『G』の日記   作:アゴン

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喩え全てが消えたとしても、残っていたものは確かにあった。


その191

 

 

──────最初は単なる好奇心だったのかもしれない。いつも優しそうなお婆さんと一緒にいて、ニコニコと笑みを浮かべている。何がそんなに嬉しいのかと問い詰めたくなる位いつも笑っていて、彼のお婆さんもニコニコとやはり笑顔を浮かべていた。手を引かれて歩いていく二人、そんな日常のごく一部に過ぎない光景を私はマンションの自宅の窓からいつも見掛けていた。

 

そんなある日、彼一人で公園に向かう所を見掛けた私は気になって後を付けていった。いつも一緒にいるお婆さんはどうしたのだろう、暗い表情でいつも笑顔を浮かべていた子とは全く別人の様に沈んでいた彼がどうしても気になってしまった。

 

公園に辿り着いた彼がしていたのはブランコやベンチに座るだけでなにもせず、暗くなるまでジッと其処にいた。まるで誰かの迎えを待っているかの様に……。あの辛そうにしているアイツの顔は今でも良く覚えている。

 

後で母から聞いた話だと、彼といつも一緒にいたお婆さんは病で亡くなったらしく、以来ずっと彼はあの調子で公園に向かっては祖母が迎えに来るのを待っているみたいなのだ。二度と帰ってくる事はない祖母を、もう会えないであろう祖母の迎えを、彼は今も待ち続けているのだ。

 

同情はした。気の毒だと、可哀想だと、当時まだ四つになったばかりの私では漠然とそう思う事しか出来なかった。可哀想だから、あの子はお婆さんを失ったばかりで気持ちの整理が付いていないから、話を聞いた父と母はそんな事を言っていたが、私の胸中は別の感情で埋め尽くされていた。

 

悔しい。何故アイツは笑っていないのか、いつもニコニコと笑顔を浮かべているアイツが、どうしてあんな悲しい表情で下を向いているのか。両親から話を聞かされたのに、それなのに私はそんな気持ちで一杯だった。

 

翌日、私は依然としてお婆さんを待ち続けるアイツに声を掛けた。下を向いて泣くのを我慢している彼に、私は可能な限り親しげに言葉を投げ掛けた。

 

『何だよお前、余計なお世話だ。ほっとけよ』

 

返ってきたのは唸るような声と共に投げ返してきた拒絶の一言だった。当時の彼にとってこの時の私は祖母の帰りを邪魔する障害物にしか見えていなかったのだろう。幼稚園児とは思えない凄みと迫力に負けた私は下腹部から滴る暖かい液体を少しだけ漏らしてしまい、そそくさと逃げ帰ってしまった。

 

しかし当時から負けん気が強かった私は一度の失敗で折れる程素直ではなく、その日以降もしつこく彼の所へ歩み寄っていった。どれだけ拒絶されても、どんなに酷いことを言われても、私はもう一度彼の笑顔が見たくて何度も声を掛けた。

 

それでも一向に笑顔を見せない彼に遂に行き詰まりを感じていた私は、その日テレビに映る歌手の人、アイドルという存在に出会えた。煌びやかで鮮やかに踊り、可憐な歌声で人々を魅了し、熱狂させるアイドル。これならきっとアイツにも届くのではないか、笑うことを忘れた彼に再び笑顔を取り戻せるのではないか。

 

自分なりの振り付けを考えて歌詞を作り、それらを覚えた私がもう一度アイツの前に現れたのは最後に追い払われてから少し日を跨いだ数日後、この日は雪が降る寒い夜だった。

 

私は歌った。初めて人の前で、初めて自分の作った曲で。拙く、滑稽に、それでも真剣に、そして何よりも楽しく、私は彼の前で歌い続けた。

 

しかし所詮は子供の浅知恵、振り付けもバラバラで呼吸も荒く、子供のお遊戯でももう少しマトモなモノを作れそうな────そんな酷い出来ばえだった私の歌を彼は綺麗だと言って、笑顔を見せてくれた。

 

────その後、私と彼の関係は続いた。幼馴染みとして、友人として、彼の隣はいつの間にか私の定位置となっていた。妹弟達の面倒を一緒に見て、彼のご両親とも仲良くなって、ずっとこんな関係が続くと思っていた。

 

…………ねぇ、シュウジ。アンタは今幸せ? いつもみたいに笑えている? 私には、そうは見えない。

 

だから、一人にさせない。アンタが泣きそうになったら私はいつでもアンタの所に飛んでいく。だって、私にとってアンタは─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニコちゃん………」

 

肩で息をして、疲労困憊となっている幼馴染みを見て、シュウジは表情を曇らせる。開きかけていたワームホールを消して向き直った彼は歯を喰い縛って彼女に言葉を投げ掛けた。

 

「───怪我、していない?」

 

「お陰様でね。明日は筋肉痛確実だけど」

 

荒くなっていた息を漸く整え、強がる彼女を見てシュウジは苦笑いを浮かべた。

 

「それで、アンタ今何をしようと………いえ、何処に行こうとしていたの?」

 

「…………それは」

 

「答えて」

 

それは珍しく妥協を許さない彼女の強制の言葉だった。誤魔化す事は許さない。嘘も偽りも無く全てを話せと彼女の瞳が訴えてくる。話を逸らす事も許さないだろう矢澤にこの姿勢を前にシュウジは深いため息を吐いた。

 

街がこうなったのは自分にも責任はある。街に住む人々にも、そして目の前の幼馴染みにも沢山の迷惑を被ってしまった。目の前の彼女が話せと言っている以上、全て話す必要があるのだろう。

シュウジは全てを口にした。自分がこれ迄何をしていたのか、自分が何者で、何の為にこの世界にやって来たのか、そして自分がこれから何をしようとしているのか、掻い摘みながらもシュウジは事の全てを彼女に話した。

 

彼女は………幼馴染みの少女は静かにそれを聞き入っていた。最初から最後までただシュウジの話を耳にしていた。顔を俯かせているから表情は見えない、怒っているのか、悲しんでいるのか、人の身でしかないシュウジには分からない。

 

しかし、予感はあった。彼女なら、きっと矢澤にこなら、こんな時きっと自分が予想しない事を言い出すのだと。シンカの力とか次元力とか、そう言ったモノではなく、白河修司として彼女と長い間培ってきた直感がそう囁いていた。

 

「分かったわ。なら、私も連れていきなさい」

 

やっぱり。顔を上げてキッパリとそう言い切る幼馴染みにシュウジは思わず吹き出しそうになる。嗚呼、やはりこの娘は自分の知る矢澤にこなのだと、シュウジは笑みが溢れた。

 

「言っておくけど、私、本気だからね。喩えアンタがイヤだと言っても引っ付いて行くんだから」

 

知っている。目の前の幼馴染みが本気になった時はとことんしつこくなる。どんなに拒絶されても、どれだけ酷く扱われても、彼女は目的の為にどんなことにも耐えて頑張れる女の子なのだ。そんな事はあの日からずっと思い知っている。

 

自分と一緒に来たら二度と家族には会えない。両親や妹弟、スクールアイドルの皆、夢に向かってこれまで努力してきた毎日、それら全てが消えてなくなる。それを知って尚、彼女は自分と一緒に来ると言っているのだ。

 

彼女が一緒にいてくれればどれだけ心強いだろう。きっと、これからどんな苦難に陥っても彼女がいれば乗り越えられる気がする。耐えて行ける気がする。

 

きっと誰よりも強くなれる気がする。彼女の言葉を、声を、それらを耳にするだけで自分は何度も限界を超えられる気がする。

 

────でも。

 

「なぁにこちゃん、覚えてる? 君が初めて歌を披露した時の事」

 

「覚えているわよ。────忘れられる訳ないじゃない」

 

「あの頃は随分と君に酷い仕打ちをしたよね。遊びに誘ってくれた君を何度も何度も断って、今更許される事じゃないけど────ごめん」

 

「それこそ今更よ。アンタは私のファン1号で、アタシはアンタのアイドルなんだから」

 

嘗て酷く当たり散らした事を過去の事だと笑い飛ばすにこちゃん、そんな彼女に自分は何度も救われた。だからこそ。

 

「なぁにこちゃん。一つ約束しよう」

 

「約束?」

 

「これから先、どれだけ時間が掛かろうと必ず君の歌をもう一度聞きに来るよ。君に会いに、君の歌声を聴く為に、絶対戻ってくる。だから────夢を、諦めないで欲しい」

 

彼女は連れては行けない。彼女の意志がどれだけ強く、固いモノだとしても、夢を諦める(・・・・・)矢澤にこだけは見たくはない。自分と言う人間を理由に夢を投げ出す彼女をシュウジは見たくはなかった。

 

スクールアイドル、その頂点に立って更にはトップアイドルにも君臨する。矢澤にこの初めて抱いた夢、その情景をシュウジは見たいと思った。

 

幼馴染みの小さな体が震える。さっきよりも強く、手を拳に変えて握り締める彼女にシュウジは申し訳なく思った。

 

故に、だからこそシュウジは彼女を約束という形で引き剥がそうとする。それが絶対に叶わない偽りの約束だとしても。

 

「なによ………それ、そんなの、そんな言い方、狡いじゃない」

 

「………ごめん」

 

「アンタはそれでいいの? ボロボロになって、死にそうになって、今も傷だらけなのに………イヤよ。私は、アンタが私の知らない所で怪我するなんて、見たくない」

 

「俺は平気だよ。向こうで鍛えられたからさ、怪我だってすぐに治るし、そうそう簡単にやられたりは」

 

「そう言う事じゃないでしょ!!」

 

「───っ」

 

「平気な訳が無いじゃない。幼馴染みが───好きな人が、ボロボロになっているのに、平気でいられるわけないでしょう」

 

それは、初めて彼女の流す涙だった。本気で怒って本気で悲しむ、自分の為に涙を流す優しい少女が其処にいた。

 

嗚呼、そうか。漸く分かった。自分がどうして彼女に執着しているのか、どうして頑なに連れていきたくないと思っているのか。

 

彼女は自分に取っての恩人で、大切な人で、立ち上がる力をくれた人、優しくておっちょこちょいで、お調子者で、夢に向かって何処までも一生懸命な彼女。

 

そんな矢澤にこに自分は、白河修司(シュウジ=シラカワ)は─────恋をしているのだ。

 

やはり、自分は情けない。自覚した途端別れが惜しくなった。胸が苦しくなって、張り裂けそうで、今にも大泣きしてしまいそうだ。

 

そんな自分の胸中を埋めるようにシュウジはにこを抱き締めた。

 

「────っ」

 

抵抗は無かった。突然の抱擁に硬直するが、震えているシュウジの体に気付いた彼女は彼の大きくなった背中に手を回し、優しくシュウジを包み込んだ。

 

それは短い抱擁だった。一分も満たない僅かな時間、シュウジからしてきた抱擁はやはりシュウジから離れていった。その事を名残惜しく思いながらも、穏やかな表情を浮かべている彼にニコはもう何も言えなくなった。

 

「ニコちゃん」

 

「うん」

 

「俺を────頼む。知っての通り情けない奴だから、悪いんだけど面倒を見てやってくれないか」

 

「シュウジ………うん、分かってる。私、頑張るよ アイツが幸せになるように、アイツが誰かを幸せに出来るように、私も絶対に頑張るから────だから!」

 

「アンタも、自分の幸せを掴みなさい! 使命とか、他の誰かの望みとか関係なしに、アンタ自身の幸せを手にいれなさい!!」

 

涙を流して、それでも笑顔を張り続ける幼馴染み。きっとこれが最後の別れになる。それを理解した上で尚シュウジの為に何かを残してやろうと懸命に言葉を探している。

 

嗚呼、やっぱり自分はこの人に恋をしているのだと、改めて自覚したシュウジは彼女の額に指を置いた。

 

トンっ。軽く、優しい接触。すると途端に彼女の瞼は重くなっていく。これ迄の緊張と疲労、意識を繋ぎ止めていた唯一の糸を断ち切られた矢澤ニコが最後に目にしたのは。

 

「ありがとうニコちゃん。俺も、これからも頑張っていくからさ」

 

優しく頬笑む幼馴染みの心からの笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

意識を絶たれ、眠りについた幼馴染みを抱き抱えてシュウジは辺りを見渡す。サクリファイの所為で唯でさえ酷い有り様だった公園が見るも無惨な事になっている。そんな中、唯一無傷だった石造りのベンチを見付けたシュウジは彼女を其処に寝かせた。

 

「────こんな形で別れるのは気が引けるけど、良いよなトレーズさん」

 

時期的には暖かいが夜になればその限りではない。夜風に晒されて彼女が風邪を引くことを恐れたシュウジは親友から受け取った白のコートを彼女の体へソッと被せた。────これで、本当におしまい。

 

名残惜しさはある。悔いはある。辛いし苦しいし、正直声を出して泣き叫びたい気分だ。

 

しかし、それ以上の────答えを得た。自分なりの、幼稚で浅ましい願いだが、それでも一つ目的が出来た。

 

好きな人がいる。好きな人が一生懸命に生きていく世界を、好きな人が夢を叶える世界を守ってやりたい。後悔も苦しみも辛さもあるが、それを飲み干して前に進む力をシュウジは得た。

 

嘗て、この公園でシュウジは立ち上がる力を得た。どんな困難にも、逆境にも耐え抜き、頑張り続けるという力を得た。

 

それは、人から見れば呪いにも近いモノに見えるかもしれない。折れて逃げて妥協するのも生き延びる一つの手段、それは決して侮蔑したり軽蔑の対象にはなり得ない。

 

しかし、それでもシュウジは彼女の歌に希望を見出だしていた。彼女の歌をもう一度聴きたいから、それだけの理由でもシュウジは頑張り続けると決めた。

 

シュウジにとって矢澤にこは原点(オリジン)だった。自身の始まりで、切っ掛けで、そして────恋をした人。

 

そう、あの日シュウジは恋をした。雪降るあの夜から白河修司(シュウジ=シラカワ)は矢澤にこに恋をしている。

 

自分の恋は自分で守る。彼女が言ったその当たり前を守るために。

 

「────行ってきます」

 

世界に孔を開け、シュウジはこの世界から旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『────バカな子』

 

「────」

 

『あのまま幸せを受け入れておけば良いのに、ワザワザ自分から手放すなんて、お陰で私の決断が無駄になったじゃない』

 

「───ありがとう。お婆ちゃん、お婆ちゃんのお陰で俺、幸せだったよ」

 

『小僧が生意気言うんじゃない。───約束したんでしょう? 幼馴染みのあの娘と、だったら分かってるわよね?』

 

「うん」

 

『なら、私から言えるのは一つだけ────イキナサイ。他の誰でもない、あなた自身の願いの為に』

 

「あぁ、行ってくるよ。フィーネお婆ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───うぁぁぁぁ、よく寝た」

 

大きな欠伸と共に起き上がり、携帯の時刻を見る。何だか長い間眠っていた気がするが、それでも予定より早く起きれた事に少し驚いた青年は枕元にあるモノに気付く。

 

「───なんだこれ、手帳?」

 

それは随分使い古された手帳だった。表紙はボロボロで今にも破れてしまいそうな程に使われた跡のある手帳、こんなもの持っていただろうか? 不思議に思った青年は興味本位で手帳を開くと。

 

「なんだこれ、何にも書かれていない」

 

ボロボロの表紙とは裏腹に中身は真っ白だった。新品同様、文字は愚か染み一つない綺麗な状態となっている手帳の中身、表紙とは正反対の手帳に不思議に思う青年だが、何故かその手帳を捨てようとは思えなかった。

 

何故か、とても大事に思えるその手帳を懐にしまい、青年は外出の準備を始める。たまにはバイト前に外を回るのも悪くない。バイトの目標金額まであと僅か、青年は────白河修司は逸る気持ちを抑えながら自室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「─────ちゃん、ニコちゃん!」

 

「あ、うぅん?」

 

「ニコちゃん!」

 

「はえ!?」

 

突然耳元で響く大声に少女は慌てて起き上がった。何で自分はこんな所で寝ているのか、辺りを見渡すと自分を心配した様子で見つめる八人少女たちがいた。何れも同じチームのスクールアイドルとして活躍する仲間たち、どうして彼女達が此処にいるのかと混乱する頭で少女が───矢澤にこが訊ねると。

 

「ここ、絵里ちゃんの家の通り道だからさ、ここで見掛けた絵里ちゃんが寝ているニコちゃんを見付けて」

 

「中々起きないからビックリしたわよ。このまま起きなかったらマキのお父さんの病院に運ぶつもりだったんだから……」

 

「そうだったの、なんか………悪いわね」

 

「に、ニコちゃんが!」

 

「素直に謝った!?」

 

「明日は槍が降るにゃ~!」

 

「どういう意味よ!?」

 

自分の無事を知るとなると途端にいつもの調子でからかってくるメンバー達、色々とあったけど今はこのメンバーとスクールアイドルをやるのが楽しくて仕方ないニコにとってそれはとても嬉しい事だった。

 

───なのに。

 

「ニコちゃん?」

 

「どうかしたの?」

 

何故だろう。どうして自分は何かを探そうとしているのだろう? 何か大事な事があった筈なのに、それが何なのかまるで思い出せない。

 

いつも通りの街並み、いつも通りの光景、遠くから聞こえてくる人の営みの音、何もかもがいつも通り(・・・・・・・・・・・)なのに何故か今の矢澤にこには違う光景に思えてしまう。

 

何故か、大事なモノを見落としている気がする。そんなとき、公園の出入り口から見慣れた一人の青年が通り掛かってきた。

 

「はぁー、この公園まだあったんだぁ。何だか懐かしい────あれ? ニコちゃん? それに其処にいるのはμ'sの皆さん? どしたのこんな所で?」

 

瞬間、少女は掛けられていたコートを友人の一人に投げ渡し、青年へと駆け出した。突然胸元へと突撃してくる幼馴染みに驚きながら受け止めた青年は慌てながら彼女にどうしたのかと問うた。

 

「ど、どうしたんだよニコちゃん、いきなりタックルなんて、俺に何か────」

 

「う、あ、あぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「に、ニコちゃん!?」

 

「ちょ、アンタ!! ニコちゃんに何したのよ!?」

 

「ヴェェイ!?」

 

いきなり突撃してきたかと思えば今度は声を上げて泣き出した幼馴染みに青年は勿論少女達も驚愕した。

 

───何故、自分は泣いているのだろう。どうしてこんなにも心が苦しいのだろう。

 

分からない。どんなに必死に思い返そうとしても、その一切が分からない。この気持ちを吐き出せば、沢山の涙を流せば少しはこの気持ちは晴れるのだろうか?

 

声を張り上げて泣き続けるニコ、そんな彼女を修司は頭を撫でて優しく受け入れ続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────なぁ、俺、これで良かったのかな」

 

その問い掛けは誰に対してのものなのか。

 

「俺、間違えてなかったかな。ニコちゃんを、悲しませたりしなかったかな」

 

視界が滲んでよく見えない。声が掠れて上手く言葉がでない。

 

「───俺、頑張るから、また、明日から頑張るからさ。だからさ………今は、泣いても良いよな。グランゾン」

 

コックピット内で男の泣き声が響き渡る。誰にも聞かれず、聞こえる事のないそれは彼が泣き疲れるまで続いた。

 

そんな相棒を今は好きなだけ泣かせてやろう。彼の相棒である蒼き重力の魔神は静かに目の前に広がる二つの地球を見据えていた。

 

 

 

 

 

 




LOST→友の形見

NEW!→Gの日記

強化パーツ“Gの日記”

出撃時に気力が150になり、ステータス及び気力に上限が無くなり、毎ターンそれぞれ20%上昇し続ける。

毎ターン精神コマンド“愛”が発動する。

また、このパーツはシュウジ専用である。


実はボッチにとってのハッピーエンドは第三弾までの異世界漂流日記だったりする。

それでは次回もまた見てボッチノシ


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