『G』の日記   作:アゴン

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今回、主人公色々やらかします。

暖かい目で見守ってくれると嬉しいです。


その4

□月β日

 

リットナー村から飛び出して二日、未だ自分は暗黒大陸から出ずに留まっている。

 

本来ならガンメン達を撃退した後、グランゾンを谷に隠してそれとなくヨーコちゃん達と合流するつもりだったのだが、思わぬ来客の登場にあの場から逃げる羽目になってしまった。

 

モニターに映し出された一隻の艦、それがソレスタルビーイングの輸送船“プトレマイオス”だと知った瞬間、自分の思考は逃げる事で頭が一杯だった。

 

でも逃げる際に本物のプトレマイオスを見てちょっと感動してしまったが、それは仕方ない事だと言い訳しておく。

 

ともあれ、あの場にいたら厄介な事態になるだろうと直感のままに離脱した自分の判断は間違いなかったと思いたい。

 

というか、世間でテロリストと認定されているソレスタルビーイングと一緒に行動してしまえば、それこそ自分が望む未来が完全に途絶えてしまう。

 

だから、これでいいのだ。リットナー村から逃げる様に出てきてしまった自分だが、この選択が正しかったのだと……そう思いながら今回の日記は終了する事にする。

 

……あぁ、ヨーコちゃんの作った葡萄カバのステーキ、美味かったなぁ。

 

 

 

□月K日

 

いい加減何か食べなきゃヤバいと思い、慣れないやり方で野生動物と格闘していると、黒の兄妹と名乗る自称獣人ハンターと遭遇。彼等に助けて貰った事でどうにか命を繋ぐ事が出来た。

 

黒の兄妹はキタンさんを筆頭にキヨウさん、 キノンちゃん、キヤルちゃんという四人兄妹で、彼等は獣人ハンターのグループでキタンさんが長男という事でリーダーを務めており、他の三姉妹もそんなキタンさんを頼りにしながら獣人達と日夜戦っているという。

 

自己紹介をしてくれた彼等にご丁寧にどうもと返しながら、自分は外から来た旅の者ですと自身の紹介と共にそう応えると、キヨウさん達がびっくりするほどに食らいついてきた。

 

自分達以外の人間とは久しく会っていなく、獣人ばかりと戦ってきた彼女達にとって自分は未知の存在に見えたのだろう。密着してくるキヨウさん達の柔らかい体の感触に鼻の下を伸ばしていると……滅茶苦茶怖い顔をしたキタンさんがジッと自分を睨んでいるのが見え、少し自重しようと思いました。

 

え? 今度はグランゾンどこに置いてきたって? ここから少し離れた森に寝かせています。この大陸の住民は基本的に地下で住んでいるらしく、滅多に人が来ないみたいなので何気に人目を気にしてビクビクする必要はないと思い内心でかなり安堵しています。

 

空に輝く満天の星空を眺めつつ、自分もそろそろ寝る事にする。

 

つーかキタンさんイビキマジうるせぇ。

 

 

 

□月J日

 

疲れた。今日は本っっっ当に疲れた。朝早くキタンさんに叩き起こされたかと思ったらいきなり狩りに駆り出され、豚の頭をした不思議生き物に跨がり、大草原を駆け走った。

 

つか豚ってあんな早く走り回るのね。何度も振り落とされ地面に落下する自分を見かねて、キタンさんが俺を子分にしてやると言い出してきた。

 

何度も丁重にお断りしようとしたがそこは野生児、此方の話を全く聞かず、自分はなすがままに黒の兄弟の子分にされてしまった。

 

キヨウさんも長女なのに止める素振りもなく、ニコニコと笑っているだけ、キヤルちゃんに至っては末っ子だった事もあって自分より下の子分が出来た為にノリノリで背中を叩いてくるし。

 

唯一抵抗を示していたのは次女のキノンちゃん。人見知りである為、外から来た自分に少しばかり警戒していたが、自分が不思議豚を乗りこなせていないと見ると、私も上手く乗れないんだと言って話しかけてくれるようになった。

 

ホント、ここまでで終わればヤンチャの野生児に巻き込まれた現代人と笑い話で終わるのだが、そうは問屋が卸さなかった。

 

彼等が名乗る獣人ハンター、それはガンメンを狩る事を意味していた。

 

無論素手で、どこから調達してきたのか火炎瓶を片手に不思議豚を駆りながら、一機のガンメンを翻弄する様は我ながら唖然としたものだ。

 

その後は自分までガンメン狩りに駆り出され、今までで一番死ぬ思いをした。ホント、野生児の力マジ侮れねぇ……。

 

けど、そこで不思議なモノを見た。翻弄したガンメンは操縦不可にまで追い込まれ、仰向けに倒れるのを見て俺達は勝ち鬨を上げた時、ソイツは現れた。

 

毛むくじゃらの人間……いや、あれは人間とは呼べない別の種族だった。キタンはあれが獣人といったが、成る程。ガンメンを操っていたのは普通の人間ではなく獣人と呼ばれる別の種族だったのか。

 

人間じゃない彼等が何故ガンメンというロボを操っているのか、何故ここの人間達は地下深く押し込められるような形で息を潜めながら生活しているのか。

 

今更ながらの疑問に悩んでいると、キタンさんはすぐさま別の獣人を狩るぞと言いだし、不思議豚に乗って再び大地を駆け巡った。

 

結局最後まで乗りこなせなかったが、今回で自分は結構打たれ強くなったと思う。

 

割と本気でそう思う。よく骨とか折らなかったな俺。

 

 

 

□月M日

 

自分がこの世界にきてそろそろ一ヶ月が過ぎ、自分は今日も今日とて黒の兄妹の子分として頑張りました。

 

相変わらず不思議豚は乗りこなせていないが、振り落とされた直後には受け身をとって次の瞬間には再び不思議豚に跨がるほどには成長した。キタンさんからは別方向に成長した自分に呆れた言葉を送ってきたが、これも褒め言葉として受け取っている。

 

そして元の世界で一人暮らしだった為か、家事を一通りこなせる自分は黒の兄妹の食事係として日々邁進している。

 

流石に肉を焼いて食べるだけという食生活はアレなので、時々は釣ってきた魚を買い貯めしておいた調味料で味付けし、蒸したりしながら食べている。

 

いつもと変わった味付けに黒の兄妹の皆は全員惚れ込み、今では彼等の胃袋は自分が握っていると言っても過言ではない。

 

キタンさん達にシゴかれたお陰で体力は前と比べて大分付いてきたし、体にも少しだが筋肉が付いた気がする。

 

何より気力が充実している為、今ではキタンさんの無茶振りにもある程度は応えられるようになっている。

 

キヨウさん達という若く綺麗な女性とも出会えたし、暗黒大陸に来てから遂に自分にも運が巡って来たのではないだろうか?

 

獣人ハンターというガンメン狩りは流石に大変だが……今の自分はゴウトさんの所で働いていた時よりも充実していると思う。

 

あ、別にゴウトさんの事を嫌っている訳ではないから勘違いしないで欲しい。ゴウトさんも自分の恩人である事には変わりないし、感謝もしている。

 

久し振りに騒がしくも楽しい日々を送れた事をキタンさん達に感謝しながら、今日はこれで終了とする。

 

 

 

□月V日

 

……幸せな日々はそう長く続かないと昔のどこかの偉い人がそんな事言ってた気がする。

 

昨日までは今日という日が来るのを心待ちにしていたのに今は最悪の気分だ。

 

今、グランゾンのコックピットで負傷したキヤルちゃんの容態を見ながら書いている。日記なんぞ書いている場合じゃないと思われるが、こうでもしていないと沸き上がる感情でどうにかなりそうなのだ。

 

獣人ハンターを生業としているキタンさん。以前何故獣人ハンターなんて危ない事をしているのかと聞いたら、それは地下に引っ込んでいる他の人間達に対しての狼煙なんだそうだ。

 

人間は負けていない。ガンメンという脅威が自分達を支配しようとしていても人間はそれに屈しないという意志の表れなんだそうだ。

 

ガンメンはモビルスーツ同様に兵器だ。戦う為の戦闘機械であり、通常なら人間なんてどう足掻いても勝てっこない代物なのだ。

 

けれど、キタンさんはそれに反発した。だったらここで死ぬのかと? 空を見ずに、風を知らず、空に浮かぶ星々を一度も目にしないまま一生を終えるのかと、それに反発したキタンさんは同じ気持ちの姉妹達を連れて村を出た。

 

この世界を他の連中にも見せてやりたい。そんな思いで獣人ハンターを始めたキタンさんの言葉に自分はただ聞き入れる事しか出来なかった。

 

ただ一言、凄いですねと口にする自分にキタンさんは「当たり前だ!」と胸を張って言い切った。素直に人を尊敬したのはいつ以来だろう。

 

もう少しここで黒の兄妹と一緒にいてみよう。そう思った矢先、奴等が現れた。

 

ガンメン。今までの規模とは桁違いの軍勢が押し寄せてきたのだ。しかも、航空戦力を大量に投入してきて……。

 

いきなり放った奴等の爆撃によってキタンさん達とはぐれ、黒の兄妹の安否で分かっているのは自分の膝の上で気絶しているキヤルちゃんだけだ。

 

キタンさん達の事も心配だが、今はそれよりも今の状況について考えなければならない。

 

奴等を束ねるのは“神速のシトマンドラ”螺旋四天王の一人と呼ばれる獣人達の幹部だ。

 

今も隠れている自分達に向けて出てこいと、出てこなければこの一帯ごと爆撃で吹き飛ばすと脅してくる。

 

もう逃げ場がない。喩え名乗り出なくても奴等は宣言通りこの一帯を爆撃で吹き飛ばすだろう。そうなっては周辺の村も巻き添えを喰らって壊滅してしまう。

 

……キタンさんの獣人ハンターがやりすぎたのか、それともグランゾンと自分が原因なのか、具体的な事は何も分からないが。

 

今、自分がやるべき事はここで大人しく殺される事じゃない。

 

もうじきキヤルちゃんが目を覚ます。俺は買ってから一度も使っていない仮面に手を伸ばし、覆いかぶせる様に顔に嵌め込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シトマンドラ様! 人間達の反応が見当たりません!」

 

「フンッ、裸猿どもめ、調子に乗るからだ」

 

────爆撃地点の上空。巨大飛行要塞空母型ガンメン“ダイガンテン”そこのブリッジの玉座に似た席に座るのは獣人の中でも神速と呼ばれる男だった。

 

爆撃し、舞い上がった砂塵の中を見つめながら四天王の一角であるシトマンドラはつまらなそうに呟く。

 

たかが人間。踏みつぶされ、自分達の娯楽の一つでしかない猿。狩るのは自分達であり狩られるのは地中で暮らす人間達である事を断言するシトマンドラは退屈そうな態度を崩さず、流れ作業の様に部下に指示を出す。

 

二度目の爆撃、それにより周囲の人間達の村ごと壊滅させようと決定したシトマンドラは爆撃開始の合図を出そうとした瞬間。

 

「し、シトマンドラ様!」

 

「何だ? 騒々しい……」

 

「ぜ、前方に機影を確認! これは──例の“魔神”です!」

 

ガタリッ 部下からの報告に目を見開かせて立ち上がったシトマンドラが目にしたのは砂塵の中から現れる蒼き魔神、グランゾンだった。

 

その風貌、その風格、まさに魔神と呼ぶに相応しい。

 

シトマンドラの口角が吊り上がる。それは数百年の間一度も見えなかった強者との邂逅に胸を躍らせた瞬間でもあった。

 

シトマンドラはブリッジを後にする。どちらへと尋ねてくる部下に鼻で笑いながら───

 

「これより魔神狩りを始める。総員戦闘準備! 私もシュザックで出る!」

 

久方振りの強敵、自らの美しさを追究するシトマンドラは自ら前線に出ることなど滅多になかった。

 

あの蒼い魔神に何らかの美的要素があったのかは知らないが、獣人達はそれを追及するような真似はしない。

 

何せ四天王が本気になったのだ。目の前の魔神が幾ら強力でもその末路を変える事は出来やしない。

 

精々戦いに巻き込まれないよう気を付けよう。獣人達は互いに見やると無言で頷き、ソレを暗黙の了解とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───馴染む。

 

今までただ動かし方しか知らなかった青年は、自身の陥った危機的状況を前にしながらも不思議と落ち着いていた。

 

今までの生活でもう荒事にも耐性が付いてしまったのか分からないが、いやに落ち着いている自分がいることに青年は逆に戸惑っていた。

 

押し寄せてくる爆撃の雨を避け、その最中に攻撃してくるガンメンの一撃をグランゾンの豪腕で受け、投げ飛ばすと同時にグランゾンの額から光の矢を放ち、ガンメンを爆散させる。

 

「アンタ、一体なんなのさ!」

 

目を覚ました少女が青年に食って掛かる。彼女がここまで興奮するのも無理もない事だ。突然爆撃されたかと思えば兄達と離れ離れで、気が付いたら仮面を被った奇妙な輩が一緒にいるのだ。これを警戒するなと言う方が無理である。

 

だが、少女の質問に男は応えない。それは返事する余裕がない故の無言なのだが、仮面を付けている為、少女には青年の必死さが伝わる事はない。

 

ただ一言。

 

「喋るな、舌を噛むぞ」

 

無愛想の一言、それに抗議しようとした次の瞬間、機体は大きく揺れ動き、少女はその衝撃に悲鳴を挙げることすら出来なかった。

 

目の前には空を飛ぶガンメンの軍勢。自分の置かれた状況を理解してしまった少女は悔しく思いながら仮面の言うことに従った。

 

(流石にグランビームだけじゃ削り切れないか……アレ、使ってみるか)

 

まるで自分が別の誰かになるような錯覚。それを真に受けながらも男は自分でも驚く程の冷静さを保ち、新たな武装の名を口にする。

 

「現れろ。“グランワームソード”」

 

魔神の前の空間が歪みだし、一振りの大剣が姿を現した。

 

剣を握り、空を走る魔神。グランゾンが剣を握り締めた腕を振り下ろした瞬間。

 

巨大飛行空母は、左の翼を丸ごと切り裂かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 




早速原作(?)ブレイク。

……どうすんべコレ

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