『G』の日記   作:アゴン

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戦いの終わり、その後……。


その213

 

 

 

「───どうやら、向こうも終わったようじゃのう」

 

新地球皇国(ガイアエンパイア)の最重要砦、セントラル・ベースへ続く荒野。周囲に機動兵器だった(・・・)残骸に腰掛けた老人、大貫善治は激しい戦いがあったであろうラース・バビロンの方へ視線を向ける。

 

「一時は強大な邪気が現れたからどうなることかと焦ったが、何とか切り抜けたようで何よりじゃわい」

 

それに同調するようにガモンは大貫の隣に立つ。Z-BLUEやシュウジの戦いに僅かながらの支えとして、増援となる皇国軍の足止めとしてこの地へ訪れた二人。一先ず地球の行く末を賭けた戦いが無事に終わった事に安堵し、二人はやれやれと息を吐きながら体を解していく。

 

「さて、ワシ等もそろそろ嬢ちゃん達に合流するとするかの」

 

「そしてマリーメイアの嬢ちゃん達を、無事に地球連合の本拠地に送り届けた後は、ワシ等の役目は終了というわけじゃ。やれやれ、この冒険も終わりと思うと何やら寂しい気もするのう」

 

「ハッ、よせやい。今更感慨に耽る様な歳じゃなかろう。戦艦を豆腐の様に切り裂いて何を言うておるんじゃ」

 

「ガモちゃんだって巨大人形をこれでもかとぶっ叩いておったじゃろうが。餅つきじゃあるまいし、乗ってた兵士が唖然としておったぞ」

 

「全く、乗っている鎧が壊れた程度で嘆かわしい。いつの時代も最後に頼れる武器は己の肉体だというのに、最近の若者は弛んどるのう」

 

闘争に於いて最も信頼できるのは、己が培ってきた肉体と技。生涯それを実践し続けて貫いてきたガモンは、機動兵器等という鎧に現を抜かす皇国軍ことサイデリアルの兵士に僅かな失望を抱いていた。

 

「宇宙の覇権を争う軍勢と言うのなら、もう少ししゃんとして欲しいものじゃ」

 

「ワシ、これ知ってる。パワハラって言うんじゃろ?」

 

剰りにも一方的、且つ理不尽な物言いに大貫はケラケラ嗤って指を差す。しかし、それでも人生の最期に大暴れが出来たのだ。二人の顔に不満の翳りは見えず、最後まで戦い抜いた満足感で満ちていた。

 

「さて、そんじゃあそろそろ行くとするかの」

 

「そうじゃな。………なぁガモちゃん」

 

「ん?」

 

「───良かったな」

 

大貫のその言葉に一体どれだけの意味が込められていたのか、それを知るのは本人達しかいない。大貫の言葉に一瞬面食らうガモンだが、応ッと短く返答し、二人は足並み揃えて合流地点へ目指す。

 

足跡を残し、荒野から去っていく二人の背後には、サイデリアルの軍勢だった機動兵器。その全てが鉄屑となって荒野を埋め尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

火星圏から根源的災厄、インベーダーと宇宙怪獣の群れを殲滅し、無事地球へ戻ってきたシュウジ達。

 

ここに地球圏に於ける全ての闘争は幕を引く事になる。漸く齎せた安寧の時間。それが僅かな一時のモノだとしても、それを喜ばないモノはこの星にはいなかった。

 

地球へ戻り、グランゾンから降りて、クレーターの中心で間もなく消滅しようとする者へ、シュウジは歩み寄る。

 

「───どうやら、やり遂げた様だな」

 

「あぁ、大元は逃しちまったけど………アンタのお陰で一矢報えた。ありがとな」

 

「礼など無用、俺は俺に出来ることをしたまでだ」

 

「………そっか」

 

倒れ、空を見上げることしか出来ないヴィルダーク。両手両足は既に灰となって消え去り、残った体も既に胸元まで消えかかっており、彼の死は覆る事はない、彼の終わりは既に決定付けられており、本人もまたそれを受け入れていた。

 

もう、二人の間に言葉はいらない。少なくともシュウジ自身から言える事は何もなかった。戦い、争い、殺し合うだけの関係だった二人。しかしその中で、二人の間には言葉に出来ない奇妙な縁が生まれていた。

 

言葉ではなく拳でこれ迄の自分を語ってきた二人。そんな二人を邪魔しようとはせず、Z-BLUEも大人しく見守っていた。

 

「───シュウジ=シラカワ、最期に一つ言っておこう」

 

「………なんだ?」

 

「お前は強い。人として成長し、進化し、真化を体得し太極へ至りしお前は、今後も戦いに身を置く事になるだろう。だが、だからこそ忘れないで欲しい」

 

「命を、軽んじるな。命は際限があり、有限であり、脆く拙いが………だからこそ尊く、眩いのだ。シュウジよ、終わりなき戦いに挑みし者よ。どうかこの事を忘れないで欲しい」

 

「───あぁ、忘れない。忘れるものかよ。命の大切さと暖かさは俺も良く分かっている」

 

「ならばこそ、貴殿にこの言葉を贈ろう。永い刻の中でも失われる事のない絶対の理を──」

 

“────命の輝きこそが、永久不変”

 

まるで詩編の一節の様な言葉を遺し、次元の将ヴィルダークは完全に消滅し、この世を去った。最期に満足し、やりきった充足感に満ち足りた笑顔を浮かべて。

 

次元の将ヴィルダーク。サイデリアルの統率者にして、新地球皇国の皇帝。彼の行った闘争によって、地球の至る所で悲劇は起こされた。亡くなった者も大勢いて、孤児となった子供も沢山生まれる事だろう。彼の侵略者の悪逆を、地球人類は未来永劫忘れはしない。それはシュウジもそうだった。

 

けれど今だけは、どうか今だけは彼の死を想う事を許して欲しい。力を求める為に、嘗ての仲間たちと共に戦い抜いた男へ、最後の祷りをどうか許して欲しい。

 

「ヴィルダーク、ありがとな、シオニーさんを、リモネシアの皆を守ってくれて」

 

空へ消えていく灰。光を受けて、まるでダイヤモンドの様に輝きながら消えていく、最後の次元将に別れを告げる。

 

地球とサイデリアル、二つの勢力の戦いはこの時を以て幕を降ろすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────それから、数日の時が流れた。

 

サイデリアルとの戦いに勝利した地球連合は、戦いの疵を少しでも癒そうと奔走し、その労力の多くは復興に勤しんでいる。幸いにも、投降したサイデリアルの兵力の殆どが地球の再建に協力的で、復興作業は思いの外進んでいる。

 

幹部である尸刻、ダバラーン、サルディアスの三名は、残ったサイデリアルの残党を引き連れて地球圏から離脱。どのような目的なのかは不明とされているが、それを確かめる術は今の所存在しない。

 

そしてZ-BLUE。度重なる戦いで機体と自身の肉体を酷使した為に、その殆どは今後の戦いに備えて英気を養おうと、各地で愛機と共に体を休めている。高校生や小学生と言った学生組はそれぞれの日常に戻り、青年大人の組は自分なりの休みを満喫している。

 

故郷に還る者、友人と共に休みを満喫する者、心休まる場所で心身を癒す者、それぞれが各々のやり方で心と体を休める中。

 

「お~いシュウジ、そっちが終わったら今度は向こうを頼むわぁ!」

 

「了解です。おやっさん!」

 

新日本、未だ潰えずに残ったアンダーグラウンドで、ゴウト=ブールーズの下で油まみれになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回からボッチ巡礼編。

これ迄のボッチの旅路とこれからの旅、最終決戦へ向けてのエピソードをトントン拍子で進めていきたいと思います。その間にW不動はどうなったのか、ELS戦はどうなるのか等の細かい話やちょっとした裏話(コードギアスに於けるあの部隊とか)
書いていけたらなと思います。

ただ、近頃fateへの熱が再び高まってしまい、次回からまた異世界漂流に逃げてしまうかもしれません。

この物語は完結させるつもりですので、これからも長い目で見守って下されば幸いです。


それでは次回も、また見てボッチノシ


追記。

Zに出なかった機体が出るのは一機だけと言ったな。

───済まない、あれは嘘だ。

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