『G』の日記   作:アゴン

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地球「パワーをくれ、奴等の攻撃に耐えれるパワーを!」
水星「ち、地球……!」
金星「地球さん!」
火星「地球さん、勝って──」
地球「パワーを、くれぇぇぇっ!!」
月「太陽系の、王子はぁ! この俺だぁぁぁッ!!」

以上、地球周辺の衛星並びに惑星の皆様のお気持ちでした。


その212

 

 

 

エルーナルーナと尸空、サイデリアルに属するスフィア所有者の最高幹部は黒に染まった邪悪なる太陽(ヘリオース)に機体ごと貫かれ爆散し、愛機と共にこの世を去った。

 

守るべきモノで、本来なら自分達の総大将であるヴィルダークに託す筈だったスフィアは怨敵であるサクリファイに奪われてしまう。しかし、死に逝く二人に後悔はなかった。

 

戦場に顕現した三つの機影、鉄の城だったモノはネオ・グランゾンと同じZERO(0)を模した日輪をその背に携えて禍々しくも荒々しい出で立ちで新生し、(ドラゴン)の名を冠するゲッターもまた、進化の力により更なる変貌を遂げていた。

 

そしてその二体を先導する様に前に出るネオ・グランゾン。本来ならば、地球圏での戦闘では極力封じ込めていたその力を、今は惜し気もなく表している。

 

原初(ゼロ)の力を用いれば戦局はより圧倒的格差となるが、下手に力を全開にすれば、それこそ戦闘の土台である地球そのものが耐えられなくなる為、それは出来ない。

 

故に、シュウジはネオ・グランゾンまでに留めておく事にした。だが、先に述べた通りグランゾンは真化を経てその力を更なる高みへ至っている為、ネオに成ってもそれは変わらない。

 

気力に満ち、戦意に溢れ、負ける要素など微塵も感じられない新たな存在の誕生に、エルーナルーナと尸空は爆発の中、満足に笑みを浮かべながら消滅していく。敵だったモノの最期の悪足掻きとその散り様に、敵対していたクロウ、ランドの両名は僅かな空虚な感情を抱いて見送った。

 

『あ、あれ私達……』

 

『ここ、真ゲッターのコックピットだよな? どうして俺達、ここにいるんだ?』

 

『───』

 

一方、これまで真ドラゴンに搭乗してZ-BLUE艦隊の一つを担っていた渓、剴の二名はいつの間にか真ゲッターに乗り込んでいた事に戸惑い、號だけは何かを悟った様に笑みを浮かべている。

 

他のZ-BLUEの面々も突然の事態に戸惑いを隠せないが、戦況はそれを待ってはくれない。これ迄戯れと称していたサクリファイの顔に未だ笑みは崩れていないが、その表情には何処か焦りが見えている。

 

ヴィルダークに続いてエルーナルーナと尸空の二人からもスフィアを強奪したサクリファイは、佇む三機に向けてアスクレプスに命じる。殲滅せよ、総てを亡きモノにせよと一切の遠慮と躊躇、戯れを捨て去って即座に指示を飛ばす。

 

強制的な真化を施された事によりその力を存在ごと格上げされたアスクレプス達は、断末魔に似た雄叫びを上げてグランゾン達に殺到する。極大のエネルギーを纏っての吶喊、当然Z-BLUEの指揮官等は三機のフォローに回るよう指示を飛ばすが……。

 

『───驚いたな』

 

その必要は全くと言っていいほど無かった。迫るアスクレプス達の攻撃を片手で受け止める真ゲッタードラゴンは勿論、ネオ・グランゾンは強化された歪曲フィールドで防ぎ、禍々しい姿となったマジンガーZEROに至っては無防備で受けながら平然としている。

 

明らかに異なる力、異なる存在へと昇華されたゲッターとマジンガーにZ-BLUEは動揺を隠せないが、それを追及する者はいない。何せ搭乗している本人達が動揺を隠せていないのだ。

 

これ迄とは違う何段か繰り上げられた強さ。真化とは別方向への変化に搭乗者自身が戸惑って仕方がないが、何時までもその事に振り回される訳にはいかない。

 

『これなら、いける! 竜馬さん!』

 

『おうよ!』

 

目の前の敵を打ち破る。手にした力を翳し、この困難を乗り越える為に振るわれる新たな力、それは正しく神を超えて悪魔すら滅ぼすスーパーロボットの新たな境地。

 

メキメキと音を立てて変貌するマジンガーの右腕。元々あった刃が成長、変形し、まるで一つの巨大な矢となったそれは空に佇むアスクレプス達に向けられる。

 

『いっけー! アイアンカッター!!』

 

放たれる巨大な刃。空を切り、余波だけでも大地を抉るその一撃はアスクレプス数体を巻き込み、宇宙に向かって天へと昇る。軈て両断されたアスクレプスは数秒遅れて爆発し、その姿を消していく。

 

『ひゅー、甲児の奴派手にやるなぁ』

 

『あれが原初の魔神か。その名に偽り無し、だな』

 

『感心している場合じゃねぇ! 俺達も殺るぞ!』

 

真ゲッタードラゴンの肩から巨大な斧が射出され、それを手にして肩に掛ける。その質量と大きさから明らかに質量保存の法則を超えているゲッターだが、今さらそれを指摘する者はいない。

 

『往くぜサクリファイの手下ども。ゲッターの恐ろしさ、その骨身に叩き込んでやる!』

 

真ゲッタードラゴンは真ドラゴンを圧縮し、真ゲッターと同等のサイズにまで押し込めた異類のゲッター。見掛けは勿論中身まで桁違いに生まれ変わったドラゴンの力は、戦艦であった頃よりも数段上の出力を誇る。天を裂き、地を砕き、星を割っても尚余りあるその力は、当然の如くアスクレプス達を三体程纏めて切り払う。

 

圧倒的な暴威を奮い、これまで此方を圧していたアスクレプス達を押し返して吹き飛ばすマジンガーとゲッター。両名の強さを近場で観察していたネオ・グランゾンもまた参戦しようと前へ踏み出す。

 

「シュウジ、平気なの?」

 

「ゲッター線に触れたお陰かな。出血は完全に止まったよ。後は意識を繋いでいられる間、奴等に意趣返しするだけさ」

 

未だ傷跡は多く残るが、それでも血は止まり、先程よりも顔色の良いシュウジにシオニーは安堵し、そして辺りを見渡す。此処が彼が今まで見てきた世界なのだと。グランゾンのコックピットに乗り込み、彼の膝の上にいることで、シュウジが今まででどんな視線でこの世界を見てきたのかを知ることが出来たシオニーは、僅かに微笑みながら彼の頬を撫でた。

 

「し、シオニーさん?」

 

「シュウジは、凄いね。こんなに近くで戦場の中にいて、戦って、傷付いて、一度は死んじゃって、でも、それでも頑張って……こんな事、私なんかが言えた事じゃないけど」

 

「もう、背負わなくていいからね」

 

「───」

 

別に、シュウジ自身は何かを背負っているつもりは無かった。やり遂げたい事があるから、だから戦っているだけだと。覚悟というのは全人類を本気で想い、憂う者が抱き………それこそ、トレーズの様な人物こそが背負えるモノなのだと、シュウジは思っていた。

 

けれど、シオニーは違うと断じる。決意とは、覚悟とは、暗闇の荒野に進むべき道を切り開く事なのだと、彼女はシュウジの日記を読んでしまったあの日に気付いた。

 

彼はこれからもそんな道を進み続けるのだろう。 暗闇の荒野を、光なく、一人で孤独に進み続けるのだろう。自身が抱く想いの為に何処までも進み、道を切り開くのだろう。

 

だからこそシオニーは口にする。貴方はとっくの昔に覚悟という想いを抱いてきた。だからこれからの彼の歩みの邪魔にならない為に、シオニーは此処でシュウジの重荷を取ることにした。

 

背負わなくていい。自覚も何もなかったが、シオニーのその言葉はシュウジに確かに届いた。ふと、体が軽くなった気がする。気力が満ち溢れ今まで出来なかった事が出来るようになった気さえしてくる。

 

微笑むシオニーにシュウジもまた笑みを浮かべた。そしてそうしている一方で此方に狙いを定めたアスクレプス達が襲い掛かってくる。

 

「買い被りだよシオニーさん、俺はいつだって自分が出来る限りの事をしてきただけ、何かを背負ったりするなんて器は………俺にはない。でも」

 

「ありがとう。シオニーさん、俺、なんだか今凄く体が軽いや。有り体に言えば………そう」

 

“負ける気がしない”

 

瞬間、ネオ・グランゾンの日輪は音を立てて輝きを放ち、その力を増幅させる。

 

『ワームスマッシャー!』

 

一度に六万を超える目標を同時に攻撃できる光の槍が、迫り来る数体のアスクレプスに向けて放たれる。絶え間なく降り注がれる光の嵐にアスクレプスは細切れに分解され、爆発すら呑み込んで破壊していく。

 

あれほど苦戦を強いられたアスクレプスが一瞬で消し飛んでいく光景に、Z-BLUEは息を呑む。しかしそんな彼等に反して、サクリファイは笑みを深めるばかりだった。

 

「フフフ、まさか此処まで圧倒されるとは。いやはや人類とは恐ろしいモノですね。其処までの力を得て、一体何がしたいのです?」

 

『ハッ、その台詞をテメェが言うのかよ!』

 

『今の俺達には過ぎた力だというのは、俺達自身が重々承知している。だが、それでも地球を、人類を護り、お前を倒せるというのなら、俺達は喜んで修羅になるさ』

 

『尤も、お前みたいに堕ちる所まで堕ちたりはしないがなぁ!』

 

笑みを浮かべてはいるが、それでも何処か動揺している様に見えたのは、きっと初めてサクリファイは、シュウジ達を無意識に脅威だと認識したからなのだろう。新たに二つのスフィアを以てしても尚抗えない力の奔流。地球を粉微塵にしても可笑しくない存在の圧力を、不思議にも完全に制御している事実に。

 

しかし、それでもサクリファイは揺るがない。何故ならこの女もまた超弩級のエネルギーを有する怪物なのだから。

 

それとなくサクリファイが指を鳴らすと、それまで消滅したと思われたアスクレプス達が何もない所から姿を現した。

 

『な、何だと!?』

 

『アイツ等、確かに倒した筈じゃあ……』

 

『やはり、次元力の応用か』

 

『いや、ちょっと違う』

 

『シュウジ?』

 

『あの女、次元力を使って因果を書き換えたんだ。甲児君と竜馬さん達が奴等を倒したっていう現実を、奴が塗り潰したんだ』

 

サクリファイが行った仕掛けにシュウジが解説すると、それを理解した面々は息を呑む。因果を書き換える。事実を別の真実によって塗り替え、在った事を無かった事にされる。それがどれだけ馬鹿げた能力なのか、優秀な頭脳を持ったトライア博士や元ウィスパードであるテッサは、目をこれでもかと見開いて絶句する。

 

「ウフフフ、流石に分かってしまいますか。ならばどうします? 我が同胞を屠った時の様に、貴方の魔神も原初の力を解放しますか? 確かにそれなら幾らでも打開策はあるでしょうが……さて、それまでにこの地球は、果たしてその形を保っていられるでしょうか?」

 

くつくつと笑い挑発するサクリファイに、シュウジの顔は僅かに曇る。悔しいが奴の言う通り、ヴィルダークとシュウジの戦いで酷使された地球はこれ以上の規模の戦いに耐えられない。仮に奴の口車にのって原初(ゼロ)の力を解放すれば、それだけで地球は圧壊されてしまうだろう。

 

このままではじり貧になり、先程の繰り返しになってしまう。そもそも、その間に地球が崩壊してしまっては意味がない。迫られた選択肢。どうにかして切り抜けようと思考を巡らせるシュウジに兜甲児の声が上がる。

 

 

『へっ、だったら簡単だ! そっちが事実を変えるって言うんなら、此方も同じことをするまでだ!』

 

『こ、甲児君!?』

 

『兜、オメェ何言ってんだ!?』

 

唐突に閃いたと語る甲児に、さやかとボスがZ-BLUEを代表して戸惑いの声を挙げる。彼の言うことがイマイチ理解できない。しかしそう語る前に、マジンガーの日輪が甲高い音を立てて輝き出す。

 

『……まさか』

 

『そうさ、そのまさかだ! 因果を操るのはお前だけじゃない。このマジンガーも、原初の魔神も同じ芸当が出来るってことさ!』

 

『無理ですね。あり得ません。まだ其所へ至ったばかりの貴方にそこまでの力を操る事など……ハッ!』

 

『そうさ、俺一人じゃあとてもそんな真似は出来ない。いや、だからこそ可能なのさ(・・・・・・・・・・)!!』

 

『っ! そう言う事か!』

 

『クロウ、ランド、セツコ、ヒビキ! スフィアリアクターはマジンガーに集まりな!』

 

『アサキム、お前も来い!』

 

『やれやれ、人使いが荒いな!』

 

甲児の言葉に、いち早く理解したシュウジとトライアが即座に指示を出す。それをさせまいとサクリファイが、今度はヘリオースと共にアスクレプス達を率いて妨害しようとするが、そうはさせまいと真ゲッターと真ゲッタードラゴン、並びにガンバスターが前に出る。

 

『揃ったね。兜! あんたのそのマジンガーなら本当に因果を操れるんだね!?』

 

『あぁ! このマジンガーは己の勝利を具現化させる力を持っている! ならそれを応用すれば、あのサクリファイと同じことが出来る筈だ!』

 

『全く、いきなり出てきてとんでもない能力を引っ提げて来て! 後で詳しく説明してもらうよ!』

 

『それよりも博士! 俺達は何をすればいいんだよ!』

 

『あんた達スフィアリアクターの役割は回収さ! マジンガーが座標を示し、私ン所のソーラリアンが道を作る! AG、準備はいいね!』

 

『やるっきゃないというのは理解してますよ! もう、いきなり前人未踏の領域に踏み込むとか、鬼畜ってレベルじゃねーですぞ!』

 

『文句は後にしな! クロウ達は神経を集中、自身の内に潜り込む事をイメージしな! そうすりゃ後はこっちで何とかする!』

 

『瞑想って奴か。正直、いきなりで混乱しているが』

 

『でも、やるしかないっていうのなら、やり遂げるまでですよ!』

 

『先生、皆、マキさんを助ける力を貸してください』

 

『勿論よヒビキ君!』

 

『それじゃあ、始めるよ!』

 

トライア博士のゴーサインと共にマジンガーから光が溢れる。周囲を呑み込み、支配する因果律操作の光。それは戦場を呑み込む様に周囲へ広がり、侵食していく。

 

因果を支配し、理をねじ曲げるその力は一つの解を導き出す。神をも恐れぬ所業。今彼等が行おうとしているのは、過去の改竄に他ならない。

 

軈てスフィアリアクターの機体も光を放ち始める。クロウのブラスタ、ランドのガンレオン、セツコのバルゴラ、ヒビキのジェニオン、そしてアサキムのシュロウガ。

 

サクリファイが保有する以外のスフィアが揃った事により、不可能だった筈のそれは現実のモノになっていく。サクリファイの周囲にいたアスクレプスは光の粒子と共に消滅し、その中からそれぞれ人が解放されていく。

 

それを目の当たりにしたサクリファイは、全てのアスクレプスを消滅させまいと指を鳴らして消していく。しかし、その間に大多数のアスクレプスが光となって消滅し、その数の分だけ人が解放されていく。

 

『やった! やりましたぞ! 成功です!』

 

『よし、回収部隊は即座に行動を開始せよ! 一人たりとも死なせるな!』

 

遂にサクリファイの手から解放された人々に、ブライトが直ぐ様回収部隊を送る。真化を施されたアスクレプスの大多数が消滅された事で、戦局は覆された。これでサクリファイの手は残されていない。しかし、それでもサクリファイの抵抗の意思は挫ける事はなかった。

 

「───よもや、ここの人類がそこまでの領域に踏み込んでいようとは、些か侮りが過ぎたようですね」

 

『漸くあの気色悪い笑みが崩れたか。だったらどうする? このまま大人しく引き下がるか!?』

 

「そうですね。此度は素直に敗けを認めましょう。皆様は本当に強くなられた。───なら」

 

『っ!? か、火星の軌道上に重力力場の異常を感知! こ、これは!?』

 

『どうした!?』

 

『宇宙怪獣、並びにインベーダーの大群です!』

 

『な、なんだとぉっ!?』

 

サクリファイが片手を天に向けて掲げたと同時に、火星近郊に孔が穿たれる。広がっていく時空の渦から大群となって押し寄せてくる根源的災厄の情報に、Z-BLUEに動揺が広がる。

 

「さて、如何致します? ここで私と決着を着けるのもいいですが、そうすれば火星に住むインサラウムの人々は死に絶えますよ?」

 

『て、テメェ!?』

 

サクリファイの平然と行うその邪悪なやり口に、Z-BLUEの一同は揃って吐き気を覚えた。元々人間だとは思っていなかったが、いよいよ外道へ堕ちていくサクリファイ。

 

「それでは皆々様、済度の日取りまで今暫くのお別れ───っ!?」

 

しかし、奴のその目論みは崩れる事になる。異空間を広げ、地球圏から去ろうとするサクリファイとヘリオースの眼前には、いつの間にか剣を手にしたグランゾンがいて………。

 

『これは、ヴィルダークの分だ』

 

逆袈裟にサクリファイをヘリオースごと斬り捨てた。

 

『その傷なら暫く動けねぇだろ。とっとと失せろ』

 

特大の殺意と侮蔑を込めてサクリファイを睨み付ける。これ以上交わす言葉はないと、グランゾンは踵を返す。

 

『ふ、フフフフ。嗚呼なんて良い一撃なのでしょう。そう、やはり貴方はそう来なくては』

 

その言葉を最後に、今度こそサクリファイは地球圏から撤退する。これで地球は完全に解放された。しかし、残された問題がある以上、諸手を挙げて喜ぶ事は出来ない。

 

こうしている間も、火星には宇宙怪獣とインベーダーの脅威が迫っている。休んでいる暇はないが、度重なる連戦でZ-BLUEの多くの機体は限界に迫っている。今、ここで連戦に挑める機体はネオ・グランゾンと真ゲッタードラゴン、そしてマジンガーZEROの三機である。

 

『竜馬さん、甲児君、行けますね?』

 

『おうよ、ちゃっちゃと行って終わらせようぜ』

 

『俺も何時でも行けるぜ』

 

二人からの快い快諾にシュウジは笑みを浮かべ、次いでシオニーに視線を向ける。彼女も決意が固いのか、恐怖で震えながらも強い眼差しでシュウジを見詰めている。それを是と受け取り、シュウジはグランゾンを操りワームホールを展開させる。

 

各艦からは制止の呼び声が聞こえてくるが、今はそれに応える時間はない。一刻も無駄に出来ないと判断したシュウジはマジンガーとゲッターを連れてワームホールへ潜り────火星へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────既に、宇宙怪獣とインベーダーの群れは火星の目と鼻の先まで侵攻していた。現在火星はそのリソースの殆どを火星移住への資源に充てており、マトモに戦える戦力は限りがある。

 

現在戦えるのは嘗てのインサラウムの騎士であるマルグリットと僅かなアークナイツのみ。己の愛機であるパールネイルと共に同志達と前線へ赴いているが、宇宙すら埋め尽くす数の暴力の前に恐怖を抱いていた。

 

皆、ここで死ぬことを覚悟している。迫り来る根源的災厄を前に死力を尽くそうとする彼女達の前に、三体の機影が降り立った。

 

『よし、狙い通り目的地に着いたな』

 

『連中との距離も充分、これならいけるな』

 

『ならば早急に終わらせ───む? 其処にいるのはマルグリット女史?』

 

突然現れた三体の規格外な存在にマルグリットは言葉を失う。なんの前降りも脈絡もなしに現れたグランゾン達を前に、マルグリットを含めた騎士達は動揺よりも困惑が勝り、動きが思考と共に停止していた。

 

『丁度良かった。貴女方にも連絡を入れたかったのですよ。これより私達が根源的災厄───通称バアルの群れの駆逐に入りますが、インサラウムの皆様には後詰めをお願いしたいのです。万が一討ち漏らしては笑えませんからね』

 

『俺らがそんなヘマするかよ』

 

『保険って奴ですよ。そう言う事ですから、皆様はもう少し下がって下さいね。巻き込まれないように出来るだけ遠くに……ね』

 

『り、了解した。貴君らの武運を祈る』

 

最早一通りの礼儀の言葉しか口にできなかったマルグリットは、仲間たちと共に戦線から離れていく。彼女達を見送ったグランゾン達は今度こそバアルの群れへ向き直る。

 

宇宙怪獣。その数と巨大さから人類の天敵種と定められ、今日まで絶対の敵対者として宇宙の彼方から飛来する怪物。インベーダーも命と進化を求めて全宇宙に勢力を広げ、知的生命体の怨敵とされている化け物。

 

その軍勢を前に三機は僅かも揺るがない。退く気も負ける理由も見付からなかった。

 

『さて、いい加減腹が減ったんだ。とっととケリ着けて帰るぞ』

 

『だな、俺もいい加減うんざりしてきた所だ』

 

『ならば、この一撃で終わりにしましょう』

 

三機からそれぞれ力が脈動する。ネオ・グランゾンはその腕の中でマイクロブラックホールを形成し、真ゲッタードラゴンは全身から額にゲッターのエネルギーを集約させ、マジンガーZEROはその胸中に膨大なエネルギーを圧縮させる。

 

その熱量は宇宙空間を歪ませ、その力の余波は太陽系を震わせる。高めに高め、集約に圧縮させたその力の奔流は───。

 

『ゲッター───』

 

『ブレスト───』

 

『ブラックホール───』

 

退くことも出来ないバアルの群れに向けて───。

 

『ビィィィィムッ!!』

 

『ファイヤァァァァァッ!!』

 

『クラスターッ!!』

 

一切の容赦なく放たれた。

 

三種三様に放たれた極大のエネルギーはバアルの群れを呑み込み、軈て出入口となった力場すら破壊し。

 

太陽系を白という光に塗り潰した。

 

 

 

 

 




地球「オラ達のパワーが勝ったぁぁぁッ!!」


次回、戦いの終わり。

地球決戦編は次回で終わり。

その次はいよいよ最終章へ移る予定ですが……テンション維持の為に例に習ってまた寄り道するかもですが、今後も応援ご感想の程、宜しくお願いします。


それでは次回もまた見てボッチノシ


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