『G』の日記   作:アゴン

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うがい、手洗い、大事。




その222

 

 

 

 

機動兵器とは、自動手動問わず人が生み出した文字通り動く兵器の総称である。MS、KMF、AS、AT、スーパーロボット、この多元世界には規格から規模、用途、サイズまで多岐に渡って様々な兵器が存在しており、嘗ての地球ではこの機動兵器を用いた大規模な戦乱が地球全土で起こっていた。

 

ある時は国同士で、ある時は地球外や別次元別世界からの侵略者に対抗する為、多種多様な機動兵器が造られていた。

 

しかし、そんな機動兵器にも共通点がある。特殊な素材による装甲、機能、システムとMSだけでも数多く存在する中で一つの共通点があるモノ。

 

それは重量である。大小問わず存在する機動兵器には必ずと云って良いほどに金属が使用されており、どんな特殊な素材であってもそれが十数mの巨大兵器となればどんなに低く見積もってもトンの領域から出ることはない。

 

例外があるとすればそれはZ-BLUEに所属する嘗てのバスターマシン7号ことノノ位なモノで、サイズの小さなアーマード・トルーパーですら装備次第では総重量が10tに迫ることがある。

 

つまり、マリーベルを始めとした人間が目にした出来事は実際には有り得ない光景であるということ。背丈2mに満たない男性が自身の何十倍も巨大な機動兵器を貫き、持ち上げるなど決してあり得てはならない事象だという事。

 

それを為すのは正しく人から外れた人外の所業。しかし、マリーベル達は思い出す。自分達の眼前で佇む仮面の男が何と呼ばれ、世界中から畏怖されてきたのかを。

 

“魔人”。そう、彼女達の前にするのは世界最強のテロリストにして最凶の魔人。人の身でありながら人を凌駕する理解の埒外の………怪物である。

 

「これが………蒼の、カリスマ」

 

「グランゾンだけじゃなかった。規格外なのは彼自身も同じ!」

 

機動兵器の群れと戦略兵器に匹敵する巨大兵器を前に、臆すること無く対峙する蒼のカリスマの背中にオルドリンは戦慄する。侮っていた訳ではない、舐めていたり、慢心していたつもりもない。自分なりの評価を以て仮面の魔人を最大限に警戒していたつもりだった。

 

その認識は砂糖菓子よりも甘く脆いものだと認識するのも当然の帰結だった。自分ではあの蒼のカリスマに敵わない、そう確信するには充分すぎる光景だった。

 

だが、分からないのはどうして蒼のカリスマが奴等と敵対しているのかだ。蒼神教は蒼のカリスマの名を騙り、蒼のカリスマに恩を感じる者達を一方的な搾取の対象として呼び込む舞台装置でしかない。蒼のカリスマ本人に直接的な害がない以上、本人が出てくるのは意外なことではないかとオルドリンは思う。

 

(もしかして、蒼のカリスマって私達が思っていた以上に人間味があったりする?)

 

やっていることは人外のそれだが、もし蒼のカリスマ本人がここへ出てきたのが単に自分を一方的に利用する事が許せないというのなら、蒼のカリスマは自分達が思っていた以上に人間臭い人物だ。

 

これまで、リモネシアでの惨劇から蒼のカリスマは残虐で冷酷、普通の人間とはその思考から隔絶した人物かと思っていたが、もしかしたらそれは間違った認識なのかもしれない。

 

………まぁ、やっていることは人外のソレだが(大事な事なので以下略)

 

ともあれ、蒼のカリスマ一人に任せるのは余りにも忍びない。自分達は騎士、主の下に集い主の為に剣と為す騎士団、そして自分は敬愛するマリーベル=メル=ブリタニアの筆頭騎士。

 

で、あるならば。

 

『マリー、指示を。私達に指示を頂戴!』

 

『っ!? お、オルドリン?』

 

『私達は貴女の騎士、貴女の為なら命だって懸ける。戦うのも、逃げるのも、貴女の気持ち次第よ』

 

オルフェウスの操る車につけておいた通信機器から主であるマリーベルの息を呑む音が聞こえる。恐らく、彼女も迷っているのだろう。突然現れた蒼のカリスマと魔人と恐れられる彼の力を間近で見せ付けられた恐怖、恐らく今のマリーベルは嘗てのトラウマを想起させている事だろう。

 

でも、オルドリンは敢えて助け船を出すことはしなかった。自分に出来る事はあくまで騎士として主である彼女から指示を受け取り、それを実行すること。薄情だと思われるかもしれない、自分はマリーの騎士に相応しくないと、そう彼女に拒絶されるかもしれない。

 

けれど、オルドリンは信じている。自分が慕い、自慢で誇りである彼女がこんな所で俯いたままでいることはないと。

 

『───ごめんなさい。オルドリン、心配掛けちゃったわね』

 

『マリー!』

 

『ヨハン戦術顧問、私の機体を!』

 

『りょ、了解!』

 

団長であるマリーベルの指示に従い、旗艦から己の愛機である機体が投下される。ランスロット・トライアル、赤い色合いのその機体は例え血に染まろうと厭わない鋼の意志を示したマリーベルの決意の証。

 

オルフェウスの案内のもと、機体へと辿り着いたマリーベルはそのまま搭乗。備え付けられたインカムを耳に取り付け、オープンチャンネルに同調させる。

 

『総員、敵戦力を迎撃! 蒼のカリスマと協力し、蒼神教を打ち倒し、真実を明らかにしなさい!』

 

『『『イエス・ユアハイネス!!』』』

 

主の命に従い、騎士達は狂暴な猟犬と化す。ランドスピナーを回転させ、機動兵器の群れへと吶喊する彼等の動きはその数の差から自殺行為に等しかった。

 

しかし、彼女達もこれ迄多くの修羅場を潜り抜けてきた戦士、多勢に無勢な状況は腐るほどあったし、これ以上に絶望的な戦況も多々あった。数こそ多いが、それでも所詮は人の意志を持たぬ機械人形。これ迄多くの経験を重ねてきたグリンダ騎士団にとってそれは苦になる理由にはならなかった。

 

地を駆けるASやATを撃破し、空を飛ぶMSを撃ち落とす。連携に連携を繋げ、火力を重ねて敵の陣営を崩していく。旗艦のバックアップを受けながら一気に攻めるその姿はまさにブリタニアの先駆けと言えた。

 

そんな彼等を見て蒼のカリスマは感心する。良くできた動きだと、ベヘモスやデストロイといった巨大兵器には梃子摺っているものの、他の機動兵器は瞬く間に撃破し、その動きはどこまでも鮮やか。単純な連携だけならZ-BLUEにだって見劣りしないグリンダ騎士団の猛威に、仮面の魔人は素直に見事と誉めた。

 

「さて、騎士団の皆さんもやる気を示した所で、此方も始めるとしようか」

 

『ぐ、ぐぅ……』

 

『ヌグゥ……』

 

「本当なら、私もここまででしゃばるつもりはなかった。対抗できる者がいるならその者達に任せ、自分は裏方に回り支援に徹しようと。幾ら私の名を騙った所でそれは私の不手際、やり遂げると言う者がいるならば、それに手を貸すだけに留めておこうと、少し前の私はそう思っていた」

 

「だが、お前達はやり過ぎた。人の善意を踏み躙り、他者を嘲り、彼の思いも無碍にした。可哀想とは思わんよ。既にお前達はそんな段階を過ぎている」

 

『………ハッ、蒼のカリスマだとか魔人とか言われても、所詮は人間かぁ! 私情丸出しだバカがっ!』

 

ベルクが吼え、機体の尾の部分から熱線が放たれる。並みの装甲なら一瞬で熔解する熱線、それだけに留まらず全身の至るところから砲門やハッチを開き、銃弾やミサイルの雨を蒼のカリスマに降り注いでいく。

 

相手が魔人だろうと構わない形振り問わずの見境なしな攻撃、爆風が地を抉り、熱線が大地を焼いていく。蒼のカリスマが見せた私情を隙と見て撃ち放った弾薬と全てのエネルギーは余すこと無く蒼のカリスマへ叩き込められた。

 

舞い上がる黒煙、天にも達する大規模なその煙の規模はカミナシティの総督府からでも確認できる程だった。

 

『は、ハハハハ、バカが! どんなに体が強くても所詮人間なんだ。だったらよぉ、兵器の攻撃に耐えられる訳ねぇだろぉがぁ!』

 

大量の汗を流しながらベルクは嗤う。全てを出し切ったと、これで駄目なら諦めるしかない。傭兵として好き勝手生きてきた自分だ。死に対する覚悟はとうの昔に出来ている。

 

そう、自分は屈しない。喩え死だろうが自分を屈する事は叶わない。自分は恐怖など抱かない、何故なら、此処で死んだとしても巫女が創る新しい世界には自分の幸福が約束されているのだから。

 

だから、恐怖を抱くことなど───。

 

「なんなんだぁ、今のはぁ?」

 

『ひぃっ!?』

 

(やっぱ無理ぃ。恐すぎるぅぅ!!)

 

黒煙の中から無傷で現れる魔人にベルクの心は悲鳴を上げる。勝つ負けるの問題じゃない、そもそもこの化け物とは出会してはならない類いのモノだ。

 

そう思っても既に時は戻らない。コックピットから脱出しようとするベルクだが。

 

「ワームホール、展開」

 

蒼のカリスマが右手を上げると、幾つもの黒い孔が空間を穿ち現れる。なんだと思うのも束の間、蒼のカリスマはワームホールへと飛び込み、重力加速によって速度を爆発的に引き上げる。

 

高速から音速、そして亜光速へと至り一筋の蒼い閃光と化した魔人は拳を突き出しKGF───バタララン・ドゥごとベルクを貫いた。

 

『あ……ぱぁ?』

 

痛みは無かった。痛みや驚きよりもただ恐怖と戸惑いしか無かったベルクは自身が何をされたのか最期まで理解できないまま、愛機と共に爆発。骨も残らないまま消え去った。

 

残りはお前だけだと蒼のカリスマの視線はゲイツへと向けられる。彼の操る赤いコダールは特殊なシステムであるラムダ・ドライバの恩恵を受けている。その性能は純粋な戦闘力ならばベルクの駆っていたKGFよりも勝っている部分が多い。

 

だが、それでもゲイツは全く勝てる気がしなかった。相手は生身でも規格外な超弩級の怪物、マトモに相手をした所で結末は見えている。だったらいっそのこと蒼のカリスマに降ればいいと思ったが、相手の様子からしてその気は毛ほどもないだろう。

 

傭兵である自分だが命は惜しい。何故なら自分は生粋のサディストであり、同時に快楽殺人者。楽しいから殺し、楽しくなくても殺す。仕事だから殺す。殺して殺して殺すのが我が稼業。

 

平和な世界などクソ喰らえ。今回のあの国に加担したのだっておまんまを食いっぱぐれるのを防ぐためでしかない。

 

『そうさ、俺は死なない! 何故ならば、俺様には最高のお守りであるこのモミアゲがあるからだ!』

 

「だったら、そのモミアゲごと根刮ぎ刈り取ってやりましょう。頭髪もろとも、ね」

 

『怖すぎィ! しかし挫けない。何故ならば私は努力する人間だからだ!』

 

そう言って、ゲイツは逃走を計る。無駄な事だと理解しながらも、それしか方法は無いと傭兵であるゲイツは任務よりも自身の命を選択した。

 

もうアマルガムは存在しない。このまま逃げ切り何処か遠い場所で傭兵を続けよう。未来の自身の人生設計を描くという現実逃避をしながら。

 

『悪いけど、裏切り者に逃げ道は用意してないよ』

 

『ふぇ?』

 

その言葉を最期にゲイツもまた己の機体と共に消滅した。自身に何が起きたか理解できぬまま。

 

呆気ない最期となったゲイツを尻目に蒼のカリスマは目の前に現れるKMFを注視する。両肩に楯を取り付けた独特なフォルムな機体、それを目にしたオルフェウスは驚愕に目を見開かせていた。

 

(今の加速、スザクのランスロットやカレンちゃんの紅蓮とも違うな)

 

残像を残すほどのハイスピード、KMFが出す限界速度を遥かに超える機体性能に蒼のカリスマは訝しむ。まるで乗り手を考慮していない機体だ。これ程の機体を操るのは相当の実力者でないと成り立たない。

 

一体どんな奴が………そんな風に考えていると、眼前のKMFは跪き。

 

『お待たせしました我が神よ。貴方を我がジルクスタン王国へ案内致します』

 

「…………あぁ?」

 

思わず素の声が出てしまった。

 

 

 

 

 

 




ボッチの現在の身体能力をポワッと書いてみた。

ボッチ(ノーマル)

脚力:ガンダム(トランザム状態)に追い付く程度。

腕力:ノノちゃん(バスター形態)と同じくらい。

飛行:バルキリーと編隊飛行ができる。

ジャンプ力:富士山三個分。

耐久:バスターマシンには負ける。

総合:お前人間じゃねぇ!



大体こんな感じ(笑)


それでは次回もまた見てボッチノシ





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