ダリフラ面白くて辛い。
ボッチ介入させたい。
───シュウジ=シラカワの朝は早い。
朝、地球の時間で午前4時の時間。実際の地上では空が白み初めて日の光が昇り始める頃、マクロス・クォーターの割り振り当てられた一室にて彼は目を覚ます。
この世界に来てから朝早く目を覚ます習慣を身に付けた彼に最早眠気という概念は無く、目を開けてから数秒には生身で全力戦闘を可能にするほどの覚醒が肉体に行われている。仮に眠っている所を襲おうとしても度重なる戦闘経験により条件反射で眠ったままでも迎撃してしまうだろう。
眠っている所へ反応弾を叩き込んでも次の瞬間にはワームスマッシャーで串刺しにされてしまう。そんな怪物を通り越しておっかないナマモノと化したシュウジの始まりは格納庫での自己鍛練から始まる。
事前に用意していた鍛練用の肌着に着替え、日課にしていたトレーニングを行う。マクロス・クォーターには簡易ながらも専用のトレーニング室があるが、本格的に鍛練するには少し狭いし集中するなら誰もいない時の格納庫が一番良い。
護身術(自称)の師であるガモンから教わった空手の型をそれぞれ百回ずつ体に刷り込む様に丁寧に繰り返していく。以前一度だけ1日一万回感謝の正拳突きもやった事あるが、音を置き去りにしても背後に仏像様が出ない事があってから酷く裏切られた気持ちになった為以降は一度も試していない。
そして日課の鍛練を終え、シャワー室で汗を流した後シュウジの次なる行動は厨房での料理である。
本来、手料理を振る舞うのはZ-BLUEに於いて戦う力の無いもの、所謂生活班の面々が担当しているが、シュウジは半分趣味の為に関係なく顔を出してその手腕を振るっている。
パイロット達の栄養面のバランスやカロリーを考え、それでいて食事を楽しませる工夫も怠らない事からZ-BLUEに所属する多くの人間は彼の作る料理に胃袋を鷲掴みにされている。
「やぁ、シュウジ。今日も精が出るね、僕に焼き魚定食くれないかな」
「骨でも齧ってろ」
ニコニコ顔で朝飯を集りに来るアサキム=ドーウィン、本来ならZ-BLUEにとって許されざる存在な訳なのだが、シュウジが彼の願いを叶えるという形で現在はZ-BLUEの食客という扱いとして部隊に身を寄せている。
幾ら自身の願いが叶うからとはいえこうも従順になるものなのか、同じくスフィアリアクターとしてアサキムに狙われる立場だったクロウが油断なく身構えながら訊ねて見たところ───。
『僕の願いは必ず叶えられるからね。今の彼ならば片手間で出来る事だし、彼がその気になるまで暇だからその時が来るまで大人しくしてるよ。───しかし驚いたな、まさか単独であの域にまで踏み込む人間がこの世にいたなんて、流石はシュウ=シラカワの切り札って事か、彼ならば“門”が無くとも世界を渡れるかもね』
と、最後はいつも通り意味深で良く分からない事を口にしていたが、取り敢えずもうZ-BLUEに敵対しない事は確約されたので一部の人間以外彼を必要以上に警戒する事はなくなった。
その一部の人間も普段から無防備で艦内を歩くアサキムに毒気を抜かれてしまい、殺してもすぐに復活してしまう事から今では殆ど自分から彼に関わろうとはしていない。
「ねぇレド君、君の持ってる銃でコイツの脳天撃ち抜いてくれないかな?」
「え? え?」
「ちょっとシュウジさん! アサキムさんとのいざこざにレドを巻き込まないでよ!」
「いや、でもさ。コイツムカつくんだよ、前に何度も人の邪魔をするわ命は狙ってくるわでもう本っ当に最悪な奴なんだよ」
「それでも今はもう仲間なんだから、変に敵意を向けたら可哀想だよ。セツコさんや他の皆も気にしないようにしてるんだから、シュウジさんも分かってあげないと」
「むぅ、それもそうだけど………」
「まぁまぁ、アンタの気持ちも分からんでもないけど、ここは一つ大人として引いてあげなよ。てなわけでシュウジ、ここは豪快にビールを一つ」
「申し訳ないが朝っぱらからの飲酒はNGですよマオ姐さん。もうすぐ作戦近いんだから少しは自重しなさい」
「ぶー」
「…………なぁ宗助、アイツも一度は俺達と殺し合った癖に何でああも溶け込めてるんだ?」
「奴に関しては考えても無駄だクルツ、俺はもう諦めた」
「あ、チドリちゃんが親しげに声を掛けてる」
「ぐぬぅ」
そんな日常風景を描きながらシュウジの一日は過ぎていき午後、ここからはシュウジではなく蒼のカリスマとして時間を過ごして行く。
部隊の食料を始めとした資源の備蓄残量、部隊面々の身体や精神状態、他にも細かい問題点や改善策をまとめた報告も彼は欠かさず行っている。
「そう言うわけで、此方がまとめた資料になります」
「う、うむ。ご苦労」
「では、私はこれで」
ブリッジでオットー艦長に報告書を提出した蒼のカリスマは次なる報告をするためにワームホールで次の艦に転移する。目の前で起こる超常現象を前に未だ慣れる様子の無いオットーは額に汗を滲み出して渡された資料に視線を落とす。
丁寧に纏められた内容だ。分かりやすく目を軽く通しただけで頭に入ってくるから彼の手際の良さが伺える。もしこんな報告書が書ける人物が部下にいたら、部隊はもっと良くなるかもしれない。
尤も、その報告書を書いたのが世界最悪にして最強のテロリストというのがなんとも言えないが。ていうかなんでこんなことしてんのあの魔人は。
「オットー艦長、諦めて受け入れなさい。その方が楽ですよ」
「危ない宗教勧誘みたいに言うのやめてくれない?」
横に光を失った目でアハハと笑うギルター=ベローネ、ああはなりたくないとうんざりした様子でオットーは横にいる副官レイアム中佐に先の報告書を手渡した。
さて、そんな雑用を自ら引き受けながらも彼の一日はまだ続く。ある時はヒビキに誘われて組手を行った時。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
「踏み込みが甘いよ、ただ突っ込むなら猪でも出来る」
「ごっはぁぁぁぁっ!?」
「ヒビキの奴も懲りないなぁ」
「ていうかあの人、青く光るヒビキ相手に普通に勝ってるんだけど? あぁなった時のアイツって常人より何倍も速くなるんじゃなかったっけ?」
「そういやこの間普通にスピード負けてたの見たぞ」
「うっそだろおい」
因みにゲッターチームの竜馬とは敢えて組手をしてはいない。勝つか負けるかではなく、普通に怖いからやらないらしい。竜馬も竜馬で興味本意で仕掛ければ唯では済まないと本能で理解している為、今は様子を見ているだけにとどめている。
またある時はシミュレーターで。
「ふぅ、流石はアムロ大尉。易々と勝たせては貰えませんか」
「はぁ、はぁ、ま、まぁ、そう簡単には……ぜぇっ、負けないさ。はぁっ、はぁっ……うっぷ」
「可哀想にアムロ大尉、あの体力お化けに付き合うなんて」
「これで何度目だ?10回過ぎてから数えて無いんだけど」
「つーかシャア元総統はどこいった? あの人ならアムロ大尉とローテーションで相手出来るだろ」
「あの人なら通常の三倍の小走りで逃げてったぞ。別件があるっていいながら」
「その割には顔を青くしていたけどね」
「シャア大佐ェ」
「さて、もう一本お願いしますかね」
「ヒェ」
自分の我が儘に付き合ってくれる先輩パイロットに思う存分胸を借りたりして腕を磨きあったりして時間を有意義に過ごし。
また機体の整備点検の時も率先して手を貸すなど彼の一日は非常に充実した時間となっていた。
「………なんかマジンガーとゲッターの整備をしてると視線を感じるんだけど、気の所為かな?」
“そろそろこっち来てもええんやで?”
“まぁもう少し待ってやれ”
時折巨大な存在から視線を感じたりしているが、特に気にする事もなく作業を進めていく。
そして就寝時間は0時を過ぎ、漸くシュウジは眠りに就く。睡眠時間約四時間、Z-BLUEに入ってから休む間もなく働く彼、自分よりも部隊の為に働く彼に正面から文句を言える人間なんて殆どいない為、Z-BLUEの面々は色んな意味で頭を抱えることになる。
また、千鳥かなめやエイミーといった比較的シュウジとマトモに話せる人間はいるにはいるが、本人は今が楽しいから苦にはならないといって全く聞こうとしない。
「ファァァ、良く寝た。さて、今日も一日頑張るぞい」
そして今日もシュウジの華麗なる一日はこうして始まるのだった。
「止めたくても止められない。まさにボッチスパイラルだな」
「C.C.さん、いきなり出てきてそれは酷くない?」
◇
メガラニカ。工業コロニーであるインダストリアル7の構造物コロニービルダー、通称カタツムリと呼ばれるコロニーの建設を行っているその施設で一つの真実が露になった。
百年封じてきたラプラスの箱、その真実が明らかにされたとき仮面の男はそれを奪いに来る。
「箱を渡したまえ、ラプラスの箱の真実は私こそが、器になる者が扱うべきだ」
「っ! 危ない、オードリー!!」
「ダメ、バナージ!!」
向けられた銃口、引き絞られる引金、凶弾が二人を襲おうとした時。
「子供になに危ないモノ向けてるんだよ」
「ゴッペパ!?」
魔人の綺麗な右フックがフル=フロンタルの頬を撃ち抜いていく。
時は一時間前に遡る。
最近暑くて本当に辛い。
皆さんもマジで体には気を付けてください。
それでは次回もまた見てボッチノシ
PS.
うまぴょいこそ至高