方の居場所が分かるとは、大したモノじゃのう最近の機械は」
とある喫茶店、嘗てサイデリアルの支配下に置かれたその地域で何事もなく談笑する一組の老若男女。二人の老人が感心する中、外で見張りをしているブロッケンは店の外で乱雑に撒き散らし鉄屑となった機動兵器を目の当たりにし、ガハハと笑う老人達を見る。
(し、シュウジ殿で充分馴れたつもりでいたのだが、いるにはいるのであるな、上と言うものが)
ブロッケンもシュウジに与えられた身体でそれなりに戦える自信はあった。条件付きではあったがこれ迄のマリーメイア達との旅の中で機動兵器を相手に戦った時もあるし、スコープドッグやアマルガムのAS程度ならある程度渡り合えていた。
だが、店の中で呑気に茶を啜っている老人達、あの二人は次元が違いすぎる。端から見ればただの爺にしか見えないのに、その中身はくろがね五人衆が可愛く見える程の化け物と来ている。これ程の怪物がこの地球に存在していた事に恐ろしく感じていたブロッケンは、大人しく見張りを続ける事にした。
「っと、イカンイカン。それで、どこまで話をしたかな? マリーちゃん」
「ふふふ、山奥で一人の若武者に出会った所ですわよガモンお爺様」
「おぉ、そうじゃったそうじゃった。あれはそう、再世戦争の終盤に差し掛かった頃じゃ。故郷が再び焼かれ、その際に通りすがりの親切な軍隊の人達に保護された儂達リモネシアの人間は、その後頃合いを見て再び故郷へと舞い戻った」
「家は燃え、住む家が無くとも何とかなると息巻いておったが、肝心な資材がないと家が建てられん。そう思った儂は他所から貰えないかと考え、外の国へ足を伸ばしたのじゃ」
「その時じゃ、良い感じの木が育っている山、その奥では剣を奮って汗を流す一人の若者がおったのじゃ。若者は筋が良く、鍛えれば光る才能の持ち主だったから一月ほど指南してやったのじゃよ」
「お前さん、得物を使うのは苦手じゃなかったか?」
「そうなんじゃよ。けれど面白いことにあの若者、儂の動きを剣の動作に取り込んだのじゃ。いやー、天才とはああいうのを言うんじゃの。シュウジに続き彼処まで才を持つ者がいたとは。ゼクなんとかと言う部隊にいた者達もそうじゃが、才能ある若者が多くて年寄りとしては嬉しい限りじゃい」
その後も続く老人達の談笑、その途中何処か引っ掛かる話に眉を寄せたレディは恐る恐るガモンに質問をした。
「あの、それでその山奥にいた若者と言うのは?」
「あー、そう言えば聞いてなかったのぅ。あの一ヶ月はあの若者がどれだけ伸びるかそればっかり気にしてたから……」
「ガモちゃんそう言う所あるよねー」
「大ちゃんも人のこと言えんじゃろー」
「えー?」
途端に現代っ子風に話し出す老人二人、その様子を見てまさかなと額にうっすらと汗を流しながらレディ=アンは温くなったコーヒーを呑み込んだ。
一番華奢でかの魔人が危惧していた少女マリーメイア、現在彼女は世界一安全に旅を満喫していた。
皆さん、お正月は如何お過ごしでした?
自分は新年早々爆死祭りで踏んだり蹴ったりな日々でした。
それでは次回もまた見てボッチノシ