シャアルート BEYOND THE DIMENSION
シンジルート 閉じた世界
インサラウムルート 永遠の聖王国
とそれぞれ別の世界、別の時間軸をそれぞれ体験しております。
ですので、主人公には一切の援護がありません。
その辺りを留意して下さると嬉しいです。
─────言いたいことがあった。伝えたい事があった。自分が向こう側の世界で体験した事、包み隠さず話したいと、何度も………何度も思った。
嘘と呼ばれようと、呆れられようと、君と何度も話したいと思った。もし君と会えたら、これ迄の出来事を話そうと、何度も夢見てきた。
─────なのに。
「ちょっとー? 聞いてるー? 何とか言いなさいよー」
────君が目の前にいるのに、俺は何一つ言葉を口に出すことが出来なかった。
もう会えないと思っていた。諦めかけていた。目の前の女の子に、もう二度と会えないのではないかと、本気で思い込んできた。だからなのだろうか、あれだけ考えていた言葉の数が一瞬にして頭から消え去ってしまっていた。でも、それはきっと仕方のない事なのだと思う。
────だって。
「あー、うん。この髪は………そうだね。イメチェンって事にしておいてくれないかな?」
「はぁ? 相変わらずハッキリしない奴ねぇ。まぁ、そんな事はどうでもいいわ。時間があるならちょっと付き合いなさいよ。………良いわよね?」
「あぁ、勿論だとも」
君を前にして俺は嬉しさで胸が一杯だったのだから。
◇
「へぇ、ここの公園まだ残ってたんだ」
それから俺は二人きりで話がしたいというにこちゃんの誘いを受けた俺は彼女と一緒に落ち着ける場所を探す為に街を少し歩いた。にこちゃんからすれば当たり障りの無い散歩、けれど俺にとっては永い間帰ってこれなかった故郷の凱旋。街の一つ一つがにこちゃんにとっての当たり前で、一つ一つが俺にとっては眩しいモノに映っていた。
そして、俺達はそこへ辿り着いた。俺とにこちゃんが初めて出逢えた場所、今は誰も使っていない寂れた公園。俺にとって最も古い記憶の詰まった思い出の場所だ。
錆び付いた滑り台、落ち葉の溜まった砂場、ブランコもボロボロで、鉄棒に至っては棒の部分が無くなっている。
酷い有り様だ。こんなになるくらいならさっさと撤去すればいいのに─────なんて思う反面、残っていた公園に俺は正直嬉しく思った。
あの頃から比べ酷く狭く感じるのは俺がでかくなったからだろうか。あの頃から少しは成長出来ているだろうか。そんな事を思いながら俺は公園の片隅にあるベンチに向かう。埃と汚れにまみれた石のベンチ、それらを手で払い予め家から持ってきたハンカチを敷いて、その上に彼女を座らせるよう促した。
「さて、お待たせにこちゃん」
「相変わらず準備良いわねアンタ、なに? 私の思考読めてんの?」
「そんな事はないけど………まぁ、にこちゃんが分かりやすいのは否定しないかな」
「うっさい」
俺の余計な一言ににこちゃんは軽く小突いてくる。こんなやり取りですら俺の涙腺を刺激してくるから困る。にこちゃんとの話はこれからだというのに、これではそれどころじゃなくなってしまう。
目頭を抑えて必死に堪えようとする。そんな時だ、俺の視界の端に小さい小包が顔を覗かせて来た。
「────はい、これあんたの誕生日プレゼント。まだ少し早いけど、これから私スクールアイドルの方で忙しくなるし、タイミング合わなくなるかもだから」
横を見ればそっぽを向いて此方を見ようとしないにこちゃん。差し出された小包は丁寧に梱包されており、開け口の所には綺麗なリボンが巻かれている。少々女の子向けのラッピングだがその節々には不恰好さが滲み出ている。恐らくはこれもにこちゃん本人がやってくれた事なのだろう。
「───ありがとう。にこちゃん」
「べ、別にあんたの為とかじゃないから。友達の少ないアンタの事だから仕方なく見繕って上げただけ、哀れに思ったあんたへのアタシからの贈り物、ただそれだけだから、勘違いしないでよね!」
「テンプレ乙」
「うっさいバカ!」
こんなやり取りもいつ以来だろう? 自分が大学へ入学し、にこちゃんが高校に進学した頃からだろうか。あの頃は互いに忙しい時期が重なっていたから登下校の時間帯以外では禄に顔を合わせていなかったっけ。
我ながら薄情な事をしたものだ。あの頃のにこちゃんはスクールアイドルで頑張ろうと必死だったのに自分はそれを影ながら応援するだけ、もっと具体的な支えになりたかったのに当時の自分は大学での生活とバイトにばかりかまけていたっけ。
だからこそμ'sというチームとそのメンバーに恵まれた事を心から嬉しく思えた。彼女の夢と同じくする娘達、それまでの間ずっと一人で頑張っていたにこちゃんと一緒になって頑張ってくれる女の子達、いつか会ってお礼を言いたいな。
時期……と言えば俺の誕生日ってこの世界ではもうすぐだったのか、と今更ながら思う。彼方にいたときはまだ数ヶ月先だった筈なのに此方ではあと数日となっている。
………まぁ、理とやらを越えて世界を移動するというのだからその辺りの細かな調整は難しいのだろう。少しばかりの思案、自分の考えに耽っている顔を心配そうに覗き込んでくるにこちゃんに俺は笑みを浮かべて応えた。
「ごめん、ちょっと考えごとをしていた。にこちゃん、さっそくこれ開けても良い?」
「え!? あ、うん。いいけど………あまり期待しないでよね」
遠慮がちににこちゃんはそう言うが幼馴染の女の子、それもスクールアイドルの一人から直々に誕生日プレゼントが渡されるのだ。その事実だけで充分な程に嬉しいし、それだけで価値がある。プレゼントの中身など実際は二の次なのだ。
とは言え、自分の為に悩みに悩んで用意してくれたプレゼント、それがどの様なモノであれ真剣に受け止めるべきだろう。
期待に胸を膨らませながらラッピングを解き、小包を開封する。何処か覚えのある手触りに何だろうとワクワクしながら取り出した俺の視界に映ったのは………。
(─────は?)
何故? と疑問が浮かんだ。どうして? と混乱で頭が一杯になった。そんな筈はないとどんなに否定しても事実は変わらず、俺の手にあるにこちゃんからのプレゼントは確りとした感触で自分の手の中に収められている。
それは─────手帳だった。
馴染み深いのも当然だった。触った感触に覚があるのも当然だった。何故ならそれは向こう側の世界に跳ばされてから肌身離さず持ち歩いていた………俺の日記帳と全く同じモノだったのだから。
(なんで? なんでこれがここに? あれ?)
不思議に思いながら懐に手を入れてソレの在り処を確める。…………あった。確かに日記帳は自分の懐に変わりなく其処にあった。
偶々にこちゃんのプレゼントが自分の所有物と被った? いや、それは有り得ない。だって自分はあの時初めて彼女に自分が欲しいものを訊ねて何となく口にしただけで、その瞬間まで手帳なんて発想自体頭に無かったのだ。
─────そもそもの話、自分は一体この日記帳を何処で手に入れたのか
心臓の鼓動が速くなる。脳裏に浮かんだ一つの仮説が真実ではないかと俺の心を締め上げる。嘘だ。そんな筈はない、そんな事あってたまるか。
だけど、どんなに否定したくても考えれば考えるほどにその仮説は真実味を帯びていって────。
「ちょっと修司、修司ってば!」
「っ!?」
「ちょっとどうしたのよ急に黙り込んじゃって、顔色も悪いし、アンタ本当に大丈夫なの?」
「あぁ、うん。ちょっと疲れちゃっただけだから、ゴメンねにこちゃん、折角誕生日プレゼントなのに禄に返事も返さなくて」
「別に良いわよそんな事、………ねぇ、本当に大丈夫なの? 顔色悪いって言ったけど実際酷い顔してるわよ今のアンタ、今日は無理しないで家で体休めたら?」
「うん、そうだね。そうするよ。ありがとうにこちゃん」
にこちゃんの気遣いも、心配の言葉も今の自分の頭には何も入ってこない。これではダメだと分かっているのに、今はマトモに彼女の顔も見れやしない。彼女の言葉の一つ一つに自分の体が拒否してくる様で……。
『────今の貴方は厳密に言えば白河修司ではない』
今はもう、彼女の顔も満足に見えない。
“ウフフフフ、アハハハハハ、見付けましたわ。見付けましたわ。愛しの君”
「っ!!?」
眼前に現れるのは………影。ゆらゆらと蠢き、輪郭もぼやけて今にも消えてしまいそうな陽炎。
そんな陽炎を前に俺の心臓は更に速くなる。最悪の状態で最悪の相手と遭遇────いや、最悪処じゃない。今の俺の状態では最悪を通り越して最早詰みでしかない。
“むぅ、やはりまだ壁を越える事は出来ませんか。大崩壊を間近に控えているからもしやと思いましたけど………中々上手く事は進まないものですね”
「なに……あれ? 人?」
どうしてこんな所に、なんて考えても今は意味はない。俺が来れたのだ。だったらコイツもここへ現れるのは当然な事なのかもしれない。それになにより、今重要なのは其処ではない。
“しかし、それでもこれを此処へ送る事には成功しました。さぁ、来なさい────ヘリオース”
空間が悲鳴を挙げる。陽炎の背後の風景が揺らめき、ガラス張りのケースの様に破れ、そこから現れるのはシュロウガもかくやと言わんばかりの………黒に染まりきった
「な、何よ……これ? 映画の撮影? ドッキリ?」
振り上げる巨人の拳、常識外れの光景、これらを前にただの女の子でしかないにこちゃんが咄嗟に動ける筈もなく。
“さぁ、愛させて下さい。貴方の渇望を、希望を、絶望を、その全てを、私に見せてください。私はその悉くを受け入れましょう”
「にこちゃん!!」
振り下ろされる巨人の拳、にこちゃんを抱き抱えて横に飛ぶことしか出来ない俺はその公園を守りきれる事など出来る筈もなく。
思い出の詰まった公園は巨人の一振りで何もかも消し飛んだ。
◇
「────あ、あれ?」
気付けば、自分は幼馴染の腕の中で抱えられていた。ゴツゴツしながらも暖かい腕、頭も腕も脚も、傷一つなくスッポリと彼に包まれている。
嬉しさと恥ずかしさで顔が赤くなる。しかし彼女の意識は次の瞬間現実に引き戻される。
舞い上がる砂塵、砕かれたコンクリート。周囲からは混乱の悲鳴と怒号で大騒ぎになり、遠くからはサイレンが鳴り響いてくる。
「───何よこれ、どうなっているのよ」
「にこちゃん、無事か? 怪我はない?」
混乱する彼女の耳に入ってくるのは幼馴染の彼の声だ。自分が知っている彼よりも幾分低くなっている彼の声色、その言葉に我を取り戻した彼女は不意に浮遊感を覚え、その場に丁寧に立たされる。
「う、うん私は大丈夫。………って、アンタ血が出てるじゃない!?」
「俺は大丈夫、この程度いつもの事だから」
「この程度って………」
額の一部を切ってダラダラと血を流れているのに意にも介さない彼ににこの不安は途端に大きくなる。どういう事なのか説明してもらおうにも、状況はそれを許さない。
「にこちゃん、アイツは俺が可能な限り引き付けるから、君はその間に家族の人達と一緒にここから逃げろ」
「はぁ!? な、なにバカな事を言ってるの!? 」
何もかもが現実とかけ離れていた。突如成長した幼馴染と巨大ロボットの襲来、端から聞けばB級映画の焼き回しの様な展開。使い古された、お約束の急展開、ドッキリか映画の撮影か何かと言われた方が余程信憑性のある………そんなお話。
しかし、血を流している幼馴染の姿がこれがリアルの………現実に起きている出来事だと知覚させる。
「頼む。アイツが俺に気付く前にどうか早く逃げてくれ」
「聞ける訳ないじゃない! アンタが何を気取っているのか知らないけど、あんなのがアンタの手に追える相手であるはずが無いじゃない! バカな事言ってないでさっさと逃げ───」
そうだ。事情がどうであれ、兎も角ここから離れるのが最優先だ。学校の事も、スクールアイドルの事も明日からの日常の事も今は考えるな。今はこの訳の分からない使命感に目覚めているバカな幼馴染を首根っこ捕まえてでも逃げるしかない。
そう手を伸ばそうとするが。
「いいから………行けぇぇっ!!」
返されたのは拒絶の反応。差し出した手は乱雑に弾かれ、邪魔だと言わんばかりににこの体を突き飛ばした。
「っ!?」
………衝撃は思ったほど強くはなかった。しかし、ソレ以上に幼馴染に拒絶された事と彼の見たこと無い表情と迫力に圧され、その目に涙を流しながらその場から立ち去っていった。
そんな彼女を見送ってシュウジは思う。またやってしまったと、これじゃあ初めて会った時と何も変わっていないではないかと。小さくなっていく幼馴染を見送って自己嫌悪をする。しかし、今の彼には後悔の時間すら許されない。
“勇ましいですね。浅ましいですね。想い人を拒絶しておきながらも貴方は彼女に執心されている。あぁでも、そんな初心な感情も何て甘美なことか。────私、ゾクゾクしてしまいます”
「うるせぇよ。ここはお前なんかがいて良い
グランゾンは………出せない。出すことが出来ない。どんなにワームホールを開こうとしてもその様子は微塵とも現れない。これも理の壁に阻まれている影響か、何れにしてもシュウジの取るべき行動は一つしかない。
ヘリオースを、目の前の黒い巨人を己の肉体一つでどうにかしなければならない。曾て無い状況にシュウジは拳を握り締めて構えるのだった。
ヨハネ「くっくっく、さぁ、遂にラグナログの時が来たわ! リトルデーモン達よ、私の下に集いなさい!」
ゲッペラー&ZERO&ゼログラ「はーい!」
その他スーパーでアーパーなロボット軍団「来たよー」
よしこ「」
次回、Re,START:DASH!! 中編
それでは次回もまたみてボッチノシ