『G』の日記   作:アゴン

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感想数の多さにビックリして腰抜かした作者です。
ご期待に応えられたか分かりませんが、楽しんで頂けば嬉しいです。

あ、因みに今回原作キャラ死にます。



その28

 ───燃える。全てが燃える。

 

これまで必死に積み上げてきたモノが、音を立てて崩れ落ちる。皆と積み上げてきた村が……壊れていく。

 

決して楽な日々ではなかった。重い瓦礫の撤去作業。慣れない土木工事に何度も痛い目に遭いながらも、それでもこの国を立て直そうと皆必死に頑張ってきた。

 

周囲の大国がリモネシアを無視し、カルロス氏を除いた全ての人間がリモネシアを無かった国に仕立て上げようとしながらも、それでも皆は笑いながら支え合ってきた。

 

……誰が壊した。怒りに思考を染め、自分とグランゾンを囲む此処にいる全ての者を睨む。

 

誰がやった? 国連か? ブリタニアか? アロウズか? それともインサラウムか? はたまた、ここにはいない別の誰かが裏で悪巧みをしているのか。

 

どうでもいい。今自分がやるべき事は犯人の有無を問い詰める事じゃない。……一人残らず、機体の破片一つも残さず叩き潰す事。

 

「……グランゾン、出力最大限。誰一人逃がさん。全て消してやる」

 

自分の言葉に呼応するようにグランゾンから全システムオールグリーンの表示がモニターに映し出される。相変わらず良い機体だ。ガイオウと最後に戦ったシチュエーションと同じ返事を返された事に、うっすらと笑みが零れる。

 

さぁ、懺悔しろ。赦しを乞え、命乞いをし、みっともなく生にしがみつけ。

 

それらの悉くを、今度は俺がお前達がしてきたように踏み潰してやる。

 

 カラミティ・バース以降覚える事の無かった殺意を胸に、俺はグランゾンのスラスターに火を付けた。

 

最初の標的は……黒い奴。奴に向けて俺は剣を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『っ、いきなりやってくれるじゃない。魔神ちゃん!』

 

 振り下ろされたグランゾンの一撃を皮一枚で避けたパールファングことマリリン。振り抜かれた魔神の一撃は地面を割り、砂塵を大きく巻き上げた。

 

確かに凄まじい一撃だ。マトモに受ければインサラウムの次元科学を使って造り上げたこの機体でもただでは済まないだろう。

 

だが……。

 

『隙だらけなのよぉぉぉっ!』

 

大振りの一撃だった為、グランゾンの動作に大きな隙が生まれる。そこを狙うマリリンはパールファングの武装の一つであるランドスピナーを回転させ、攻守交代とばかりに攻めに転じる……が。

 

『後ろに跳べ化け猫! それはまだ奴の間合いだ!』

 

『っ!?』

 

ウェインの言葉に反応して咄嗟に後ろに跳んだ瞬間、自分のいた場所に無数の光の槍が突き刺さる。

 

 冷や汗が出た。間一髪避けられた事に対してもだが、激昂して見境がなくなったと思われていた魔神が恐ろしくクレバーに徹している事実にマリリンはイヤな汗が噴き出るのを止められなかった。

 

魔神の眼が自分を射抜く。それだけでマリリンは心臓を鷲掴みされた錯覚に陥り、呼吸が荒くなり操縦桿を握る手が震えた。

 

……いつ以来だ。自分がこれほどまでに恐怖を感じたのは。長い戦いの日々の中、自分が嘗て戦場で味わった戦いの恐怖にマリリンは改めて実感する。

 

魔神の名を冠するのは伊達じゃない。此方にゆっくりと振り向くグランゾンにマリリンの乾いた笑みがコックピット内に響きわたる。

 

来る。剣を携え、再び近付いてくる魔神にどう対処すべきか悩んだ瞬間。ウェインの駆るサフィアーダが二機の間に割って入り、グランゾンに立ち向かう形で前に出た。

 

『化け猫! 貴様は俺を援護しろ。奴の相手は俺がする!』

 

『り、了解よん!』

 

ウェインの言葉に異論を挟む余地などなく、マリリンは指示通りに機体を下がらせ、パールネイルと同じ武装である小さき射手達を向かわせる。

 

対するウェインはサフィアーダの巨体を生かして無理矢理接近戦に移る。先程の大振りを見る限り近接戦闘なら此方に分があるとみたウェインはそのまま押し切ろうと試みるが……。

 

『嘘だろう? 何でビクともしねぇんだ!?』

 

ウェインの乗るサフィアーダは彼の師匠であるシュバルのエメラルダンと同型機。しかし、エメラルダンよりも後に誕生したこの機体はエメラルダンのデータを元により精度の高い仕上がりになっている。

 

パワー、スピード、それら全てがエメラルダンよりも上回っているのにグランゾンを押し潰す処か一歩も下がらせてはいない。

 

どういう事だ!? 混乱する彼に通常回線を通じて声が届いてきた。

 

『……機体といい攻撃のノリといい、シュバルのおっさんに縁のある奴だったか?』

 

『っ!?』

 

『もしそうなら一応聞いてやる。何でこんな真似をした?』

 

 一瞬、聞こえてきた言葉に背筋に悪寒が走る。これまで純粋な殺意など今まで戦ってきた中で数える程しかない。

 

やはりガイオウを倒したのは伊達ではないか。そんな考えが頭の中で浮かんだ。

 

『どうやら、アンタがこの地に縁があるというのは本当らしいな。何故この土地に拘るのかはしらないが……これが、俺達の戦いだからだ』

 

『………そうか』

 

『蔑みたければそうしろ。罵倒も受け入れる。けどな、そうでもしないといけないのがウチの事情だ。これがなぁ!』

 

サフィアーダのブーストに更に炎が灯る。鍔迫り合いの中、漸くここまで来てグランゾンが下がり始めたと思われた時。

 

『別に、お前等の事情は知った事じゃない。理由がどうあれ、お前等を叩き潰す事に変わりはない』

 

興味なさそうな呟きが聞こえた後、横に一閃。スラスターだけじゃなく、機関部まで両断されたサフィアーダは力なく倒れそのまま機能を停止する。

 

 

『……今の一撃、師匠と同じ……』

 

そこまで呟いてウェインは意識を手放した。ハイナイトの一人があっさりとやられた事実に終始近くで眺めていたマリリンは息を呑む。

 

だが、お陰で隙が出来た。一人倒した事で気が抜けているグランゾンにマリリンは、ビット達を背後から一斉射撃で爆発的加速の源であるスラスターを破壊しようと試みるが……。

 

『ワームスマッシャー』

 

ビット達の上から閃光の槍が降り注げられ、小さき射手達は一瞬にして全滅。此方の行動を全て読み切ったかの様な行動にマリリンの額から流れる汗の量が一層多くなる。

 

『……終いか?』

 

魔神から若い男の声が聞こえてくる。底知れぬ怒りを感じさせる男の声色にマリリンの頬がひくついた。

 

恐怖で心が折れそうになる。戦いに身を投じて長い時間を過ごしてきた彼女だが、久し振りに本気で怖くなってきた。

 

だが、これで終わる訳にはいかない。

 

『女の子には……やっぱりお花が似合うものよね』

 

『…………あぁ?』

 

『受けなさい、ブルーム・イン・ヘェェェェルッ!!』

 

ランドスピナーを結合させ、一つの武器に変形させる。そこから発せられるエネルギーが放つ緋色はまるで血のような紅い一輪のバラ。

 

黒い茨から解き放たれたバラは一直線に魔神に向かっていく。避ける素振りも見せないグランゾンに一瞬訝しげになるマリリン。

 

そして……。

 

『悪いが、俺の好きな花はタンポポでな。この手のバラは趣味じゃない』

 

起死回生の一撃も魔神の放つ剣の一撃によって無惨に散る。横に両断されたランドスピナーはコントロールを失い、共に上空をさまよい爆散。

 

此方の最後の手が潰された事により戦意喪失となるマリリン、違いすぎた。機体性能もそうだが、何より搭乗者の格が違いすぎた。

 

 破界の王ガイオウ。世界の脅威と謳われた怪物を葬ったとされるこの魔神も正しく化け物だ。……認識が甘かった。この化け物と真っ正面で戦うには全ての戦力を此処に投入する必要があった。

 

どうする? 既に思考を戦闘から逃走に切り替えているマリリンはこの状況から脱する術を模索するが……。

 

『命乞いの言葉なら聞いてやる。聞くだけだがな』

 

既に、王手は掛けられた。逃げ場などなく、離脱する隙もなく、いよいよ追い詰められたマリリン。死に対する恐怖など既に遠い昔に捨ててきた。殺さなければ殺される世界を生き抜いてきた彼女は、いっそ自爆でもしてやろうかと考えた時。

 

横からオレンジ色の閃光がグランゾンに目掛けて放射。歪曲フィールドによって直撃する事などなかったが、魔神の注意を逸らす事が出来た。

 

コレにより一瞬の隙を生じた事をマリリンは見逃さなかった。グランゾンの横をすり抜けてサフィアーダを回収。即座にこの場から離脱を試みる。

 

当然逃がすものかとグランゾンはワームスマッシャーを放とうとするが、無数のミサイルが頭上を覆い尽くさんばかりに降り注いできた事に気付きコレを断念。

 

 これ以上リモネシアを傷付ける訳には行かない。優先順位をすぐに変え、魔神はワームスマッシャーを再び展開。押し寄せるミサイルの群を全て打ち落とした時。

 

『……高エネルギー反応だと? 上から? っ、まさか!?』

 

頭上から光が瞬き、次の瞬間……巨大な閃光がグランゾン目掛けて放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───衛生軌道上。オービタルリング付近にあるとある宙域。そこにアロウズの艦隊指揮官を任されたアーサー=グッドマン准将は目の前のモニターに映し出された光景を前にして愉悦に頬を緩ませていた。

 

「ふん、何が魔神だ。確かに奴の力は凄まじいが所詮は一機、やりようなど幾らでもある。……しかし、流石は“メメントモリ”凄まじい威力ではないか」

 

笑みを浮かべながら横にある戦略兵器を目にするグッドマン。反抗組織を国ごと一掃するために生み出された“メメントモリ”はまさに世界を恒久平和に導く為の効率的な手段と言える。

 

これを受けてしまえばどんな奴が相手でも敵ではない。そう確信したグッドマンにオペレーターから信じられない報せが届く。

 

「じ、准将!」

 

「なんだ? 騒々しい、報告は可及的速やかに……」

 

「そ、それが……魔神、今も健在! メメントモリの攻撃を防いでいます!」

 

「なにぃっ!?」

 

有り得ない報告に席を立つ。改めてモニターを凝視すると、そこには確かにメメントモリの閃光を真っ正面から受け止めているグランゾンの姿があった。

 

その光景に艦内が騒然となる。言葉も無くして呆然としていた准将だが、ここへきて我を取り戻し、すぐさまオペレーターに次なる指示を伝える。

 

「な、何をしている! すぐにもう次の発射を急がせろ!」

 

「で、ですが一度撃ってしまえばチャージに時間が……」

 

「ならばもう一基を使用するまでだ。既に許可は取ってある。急げ!」

 

艦隊のすぐ近くに設置されてあるもう一つのメメントモリ。既に発射態勢にあったソレは准将の指示から一分も足らずに稼働し、第二撃目の光がグランゾンに降り注げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───視界が白くなる。気が遠くなるほどの衝撃に揺さぶられ、今の俺は意識を手放さないだけで精一杯だった。

 

天から降り注げられる巨大な光。放たれた距離や受けている威力から察するに恐らく衛生軌道上の戦略クラスの巨大な兵器からの攻撃なのだろう。

 

歪曲フィールドで堪えてはいるが、このままでは機体ではなく俺の方が先に参ってしまう。一度目の攻撃は耐えられたが、次の二撃目の衝撃に俺の意識は根っこから削ぎ落とされそうになっていた。

 

……避ければいいという選択肢は自分にはなかった。今自分がこの場を離れれば今度こそリモネシアは崩壊してしまう。それだけはどうしても避けたくて俺はこの攻撃を受ける事を選んだ。

 

『……やらせるかよ。これ以上、あの島を壊させて……たまるものかよぉぉぉおっ!!』

 

 強がりの混じった叫びがグランゾンのコックピットに響く。こんな声が出せるのかとどこか他人事に考えていた時、今まで襲ってきた衝撃が収まった。

 

耐えきった。リモネシアを守れた事に安堵し、頬が緩んだこの時俺は間違いなく隙を晒していた。そんな自分を奴らが見逃す筈もなく。

 

『いただいたぞ! 魔神!』

 

『ぐぅっ!?』

 

衝撃が襲う。見るといつの間にここまで接近を許してしまったのか、今までの疑似太陽炉搭載型とは明らかに違う機体に蹴り飛ばされてしまった。

 

 立て直さなければ、スラスターを噴射して態勢を整えようとした所に、再び痛烈な衝撃が自分を襲った。

 

見れば、すぐそこで銃を此方に向けている白のKMF“ランスロット”が見えた。

 

『蒼のカリスマ、赦しは請わないよ』

 

もう一度態勢を立て直す。このままだと良い的だ。ワームホールを使い一時距離を開けようと操縦桿を動かそうとするが……動かない!?

 

どういう事だ!? 急いで原因を調べた俺が目にしたものは……“シラカワシステム”なる奇妙なプログラムだった。

 

モニターに移したそのプログラムの横にはカウントらしき数字が表示されている。混乱に陥った俺に、更なる脅威が容赦なく降り注いできた。

 

『蒼のカリスマよ! 喩え貴様が相手だろうとこれには耐え切れまい!』

 

白い……戦闘機? いや、モビルアーマーか!? 迫り来る白のMAからワイヤーらしきモノが射出され、それがグランゾンの両腕に巻き付くと、高圧力の電流がグランゾンを通して俺に流れ込んできた。

 

『がぁぁぁぁぁっ!?』

 

 ──体が熱い、脳が焼き付く。電気椅子に掛けられた死刑囚はこんな気持ちなのかと、強烈な痛みに神経が焼き切れそうになる。

 

 激しい痛みの中、薄れゆく意識の中で俺は目の前のカウントダウンがゼロになると同時に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やれやれ、相変わらず甘い男ですね。島など気にしなければこの程度の相手にアナタが遅れを取るはずもないのに……まぁ、だからこそ私の半身に相応しいとも言えるのですが』

 

そんな、どこかで聞いた事のある声を耳にしながら俺の意識はそこで途絶えた。

 

 

 

“シラカワシステム起動”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なにが、どうなっている?」

 

 アーサー=グッドマンは混乱の中に叩き込まれていた。

 

メメントモリは撃たれ、魔神の動きは完全に封じられ、あとはいけ好かない蒼のカリスマを殺せば労せず魔神を確保出来た。

 

事実、途中まで全てが此方の目論見どおりの展開だった。メメントモリを二つ共撃ったという一部予定が異なった部分があったが、それ意外は順調に事が進んでいた。

 

エース級の実力を誇るワンマンアーミーとブリタニアの最大戦力である皇帝直属の部隊ナイトオブラウンズ。彼等の猛攻に魔神は手も足も出せなかった。

 

あと少し、あと少しで魔神を封殺出来ると思われた時、突然奴の動きに変化が起こった。防戦一方だった奴の動きが唐突に変化し、次の瞬間には……地上部隊の全てが無力化されていた。

 

それもワザと生かしてあるように、敢えて殺さない程度に威力を抑えられている。それを証拠にナイトオブラウンズの面々がそれぞれやっとの思いで圧壊された機体から抜け出している。

 

だが、肝心の奴の姿がどこにもいない。どこにいったとモニターを凝視しているアーサー=グッドマン達の前に……お探しの魔神が姿を現した。

 

『彼等との決着は我が半身自身が付けるべきモノ、私が手を下すまでもないので今は見逃しますが……アナタはそう言う訳にもいきませんね。アーサー=グッドマン准将殿?』

 

『ば、バカな!? 何故貴様がここにっ!?』

 

『認識が甘いので正しにきました。私達とこのグランゾンには距離という概念が存在しません。少なくともこの地球圏では私の行けない場所などどこにもありませんよ』

 

『な……なん、だと?』

 

『私達を討ちたいのであれば、最低でも冥王星から狙撃なさい。でなければ手痛い反撃を受ける事になりますよ?』

 

 このように。と、魔神が手を横に振るうと同時にグッドマン准将が乗る巡洋艦以外の艦が空間から突如として放たれた光の槍に貫かれて爆散。一瞬にして他の艦が落とされた事実にグッドマンの表情が瞬く間に青ざめていく。

 

『ま、待ってくれ! 私は命令で……そう! 命令に従っただけなのだ! 悪意はない! の、望みはなんだ!? 可能な限りかなえよう! あの島にももう手を出さない! だ、だから……!』

 

『見苦しいですよ。アナタも軍人であるならば命令に殉じ、大人しく運命を受け入れなさい』

 

必死の命乞いも通じず、死刑を宣告されたグッドマンは体裁を気にする余裕もなく、己の身の安全を確保するために艦のブリッジから逃げ出した。

 

そんな彼の意志とは別に、魔神の胸部が展開され、両腕にそれぞれ三つの球体が出現し、胸の中心部には漆黒の球体が浮かび上がっていた。

 

『事象の地平に近づけば、相対時間は遅くなります。そちらにとっては一瞬ですが、此方では永遠です。……理解出来ましたか?』

 

蒼の魔神が球体を掲げる。六つの球体が一つのマイクロブラックホール に吸い込まれ、肥大化され、重力の力場に異常数値が検出されるようになる。

 

『さぁ、報いを受けなさい。ブラックホールクラスター、発射!』

 

重力崩壊から何者も逃れられない。放たれたブラックホールは逃げようとしたグッドマン諸共呑み込み、二基のメメントモリすら抉り、やがて地球圏の外れまで飛び上がった所で爆発。

 

アロウズの准将は断末魔の叫びも上げることなく宇宙へ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新たに出現したZONEをランドという犠牲を払うことで停止させたZEXIS達はクロウのブラスタに積まれたスフィア対策としてスコート・ラボに向かっていた。

 

だが、その途中アロウズがリモネシアに強襲している情報を受け、蛮行に走る彼等を止める為にリモネシアに向かったのだが……そこで、彼等は信じられない光景を目の当たりにする。

 

アロウズの精鋭が、ナイトオブラウンズ達が、その機体を無惨に圧壊させて海に沈んでいた。海洋艦隊も全滅しており、自分達があれほど苦戦した世界の最高戦力達が、一方的に壊滅させられた事実に誰もが言葉を失った。

 

そんな彼等の前に魔神ことグランゾンが降りたった。相も変わらず出鱈目な力に約一名程除いて全員が戦慄を覚えた時、ジェフリーが意を決してグランゾンに呼びかけた。

 

 SOUNDONLYと書かれた文字の向こうから発せられる声、聴き慣れた胡散臭い蒼のカリスマの声にカミーユは訝しげに眉を寄せる。

 

『お久しぶりですねZEXISの皆さん。今日は一体どのようなご用件です?』

 

『……ここでアロウズ達のリモネシアに対する強襲があったのだと報告があったのだが、君がこれらの惨劇を生み出したのかね?』

 

『惨劇とは大袈裟ですね。確かに海洋艦隊は全滅しましたが、ナイトオブラウンズを初めとしたエースの皆さんは皆無事です。彼が怒りのまま暴れていたらここはもっと悲惨な光景になっていた筈ですよ』

 

『……彼、だと? まさかお前は蒼のカリスマじゃないのか!?』

 

カミーユの言葉にZEXIS全体が揺らぎ出す。どういうことなのか理解出来ない話に誰もが混乱した時、通信越しから不気味な笑いが聞こえてきた。

 

『……ククク、流石はカミーユ=ビダン。私と彼の違いを早速見抜きましたか』

 

『そんな、シュウジじゃないの? だったら、アンタは一体誰なのよ!?』

 

『待てヨーコ、お前今なんて言った!? アイツが、蒼のカリスマがシュウジだと!?』

 

ヨーコの迂闊な一言にZEXIS内で激震が走る。騒ぎ出す彼等を微笑みながら、グランゾンのパイロットは音声だけの通信から映像込みのモノに切り替えてきた。

 

そして、映し出される彼者の姿に言葉を失う。紫色の頭髪、不敵な笑み、見た目こそはシュウジと同じなのに目の前の存在は全く異なる雰囲気を纏っていた。

 

『名乗りが遅れて申し訳ありません。私の名はシュウ=シラカワ、故あって彼の体を借りている者です』

 

 そんな名乗りを最後にグランゾンは離脱。起こりすぎた出来事にZEXISは頭を抱える事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、主人公の秘密がちょっぴりバレます。

そしてまた日記要素は皆無です。すみません。

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