『G』の日記   作:アゴン

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仁王2、面白い。

初めて死にゲーというのを体感した。(笑)



その219

 

 

 

 

教典に記された場所、そここそが蒼神教の拠点だと確信したマリーベル達は入信する信者を装い、教団内部への侵入を試みた。

 

巨大な扉は開かれ、門を潜っていく中で、これならば調査も何とか上手くいくのではないか。慣れない潜入捜査に緊張していたオルドリンが楽観的だと自覚しながらも内心そう思った時、視界に飛び込んできた光景に一瞬だが言葉を失った。

 

見渡す限り立ち並ぶ機動兵器の数、KMFからAS、更にはMSなどこの世界に存在するあらゆる機動兵器が鎮座されている光景にマリーベル達は言葉を失った。

 

「なんだよ、この兵器の数は!?」

 

「これが、蒼神教の実態?」

 

「教団というか、まんま格納庫にゃー……」

 

夥しい兵器の山、軍隊規模の数を優に上回る兵器の数にマリーベルは戦慄し、恐怖を感じた。これだけの機動兵器が一斉に動き出し、各国首都制圧に動き出せば世界は再び戦いの炎に包まれてしまう。

 

蒼神教は、蒼のカリスマは、これだけの軍団を率いて今度こそ世界を征服するつもりなのだろうか。混乱する思考、それでも騎士団の団長として部下達に指示を出さねばと我に返るよりも早く。

 

「おおっと、そこまでだぜお嬢ちゃん達。下手な動きはご遠慮してもらうぜ~?」

 

相手側の方が展開が早かった。いつの間にか潜んでいた銃火器を手にした集団が、機動兵器の足下から姿を現す。

 

十や二十では利かない規模の人数、その何れもが特徴的な装束に身を包んでいる。軍人というよりは野盗や山賊の類いのそれに近い。または粗野な態度が消えていない傭兵あがり、彼等に対する印象はそれだった。

 

そんな野盗達を割って来る様に現れたのは猫背姿の大男だ。体格の大きさとその風格から野盗達のリーダーのように思えた。

 

「───貴方は、この蒼神教の関係者の方ですか?」

 

「応よ、俺様は蒼神教の最高幹部。ベルク=バトゥム=ビトゥル様よ。おお哀れで迷える子羊達よ。蒼のカリスマ様に慈悲を求めてやって来たのかな?」

 

口調も言動も巫山戯ている。宗教団体の幹部とは思えないベルクと名乗る男の下賎な態度にオルドリンを始めとした騎士達は不快感を抱くが、それ以上に隙のないベルクの姿勢に息を呑んだ。

 

強い。大柄な体格に見合った覇気、その巫山戯た言動は此方への揺さぶりなのだとオルドリンが勘づけたのはこれ迄の戦いと挫折、そして経験による賜物だった。

 

このベルクという男は強い。肉弾戦はモチロン、指揮官としても恐らくはオルドリンより上。悔しく思いながらも格上相手にどう切り抜けるべきか思考を止めないでいると、ベルクの背後から更にもう一人の男が現れた。

 

「よぉ兄弟。新しいお客さんかい? 対応するのも結構だが、現場での指揮も怠けないでくれよぉ?」

 

「おっと、それは悪いことをしたなぁ。兄弟、けど元とはいえブリタニアのお姫様が来てるんだ。国賓待遇で相手しなくちゃ失礼だろぉ?」

 

「おっと、そりゃ失敬。配慮が足りなかったのは此方だったか」

 

ベルクに負けず劣らず、人をおちょくる言動をするのはベルク以上に不気味な雰囲気を醸し出す男だった。その男の印象を一言で現すのなら………殺し屋、人を殺し、命を奪うことに何の躊躇いも迷いもない人でなしの人種。まだこんな奴が教団にいるのか。

 

「貴様、まさかゲイツか!?」

 

「おや? 俺様のファンの子かな?」

 

「レオン、知ってるの?」

 

信じられないものを見るような目で見開き、驚愕を露にするレオン。様子のおかしいレオンを訝しむもオルドリンにティンクが代わりに返答する。

 

「あぁ、裏の世界じゃ名の通った奴だよ。嘗てZ-BLUEに倒された裏組織アマルガムの一員。まさか生きていたなんて……」

 

「ハッハァ! そう、確かに一度俺様はZ-BLUEにやられた。死ぬかと思ったし実際に死にかけた。しかし、天が俺を見放さかったのさ! 俺はまだ死なないと! それもその筈、俺は過去幾度となく蒼のカリスマと対峙し、その度に生き残った! 不死身のコーラサワーから不死身の座を受け継いだのさ!」

 

Z-BLUE………相良宗介と彼の新しい相棒レーバテインに敗れ、そのまま死亡するかと思われたゲイツ。しかし、彼は生き残った。体の大部分をサイボーグと化する事で延命し、今日まで生き延びることが出来た。

 

自らを不死身を受け継いだと豪語するゲイツに奴を知るレオンとティンクは戦慄する。

 

「まぁ、その話はどうだっていい。それで? ブリタニアの元皇族様が何のようだ? あぁ、蒼神教に入信しに来たんだったか? なら盛大に歓迎するぜぇ、何せ元とは言え皇族の参加だ。この話をバラ撒けば噂を信じてやってくるバカは大勢増えるだろうよ」

 

「あ、あんた達はバカなの!? 今は唯でさえサイデリアルとの戦いで世界中が疲弊仕切っているのに、また争いの種を撒こうとしているの!?」

 

「そんな事になったらまた世界は戦争の時代に逆戻りだ」

 

これまで多くの犠牲の上で漸く掴めた平和の時代、この巨大格納庫に存在する機動兵器が全て動き出したら、世界は再び戦火が渦巻く動乱の時代に戻ってしまう。

 

そんな事になれば、今度こそ地球人類は滅ぶ。宇宙の崩壊を防ぐ処の話ではない。Z-BLUEが何とかする前に人類の歴史は崩壊してしまう。

 

だが、危惧するマリーベル達を他所にゲイツとベルクの反応は何処までも平坦だった。

 

「フハハハ! まぁ、流石にそんな事はしないさ。俺達も其処までバカじゃねぇからよ」

 

「あぁ、寧ろこれ以上の入信者は必要ねぇのさ。既に兵器達の製造は完了した。街ではそろそろロシウの坊っちゃんが勘づいているだろうし、国連のお偉いさん達も気付く頃合いだ」

 

「そもそも、俺達の目的は戦争じゃねぇ。俺達が向かうのはそんな血生臭い場所じゃねぇのさ!!」

 

「理想郷。いやぁ、まさかこの年になってそんな所に行けるなんてな。お宅の巫女様は大したもんだ」

 

理想郷。ゲイツの口から紡がれる言葉にマリーベルは訝しみ、また凄まじく嫌な予感が彼女の直感に囁いた。

 

「おいおいしゃべり過ぎだぜ兄弟。その話は控えろって言われてるだろ?」

 

「おっと、これは失礼したぜ兄弟。けれど許してくれよ、幸いにも口数ってのは少なくなるものだからよぉ」

 

向けられる銃口、マリーベル達を囲む全ての銃が彼女達に向けられる。このままここにいれば全滅は免れない。急いで車を動かしてここから逃げようとして………。

 

瞬間、遠くから爆発音と格納庫全体を震わせる振動が響いてきた。突然の事態にマリーベル達は勿論、ゲイツやベルクの目も驚愕に目を見開くことになる。

 

「おい、何の騒ぎだ?」

 

「だ、第四ブロックから火の手が上がっています! 報告によれば、捕まっていた者達による反抗だと思われます!」

 

「っ!おい、確か其処には例の奴がいた場所だよな? 奴は最新の電子機器で施錠した特殊な牢にぶちこんだ筈だぞ!」

 

騒ぎを聞いてその首謀者である人物を予想してベルクはふざけるなと声を荒げる。何せ奴が捕まっているのは最新設備の牢獄、抜け出すのは勿論力でこじ開けることも不可能とされている特殊なモノだ。

 

だが、現実として騒ぎは起きている。ベルクは急いで現場に向かおうとするが。

 

「そう慌てるなよ兄弟。起きちまったモノは仕方ない。逃げ出す信者どもは勿体ねぇが、今はこいつらをどうにかするのが先だ。そうだろ?」

 

「………あぁ、そうだな。奴の事はあとで対処すればいい。それに向こうにはアイツが向かっている。今頃は同士討ちでもしているだろうよ」

 

突然の事態に熱くなったベルクがゲイツの言葉によって瞬く間に冷静さを取り戻している。どうやら混乱の隙を突く事は無理そうだ。向けられる銃口は一切此方から逸れる事はなく、マリーベル達の眉間を狙って放さない。

 

ここで死ぬつもりはない。分の悪い賭けだが、それでも黙って殺されるつもりはないと、オルドリンは一縷の望みを掛けて車に載せられた剣に手を伸ばそうとしたとき。

 

「あら、ダメじゃない。よそ見は」

 

一発の銃声と共にベルクの手にした銃が何者かによって撃ち抜かれた。

 

再び起きる予期せぬ出来事、ベルクは勿論ゲイツ迄が驚愕していると、赤く長い髪を翻しながら一人の女性がマリーベル達の前に下り立つ。

 

「だ、誰だテメェ!?」

 

「────チッ」

 

「それは此方の台詞。人様の故郷にこんな基地を作って、一体何なのよあんた達は! 返答次第じゃ、アイツに変わって鉛玉をぶちこむわよ!」

 

一人の女性の登場にベルクは動揺し、ゲイツは忌々しく舌を打つ。

 

ヨーコ=リットナー、ヴィラルからの要請を受けて緊急参戦。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、これで退路は出来た! オズ! 良いんだな!?」

 

「あぁ! 先に皆を連れて脱出してくれ! 殿は俺がやる!」

 

騒ぎの現場である第四ブロック、多くの機動兵器に囲まれた格納庫内にて、持ち前の器用さで爆薬を作り、それを以て壁を爆破させたズィーは舞い上がる煙の中で聞こえているであろう相方に声を飛ばす。

 

「気を付けろよ。そいつ、ジルクスタン王国の暗殺者(アサシン)だ」

 

「あぁ、分かってるさ」

 

「白炎の方も任せておけよ。俺の予想ならお前の機体はまだ無事───おわっ!?」

 

走り去って行く音が聞こえたから、どうやら相棒は無事に脱出出来たらしい。その間際、突然現れた黒い孔にズィーが呑み込まれたなどついぞ気付けなかったオルフェウスは目の前に佇む暗殺者を睨み付ける。

 

「さて、どうしてあの電子錠の牢屋から抜け出したのか、そろそろ教えて貰っても宜しいかな? なぁ、ピースマークのオズ!」

 

「既にピースマークは解体された。そういうお前達こそ、何故蒼のカリスマの名を使い新大陸でKMFを製造している。答えてもらうぞ、ジルクスタンの暗殺隊長スウェイル=クジャパット!」

 

「フンッ、吐かせて見るんだな!」

 

手にしたナイフで交差する二人、オルフェウスとスウェイル、共に修羅場を潜り抜けてきた両者の間には明確な力の差は無く、手にした刃は奮われる度に互いの服や肌を切り裂いていった。

 

嘗てテロリストとして世界と対峙した者の一人、オルフェウス。数々の戦場を通して培われた彼の戦いのセンスと技術はブリタニアに存在した帝国最強の騎士達にも匹敵する。しかし、そんな彼の力で以てしても目の前の暗殺者を倒すには至らない。

 

「流石にやるじゃないか。どうやら分が悪いのは此方の方みたいだなぁ」

 

「無駄口を叩く余裕はあるようだがな」

 

「そうでもないさ。これだけ騒ぎが起これば近い内に他の部隊の奴等が来る。そうすればそいつらに俺の失態が上に報告され、俺の給料が減る。まぁ、つまり………俺も出し惜しむ場合じゃないって事さ」

 

瞬間、男の眼が赤く瞬き緋色の翼がはためく。その輝きをギアスによるものだと瞬時に理解するオルフェウスだが、防ぐには一手遅かった。

 

自分の迂闊さに呪いながら目を開ければ、其処には今さっき別れた筈のズィーが佇んでいる。

 

「───人の姿を真似るギアスか!」

 

「そうとも。知ってるって事は過去に似たようなギアス保有者と戦ったか? だが生憎、俺のギアスはそれだけじゃなくってさ」

 

「っ、煙幕!?」

 

「ついでだ。楽しいショーの幕開けといこうか」

 

瞬間、辺り一帯に真っ白な煙幕が充満する。これで視界は防がれた。相手の動きを読むためにオルフェウスは集中し、意識を高めていく。

 

そして、背後から物音が聞こえてきた。奴だ。ギアスを使って結局は不意打ちが狙いなのかと呆れながら手にした刃を振り抜こうとすると。

 

「ヒィッ! や、止めてくれぇっ!!」

 

「っ!?」

 

ズィーの姿をしておきながら予想と全く違う反応を見せる姿にオルフェウスは驚愕し、咄嗟に手を止めてしまう。

 

(まさか、奴の能力はっ!?)

 

気付いたのはいいが、やはり一手遅かった。動いてしまった事により晒してしまった己の死角に暗殺者の刃が襲い掛かる。瞬いた銀閃がオルフェウスの肩を切り裂いていく。

 

「ほう、あのタイミングで避けるとはな。しかも初見で俺のギアスのタネを暴くとは。本当に大したモノだ」

 

「─────」

 

「お察しの通り、俺のギアスは相手の視覚情報を弄くること、何とも小癪だがこと暗殺に冠してはとびっきり相性の良いギアスでな。俺も重宝してるのさ」

 

相手の視覚に自分の知る人、異なる人の情報を入れ替え、植え付ける厄介きわまりない性質のギアス。恐らく先程の怯えていたのは避難していた人間の誰かなのだろう。未だ格納庫には避難出来ていない被害者達が残されている。

 

心理的余裕も奪われ、戦いの優勢は完全に相手に奪われてしまった。煙幕さえ晴れれば打開の一つも思い付きそうなものだが、それを待つほど相手は甘くないだろう。

 

「さて、そろそろこれで終わらせてやるか………ん?」

 

懐から拳銃を取り出し、惑うオルフェウスに銃口を向ける。これで奴も終わりだと、不敵に笑みを浮かべるスウェイルは近付いてくる人物に視線を向ける。

 

その男は確かこの基地の周辺で彷徨いていた奴で、それを発見したシェスタールが捉え、牢にぶちこんでいた筈の男だった。

 

何故、コイツは逃げないのか。不審に思うスウェイルだが、それは恐らく自分の煙幕によるものだと察し、自分の不手際に呆れてしまう。

 

「やれやれ、さっさと逃げれば良かったものを……まぁ、運が悪かったと諦めてくれや」

 

折角のオルフェウスを殺す機会を失ってしまうが、煙幕が完全に晴れるにはまだ時間がある。ギアスの効力も切れない以上、戦局は未だ自分に有利になっている。

 

まずは、目障りなこの優男から殺してやろう。手にした拳銃を男に向け、引き金を絞り銃弾を撃ち放つ。間違いなく、その銃弾は奴の眉間に向けて放たれた筈だ。

 

しかし、その銃弾は男の眉間を撃ち抜く事はなく。人の頭蓋を撃ち抜いて余りある威力を持ったそれは、男の手によって何ともなく掴み取られてしまった。

 

「────はっ?」

 

一瞬、何が起きたか分からなかった。目をパチクリさせて混乱するスウェイルが最期に眼にしたのは拳と見馴れた格納庫の天井、並びに何処までも広がる青空だった。

 

 

 

 

 

 

 

「っ、なんだ。今の爆風は!?」

 

突然起きた暴風、吹き荒れる風は煙幕を引き裂き、煙に包まれた格納庫を露にしていく。何事かと瞠目するオルフェウスだが、辺りには何も変化は無く、ただ煙幕と同時にスウェイルの姿も消えていた。

 

一体何だったのか、不思議に思うオルフェウスだが、向こうからやってくる優男に咄嗟にその拳銃を向ける。

 

「ちょ、ままま待ってくださいよオルフェウス君! 俺だよ、シュウジだよ!」

 

「───本当か?」

 

「嘘ついてどうするのさ! それより早く此処から出よう! 他の皆はもう全員逃がしたから、後は俺達だけだよ!」

 

その言動からどうやら奴では無さそうだ。そう判断したオルフェウスは取り敢えず銃を下ろす。

 

「………そうか。了解した。だが、逃げるのはお前だけにしろ。俺はまだここでやることがある」

 

「え? で、でも………」

 

「お前に心配される程、俺は落ちぶれてはいない。さぁ、早く行け。直にこの基地は爆破する。巻き込まれる前に逃げろ」

 

「わ、分かった。なら、この端末を持っていってくれ。ここの見取り図だ。きっと君の役に立てる筈だよ!」

 

「なに? それは有り難いが……随分と手際が」

 

「じゃ、オルフェウス君も気を付けて!」

 

投げ渡された端末、そこに描かれているのはこの基地全体の図と今の自分の居場所を記されていた。監視カメラの位置や管制塔に当たる施設まで、基地内のあらゆる情報がこの端末に書き込まれている。この短時間の内にどうやってそこまで調べあげたのか不思議に思うオルフェウス。

 

「───どうやら、運良くここの端末を手に入れたらしい。何とも、運の良い奴だ」

 

成る程、自ら調べたのではなく最初から記されていた端末を持ってきただけか。これだけの規模の基地で良くそんな端末を見付けられたものだと感心しながら、オルフェウスはその場を後にする。

 

その時、オルフェウスの頭上にある天井には青空まで見える穴が出来ているのだが、それを彼が気付く事はなかった。

 

 

 

 

 




新型コロナ、皆さんも充分気を付けてください。

外出する際にはマスクを、帰ってきたら手洗いうがいも忘れずに。



それでは次回もまた見てボッチノシ


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