『G』の日記   作:アゴン

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今回から話が一気に飛びます。


その45

 

W月γ日

 

先のシャルル皇帝の地球連邦代表就任以来、世界は歪んだ形で動き始めていた。アロウズは反連邦組織を悉く弾圧し、女王リリーナの完全平和主義とは真逆のやり方に世界中の人々が怯えていた。

 

世論なんてお構いなしの強攻策、しかもそれが強引なシャルル皇帝のやり方にZEXIS内の誰もが反感を覚えた。

 

女王リリーナという人々の心の柱となっていた彼女が解任された事で、ブリタニア皇帝のカリスマに民衆は怯えながらも彼に縋るしか無かった。そんな中、ブリタニア皇帝は黒の騎士団の発祥の地であるエリア11を粛清対象とし、そこに残る反連邦組織を徹底的に潰すことを露わにした。

 

エリア11に集まるブリタニア最強の騎士、ナイトオブラウンズとアロウズの軍勢が再び集い始める中、ZEXISは次の目的地をエリア11に定めた。

 

勿論自分も出るつもりだった。リモネシアの時のような一方的な弾圧をまたもや一方的なやり方で粛清しようとする。脳裏でリモネシアの焼かれる光景を思い出し、絶対にそうはさせないと意気込んでいたが、アムロさんに今回は出ない方がいいと釘を刺されてしまった。

 

当然自分はこれに反発した。連中を許す訳にはいかない。リモネシアの時のような悲劇を繰り返させてなるものかと息巻いたが、アムロさんの次の一言でグゥの音も出なくなった。

 

『お前の機体は強力過ぎる。感情を暴走させたまま動いたら、今度はお前が連中と同じになってしまうぞ』

 

アムロさんの言うようにグランゾンの力は強大だ。その気になればエリア11に集まったラウンズやアロウズを租界ごと消滅させる事など容易い事、けれどそれはリモネシアやアフリカタワー以上の大災害を引き起こしてしまうという意味でもある。

 

日本でのムゲ=ゾルバドスとの戦いで、グランゾンの印象は破界事変の頃と比べると大分マシになってきている。アイドル二人の誘拐事件の話も一部では別の犯人がいるのでは? なんて話が出てきているし、近い内に自分とグランゾンが世界から認めてもらえる日も近いかもしれない。

 

誰かの為に戦えるほど自分は高尚な精神の持ち主ではない、どちらかと言えば自分は自分さえ良ければそれでいいと考えたりする自分勝手な人種だ。けれど、ZEXISに参加している以上彼等に迷惑を掛ける訳にもいかない。それに、もし自分が感情のままに租界で暴れたら、それこそ自分はリモネシアの皆と顔を合わせられなくなる。

 

アムロさんの言う事に従い、エリア11の戦闘は参加しない事にする。代わりにそれ以外でのバックアップはやらせてもらいます。なんて、偉そうな事を言ってもアムロさんは不快感なんて微塵も見せず、寧ろ笑顔で宜しく頼むと肩を叩かれた。

 

やっぱああいう人が大人なんだなぁ、自分なんて冷静なフリなんてしていてもカッとなるとつい周りが見えなくなってしまうんだよなぁ。この悪い癖を早く直したいと思いつつ、自分は格納庫に向かって皆の機体を整備する事にする。

 

……そういえば、あれからゼロは姿を見せていない。何でもエリア11でやるべき事があると言って先にエリア11に向かっているらしい。またなんか悪巧みでもしてるのかな?

 

そういえばって事でもう一つ思い出した事がある。確か以前エリア11に来たとき、シャーリー=フェネットなる女の子から「ゼロとゼロに連なる全ての人を守って欲しい」と頼まれていたのだった。アレってまだ有効だったりしないのかな?

 

個人的な願いだし部隊という枠に収まっている以上自分も組織に従わなければならない立場だが、シャーリー嬢の願いを無碍にするのも忍びない。

 

誰かに相談しようにも出来る相手がいない。いっそ各艦長の人達に話そうかなと思った時、格納庫でカレンちゃんを見つけた。

 

カレンちゃんは破界事変よりも前からエリア11のアッシュフォード学園に在籍してたって言うし、もしかしたらシャーリー嬢の事も何か知っているのかもしれない。一縷の望みを懸けて話してみたら、なんとカレンちゃんはシャーリー嬢と同じクラスの友達だったと言うではないか。

 

これを機会にシャーリー嬢との交わした約束の内容を話してみたら、カレンちゃんは一瞬神妙な顔付きになる。けれど次の瞬間何か思いついたのかカレンちゃんはポツポツとある事を話し始めた。

 

実は、現在エリア11の総督であるナナリー皇女殿下もアッシュフォード学園に在籍していた事があり、そしてゼロとナナリー皇女は親しい間柄だという事を告げられる。

 

もしかしてゼロはナナリー皇女に何らかの思い入れがあるのか? だとしたら中華連邦に移住する事を勧めるが、どうやら事はそんな単純な話ではないらしい。

 

カレンちゃんはゼロの秘密を知っているようだがそれを無理矢理聞き出すのは忍びない。故に自分も先行してエリア11に向かうと伝えると、カレンちゃんは笑顔でありがとうと言ってくれた。

 

やー、若い女の子から礼を言われるのは嬉しいものである。各艦長やZEXISの皆からはカレンちゃんの方から話してもらう事にして、自分もエリア11に向かう事にした。

 

だが、ここで一つ問題が起きる。グランゾンはワームホールに仕舞いっぱなしで出せば皆に気付かれる。気付かれたら事情を話さなくてはならないし、ZEXISがエリア11に来ることを考えるとあまり悠長してはいられない。けれど今ZEXISがいるのは太平洋の上空、つまり……海の上にいるんだよね。

 

仕方がないからカミーユ君にも協力してもらい、小型のボートで向かう事になった。……え? お前泳いでいけるだろうって? バカ言ってはいけない。唯の人間が海のど真ん中から泳いでいける訳がないだろう。この日記だってボートの上で書いているものなのだから……。

 

さて、そろそろエリア11の港に着く頃だ。日記はこれまでにして、自分は索敵から逃れる為に潜水行動に移る事にする。

 

 

 

W月V日

 

既に租界ではナイトオブラウンズ達の迎撃体勢が整えられており、ZEXIS達を迎え撃つ気満々である彼等を後目に、自分は久し振りに素顔で潜入活動をしている。

 

現在は既に街の人達の避難が開始されているのか、人の気配はあまりしない。見かけても軍人ばかりが目立つこの租界では迂闊に動くことは出来ないでいる。 

 

そんな租界で今の所誰にも見つかっていない事を察すると、どうやらダンボールでの潜入は成功したといっても良いだろう。

 

取り敢えずシャーリー嬢を探す為、まずはアッシュフォード学園を探索、途中軍人らしき人達と擦れ違ったが得意のかくれんぼモードでやり過ごし、アッシュフォード学園の生徒会室にまで辿り着く事に成功。学生名簿を調べ租界での彼女の住所を入手、避難しているだろうけど念の為という事で彼女の家まで行ってみたら……なんといました。

 

玄関先で落ち込んだようにうずくまるシャーリー嬢、周囲に人影がいないことを確認し蒼のカリスマに変身、先日の自分に対して出した依頼をもう一度確認するべく話しかけたら、案の定驚かれました。

 

どうにか落ち着かせた自分は改めて彼女に質問した。どうして自分に、ゼロとゼロに関係している人達を守って欲しいと頼んだのか、と。暫く彼女は沈黙した後、誰にも言わないという約束の下で話を聞く事になった。

 

彼女から渡された一枚の写真、そこには生徒会と呼ばれるメンバーが、学園をバックに映し出されている。何でもゼロはシャーリー嬢やカレンちゃんと同じアッシュフォード学園の生徒でブリタニア人、そしてあのナナリー総督の兄なのだという。ブリタニア皇族のナナリー総督、その兄ということはゼロもまたブリタニア皇族という事になる。

 

少年の名はルルーシュ=ランペルージ、写真にも映っている線の細い男子生徒。何らかの理由があって学生や黒の騎士団の総帥をやっていたのだろうが、問題はそこじゃない。そんなルルーシュ少年に何故シャーリー嬢は肩入れしているのかと訊ねると……なんと、シャーリー嬢はルルーシュ少年の事が好きなのだという。好きな人の為に何かしてやりたい、そう言うものではないのかと聞き返してくる彼女に自分は、それはそうだと苦笑いを浮かべながら答えた。

 

ゼロに関する全ての謎を理解した自分は、改めてシャーリー嬢に質問した。自分との契約は続行なのかと、そんな自分の問いかけにシャーリー嬢は当然と即答した。

 

気の強いお嬢さんだ。学友のカレンちゃんといいこの世界の女性は皆こうなのだろうか。シャーリー嬢を避難先近くまで送った後、自分は今夜再び総督府に潜入する事を決意する。

 

ナナリー総督は全盲で足の自由が利かない少女だが、芯のある少女だ。ナイトオブラウンズやアロウズ達が戦うからといって、市民を置いて逃げるような人ではないだろう。彼女の性分から政庁で留まる事だろうと思い、戦闘が始まると同時に自分は政庁へと潜入し、彼女と再び面会する事にした。

 

自分なら戦いの余波から彼女を守れるし、いざとなったらグランゾンのコックピットへ一緒に乗り込んで安全な所まで避難させてやればいい。……そうすると中華連邦の紳士達の反応が怖い所だが背に腹は代えられない。

 

後はルルーシュ少年に関する話だが……本人の行方が分からない以上下手に動くことは出来ない。取り敢えずはシャーリー嬢の願いを叶える為に今夜上手く立ち回ろうと思う。

 

ZEXISの皆には暫く単独行動を取らせてもらうよう話を通しておいた。カミーユ君やカレンちゃんも上手く話しておくと言ってくれたし、これで今日は自分の思い通りに動く事が出来る。

 

……え? どうして通信出来たかって? そりゃブリタニア兵の駐屯所から通信機をお借りしましたけど? 本当なら自作しても良かったのだけれど、そんな暇は無いので取り敢えず現地調達しました。

 

通信を入れていた合間、ブリタニア兵の皆さんには少しばかり眠ってもらっただけだから心配しないで欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───今、俺は目の前に広がる空の光景に呆然としていた。混乱する自分を落ち着かせながら、気を失うまで何をしていたか懸命に思い出してみる。

 

確か俺はシャーリー嬢からの願いを叶える為に政庁に乗り込み、再びナナリー総督と面会しようとしていた。当然侵入者である自分を放置するわけもなく警護に当たっていた警備兵と鉢合わせした事もあったが、外が戦場である為に警備の人間はさほど多くなく、自分程度でも容易く対処できた。

 

ナナリー総督を探している内に咲世子さんというルルーシュ……いや、ゼロの従者っぽい人と遭遇したり、ロロというこの間の切れやすい若者と再会したりしたけれど、此方の事情をそれとなく話すと咲世子さんは承知したと認めてくれた。ロロ君だけは此方を終始親の仇を見るようで目で見てきたから落ち着かなかったけれど、そんな事を気にしている暇もなく俺達は散開し、ナナリー総督の捜索に当たった。

 

激しさを増していく外の戦闘に急かされ、政庁内を探し回ったとき……そうだ。思い出した。

 

確か、自分は突如差し込んできた光に呑み込まれたんだった。あまりの突然の事だったので選択の余儀なく開いたワームホールに飛び込んで、そこで意識が途切れたんだ。

 

ワームホールは異空間。どこに繋がるか分からず目的地を設定しなければ宇宙空間や海底、或いは壁の中だったりと危険な場所に出てしまう可能性が凄まじく高い為、イチかバチかの賭けにでも出ない限り、ワームホールに生身で飛び込む真似なんて絶対にしてはいけない転移方法だ。

 

けれど、今回はそんな転移が奇跡的にも上手く行ったのか、自分は五体満足で地面に倒れている。起き上がって状況を調べようとするが……どうやらここは無人島らしい。人の姿は見当たらないし文明の臭いは毛ほどもしない。

 

どうにかしてZEXISと連絡を取りたい所だが、生憎通信手段がない。グランゾンを呼び出して合流しようかと考えたが、まだ戦闘が続いているかもしれないし、相手に刺激を与えるわけにもいかない。

 

ひとまず自分がどこにいるのか、それだけでもハッキリさせようと蒼のカリスマの格好に着替え直してアチコチ歩き回っていたら……なんだか、奇妙な遺跡に辿り着いた。……え? 何これ?

 

デッカい扉みたいなのもあるし、不用意に触って壊してしまっては拙いのでひとまずここの調査は後回しにして、別の所へ探索しようとしたら……。

 

「うおっ眩し!」

 

突然扉から光が放たれ、意識が揺らいで視界が定まらなくなっていく。───そして、次の瞬間自分が目にしたのは……。

 

「ほぅ、かの魔人までもがここに来るとはぁ、流石に予想外だったぞぉ」

 

「蒼のカリスマだと!? バカな、奴は死んだ筈じゃあ!」

 

「やはり、生きていたか」

 

なにやら広々とした空間に出ており、目の前には……ロール頭で有名なブリタニア皇帝とルルーシュ君、そしてスザク君やC.C.さん、見知らぬ黒髪の女性が対峙するように向き合っていた。しかも向こうではZEXISが戦っているし、何が起きてるん?

 

「………フッ」

 

訳が分からない状況にふと笑いが出てしまった。

 

 

 

 

 

 




数々の感想、ありがとうございます。
中々返すことが出来ませんのでここで大雑把ですが少しだけ返していこうと思います。


Q主人公人外化説

主人公は旅の中で色んな人と出会いましたからね。出会った人も凄い人ばかりですから学び得る事は多いかと。

Q整備力はアストナージ並?

確かアストナージって第三次に出て来ませんでしたっけ?

Qマスターや十傑集

流石に主人公はそこまで人間辞めてません。ただ、代わりにくろがね五人衆がいますからね。


次回からはかなり物語が進むかと思われます。


また見てボッチ!


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