最近になってニーアオートマタに嵌まっている作者です。
現在、Aルートをクリア中。
2Bも9SもA2もオペ子も司令官も皆可愛いけど
個人的にはパスカルが一番の推しです。
あとエミール。
ジルクスタン王国。KMFやMS、規格やサイズの異なる機動兵器が数多く配備される首都、そのど真ん中にて蒼のカリスマことシュウジは一国の全戦力と相対していた。ジルクスタンは兵士そのものを国の財力としている国、そう豪語するだけあって小国でありながら、彼らの軍事力は目を見張るモノがあった。四方八方に配置された機動兵器、その銃口の全てが自分一人に向けて狙いを定めている。
一歩でも動けば即座にその銃口の全てから銃弾が放たれるであろう緊迫した状況の中、意外な人物が突然空から割って入ってきた。
彼の名は張五飛、嘗てはヒイロやデュオ達と同じコロニー側のガンダムとして世界と戦い向き合ってきた少年。愛機であるアルトロンガンダム(通称ナタク)と共に現れた彼は、得物を片手にジルクスタン王国の兵士に問う。お前達に正義はあるのかと。
『張五飛だと!? 貴様は今マリナ=イスマイールの護衛に付いていた筈、何故ここに!?』
「え? マリナさんも来てるの?」
憤慨した様子で訊ねるシャリオにシュウジが反応する。どうして平和主義の彼女がこんなおっかない国へわざわざ来ているのか、これも国連に属する偉い人の立場故のお仕事なのか、オーブのアスハ代表や今はプラントのクライン女史も何だか忙しそうだし、大変なんだなぁと緊迫した空気に対してシュウジの心境は何処までも平凡だった。
そんなお偉いさんが来てるなら尚更こんな事をしている場合ではないだろうに、それともそういう一切合切も全てどうでもいいというのだろうかあの巫女は。だとするなら少し急いだ方がいい、行動を移そうとするシュウジはこの場を五飛に任せていいかと訊ねる。
「五飛君、今状況は切迫しています。これから私はシャムナ女史を拘束しに行きたいのですが………」
『了解した。ならば殿は俺がやろう』
「感謝を」
短いやり取りの中で必要最低限の会話で役割を決めた二人、シュウジはシャムナの暴挙を止めようと跳躍し、シャリオがさせまいと前に出る。それをナタクのビームグレイヴが薙ぎ払うように奮いこれを防ぐ。
『っ、邪魔をするな!』
『言った筈だ。お前達の正義を俺に見せろと!』
『正義だと!? そんなもの、決まっている!』
KMFとMSでは規格サイズが異なっている。その機体差から物理的に押し負けるシャリオとその愛機は持ち前の機動の高さと技量を以て五飛のガンダム、ナタクの一撃を受け流す。その若さに似合わぬ卓越した技量、確かにこの少年は戦士と呼ばれるに相応しい実力を有している。それこそ、悲しいくらいに………。
『姉さんと、ジルクスタンを護る! 如何なる手段を用いても僕達の国を、未来を護る! それが、僕の正義だ!』
『ならば問おう! 国を、姉を護る事が正義と言うのなら、何故貴様は戦うことに固執する!』
『決まっている! それは、僕がジルクスタンの兵士だからだ!』
シャリオの愛機ナギド・シュ・メインの各所から光が溢れ、その機体は爆発的に速度を加速させていき、それに合わせて周囲の兵器の群れがナタクへ照準を合わせる。この街のど真ん中でこれだけの数の銃弾砲弾を一斉に受ければ、幾ら頑丈なナタクであろうとも無事では済まない。
いや、被害はそれだけに留まらず周囲の建物すら吹き飛ばしてしまうだろう。まだ周辺には事態を呑み込めていない民衆が留まっている筈、五飛は叫んだ。これがお前達が求めている勝利なのかと。
『これが、お前達のやり方か! ただ一つの勝利の為に多くの犠牲を強いるこんなやり方が!』
『民達は生き返る! 姉さんが創る理想の世界で! 皆、とうに死ぬ覚悟は出来ている!』
シャムナの思惑、それはシャリオにも重々承知していた。姉の企てる計画が為されれば多くの犠牲が生まれる事を。
けれど、それ以上に幸福な世界が待っていることも知った。その世界に到達すれば全ての負債がリセットされる。これまで犠牲になったモノを全て取り戻す事ができるのだと。
シャリオは姉を誰よりも信じている。彼女の言葉もその計画も、何もかもを知りながら、彼はこの道を往くことを決めた。妄信的と言われようと、それが兵士である自分の役目なのだとシャリオは信じて疑わない。
対して五飛は歯を噛み締めた。相手の目論見が何なのか今一つ分からないが、どうやらコイツらは相当ヤバい事案に手を出そうとしている。念の為にと事前にトロワ達に連絡を取り、マリナ=イスマイールをジルクスタンから遠ざけたのは皮肉にも正解だった訳だ。
砲弾が放たれる。機動兵器にすら通じる質量兵器が惜し気もなくナタクへ降り注いでいく。着弾による爆発を覚悟する五飛、しかしその衝撃が訪れる事はなく。
代わりに深紅のエネルギー波が全ての兵器による攻撃を防ぐ。突然の現象に戸惑うジルクスタンの兵士達、だが五飛にはこのような色をした事象に心当りがある。
『今の光は輻射波動………まさか!』
『どうやら、間に合った様ね』
上空から降り立つ深紅のKMF、朱い翼を広げてナタクの隣へ降り立つその機体は、Z-BLUE及び黒の騎士団の特攻隊長、紅月カレンとその相棒だった。
「どうやら、向こうは間に合ったようだな」
「なら、私達はアイツを追いましょう。急がないと勝手に事態は終息するわよ」
遠くで様子を眺めていたヨーコとオルフェウス、援軍の無事の到着に一先ず安心し、自分達も目的の為に行動する。ナタクの優れた望遠カメラがその様子を捉えていたが、五飛は取り敢えず見なかった事にした。
『紅月、来てくれたのは感謝するが……いいのか、お前も今は休養中だった筈だが』
『仕方ないわよ。ヨーコを通じてロシウからの応援要請だし、一番現場に近かったのは私だし………それに』
『この新しくなった紅蓮のテスト、済ませるのに絶好のチャンスみたいだしね』
それは来るべき決戦に備え、ロイドを始めとしKMFの権威が総出を上げて仕上げた次世代KMFの一機。それがこの“紅蓮特式”である。
『一機増えた所で!』
シャリオが叫び、再び地上から弾幕の雨が放たれる。避ける事は至難、ならばと紅蓮はその得意な右腕を掲げ、再び輻射波動のバリアを展開。周囲の建物を最低限の損壊に留めさせる。
『生憎と、その程度の弾幕にやられる程私と紅蓮は甘くないわよ』
コックピット内で不敵に笑うカレン、その視線の先には彼が向かっているであろう神殿へと向けられていた。
◇
『何故、こんな事になってしまったのだ』
ジルクスタン王国の将軍、褐色の城壁の異名を持つボルボナ=フォーグナーは、既に進退が定まりつつある自国の行く末に些か以上の不安を抱きながら、ガン・ドゥ・グーンのコックピット内で部下達に聞こえないように一人愚痴を溢す。
我がジルクスタン王国は既に度重なる大戦により多大な損害を受けている。破界事変に再世戦争、時獄戦役に続いて今回の戦乱。既に軍事力の大半は失われ、兵士を国力としているジルクスタンは既に滅びの一途を辿っている。
それを防ぐには他の小国と同様に国連に助力を要請し、同盟として国連の一部になる他ない。だが、どれだけ言葉を尽くしてもこの国のトップに立つ姉弟は聞いてはくれなかった。
シャムナもシャリオもそれぞれ特筆した能力を有しており、それ故に国民からの信頼は厚い。ボルボナ自身も大将軍と呼ばれる程には部下や国民から確かな信頼を得られてはいるが、その影響力は予言の巫女の力を持つシャムナには及ばない。
そんな彼女が今は新たな世界を創造するという妄言まで吐くようになってしまった。彼女に任せれば全てが上手く行く、そう信じて疑わない多くの民草によって、この国は破滅の道を突き進もうとしている。
将軍として、止めに入るべきなのだろう。しかし、彼女の計画は既に後戻りの出来ない状態にまで来ているという。アマルガムという裏組織が壊滅したと聞いた時から感じた奇妙な違和感。恐らくは自身の後ろにある神殿に棺桶のような設備が運び込まれた時点で、彼女の計画は止まれない所まで来ていたのだろう。
ボルボナはこの国を愛している。喩え野蛮と蔑まされようと、この国で生まれ、育ち、そして死んでいくのだと決めていた。
だが、それももう叶わないかもしれない。次元力とギアスによる応用で新たな世界を生み出すと言われても、具体的な話が全く見えないシャムナの計画を心の底から賛同することは出来ない。
そもそも、今の世界でジルクスタンは建て直せないと諦めている者が、どうして新たな世界でやり直せると言えるのだろう。だが、似たような台詞で何度忠言をしても、彼女は首を縦に降る事はなかった。
もう、自分には止められない。ならばいっそのこと、現在こちらに向かって来ている彼にトドメを刺された方が、ある意味まだ救われるかもしれない。
『閣下、来ました』
部下から繋がれる通信から思考を現実に引き戻す。重い瞼を開けながらその眼に映すのは、己が搭乗する機体のカメラ越しに見える外の様子。
都市部にまで伸びるこの大橋の向こうから蒼い仮面を付けた魔人が駆けてくる。さっさと己の愛機である魔神を喚べば決着も早まるだろうに、そうしないのは彼なりの気配りなのだろうか。
我がジルクスタンに於いて最大の恩人。押し寄せる侵略者の軍勢から見返りもなく助けてくれた救世の英雄、一部の民衆からは神同然として崇められている恩人が、今度は滅ぼす為にやってくる。
皮肉な話だ。しかしこれこそがジルクスタンの救いかもしれない、彼の愛機であるグランゾンをいつまでも呼ばない事に違和感を抱きながらも、ボルボナは部下達に一斉掃射の命令を下す。
瞬間、蒼のカリスマの前方でミサイル等の弾幕が視界一杯にまで広がっていく。このままでは橋は吹き飛び、ジルクスタン王国に経済的大打撃が打たれてしまうだろう。
避ける事は叶わない。ならば撃ち落とすしかないと、蒼のカリスマ────シュウジは己の意識と肉体を加速させる。
踏み込んだ足がコンクリートの地面にめり込む。脚に溜めた力を一時的に爆発させ、一瞬の内に残像を残すほどの速さを得たシュウジは、その手足を以て放たれる弾幕を次々と撃ち落としていく。
銃弾を弾き、砲弾を蹴り上げ、ミサイルは爆発させないよう信管だけを抜き取っていく。圧倒的な物量のそれらをふざけた芸当で次々に無力化されていく光景に、ボルボナを含めた彼等の部下達は言葉を失った。
あれだけの弾幕が全て爆発せずに鎮圧されている。呆けてしまうボルボナだが、これが蒼のカリスマかと戦慄を覚えながら、部下達に第二波の指示を飛ばす。
『ひ、怯むな! 魔人とはいえ相手は一人、数で圧倒しろ!』
「悪いが、これ以上はさせないよ」
ボルボナの耳に届く聞き慣れない声、気付けばその声の主は最後の防衛ラインである部下達のKMFの間をすり抜け、既に此方の懐にまで侵入を許していた。
(こ、これが蒼のカリスマ、なんという突破力! もはや人間では───)
そうしている内に蒼のカリスマはガン・ドゥ・グーンを体ごとぶち当たる形で貫き、ボルボナの機体は爆発。自分達が慕う上官の最期に辺りから絶叫にも似た悲鳴が木霊する。そんな中、爆炎の中二つの人影が飛び抜け────。
悠然と地面へと着地する彼に再び言葉を失う。
「ば、バカな。何故私は生きている」
「見た感じ、アンタはここの事情に詳しそうだ。話ついでに付き合ってもらうぜ」
蒼のカリスマの肩に担がれている我らが大将軍。部下達は勿論、死ぬかと思っていたボルボナは突然の事態に戸惑いを隠せていないが。
そんな彼等の心境に構うことなく、シュウジは再び駆け出すのだった。
もし、ボッチがニーアオートマタに介入したらどうなるのだろ?
取り敢えず、司令官と9sは胃痛枠になることは間違いない(笑)
それでは次回もまた見てボッチノシ