『G』の日記   作:アゴン

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最近暑さが酷くて中々更新できません。

毎日楽しみにして下さる皆様、申し訳ありません。


その48

W月L日

 

シャーリー嬢から頼まれた、ゼロことルルーシュ少年とそれに連なる者達の身を守るという約束を果たす為、自分は自分を友だと認めてくれたトレーズさんの所にお邪魔する事になった。友人を都合の良い道具みたいに扱うやり方に罪悪感を感じていたのだけど、トレーズさんはそんな些細な事など気にするなと笑って許してくれた。

 

相変わらずの懐の大きさに感激していたが、どうやら世界の状況は思った以上に芳しくないようだ。地球連邦代表であるシャルル皇帝の不在、インベーダーやアンチスパイラルの出現頻度の多さ、更にはインサラウムの尖兵である次元獣も世界中の様々な所に局地的に出現、多すぎる地球の脅威に政府は現状の対応に大忙しの様子。

 

世界中を旅している最中でも思ったが、観光に赴く様々な土地で心の底から笑っている人間は少なかった。皆感情を表に出さずに平常心を装っているが、いつインベーダーを始めとした侵略者達に襲われないか毎日不安の日々を過ごしている為、暗い表情で下を向く人が多い。

 

今は女王リリーナが連邦の代表代理となり、彼女の采配によって市民は取り敢えず冷静さを保っている様子だが、その均衡がいつ崩れるか分からない以上、彼女も内心不安に思っている事だろう。

 

軍事力の面ではリモネシアの件で半分に削がれていても、現状で最も戦力を有するアロウズも次元獣やインベーダーの対処を行っているが、その裏では今も反政府勢力に対して弾圧を行っているようだ。

 

カタロンはハーキュリー氏を筆頭にアチコチで侵略者達の被害を受けた住民達の援助を行ってたりなど、此方も世界を変える為に変わらず頑張っている様子。というかハーキュリーさんやっぱりカタロンにいたのね。噂で聞いただけで事実かどうか分からず不安だったけれど、元気でいるようで取り敢えず安心した。

 

そして唯一安心出来たのが、コロニー側の主導者であるミリアルド=ピースクラフト。彼が率いるホワイトファングが地球に攻撃を加えず、インベーダーやアンチスパイラルのムガンを相手に戦っているという。あちらもあちらで難のある相手だが、今の状況は市民達にとって心強い味方となっている事だろう。

 

トレーズさんの屋敷で厄介になって半日、案内された部屋で一時の休息を得られた自分達は、ひとまず今後の事を話し合うべく一度広間に集まった。これからはトレーズさんの所でお世話になるのか、それとも自分と共にインベーダー等の侵略者相手に戦うのかという話。

 

彼等……というか、スザク君とルルーシュ君は即座に後者を返答した。何でも自分がトイレで部屋を開けていた合間に二人で話し合ったらしく、なんでも“自分達のやってきた事は到底許される事ではない。喩え後ろ指を刺される事になろうと誰かの為に戦っていきたい”との事。

 

少々気負い過ぎな気もするが、最初の時の様な一人が人柱になる事で世界を纏める様なやり方を取るよりはマシだと思い、取り敢えず二人には頑張れとエールを送った。

 

C.C.さんはルルーシュ君の共犯者という事で彼の方針に特に何も言うことはなかったが、二人に気付かれないように微笑んでいた。君も笑うんだねと少しからかったら「黙れボッチ」と返されてしまった。ボボボボッチちゃうわ!

 

ルルーシュ君達が自ら戦う事を決めたのであれば、自分から言えることは何もない。勿論、シャーリー嬢との約束を守る為に自分も可能な限り援護するし、いざとなったらワームホールに無理矢理詰め込むつもりだ。

 

けれどここで一つ問題がある。彼等のやる気は大変結構だが、ルルーシュ君達の機体はどれも酷い有様だ。ルルーシュ君の蜃気楼だけは設備さえどうにかすれば大丈夫だが、生憎この屋敷にはそんな設備は当然ない。スザク君やC.C.さんの機体に至っては修復不可能の所にまで来ている為、手出ししようがない。

 

今後の方針が決まっても出来る事が限られている。二人とも歯痒い思いをしているだろうけど、今日は気持ちを落ち着かせる事に専念してゆっくりと休んで欲しいと思う。

 

……所で、C.C.さんはどうしてあんなにもピザが好物なのだろうか。旅の最中で一度手作りのピザをご馳走したが、あんなものはピザではないと憤慨されてしまった。

 

そんなにダメかな麻婆ピザ、美味いんだけどなぁ……。

 

それと、今更で略式ではあるが、ルルーシュ君の弟であったロロ君に哀悼と謝罪を行っておこうと思う。シャーリー嬢との約束も中途半端なモノになってしまったが、以降はもっと気を引き締めて行こうと思う。

 

ロロ君、済まなかった。

 

 

 

W月T日

 

今日はこの日に色々な出会いがあった。まず一つ目に紹介しておきたいのがロイド=アスプルンド伯爵、ブリタニア帝国における随一の科学者でランスロットの開発主任だった人だ。

 

その出会いは昨日行われた話し合いでスザク君とC.C.さんの機体について悩んでいた所、そこに興味津々なトレーズさんも加わってきた事から始まった。最初は唯でさえこの屋敷で厄介になっているのにこれ以上迷惑は掛けられないと断ったのだが、トレーズさんのエレガントスマイルによって自分の話は無用な心配と言うことで却下された。……この人、結構茶目っ気があるのね。

 

そんな訳で半ば強制的にスザク君達の機体について話すことになったのだが、説明するにつれてトレーズさんはうんうんと頷き、どこか良い施設は無いものかと訊ねたら、何故か素晴らしい程のエレガントドヤ顔をされた。

 

不思議がる自分達を余所に、良いところに案内しようと言うトレーズさんの後をホイホイと付いていく俺達。案内された屋敷の中にある、とある行き止まりに最初は戸惑うが、トレーズさんが壁に手を触れた瞬間に壁が左右に割れ、奥からエレベーターが出現した。

 

隠し扉とエレベーターに男心が擽られる中、地下へと降り立った自分達が目にしたのは……広々とした地下施設。その奥にはブリタニアの航空艦も置かれており、そこでロイドさん達と出会ったのだ。

 

なんでもブリタニアの宰相であるシュナイゼルが本国で着々と準備を進めているらしく、巨大な建造物にフレイヤ弾頭をこれでもかと詰め込んでいるようなのだ。ロイドさん達はそんなシュナイゼルに付いていけなくなり、研究成果のKMFを航空艦に乗せて本国から脱出。追われている最中でトレーズさんの部隊に保護され、秘密裏にここで匿っているという。

 

顔に似合わず大胆なロイドさん、対するシュナイゼルの方は明らかに良からぬ事を企んでいそうだが、今はまだその事実を問いただしに行く訳にはいかない。今の自分達はトレーズさんの所でお世話になっている身だ。ここで出て行ってブリタニア本国にまで乗り込んでいけば、トレーズさんにまで迷惑を掛けてしまう。

 

それに彼の事だ。ロイドさんがトレーズさんの所で身を隠しているという事は既に知っている事だろう。万が一この屋敷の周辺に監視者が配置されているならば自分達の存在も知られている可能性もある。

 

ルルーシュ君もこれには同意してくれた。シュナイゼルの用意周到さは尋常ではない。下手をして身動きを封じられては適わないので、せめてZEXIS達が動き出すまで自分達も大人しくしておいた方がいいだろう。

 

その間何もしないというのもアレなので、ZEXIS達が動き出す合間、自分もやるべき事はしておこうと思う。

 

ロイドさん達の本国から奪取してきたとされる第9世代KMF“ランスロット・アルビオン”スザク君専用であるこの機体を自分も手伝う事でより完成度を高めたいと思う。

 

といってもあくまでお手伝い程度だ。ランスロット・アルビオンの最終調整にチョコチョコと手を加えるだけ。勿論ロイドさんからは許可を得ていますよ? ただ、本国でも機密扱いの機体の為かアルビオンに触れる代わりにグランゾンについて何か一つだけでも教えて欲しいと言われた。

 

別に隠すつもりもないし、例の“シラカワシステム”に付いては知られる筈もないから構わない。故にグランゾンの動力炉とされる対消滅エンジンの事を話したら……何故かドン引きされた。

 

いや分かるけどね。自爆しようものなら地球が消滅しかねない破壊力を持つ対消滅エンジン。皆が警戒するのも無理はない。トレーズさんだけは笑っていたけどね。

 

そんなやりとりの後、ランスロット・アルビオンの最終調整に入る。ロイドさんの専門知識と自分の整備、ルルーシュ君の計算能力とスザク君の身体能力を打ち込まれて遂に完成したランスロット・アルビオン。予想していたよりも遙かに性能が高くなってしまった事に助手のセシルさんは苦笑い。

 

これなら例の紅蓮とも渡り合えるとロイドさんは喜んでいた。どうやらカレンちゃんの操る紅蓮も想定された性能はより大きく向上しているらしく、ロイドさんは結構悔しい思いをしていたようだ。

 

……カレンちゃんも紅蓮の性能の高さに驚いていたとか言っていたけれど、まさか自分の所為じゃないよね? 確かに彼女を総督府から脱出する際に紅蓮を弄った事はあったけど、それだってエナジーウィングや各部出力調整にチョッピリ手を加えただけだよ?

 

あの後だって紅蓮はZEXISの整備スタッフに何度も手を入れられた筈だし……うん、きっと気の所為だね。

 

ジト目で睨んでくるロイドさんから逃げ、その後はトレーズさんから頼まれた機体に手を加える準備に入った。

 

トレーズさんも戦うのですかと訊ねると、彼は念の為と誤魔化す様に笑うだけ、MSを念の為に保有するトレーズさんの考えている事はイマイチよく分からないが、お世話になっている身としては断る訳にもいかない。

 

トールギスの発展型と思われるこの機体を万全以上に仕上げる事で、トレーズさんへの恩義に報いる事にしよう。既に各部システムの最終チェックは済んでいる。後はトレーズさんがこの機体に火を入れれば“トールギスⅡ”は完全なモノになるだろう。

 

今日は良く働いたと思う。体の疲労を明日に持ち込む訳にもいかないので、セシルさんの用意したおにぎりを食べて休もうと思う。

 

 

 

 

W月@日

 

トレーズさんの屋敷に厄介になって一週間。その間C.C.さんの機体を新たに組み直した事やルルーシュ君の蜃気楼、セシルさんの料理の腕にトレーズさんもエレガントスマイルを崩した等の日々があったが、未だにZEXIS達の反応は確認できていない。世界各地で戦いの火が広がり始めているのに、正義感の強い彼等が何もしないというのは流石におかしい。これはもう故意に隠れているのではなく、ZEXISの人達は何らかの事情で地球圏に“存在していない”と考えた方がいいのかもしれない。

 

原因は恐らくブリタニア皇帝とルルーシュ君が舌戦を交わしたあの黄昏の間(名称はC.C.さんから聞いた)での出来事が原因だろう。光に包まれて姿を消した彼等は先に元の世界に戻ったと思い込んでいたが、どうやらその考えは間違っていたようだ。

 

あそこは時間がねじ曲がった異質な空間。彼等の後から外に出た自分達が元の世界にその時間通りに戻れたとしてもZEXISもそうだという保証はない。C.C.さんの話を加味して自分とロイドさん、ルルーシュ君はZEXIS達はまだ黄昏の間から出て来れていないものだと推測する。

 

だったら彼等が来るまで待っていればいい。最初はそう思っていたが、昨日アンチスパイラルのメッセンジャーとなってしまったニアちゃんが、人類に向けてトンでもない宣告を告げてきた事により、そんな呑気な事は言えなくなった。

 

“陰月を地球に落とす”ただ一言そう告げたニアちゃんは、冷酷な眼差しと死刑宣告だけを残して地球に突然現れ、そして消えていった。

 

同時に陰月が移動を始め、地球に向かって落ちてきている事実に世界中の人々がパニックを起こした。当然一部の富裕層の人々は宇宙に逃げようと画策していたが、地球連邦政府から告げられる話によりそれも叶わなくなった。

 

“大規模インベーダー群の接近”ネオ・プラネッツ付近に突然現れた今までとは次元が違う規模の侵略者達の襲来。地球にも、そして宇宙にも逃げ場の無い人々は混乱し、絶望し、そして抗う気力を失ってしまった。

 

達観した様子で落ちてくる月を見上げる人々、神に祈りを捧げる人々、人類の殆どが生きる事を諦めてしまっている中、リリーナさんだけは人々に諦めないでと呼び掛けている。現在地球連邦は総力を挙げて迎撃体勢を整えているらしいが、トレーズさんの話ではそれでも勝率は0.0001%にも満たないらしい。

 

まさに万に一つも勝ち目の無い戦い。陰月にはアンチスパイラルの勢力も展開されるだろうから人類側の勝算は更に小さくなってしまう。

 

まさに絶望。一縷の望みもないこの状況に人類の殆どが諦めている中、それでもと足掻く人々の姿があった。それは気晴らしに外へ少し出かけていた時の話。

 

その人は絶望に沈んだ人達に暖かいスープを配ったり、困っている人を助けたり、自分に出来る精一杯の事をしていた。

 

その人の名はマリナ=イスマイールさん。アザディスタン王国の第一皇女で国を焼かれ、行方を眩ましていたお姫様、自分と同じ大事な居場所を焼かれた経緯のある彼女は額に大粒の汗を流して人々の為に尽くしていた。

 

何故そんな事をしているのかと訊ねると、これしかないからと彼女は応えた。自分の出来る事の少なさを痛感しながら、それでもと足掻く彼女の姿によって、徐々に人々は無表情だった顔に感情を取り戻していった。

 

インベーダーやアンチスパイラルに対して自分達は無力だ。けれど、マリナさんの様にそれでもと抗う人々の様子は言葉に出来ない尊さに溢れていた。

 

その後、マリナさんから渡された一杯のスープを飲み干した。初めて味わうスープだけれど懐かしく、暖かい気持ちになれるスープ。その味は破界事変の頃、子供達が作ってくれたあのスープにどこか似ていた。

 

あのスープによって後押しされた俺は、前々から考えていたある事を決めた。俺のグランゾンの奥底に眠る“シラカワシステム”あれから一切起動する様子のなかったあのプログラムを、今度は自分から呼び起こそうと思う。

 

アレの概要は何となく理解できる。シラカワシステムとは恐らくはグランゾンの“真の姿”であるアレに深く関わるものなのだろう。トレーズさんにお願いして、皆には少し遠出に出掛けているという事にしてもらっている。

 

今、俺は屋敷から離れた森の中でグランゾンと共にいる。

 

これからシステムを起動させて、もう一度あの不思議空間でシュウ博士と会って話をする。その先に何が待ち構えているのかは分からないが、今日の日記は一度ここらで中断し、システムを起動して何らかの成果があったらまた書こうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───やべぇ。色々情報が多すぎてどうすればいいか分からないや。シラカワシステムの起動後、予想通りシュウ博士と出会えた俺は今地球圏に訪れる危機を救う為の方法を請い、その方法とそれらに関する話を幾つか聞く事ができた。

 

その最中に出て来たのが12の鍵、太極、黒の叡智。これらのキーワードがこの世界の命運を握っていると博士は言うが、今の自分にはこれらを冷静に分析している暇はない。

 

兎に角、一番重要である“アレ”に至るまでのやり方は教わった。後は自分の運に文字通り全てを掛けるしかない。

 

陰月の落下の阻止とアンチスパイラルの掃討、インベーダー群の対処、俺達はこれら全てを明日こなさなくてはならない。

 

既に皆には準備してもらっている。ロイドさん達もブリタニア航空艦を改造し、宇宙での運行を可能にしてまで付いてくると言ってくれた。

 

トレーズさんには地球は任せておけと言われた。あの人の事を信じて、今は出来る限りの事を尽くそうと思う。

 

ルルーシュ君の蜃気楼、C.C.さんのランスロット・フロンティア、そしてスザク君のランスロット・アルビオンと自分のグランゾン。

 

明日、自分達は死地に赴く。嘗て無い規模の戦いに自分達も“それでも”と足掻こうと思う。

 

 

ZEXISが行方不明となってから二週間、地球は嘗て無い危機に陥っていた。インベーダーの軍勢、アンチスパイラルと陰月の落下、これら全てを相手に戦うには今のグランゾンと自分には荷が重い。

 

“ネオ”そこに至った時、自分達は絶望の中に光を見出せるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は長くなりそうなのでもしかしたら何回か分けるかも……です。



感想、いつもありがとうございます。
今回は暑さにやられたのか少し体調を崩した為に返信は出来そうにありませんが、それでも皆さんの感想は励みとなっております。

PS.

水分はこまめに取る様に気を付けて下さい。


これからも宜しくお願いします。

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