『G』の日記   作:アゴン

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今回は難産で途中何度も書き直しました。

また、多くの人が想像している様な展開にはならないと思います。




その38

 ───サンクキングダム。完全平和主義を唱えたが故に世界から消された悲劇の王国。破界事変の時もインペリウムの襲来によって消滅の危機に瀕したが、その時は当時のZEXISと魔神グランゾンが撃退したおかげで難を逃れる事が出来た。

 

そんな多くの悲劇が起きたこの王国でその血筋たるリリーナ=ピースクラフトとロームフェラ財団の代表であるデルマイユ公が平和について対談している中、ある異変が起きた。

 

バジュラの襲来。今まで宇宙にしか出現しなかったバジュラがサンクキングダムに姿を現したのだ。この緊急事態に当然ZEXISも出撃、バジュラの迎撃に当たった。

 

緊迫した状況が続き、遂にバジュラによる恐怖に耐えられなくなったデルマイユ公は、リリーナと付き添いのシェリルを置いて、用意しておいた航空機に乗り込み一人脱出を試みる。

 

だが、バジュラの猛攻を唯の航空機が抜けられる筈もなく、デルマイユ公は一人脱出したが為に一人空で散る事となった。

 

数の多いバジュラにさえ手を焼いているのに、更にモビルドールの軍勢とインサラウムからの次元獣の群が送り込まれ、ZEXISは窮地に立たされていた。

 

倒しても倒してもきりのない敵の軍勢、加えてマクロス・クォーターが異常な重力力場を感知し、それがディメンション・イーターだと発覚。サンクキングダムそのものが消滅する危機に、ZEXISは更に追い詰められてしまう。

 

『コイツ等、なんだっていきなりこんなに出てくるんだよ!』

 

『出現するタイミングの良さといい、恐らくは此方の動きを何者かが監視しているのか、だとすれば一体誰が……』

 

『ゼロっ! そっちに行ったぞ!』

 

『っ!』

 

一瞬、刹那的な瞬間に今回の首謀者について思案していたゼロの前に、ギガ・アダモンの刃が襲いかかる。蜃気楼の絶対守護領域で直撃を防ぐが、相手は超重量の重さを誇る怪物だ。直撃を防いでも巨大な次元獣の重圧に、ゼロは機体諸共地面に叩き付けられる。

 

『ぐはっ! くそ、なんて無様な!』

 

戦いの最中に意識を割く自分の愚かさに毒づくゼロだが、今はそんな事を気にしている場合ではない。

 

ギガ・アダモンが未だに自分を押し潰そうとしている中で障壁を解く訳にはいかない。だが、蜃気楼の攻撃である“拡散構造相転移砲”は障壁を一部展開させないと使用できない。

 

(クソ、こうも密着された状態ではハドロン砲も使えん!)

 

ZEXISの中でも小型機動兵器であるKMFでは、障壁を解いた瞬間次元獣の重量に潰されミンチとなってしまう。守護領域を維持するだけで手一杯のゼロは近くのZEXISメンバーに援護を求めるが、皆目の前の敵に行く手を遮られ、助けに行くことが出来なくなっていた。

 

いつまでこの状態が続く? 目の前でキバをちらつかせる化け物にゼロの背筋に冷たい汗が流れ落ちた。このままでは拙い、忍び寄る危機にゼロの思考が焦り始めた時。

 

『ゼロッ!』

 

紅い稲妻が次元獣に迫ったと思われた瞬間、ギガ・アダモンは弾ける様に吹き飛んだ。

 

巨大な次元獣が吹き飛んだ事に唖然となるゼロ。その仮面の奥で呆けた表情になる彼の前に、真紅のKMFが降りたった。

 

『皆、待たせてごめんなさい。紅月カレン、ただいまを以て戦線に復帰します!』

 

攫われていた筈のカレンの突然の参戦に驚きながらも歓喜するZEXISの面々、心強い味方の登場に士気は上がるが、それをかき消すように次元獣とバジュラの群は一斉に紅蓮に襲いかかる。

 

『逃げろ紅月!』

 

『そこにいたら危険だ!』

 

新たな敵を前に群がるように襲い来るバジュラと次元獣の軍勢、それらを前に動こうとしない紅蓮に全員が逃げろと呼び掛ける。

 

そんな彼等に対して何の反応も示さないカレン。一体どうしたのだと誰もが疑問に思った瞬間。

 

『今よ!』

 

空に無数の穴が突然開き、そこから降り注がれた光の槍がバジュラと次元獣達を纏めて貫いた。その光景に誰もが上空を見上げて絶句し、言葉を失う中、カレンだけは笑みを浮かべていた。

 

『ヤレヤレ、自ら囮役を買って出るとは……私でなければ巻き込まれて諸共串刺しになってましたよ?』

 

『いいじゃない、アンタはそれが出来る。だから私の案に乗った。でしょ?』

 

『もうこんな事は無しでお願いしますよ。……心臓に悪すぎる』

 

通信越しでニヒヒと笑うカレンと、疲れた様に首を横に振る魔人。まるで友人のような遣り取りの二人に、ZEXISは暫く呆然としていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はてさて、カレンちゃんの困った囮作戦も無事にこなせた事で戦局も大きく変わり、その後の次元獣とモビルドールとバジュラはZEXISとの協力で楽に撃退する事が出来た。

 

その後、何やら重力力場に異常数値が検出されたのだけれど、次の瞬間にはイマージュが現れて彼等が光ったと思われた時、重力力場の数値は平常値に戻っていた。

 

後から聞いた話だとサンクキングダムの地下にはディメンション・イーターなる大量破壊兵器が埋もれており、あと少しで王国諸共消滅していたという危機的状況だったらしいのだ。

 

“ディメンション・イーター”確かそれって、マクロス船団側が開発した、擬似ブラックホールを模した空間ごと破壊する兵器じゃなかったっけ?

 

なんでそんなモノがあるのかと疑問に思ったが……恐らく、奴の仕業だろう。“グレイス=オコナー”アイドル達をプロデュースする裏側で色々きな臭い事をしているあの女が、今回の件にも一枚噛んでいる……いや、寧ろ首謀者とすら思える。

 

何故そんな確信的に言えるのかって? 実は今、自分は機体から降りてサンクキングダムのとある廃墟で、ZEXISの中でも冷静で視野の広い人物とされるアムロ=レイさんとカミーユ=ビダン君、この二人と情報交換をしているからだ。

 

戦闘も終わり、本当ならこのまま周辺にいると思われるグレイスの捜索に向かおうとしたのだが、アムロさんとカミーユ君のそれぞれから呼び出しを受け、このような対談を行う事になった。

 

今、この場には自分を含め三人しかいない。他の皆には艦で待機してもらっている。これは二人の要求に対し自分から出したささやかな要求だ。

 

無論ここでの話は艦で待機している他のZEXISメンバーにも伝えてもらう事になっているし、彼等と顔を合わすのは今はまだ抵抗があるからこういう処置をしてもらっているだけ、そんな中で今自分達が話しているのは破界事変の時、自分が世界中に指名手配される事になった原因である二人のアイドルの誘拐事件の話だ。

 

「……では、破界事変の頃に騒がれたランカ=リーとシェリル=ノームの二人が誘拐された事件、君はやはり関与していないんだな」

 

「今更の事だというのは承知しています。ですが今説明した通り、私は彼女達に手を出した記憶は一切ありません。見かけたといってもテレビやネットで彼女達の活躍を眺める程度ですし……」

 

「では、何故あの時すぐにそう言わなかった? 確かにあの頃の俺達は連戦に次ぐ連戦でいきり立っていたが、それでも冷静な者もいたはずだ。その人に頼ればお前だって……」

 

「あの時の自分はグレイス=オコナーの罠から逃げ出していたばかりの頃でしたからね。精神的に参っていた事もあったし……正直、余裕がなかったのですよ」

 

言われて懐かしい気持ちと共に蘇る忌まわしい記憶に腹が立ってくる。自分を騙し、ZEXISと戦わせ、あわよくば共倒れを狙っていた奴の姑息なやり方は、今思い出してもむかっ腹が立つ。

 

今回は戦闘に巻き込まれた事もあって逃がしてしまったが、有益な情報も手に入れた事だし、次に会った時は事象の彼方へ消し飛ばしてやろうと思う。

 

そんな事を考えていると奇妙な視線を感じた。何だと思い振り返ってみれば、アムロさんとカミーユ君がそれぞれ生暖かい目で此方を見ていた。

 

「……何か?」

 

「あぁ、済まない。気を悪くしないでくれ、ただお前のその口振りが意外だなと思ってたらつい、な」

 

「騙されて腹が立ったり、混乱した状況で銃口を向けられて驚いたり苛ついたり……人間らしい君の話を聞いてたら何だか気が抜けてしまって」

 

「失敬な。私は人間だよ。君達と何ら変わりないつもりだったが……」

 

「では、その仮面を取ったらどうだ? 我々は既にシュウ=シラカワを通して君の素顔を見ている。今更隠す必要はないと思うが?」

 

「そうしたいのは山々だが、生憎此方も意地がある。全ての厄介事を片付けるまで人前でおいそれと仮面を外す訳にもいかない」

 

「……そうか、やはりカレンの言うように決意は堅いみたいだな。なら俺達と共に来るという選択もない、という事だな」

 

何やらウンウンと頷くアムロさん達だが、此方はとある単語に仮面の奥で表情が固まった。……え? 今なんて言ったの? 一緒に戦う? まさかのスカウト!?

 

突然の言葉に思考が固まるが、そんな事をしている内に二人はドンドン話を進め……。

 

「今回の共闘は今までにない大きな収穫があった。ギャラクシー船団への疑惑、エウレカの安否、そして何より……アナタという人間が少しだけ分かったよ」

 

「次に会うときは戦場ではなく、穏やかな平和な時に会いたいものだ。蒼のカリスマ……いや、シュウジ=シラカワ。君という男の疑惑は此方の方で晴らしておこう」

 

そう言って二人は満足そうに微笑んでその場から去っていった。そんな彼等を自分はただ手を振って見送る事しか出来なかった。

 

……俺、もしかしてチャンスを棒に振った? 遠くへ行ってしまうZEXISの一行を見つめながら俺は仮面の奥で一人、涙を流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

K月X日

 

 ZEXISに参加出来そうだったのに自らチャンスを逃してしまった事は色んな意味で痛手だが、今は有益な情報を得られた事で良しという事にする。

 

ただ、ZEXISはすぐに別の場所に向かわなければならないからアムロさん達との会話時間は極めて短く、それほど多くの情報を交換する事は出来なかった。

 

けれど先程も言ったように交換した情報は有益なものが多かった。例えばアロウズの裏に潜む“イノベイター”なる連中の存在も、アムロさん達からの情報で知り得る事が出来た。

 

連中はヴェーダというイオリア=シュヘンベルグの計画の中枢を担う特別なシステムを支配していると思われ、そのヴェーダを使ってこれまで世界の情報を操って来たのだという。

 

世界を支配しているとか偉そうな事いっているけど、結局は他人の力頼りかよという野暮な言葉は控えるとして、イノベイターという存在が明らかになった事で、この地球の裏に潜む連中の事が何となく分かってきた。

 

アロウズを使って反政府勢力を潰そうとするイノベイター、アイドルをプロデュースする一方で世界にとって重要な人間を消そうとするグレイス=オコナー、この二つの存在は共に裏で繋がっているのだと自分は推測する。

 

思い込みだと思われがちだが根拠はある。何でもシェリル=ノームはグレイス=オコナーと同じ、ギャラクシー船団の出身だというのだ。

 

無論シェリル=ノームは白だと思う。何せ彼女もサンクキングダムにいたというのにディメンション・イーターで諸共消そうというのだ。もし彼女に利用価値があるというのなら、彼女を始末するような事はしない筈だ。

 

勿論シェリルがグレイスと何らかの繋がりがあるという事は、可能性として存在している。だが、彼女が病で伏せているのに見舞いにすら来ないだなんて、少し違和感を覚える。今まで付き合ってきたアイドルとマネージャーという二人の間柄という意味もあるが、この場合利用するか否かの話になる。

 

もしシェリルに利用する価値がないのだとすれば、既にグレイス=オコナーは別の存在に利用価値を見出した事になる。

 

その存在こそが、超時空シンデレラで知られるランカ=リーだ。数あるアイドルを手掛けている中、彼女ばかりが活躍しているのは贔屓という言葉を抜きにしても怪しい。

 

同じアイドルだったエイーダを突然卒業と称して辞めさせたり、シェリルに関する情報を休止の報せ以降何も開示させてないのも露骨に怪しい。自分があの女に騙された事で気付いた事が幾つもあるが、もしそうでなかったら奴の存在を疑問に思う事があっただろうか。

 

兎に角、今後の指針もある程度固まってきたので、今回はひとまずこれで終了する事にする。

 

そうそう、恒例になりつつある今回自分が寝泊まりでお世話になっている場所は、なんととある一家のキャンプにお邪魔させてもらっています。

 

カミシロ一家。自分が久し振りに狩りをしている時偶然知り合ったワイルドなご家族。現在は大黒柱のお父さんに綺麗なお姉さん、そして長男のヒビキ君と一緒に生活しております。

 

……しっかしカミシロ(父)って何者? 大きな獣相手に素手で戦うとか──人間やめてね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の擦れ違い。

アムロ「決意は固そうだ。無理な誘いはやめておこう」

カミーユ「一人で戦い続けるその覚悟、凄い人だ」

主人公「MATTE!! 置いてかないで!」



また見てボッチ!





追加

文章の流れがおかしかったので修正しました。

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