『G』の日記   作:アゴン

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くそ暑い日が続きそう、皆さんも気を付けてください。


その228

 

 

 

◯月×日

 

 自分こと蒼のカリスマを崇める蒼神教から端を発したジルクスタン王国での騒動、シャムナの身柄をシュナイゼルの所へ預けジルクスタンを国連へ加盟させる事で落とし所となり、漸く本来の目的であるキタンさんの墓参りをする事になった自分はカミナシティの郊外にある墓地へ訪れる事が出来た。

 

どうやら既に多くの人達が墓参りに来ていたようで彼の墓には多くの献花が添えられている。自分もそれに倣おうと慎ましやかだが花を添え、次いでに線香も焚こうかと迷っていると、久し振りに彼女達と出会った。

 

 黒の兄妹の三姉妹。キヨウさん、キノンさんキヤルちゃん達である。キヨウさんの腕には長女アンネちゃんが抱かれており、自分を見ても笑いながら手を伸ばしてくる人懐っこさを見せてくれた。

 

キノンさんもロシウ君の秘書をしているだけあって普段は険しい表情をしているが、兄の墓参りで久し振りに家族とゆっくり顔を合わせているからか、昔のような優しい顔も見せるようになっていた。

 

そしてキヤルちゃんだが、バルビエルのスフィアによる力の影響も先の戦いの終盤に差し掛かった頃に解放され、今は特に後遺症もなく以前と同じ生活を続けられるようになるまで回復したという。

 

 彼女達もこの世界に来たばかりの頃の自分がお世話になった人達だったから、無事に元気な姿を見られた事に安心した。久し振りに会えたのだから昔の話をしながらお茶しないと誘われ、特に急いでいる事もないので自分はキヨウさん達の誘いに乗ることにした。

 

墓に花を供え、祈りを捧げ終えた自分達は再び会いに来る約束をしながら墓地を後にする。この時、気のせいかもしれないがキタンさんが笑みを浮かべて手を振っている姿を見たような気がした。

 

 さて、アンネちゃんを抱かせてもらったりしながらカミナシティへ戻ってきた自分達は先日起きた蒼神教関連の騒動の話を含めて世間話を街にある喫茶店で続けていると、ある一つの話題に触れる事になった。

 

キヨウさんの旦那さんであるダヤッカさん、リーロンさんを初めとしたグレン団の多くの面々がまだ帰ってこれていないのだとか。

 

そう言えば、ダヤッカさんやリーロンさんは超銀河ダイグレンの面々だ。そんな彼らはサイデリアルに強襲されて国民を人質に取られ、その後は何処かへと幽閉されたのか今まで音沙汰なかった。サイデリアルが地球から撤退した今、彼等も解放されている筈、なのに戻ってこれていないという事は今もどこかで幽閉されたままなのか。

 

現在は超銀河ダイグレンの位置を探ろうとシモン君を始めとしたチームが躍起になっているらしい。ダイグレンのメンバーの中にはニアちゃんの名前もあったし、シモン君が必死になるのも分かる。

 

アンネちゃんがいるから気丈に振る舞っているキヨウさんだが、その表情は何処か暗い。ダヤッカさんも世話になった人の一人だし何とかして力になろう。自分とグランゾンなら大抵の事は何とか出来るだろうし、シモン君のグレンラガンと組めば次元の穴だって抉じ開けられるだろう。

 

 そう思い立ち上がると、俺の端末に通信が入る。何だと思い端末を開けば、そこには一つの情報が記されていた。

 

───木星近郊でE.LS.の大群が進行中。

 

この一言にキヨウさん達にも動揺が広がっていく。恐らくは彼女達も知っているのだろう、E.L.S.という金属生命体がどういうモノなのかを。

 

急いで宇宙に上がろうと自分は三人に挨拶を済ませて店を後にしようとするのだが、途中でまたもや思わぬ人達と再会した。

 

不動ZENさんと不動GENさん、何処と無く似た雰囲気を纏う二人は日頃から見せる落ち着いた様子とはかけ離れたボロボロの様子で佇んでおり、彼等に似あわない必死な様子で自分に訴えてきた。

 

 彼等が言うにはどうやらE.L.S.は襲いに来ているのではなく逃げ延びてきているだけなのだと、故に自分には迎撃ではなくE.L.S. を落ち着かせる様に尽力してくれと言われてしまった。

 

決して本気にはなるなと、グランゾンを使うとしてもネオ以降は絶対に使うなと、それはもう強く言われてしまった。

 

………なんで俺、不動さん達に危険人物扱いされてるのだろう? 自分はそんなに危ない人間だと思われていたことに少なからずショックを受けたのだった。

 

そして彼等の格好がボロボロになった経緯についてだが、詳しく説明をされることはなく今はE.L.S.に集中しろと言う事であやふやなままに終わったが、恐らく不動さん達は奴と出会したのだろう。

 

何故木星で奴と出会ったのかは知らないが、奴と戦ったことで少なからず傷を負った二人はそこに巻き込まれたE.L.S.を逃がす為に尽力し、何とか地球にまで戻ってきた。そう考えると今回の件と辻褄が合うし、あの二人が彼処までボロボロだった事も頷ける。

 

あの女、既に不動さん達を退けるほど強くなったのか、自分も初めてこの世界に来たときと比べて大分強くなったと思えるけど、まだまだ余裕ぶっている場合では無さそうだ。

 

 ともあれ、先ずはE.L.S.だ。あの機械生命体とも色々関わったことがあるし、顔見知り(?)である以上何とかした方が良いだろう。

 

 

 

◯月α日

 

 さて、先日不動さん達に謂われた通り月付近にまで迫っていたE.L.S.を宥めようと現場まで急行した訳なのだが、どうやらこの時のタイミングは中々悪かったらしい。Z-BLUEに代わって地球を守ろうとしている地球の艦隊とE.L.S.の大群が今まさにぶつかろうとした所へと転移してしまったのだ。

 

地球艦隊の皆さん達もそうだが、突然のグランゾンの出現はE.L.S.達の方が驚いた様で、自分の姿を見るや即座に転身、一目散と逃げ出してしまった。

 

 いや、そこまで怖がる必要ないじゃない。ぼく、悪い仮面じゃないよ? と内心で愛想を振り撒きながら重力操作でE.L.S.達の動きを封じ込める。地球艦隊の皆さんにも心配要らないという話を通し、戦いをどうにか止めることが出来た自分はさてこれからどうしようかという所で彼等が来てくれた。

 

ソレスタルビーイング。武装介入によって扮装根絶を体現しようとした彼等がイオリア=シュヘンベルグの意思の下に最後のミッションを完遂しに来たという。

 

 まぁ、人間とは異なる異種生命体との対話と意思疏通を目的として作られたGNドライブを搭載した彼等のガンダムなら何とかなるだろう。少なくとも力でしか場を収められない自分よりは余程安心して任せられると判断した自分はE.L.S.達を封じたまま彼等の母星らしき球体の巨大E.L.S.へ近付いた。

 

彼らと直接意識を交流させるには母星の中心部へ赴く必要がある。そう語るティエリア君の言葉に従い、グランワームソードで少し母星に切れ目を入れた自分はそのまま刹那君のダブルオークアンタと共に中心部へと向かった。

 

 中心部へと辿り着いた刹那君、初めて行う異種との対話に緊張しているのか、その表情は硬い。少しでも緊張を和らげてやろうと話し掛けても彼の表情は益々硬くなっていく。無理もない、何せ彼が今回の行ったのは人類初の試みだ。きっと彼の胸中では自分程度では推し量れない不安と緊張で一杯になっているのだろう。

 

せめて何かあったときのフォローに回ろうとダブルオークアンタの後ろで待機していると、刹那君はトランザムバーストを発動させてE.L.S.との対話を開始する。

 

 再世戦争で見せた時以上のGN粒子が辺り一面に満ち溢れていく。その幻想的とも思える光景にしばしば見とれていると、ティエリア君から通信が届いてきた。何でも自分がここにいるとE.L.S.が怯えて対話処ではないらしい。

 

て言うか、何故刹那君の機体からティエリア君が通信してくるの? 意識の共有? はえー、スッゴいなぁイノベイドって。

 

少々納得し難いが、刹那君の邪魔になるのも不本意な為、何かあったら直ぐに駆け付けると言い残してその場を後にした。事実、既にE.L.S.内部の空間座標は既にグランゾンと自分の頭に刻まれている為、万が一があっても対処できる。

 

 その後は引き続き外にいるE.L.S.達を抑えたり、近くの空間で引きこもっていた超銀河ダイグレンを引っ張り出したり、スメラギさん達と談笑していると、漸く対話の方が終わったのか、巨大な花へと変質させるE.L.S.から刹那君とダブルオークアンタが戻ってきた。

 

怖がっていたE.L.S.を落ち着かせるのに一番苦労したと語る刹那君、E.L.S.も地球人類に協力すると約束してくれたと言ってるみたいだし、これで本当の意味で地球人類は最後の戦いに集中出来るようになった。

 

これで残った問題も僅か、それが一番大変だけどどうにかして皆で乗り切ろう的な話をして、自分も解散しようとした時、刹那君から呼び止められた。

 

何だと思い立ち止まるが、返ってきたのはやっぱり何でもないという一言のみ、彼にしては珍しい歯切れの悪い台詞を不思議に思いながらも特に気にすることなく現宙域から離脱するのだった。

 

 そろそろシュナイゼルとの約束の日も近い。今回の旅の最後の締め括りとしてこのまま買い出しに向かうことにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ワームホールを広げ、瞬く間に転移していくグランゾンを見送る刹那は、その背中に一体何て言葉を送ろうか真剣に迷ってしまっていた。

 

あの時、母星型E.L.S.の中心部で見た光景。E.L.S.とは別に自分の意識に流れ込んできた全く別の風景。

 

そこは平和な世界だった。争いもなく、誰かの血が流れる事なく、ありふれた日常が続く平和な風景。そこに彼女がいた。

 

黒髪で、小柄な女の子。特に特別な力も能力もないその世界と同様で平凡で何処までもありきたりな少女。

 

しかし、その少女は輝いていた。目映くて目が眩みそうなほどに輝いて、その笑顔はその世界の何よりも尊く見えた。

 

 嗚呼そうか。この光景は、この少女はこの記憶の者にとって何よりも大切な人なのだと、刹那は確信した。何故今更になって奴の記憶が見えてしまうのか、再世戦争での時は全く見えず、読めなかった奴の本心が、どうしてこの時だけ見えてしまったのか。

 

分からない。けれど一つだけ確かなのは………。

 

「お前は、その大切なものを捨ててまで選んだ道があるんだな」

 

大切なものを守るために大切なものを捨てる。何処までも矛盾したその在り方に刹那はこの日、シュウジ=シラカワという男を理解した気がした。

 

 

 

 




Q.どうして唐突に刹那はボッチの記憶を断片的にでも読めたの?

A.
???博士「いい加減、理解者の一人増えてもバチは当たらないでしょう。全く、世話が焼ける半身です」


次回もまたオリジナル要素満載ですが、宜しくお願いします。


それでは次回もまた見てボッチノシ

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