『G』の日記   作:アゴン

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今回の話を書いてて改めて思う。

やっぱり本作の主人公はボッチな時が一番輝いているわ。


その43

W月*日

 

先日、ヨーコちゃんとカレンちゃんの追跡をダンボールで逃げ切り、結局グランゾンのコックピットで眠ることになったシュウジ=シラカワです。

 

現在自分たちは、イマージュ達のお陰でインサラウムの世界から脱出できている。一眠りした自分はプトレマイオス2の艦長であるスメラギさんと話し合ったのだが、その中で暫くZEXISに世話にならないかと申し出を受けた。

 

いろいろと世界を騒がせている自分を置いていてはZEXISとして拙いのではないのかと思ったが、ソレスタルビーイングもZEXISに参加している時点で似たようなものだとスメラギさんから言い返されてしまった。

 

それにクラッシャー隊を組織した大塚長官なる人物が、近い内にZEXISに関する極秘作戦を開始するという話が出てきている。それが成功すれば、今まで極秘の部隊として活動してきたZEXISが、正しい情報を世界に発信できるという。

 

そうなれば自分こと蒼のカリスマやグランゾンに対する負のイメージも払拭出来るかもしれない。そう提案してくるスメラギさんに俺はそれでも首を縦に振らなかった。

 

いやさ、気持ちは嬉しいし本音なら自分もZEXISに参加したいよ? けどさ、負い目ってものが自分にもあるわけなのですよ。

 

破界事変の頃から何度も衝突した事もあったし、中には戦闘になりそうな危険な時もあった。簡単に割り切っていい話じゃないと思う。と、そんな風にあれこれ悩んでいた自分にスメラギさんは一枚の紙切れを渡してきた。

 

何だろうと思って紙に書かれた文字を読み通してみれば、そこには安くはない請求額が書かれていた。それを目にした瞬間自分は嘗て無い危機感を覚え、スメラギさんにこれは何だと訊ねると……。

 

『破壊した扉の修理費よ♪』

 

ものスッゴイ良い笑顔でそう言われた。アレはヨーコちゃんとカレンちゃんが破壊したのであって自分は無実なのでは!? なんて正当な主張をしても向こうは聞く耳も持たない。ならば交渉人であるロジャー氏に弁護してもらおうと考えるが、彼はクォーターの方に乗っているため助けてくれる事はない。

 

……どうやら向こうは最初からこうする気だったらしい。アムロさんとカミーユ君を始めとした男性陣はスメラギさんの強引なやり方にドン引きだった事から無関係なようだけれど、カレンちゃんとヨーコちゃんは向こうでハイタッチしていた。

 

女って怖い。そう親身に思い知った自分は肩を落としながら暫くZEXISに参加する事を決め、彼等と共に戦う事になった。特に同じ借金仲間であるクロウさんとは意気投合の仲である。

 

女の恐ろしさ、そして借金という立場、これが世の中の厳しさかと、俺はクロウさんと共に砂糖の入った水で愚痴を交わしていた。

 

Dr.ヘルの機械獣軍団と決戦を挑む四日前の出来事でした。

 

 

 

W月ν日

 

明日、いよいよDr.ヘルが定めた決戦の日である。皆それぞれ思う所があるのか、あちこちでこれまでに戦った機械獣軍団とDr.ヘルについて語っていた。

 

特に甲児君はお祖父ちゃんの仇を討てると気合いを入れている。空回りしていないか少し不安だが、彼も破界事変を経験して成長した人間だ。きっと彼は彼自身の手で、Dr.ヘルとの因縁を絶つ事が出来るだろう。

 

……というか、何気に俺って機械獣と戦うの今回が初めてなんだよね。タロス像とかいう機械獣の雑魚兵とは何度か戦った事があるんだけど、次元獣やインベーターと比べるとかなり頻度が少ないレアな奴らだ。

 

しかもあのタロス像って奴の中にはインベーター並にキモい寄生虫みたいなのが入っているし、Dr.ヘルはあんなのを量産しているのかと内心で苦手意識を持ってたりしていた。

 

そんなDr.ヘルと明日、決着を付ける事になる。悪の組織の一つと決着する事になるというだけあって、皆気合いを入れて気持ちを整えたりしていた。

 

そんな彼等を見ている一方で、ZEXISという組織はこうして結束を高めているのかなーと思ったりしていた。……今までこういうのとは縁がなかったから少し新鮮な気持ちである。

 

別に一人が寂しいとかそんな気持ちは一切無い。普段見慣れない光景に少し戸惑っただけであり、寂しかったり皆とどう接すればいいのか分からないことは断じてない。

 

コミュ障とは全く別の感傷である為、強く言っておくことにする。

 

……さて、皆が戦う気持ちを高めている一方、自分は一人格納庫をウロウロしていたら、早乙女アルトさんが自分に声を掛けてきた。

 

破界事変の頃、二人のアイドルを誘拐した事で自分を犯人と決めつけて悪かったと謝罪してきたのだ。自分のグレイス=オコナーの調査関連の話がアムロ大尉からZEXISの皆にも伝わり、自分は誘拐犯ではない事を知って謝りたかったとアルトさんは言う。

 

自分も分かって貰えた事、それだけで嬉しかったからアルトさんの謝罪を受け入れたが、ここで一つ問題が起こった。

 

なんと、アルトさんは女の子ではなく男の子だったのだ。知られざる真実を前に自分は愕然とし、アルト君は憤慨し、付き添いのミシェル君は腹筋が崩壊して悶絶していた。

 

混沌と化した格納庫、取り敢えずアルト君に謝って事なきを得た自分は、カレンちゃんからある質問をされた。

 

リモネシアの人達に自分の事を話さなくて良いのかと、そう訊ねてくるカレンちゃんに俺は、まだそれは出来ないと返した。

 

まだ俺には決着を付けなければならない相手がいる。インサラウムの連中とアイム=ライアード、そしてグレイス=オコナーとアロウズの裏に潜むイノベイター。これら全てを叩き潰す事、それができた時こそ初めて自分はこの仮面を皆の前で外す事が出来る。

 

最近は連中をどう追い詰めるか考えただけで笑みが零れる。この時も自分のそんな笑みが出ていたのか、カレンちゃんやアルト君達から引かれていた。

 

そういう事で今の自分はまだ皆の前に顔を出すわけにはいかない。クォーターにいるであろう皆にも自分の事は教えないで欲しいと頼み込み、その場はそれで終わった。

 

……夜、ZEXISの機体整備を終えた頃。黒の騎士団の母艦の斑鳩に赴いていた自分は、彼等の総帥であるゼロと出くわした。何でも中華連邦での対局の決着がまだだったという事で、明日の決戦を前に、自分の指揮官としての能力をみたいという理由を付けて、この日二回程ゼロとチェスを打った。

 

自分に指揮官としての能力なんてあるわけないのに、そんな自分の言葉などゼロが聞き入れてくれる訳もなく、自分はチェスを打つことになった。

 

結果は一勝一敗の引き分け、久し振りにしては妥当な対局の結果に自分は満足していたが、ゼロの方はそうでもなかったのか、チェス盤をウンウン唸っていつまでも眺めていた。もしかしたらゼロは、チェスやこういった盤上のゲームには妥協を許さないタイプなのかもしれない。

 

その後、自分はゼロの部屋から抜け出すと途中でカレンちゃんと出会った。明日はいよいよDr.ヘルとの決戦、緊張しているのかと訊ねると、カレンちゃんは破界事変の頃から馴れっこだと返してきた。

 

まだ年齢は女子高生だというのに、頼もしかったり寂しかったりと複雑な心境を抱いたが、カレンちゃんはそんな事を気にも留めないで笑っていた。

 

その後、幾つか談笑に花を咲かせていた時、不意にカレンちゃんから質問された事がある。今まで一人で戦って来て不安に思うことは無かったのかと、寂しかったり、逃げ出したいと思った時はなかったのかと、彼女は真っ直ぐ自分を見てそんな事を訊ねてきた。

 

そんな彼女の問いに、俺は思わず笑ってしまった。だって今更過ぎる話だもの、笑ってしまうのは仕方がない。けれどカレンちゃんは真面目な話で笑い出した俺が許せなかったのか、顔を赤くして怒り始めた。

 

怒ったカレンちゃんの怒りを鎮めるために、自分は破界事変の時からの話を正直に話した。無論自分がこの世界に来た経緯は適当に誤魔化したけど、それ以外は正直に話した。

 

エリア11で油まみれになりながら働いた事、暗黒大陸で死に物狂いで生き抜いた事、リモネシアである人にお世話になり、そして死んでしまった事、落ち込んで生きる気力を無くした俺を子供たちや老人の皆が助けてくれた事、戦う理由を自分なりに見つけた事、それ以降の出来事も話している内に夢中になり、気付けば零時を過ぎていた。

 

流石に語りすぎたかなと振り返ると、そこには目を腫らしたカレンちゃんがいた。ビックリしてどうしたのと訊ねると、カレンちゃんは何でもないと言って去ってしまった。

 

……もしかして、自分の話で余計な気を遣わせてしまったのだろうか? 明日はいよいよ決戦だというのに悪いことをしてしまった。追い掛けてフォローをしようと思ったのだが、何故か四聖剣の千葉さんとラクシャータさんに止められてしまい、自分はそのままプトレマイオス2に戻されてしまった。

 

千葉さんは此方でフォローしておくから気にするなと言ってくれたが、果たして大丈夫なのだろうか。ラクシャータさんは終始ニヤニヤしっぱなしだし、もう訳が分からないよ。

 

 

 

 

 

 

W月卍日

 

碌に睡眠時間も取れず寝不足気味だった自分だが、今更一晩眠らなかっただけで体調を崩すことはなく、今回のDr.ヘルとの決戦を向かえる事になった。

 

結果は自分達の勝利でDr.ヘルとの戦いに終止符を打つ事になった。なったのだが……正直、ちょっとやりすぎてしまった感のある戦いだった。

 

だってさ、皆良い感じにそれぞれポジションを取っていたしさ、敵さんの位置もちょうど一直線に並んでいたし、これはチャンスだと思ってついやってしまったんだ。

 

“ディストリオンブレイク”BHCに次ぐ高威力の武装をぶっ放した事により相手の陣地は総崩れ、ZEXISの皆も半分が戸惑う中、自分は内心でやっちまったと呟いていた。

 

だってさ、光子力研究所の周辺ってばDr.ヘルが決戦の場として選んだだけにやたらと広くてさ、ここならどんなに暴れても大丈夫だと言うものだから自分もついつい張り切ってしまったんだよ。

 

なんだか幹部の一人であるブロッケン伯爵も消し飛んだっぽいし、巻き込まれたピグマン子爵もボロボロになった姿で光子力研究所に向かう最中に刑事の格好をしたおっさんに撃たれてたし。……俺、余計な事しちゃったかな?

 

けれど甲児君にとって宿命の敵とも言えるあしゅら男爵だけは甲児君が決着を付けた。その後、出てきたDr.ヘルと全ての機械獣を相手にZEXISと+αな自分が参戦したことで見事撃破、所々危ない場面もあったけれど、光子力研究所が本当の姿を見せたりあしゅら男爵がDr.ヘルを裏切り、まさかの助っ人になったり、様々な経緯があって遂にDr.ヘルを倒す事が出来た。

 

“地獄王ゴードン”Dr.ヘルの墓標が燃えて散っていく中、Dr.ヘルは最期に自分に何やら意味深な視線を送りつけてきた気がしたのだが……あれは気の所為なのだろうか。

 

まぁ、今更気にしても仕方ない。明日も早いし久し振りにグランゾンの整備をしたいので、今日の所はこれで終了する事にする。

 

所で、自分はどうやって扉の修理費を払えば良いのだろう。今回の戦闘によって得られた資金は全てZEXISが管理するっぽいし……扉を自分で直すのはありだろうか?

 

あぁそれと、昨夜のカレンちゃんの件でだが、どうやらあの後千葉さんが上手い具合に話を付けてくれたらしく、カレンちゃんはいつもと変わらずに小柄ながらも紅蓮の強さを見せつけてくれました。

 

いやー、最初は不安だっただけに彼女の活躍を間近で見られて安心した。やたら自分の周囲の敵を倒していくのが少し気にはなったが、アレはカレンちゃんなりの大丈夫だという意志の表れなのかもしれない。

 

やっぱり活動的な女の子は行動で示すものなのだなと感心する一方、少し不安要素が出来てしまった。黒の騎士団の副指令である扇さんの自分を見る目が、時々怖くなる時があるのだ。

 

こう、妹を彼氏に取られまいと威嚇する兄のような……そういやゼロもチェスを打ってた際にカレンちゃんの救出する時の話をした時、ナナリー総督の話を出した途端雰囲気が変わった気がする。

 

お陰でその隙を突いてその時に一勝を収めたのだが……一体あれはどうしたのだろう。聞くのも怖いのでこの話はこれでお終いにしようと思う。

 

 

 

 

 




今回の擦れ違い(?)


カレン「アイツは今まで一人で頑張ってた。今度は私達がアイツの分までがんばろう!」

主人公「カレンちゃんを泣かしてしまった。大丈夫だろうか?」

扇「カレンを泣かしやがって(ギリリッ」

ゼロ「ナナリーからブローチを借りただと!? 許すマジ(ギリリッ」

千葉「これだから男ってのは……」


次回もまた見てボッチ!


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