PS.
映画コードギアス見てきました。C.C.さん可愛かったですね。
セントラルベース。ラース・バビロンへ続く最重要防衛拠点、地球をサイデリアルの魔の手から解放させる為にZ-BLUEはセントラルベースの防衛を任された幹部達……その補佐達を相手に奮闘していた。
『いやはや、これはしてやられましたな』
『まさか自分達を囮にして、かの魔人を陛下達の所へ送り届けるとは』
『へっ、生憎俺達は囮になったつもりはねぇよ!』
『皇帝アウストラリスには奴が相手をし、ギリギリまで体力を消耗していて貰う。お前達を倒し、ラース・バビロンに残る残存戦力を叩く事で、此方の勝利とさせて貰おう!』
漁夫の利。シュウジが皇帝アウストラリスと闘い勝利するか、或いは限界ギリギリまで体力を消耗させ、弱っている所を彼と合流して容赦なく叩く。
シュウジの提案に合わせてルルーシュ達が練り上げた今回の作戦。情けも容赦もない無慈悲とすら呼べる作戦だが、生憎自分達がしているのは戦争。一時の迷いや隙を晒してしまえば、立ち所に追い詰められるのはZ-BLUEの方だ。
より確実にサイデリアルに勝つ為に彼等は知恵を、知識を、叡知を活用していく。自分達が送り出せる最善の策、全てはサイデリアルという最大の侵略者を倒してこの戦争を終わらせる為に。
『成る程、お前達がこの闘いにどれだけ覚悟をしているのかは理解した。………しかし』
『貴方達の見通しは───甘い』
ダバラーンと尸刻、二人の口から告げられる言葉。Z-BLUEを見下しての言ではない、これ迄の闘いを経てサイデリアルにすら比肩する、今の彼らを見下せるほど二人は傲慢ではない。
そしてその事はZ-BLUEにも理解できた。だからこそ分からない、目の前の二人もあの魔人が自分達にとってどれだけ脅威なのか分かっているはず、真化を経て更にその果てへと至らんとする規格外の存在へとなりつつあるかの魔人を相手に、どうしてそこまで平静でいられるのか。
『なに、それは簡単な事ですよ。そんな彼を相手にして、それでも我等の皇帝陛下は揺るがない。ただそれだけの話です』
そんなZ-BLUEの気持ちに応える様にサルディアスが自嘲の笑みと共にその言葉を口にする。サイデリアルの幹部、その補佐でありながらサイデリアルの軍師としての側面を持つサルディアスの言葉にZ-BLUEの誰もがその真意を計りかねていると……。
『なんだい……これは?』
『どうした博士?』
サイデリアルとの決戦前にZ-BLUEと合流したトライア=スコート博士、彼女が生み出した【ソーラリアン】という次元力を応用した戦艦に搭乗している彼女の口から漏れたのは、彼女らしからぬ動揺と驚愕に満ちた声色だった。
『あんた達の親玉、皇帝アウストラリスは一体何に成ろうとしているんだい!?』
額に大粒の汗を滲ませてトライアは幹部の補佐達に震えた声で問い質す。その口調から尋常ならざる事態であることは何となく察したクロウ=ブルーストは、落ち着けと彼女を諭そうとするが。
『ラース・バビロンから強大な次元力の反応が計測不能レベルで膨れ上がっていく。このままだと地球にもう一つの宇宙が生まれるよ』
その言葉を聞いた瞬間理解できた者は数少なく、誰もが彼女の抽象的な言葉に首を傾げた。しかし、彼女と同じく理解した者達は顔面を蒼白させて震え出す。
『作戦変更だ。これより我らは強行を試みて敵陣を突破する。各員、誰でもいい、いち早くラース・バビロンへ進み皇帝を討て!』
『る、ルルーシュ?』
『急げ! 恐らく皇帝は既に二つのスフィアの力を掌握している! その力を以て奴はシュウジを殺すつもりだ!』
『成る程、そう言うことか』
バルビエルの死、そしてそのスフィアは既に皇帝アウストラリスが有している。もし彼がアサキム同様に複数のスフィアを御する事に成功していたら、生身で奴に挑んでいるシュウジに勝ち目は無くなる。
『いや、恐らくそれだけじゃない。……驚いたな、かの皇帝陛下はたった二つのスフィアでもうそこまで至ろうとしているのか』
『アサキム、何を言ってるの?』
『済まないが事情を説明している暇はない。急がなければ彼………シュウジ=シラカワは殺される。それは流石に僕も見逃せないな』
自分の望みが漸く果たせると思ったら、その願いを果たしてくれる相手が殺される。そんな結末は認められないと、アサキムはシュロウガと戦場を駆け抜ける。
『残念ですが、そうはさせませんよ』
しかし、当然の如く読んでいたサルディアスが更なる戦力を投入してZ-BLUEの前に立ち塞がる。凄まじい物量、これ程の戦力をまだ隠し持っていたのかとZ-BLUEは驚嘆するが、ルルーシュは必死とも呼べるサルディアスの策略に違和感を覚えた。
『まさか、これらの戦力は……!?』
『お察しの通り、ここセントラルベースにはラース・バビロンに配備される筈だったモノも含まれております。これも一対一を望む陛下からの厳命でしてね。事が終わるまであなた方にはここで釘付けになって戴きます』
笑みを携え足止めをすると高らかに宣言するサルディアスに、ルルーシュは表情を歪ませる。
『あぁ、強行突破の姿勢は間違いではないですよ。我々も後がないのでね、ここから先は策は無用。残る戦力全てを以て────』
『貴方達をここで足止めしよう。他ならぬ陛下の為に』
セントラルベースを覆う大軍勢。全ての戦力を以て足止めに掛かるサイデリアルに、Z-BLUEもまた乾坤一擲に崩しに掛かり───。
一つの宇宙がラース・バビロンにて生まれた。
◇
────その姿に覚えがあった。破界戦役に於ける月周辺で、再世戦争に於ける火星で、シュウジは二度、かの者と戦った事がある。星が震え上がるほどの威圧感、それは肌にビリビリと痛く突き刺さり、ただ其処にいるだけで空間が割れそうになっている。
次元将。かつて滅びの危機に立ち向かう為に人としての全てを捨てた、かの次元の将の真の姿がシュウジの前で顕現される。奴の内から溢れそうになる力の断片、宇宙という形で地球に少しずつ浸食していくその様を見て、シュウジは否応なく力の差を思い知る。
「何の為に闘う……ねぇ、今更じゃねぇかソレ?」
それでも構え、抗う姿勢を崩さず見下ろす次元将を睨み付ける。勝つ、勝たなければならない。目の前の怪物に打ち勝ち、シオ達を奴等の手から解放させる。不退転、決して退きはしないという決意を胸にシュウジは再び挑もうとして───。
『だが、俺はそれでもお前に訊ねなければならない』
背後に回るヴィルダークに僅かにも気付く事は出来なかった。振り向き様に放つ回し蹴り、空気を引き裂き、機動兵器すら砕く威力を秘めたその蹴りを次元の将は難なく掻い潜り。
シュウジの腹部に拳の殴打による衝撃が襲い掛かった。助骨をへし折り、内蔵を掻き乱す。背中から突き抜けた衝撃は大地を抉り空の雲を消し飛ばし、その先にある宇宙───宇宙に於ける人類の居住領域であるコロニー群を揺さぶらしていく。
「ご、ガハッ」
堪らず膝を着き、吐瀉物をぶちまける。赤と黒に染まるソレを吐き出し、全身を襲う痛みに耐え大量の汗を滲み出しながら、シュウジは歯を喰いしばって立ち上がる。
奴の背後にはもう空間の亀裂は見えない。これでこの星は奴の浸食から守られたと安堵したい所だが……残念ながらそれは間違い、奴は地球という星を自分の
まるで見えなかった。自身の意識の境目を掻い潜り、強大な一撃を見舞ってきたヴィルダークにシュウジは改めて戦慄した。怪物、それも力と速さだけならあのガモン達すら上回っているだろう最上級の化け物。
『どうした。もう終わりか?』
「へっ、ンな訳……ねぇだろうがっ!!」
痛みで鈍る体に鞭を打ち、それでもシュウジは諦める事なく叫び、吼えながら拳を奮う。ダメージを負っても尚衰えないその鋭さ、しかしその速さはヴィルダークには遅すぎたのか。
シュウジの拳が届くよりも速く、ヴィルダークの拳がシュウジを捉える。胸元目掛けて放たれた一撃、間一髪それに気付いたシュウジは体勢を無理矢理変えて体を捻って回避する。掠れた箇所の肉が抉られて再び鮮血がシュウジの全身を覆っていく。これ以上血を流したら後がない、更なる怪物へと変貌したヴィルダークに無傷で戦わなければいけない事実に目を覆いたくなるが。
『まだだ、俺達の闘いはまだ終わらん。終わらせはせんぞ』
絶え間なく繰り出されるヴィルダークの乱打がシュウジに休む間を与えない。間断なく、一切の隙間なく打ち出される拳の嵐、その一つ一つが自身を追い詰めた以上の威力を秘めており、奴が拳を打ち出す度に空に孔が空き、その先にあるコロニー群はその都度大きく揺さぶられていく。
「この、好き勝手暴れてンじゃ───ねぇ!!」
拳を打ち出すヴィルダークの僅かな死角を狙い、シュウジもまた拳を放つ。“猛羅総拳突き” シュウジが得意とし、これまで幾度となく強敵を打ち倒してきた自信のある攻撃。
だが、その悉くがヴィルダークの手によって払われていく。片手で、難なくとあしらわれるシュウジは悔しく思いながらも行動を次に移す。人に向けてはならない禁じ手と謂われている、嘗ては核シェルターすら撃ち抜いた一撃。
「“人越拳───捻り貫手ェェ”!!」
血を吐きながら必死の一撃を放つ。全身のバネを使っての貫手、気血を練り上げて打ち放ったその一撃は確かにヴィルダークの胸元に届いた。行き場を失った衝撃が破裂し、大地と空間を窪ませる。渾身の力を込めて放ったシュウジの決死の一撃は───。
『流石だ。よもやこの姿と成った俺にまさかダメージを与えるとは』
しかし、その一撃は僅かにめり込んだだけに終わった。驚愕し、目を見開かせるシュウジはそれでも負けないと全身に一喝し、吼えながら跳躍する。
「オオォォォッ!! “胴回し踵落と───”」
『それはもう見た』
体を回し、裂帛の気合いと共に打ち下ろす蹴りの一撃をヴィルダークは片手で掴み取る。その言葉に滲む微かな失望、しかし手を抜くつもりはないと、掴んだ手に力を込めて……。
シュウジの体を大地へ思い切り叩き付けた。
「────っ!!!?」
言葉にならない衝撃と痛み、意識がぶつ切りになり、視界がぼやけてくる。千切り掛けた意識を離してはならないとシュウジは懸命に耐えようとするが……。
『オォォォォッ!!』
何度も、何度も、玩具の如く振り回し、ヴィルダークはシュウジを地面へと叩き付ける。もう意識は保てない、限界に差し掛かったシュウジに更なるダメ押しが襲う。
これ迄の戦いの影響で隆起し岩盤と化した大地、シュウジの頭を掴み其所へ叩き付け、ヴィルダークは地を駆ける。
「が、アァァァァッ!!」
文字通り身を削られる思い。固められた頭部は抜け出せず、シュウジは痛みの叫びを上げ、遂にその意識を手放してしまう。放り投げられたその体は放物線を描き、力なく地面へ倒れ伏す。
だが、ヴィルダークの攻撃は終わらない。その拳にこれ迄溜めたエネルギーを集め、空高くへと舞い上がり……。
『受け取れシュウジ=シラカワ、これが貴様に贈る手向けの一撃だ』
振り下ろされた拳がシュウジの胴体にめり込み、巨大な光の柱が立ち上る。次元すら穿つ一撃、二つのスフィアを取り込み意志の力で太極へと至ったヴィルダークによって極限に高められた必殺の一撃が、人間であるシュウジに向けて放たれた。
◇
「───お、終わった……の?」
ラース・バビロンの玉座、先程まで響いていた轟音と衝撃は収まり、静まり返った事で戦いの終了を悟ったシオは、隠れていた瓦礫の影から顔を出して辺りを見渡す。様子を見ても変わらず、取り敢えず危険はないだろうと判断したシオは恐る恐る玉座から足を進める。
久方ぶりの外の空気。しかし眼前に広がる光景にシオは言葉を失った。
「これ、あの二人が───やったの?」
窪んだ大地、凹み、隆起し、整地されたラース・バビロンの周辺基地が跡形もなく崩れてしまっている。まるで戦略級の兵器がぶち巻かれた様な、
到底人の手では為し得ない破壊の疵の跡、これだけの戦いで彼は果たして無事なのか、駆け出してシュウジを探そうとするシオを上からの声が待ったを掛ける。
『まだそこから先は出るんじゃないよ』
「え? あ、貴方は幹部の!?」
『おうさ、サイデリアルの幹部、【欲深な金牛】のスフィアリアクターこと、エルーナルーナ様だ。で、話の続きだ。悪いことは言わないから大人しく宮殿の奥へ引っ込んでなお姫様、今のあたしらでも余波を防ぐだけで手一杯なんだからさ』
上空から此方を見下ろす巨大戦艦、プレイアデス・タウラから響き渡る女性の声にシオは戸惑いながら辺りを見渡すと、反対側には巨大生物の死骸を形取った【沈黙の巨蟹】のスフィアリアクターである尸空と、その相方である死逝天がシオを見下ろしていた。
「闘いは……終わったの?」
下がれと言う指示を敢えて無視し、怯えながらも戦いの行方を訊ねるシオ、怖い癖にそれでも真実を知ろうとする彼女に何かを感じ取ったのか、嘆息しながらもエルーナルーナは律儀に応える。
『正確に言えばもうじき終わるって所かね』
「っ!?」
戦いが終わる。それを聞いたシオは目を皿にしてシュウジを探すが、何処にも彼の姿は見えやしない。一体何処まで離れていったのか、そして其処は自分の足でも追い付ける所なのか。今すぐ彼の無事を確認したいシオに再びエルーナルーナが声を掛ける。
『そんなに見たいなら見せてやるが……少々刺激が強いぞ、いいのかい?』
それはエルーナルーナの純粋な気遣いだった。このシオという女は良くも悪くも普通だ。凡人で、取るに足らない人間。そんな彼女にあの様子を見せるのは少しばかり憚れる。
しかし、そんな彼女の気遣いをシオは強い意志で以て拒絶する。首を横に振り、いいから見せろと睨んでくる彼女をエルーナルーナは感心し、ならば良いかとシオの前にその映像を投影させる。
シオの前に投影される巨大モニター、そこにはプレイアデス・タウラを通して映し出され───。
「────」
その光景にシオは言葉を失った。巨大なクレーター、その中央には上半身の服が消し飛び、血の海に沈み倒れ伏すシュウジが、生気を失った顔で意識の無い彼の顔が映し出されていた。
────言葉に出来なかった。声が胸の奥で詰り、悲鳴すら上げることが出来なかった。溢れてくるのは拒絶と恐怖と喪失による涙、嫌だ、嫌だと感情が泣き喚く。
何で彼がここまで傷付かなければならないのか、どうしてそこまでして彼は戦わなければならないのか。こんな事になるなら、こんな悲惨な結末を迎えるなら、初めから彼はこの世界に来るべきではなかった。
(違う。それは、それだけは絶対に違う!)
滲み出る涙を首を横に振る事で振り払い、睨み付ける様にモニターを見る。しかし現実は変わらない、どれだけ意志を強く持とうとしても目の前の事実が覆る事はない。
それでも、シオは願った。何故なら、彼女は知っているからだ。彼が今までどんな想いでこの世界を生き抜き、人と触れ合い、戦ってきたのかを。
彼はずっと、戦い続けてきた。時に流され、時に利用され、時に激昂し、時に怯えながら、孤独の中に身を置き、それでもと抗い続けてきた。
自分に出来ることは何一つ無い。でも彼女は、シオは、シオニー=レジスは知っている。彼が戦うのはいつだって誰かの為とかそれ以前に自分が願う、自身の心が命じるままに────戦っているのだと。
「……ばれ」
故に、
「がん………ばれ」
喩え言葉が届かなくても、想いが届かなくても、彼女は願い続ける。自分が想い、慕っている彼にほんの僅かでも………立ち上がる力となるように。
「がんばれ、シュウジィィィーーーー!!!」
画面の向こうで次元の将が拳を振り下ろす。避けられぬ死、変えられない末路を前にしてシオニーが目にしたのは────。
◇
『見事だった。シュウジ=シラカワ、お前という男と戦えて、俺は心の底から誇りに思う』
眼前で沈むシュウジを見下ろし、ヴィルダークは己の勝利を確信する。故にその言葉に嘘はなく、自分を此処まで追い詰め、高め、導いてくれたシュウジにヴィルダークは偽りの無い賞賛を送った。
気を失い、生きているかどうかも分からない彼の耳にヴィルダークの言葉が届くかは分からない。しかし、そんな事は関係なかった。自身が認め、そしてその遥か上を行く彼の実力にヴィルダークは本気で誇りに思っていた。
抱くのは微かな喪失感、あそこまで固執し、強さの糧にしようとして、挑み、打ち破った好敵手が今はもういない。その事に僅かな寂しさを覚えるが、これ以上の感傷は目の前の彼に対する侮辱でしかない。
せめて、今一度自分の全力の一撃でその肉体ごと消滅させよう。肉体という器を破壊し、その魂だけでもあるべき世界へ送り届けてやろう。それはヴィルダークに許された最後の優しさ、次元の将として宇宙の大崩壊に挑む前の最後の感情。
握り締めた拳にエネルギーが集束する。次元を破壊し、星すら砕く破界の一撃。過剰だとは思わない。これまで戦い、力を付けてきたシュウジ=シラカワという男に対する最大の敬意。
拳が振り下ろされる。砕き、壊し、消滅の威力を孕んだその一撃は────。
◇
────嗚呼、聞こえた。聞こえたよ、シオニーさん。貴方の声は、言葉は、想いは、全部届いているよ。
情けない。結局の所、シュウジ=シラカワという男は誰かを守ってきたつもりでいて、その実、自分こそが守られてきたのだ。
その優しさに少しでも報いたい。その想いに僅かでも返してやりたい。目の前の次元の将の覚悟に比べたら、なんて小さく儚い願い。
でも、それでいいのだ。自身が、シュウジ=シラカワが抱くのはそんな誰もが抱く、当たり前で取るに足らない小さな願い。それはきっと間違いなんかじゃないのだから。
そう、答えなんて分かりきっていた。自分が何のために戦うのか、それは何よりも単純で何よりも明確な意志。
当たり前で、ありふれたモノ。きっとシュウジ=シラカワという男はきっと───。
“そう言うもので、出来ていた”
喜びを知り、怒りを覚え、哀しみを抱き、楽しむ事を学んだ。
大切な人達がいた。喪失と哀しみに沈み、嘆きに打ち拉がれていた。────沈黙の巨蟹、悲しみの乙女。
流されていただけだとしても、それでも果たしたい願いがあった。────揺れる天秤。
一人で戦い続ける事もあった。泣きそうで、立ち止まりそうになっても、自分を支え、道を示してくれる友がいた。────傷だらけの獅子、立ち上がる射手。
喩え自身を仮面で偽っても、その胸に抱いた想いは正しく真実で。────偽りの黒羊、知りたがる山羊。
大事なモノを失い誰かを憎んでも、その欲望に呑まれずに、戦うことができた。────怨嗟の魔蠍、欲深な金牛。
リモネシアの皆が、トレーズさんが、シュナイゼルが、沢山の人達が自分にその願いを託してくれた。───尽きぬ水瓶。
故に、喩えこの先自分が何一つ得られず世界中から居場所を無くしても、頑張れる。頑張れるだけの力と勇気を既に受け取っているから。───夢見る双魚。
だから、頑張れる。立ち上がれる。戦える。矛盾を孕み、破綻しているとしても、それでもヒトは、命は決してその輝きを失うことはないのだから。────いがみ合う双子。
さぁ、征こう。自分は未だ何一つ皆に返してはいない。
他の誰でもない、自分自身がそう願ったから。
願い、想い、人が抱く当たり前の欲望と感情。それら全てを糧にして────
今一度、極みの領域へ。
◇
『────なんだと』
驚愕。次元将ヴィルダークはただ目の前の光景に驚いていた。
死に体だったのは間違いない、現に今も自分の前で立っている彼の瞳からは生気が感じ取れない。しかし、だからこそ分からない。そんな死に損なった体で“どうやって自分の攻撃を避けたのか?”
何も感じ取れなかった。立ち上がる動作も、避ける素振りも、その挙動も、全てが認識できなかった。
今一度、拳を振り抜く。既にヴィルダークに慢心はなく、一切の油断なく死に体である筈のシュウジに向けて全力の一撃を見舞う。
───刹那、嘗て経験したことの無い鋭い痛みと衝撃がヴィルダークを襲った。確かな攻撃、見ればいつの間にか自分の懐まで潜り込んだシュウジがその拳を彼の腹部に叩き込んでいた。
堪らず距離を取る。打ち抜かれた腹部に手を当てて、驚愕と期待に満ちた感情がヴィルダークの内から溢れ出る。
「ウォァァァァァッ!!!」
────その時、シュウジの内から銀河が溢れた。輝き、瞬き、全てを照らす曙光の如き煌めき。キラキラで、ギラギラで、それでいて熱い。生命そのものの輝き。
それを目の当たりにしたヴィルダークは困惑した。自身の知らない力、スフィアが齎す力とは似て異なるモノ、遥か永い時を経てそれでも理解できない力の具現。
しかし、そんな事どうでも良かった。確かな事は唯一つ、自分達の闘争はまだ終わってはいない事、故に。
『シュウジ=シラカワ、今の確かな一撃。そしてそこまで高めたこの熱さ────応えねばなるまい。オォォォォォッ!!』
ヴィルダークは全力を示す。内から溢れ出るエネルギーを掌の一点に集束させ、防ぐことも避ける事も敵わない絶対的な一撃を見舞う為に。
『さぁ、受け取れ! シュウジ=シラカワァッ!』
打ち放つ。星を砕いて余りあるソレを、たった一人の人間に向けて。───しかし。
『っ!?』
やはり、目では追えなかった。放たれたエネルギーの塊は爆発せず、その標的だった彼はヴィルダークの背後に悠然と佇んでいる。振り返り、拳を放とうとしたヴィルダークが目にしたのは……光だった。
自身の放ったエネルギーを握り潰し、振り抜かれた拳に当たることなく近付いたソレは何事もなかった様にヴィルダークとすれ違う。
何が起きている。理解に苦しむ事象を前にそれでも次の行動に移ろうとした瞬間、先程と同じ衝撃と痛みが無数にヴィルダークに打ち込まれた。
瞬間に耐えきれず、吹き飛んでいく。岩盤に激突し、漸く勢いが止まる。自身に刻まれたダメージに戸惑いながらもヴィルダークはソレを睨み付ける。
軈て光は鱗の様に剥がれ落ち、ソレを顕にしていく。
「……簡単な事だ。ヴィルダーク、俺が抱くのはいつだって単純にして明快、なんてこと無い簡単な理由だったんだ」
「俺が戦うのは、俺自身の為。他の誰でもない、俺自身がそうしたいと願ったからだ」
それは、人の極限。命を抱き、命を願い、想い、そして至る、真化とは異なる可能性の極致。
「月並みの言葉だが、この言葉を送ろう。次元将ヴィルダーク」
“勝負は、ここからだ”
極意。静かに闘志を燃やした瞳は次元の将を見据えていた。
今更ながらのボッチの精神コマンドWith天獄篇。
直感 鉄壁 加速 魂 覚醒 奇跡
な、感じにしてみました。
尚、気迫は専用アイテムの所為で無しになりました(笑)
Q.今、地球はどうなってるの?
A.現在、地球には二つの
Q.地球はどうなるの?
A.でぇじょうぶだ。ドラゴンボールで(ry
それでは次回もまた見てボッチノシ