『G』の日記   作:アゴン

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皆さんの期待に自分の心臓がヤブァイ。


今回の話にある重要事項があります。

ビームとは叫ぶもの!これ重要です。

では、どうぞ。


その49 後編

地球圏周辺宙域。落ちてくる陰月の落下と迫り来るアンチスパイラルとインベーダー達の軍勢に、逃げる事も出来ないと悟った連邦政府はこれらを退ける為、全ての戦力を用いての徹底抗戦に乗り出した。

 

コロニー側の主戦力であるホワイトファングも地球の次は自分達の番だと思い全部隊を投入。事実上人類側の総戦力が地球の宙域に集まる事になった。

 

憎み、戦い合う地球とコロニーが皮肉にもこの時だけは手を組んだ。これなら人類も負けることはない、誰もがそう楽観視する中……地獄が彼等に襲い掛かってきた。

 

『フレイヤ弾頭の数、残り僅かです!』

 

『こっちももうすぐ弾切れだ。どうするルルーシュ。今の内に逃げる算段を立てておくか?』

 

『バカを言え。仮に逃げるとしても何処へ逃げるつもりだ? 奴らの目的は人類の殲滅、ならば地の果てまで逃げようと同じ事だ』

 

加勢に現れたルルーシュ達もその表情を徐々に曇らせる。圧倒的すぎる物量、巨大インベーダーはフレイヤ弾頭を乱発した為にあらかた片付いたが、それでも戦力の差は未だ大きい。ムガン勢力も減るどころか寧ろドンドン増えていき、数にモノを言わせた侵略者達の戦法に、蜃気楼内部でコンソールを叩くルルーシュの額に大粒の汗が流れ落ちている。

 

(既に此方の戦力の半数近くが奴らに喰われている。フレイヤ弾頭も残り僅かとなっている以上、無闇に乱発する訳にもいかん。だが、このままでは最終防衛線が突破される!)

 

どうすればいい。追い詰められた思考の中で必死に逆転の手を考えるルルーシュ。ホワイトファング側も消耗率が高くなり、MSは次々と撃墜され、複数の戦艦もインベーダーに喰われながら爆発し、宇宙の塵へと消えていく。

 

倒しても倒しても減らない敵の数にルルーシュも焦りが募る。スザクの駆るランスロットもそろそろエナジーが切れそうだと通信が入ってきて、いよいよ窮地に立たされようとしていた彼等に───更なる絶望の報せが舞い込んできた。

 

『っ! ウソ、そんな……冗談でしょう?』

 

『アヴァロン、どうした!?』

 

突然通信回線に入ってくるアヴァロンのオペレーターであるセシルの悲痛に満ちた声にルルーシュは訊ねる。その様子から尋常でない事態である事を察したルルーシュはセシルに落ち着くよう呼び掛け、話を聞くことにした。

 

そして───。

 

『……あ、蒼のカリスマと、並びにグランゾンの反応が───消失しました』

 

『何だと!?』

 

告げられる事実にルルーシュ達は凍り付く、スザクも驚愕し、C.C.さえも驚きで表情を固めた。奴が、あの魔神が負けたというのか。信じられないと呟くルルーシュだが、どんなに通信回線を繋ごうとしてもグランゾンと繋がる事はなかった。

 

あの魔神はこの戦いでは必要不可欠な存在、フレイヤ弾頭以上の切り札を失った事実に誰もが打ちひしがれていたが……。

 

『ざぁ~んねんでした。彼はまだ生きているよ』

 

蜃気楼の通信にロイド=アスプルンドの声が割って入ってくる。

 

『ど、どういう事ですかロイドさん。だって、今セシルさんは彼の……グランゾンの反応が消失したって』

 

『あぁそれね、こっちの勘違い。何だか彼は行方を眩ましていてね。彼の機体からワームホールを展開する際に発する重力場の異常数値を検出したから、恐らくはどこかに転移したんだろうね』

 

『転移って、こんな時に一体どこへ!?』

 

『奴が今いなくなった事は大きな痛手だが、放棄して逃げるような奴ではない。今は我々の出来る事をやるしかない!』

 

『わ、分かった!』

 

色々言いたい事はあるようだが、ルルーシュの必死の説得にスザクは戸惑いながらも了承。グランゾンの不在という大きな穴を埋めるのは大変な事だが、今はそんな泣き言を言っていられる状況ではない。

 

そうしている内に戦闘時間は一時間経過し、そろそろフレイヤ弾頭も残り僅かとなった。残された選択肢は限られている中、ルルーシュはここで全てを出し切るか迷う。これだけの数の敵を相手にして、その上陰月の落下も阻止しなければならない。

 

(果たして出来るのか? この少なくなった戦力で、全ての対応が可能なのか!?)

 

限られた時間の中でルルーシュは迷う。だが、最早そんな猶予も許されなくなり、いよいよ勝負に出ようかと各部隊に連絡を入れようとした── その時。

 

『ルルーシュ、左後方より新たな機影を確認。これは……ZEXISだ!』

 

『どうやら連中、今更こちら側に戻って来れたようだな』

 

『なにっ!? そうか、ならばスザクよ。お前は先にアヴァロンへ戻り、今の内にエナジーフィラーを交換しておけ。C.C.はそのまま私を守り、スザクが戻って来次第一緒にアヴァロンへ戻るぞ!』

 

『了解した!』

 

『やれやれ、援軍が来たと分かればすぐ強気になる。分かり易いな、お前は』

 

C.C.の皮肉にも今は動じず、ルルーシュはスザクに一時交代を命ずる。後ろに下がっていくランスロットの代わりに、今度は荷電粒子砲の束がインベーダー達に向けて放たれる。

 

遠く離れた位置だというのにその派手な花火のお陰で彼等が来てくれたのが分かる。崩され掛けた陣営がZEXISの出現に伴って修復されていく。

 

グランゾンの穴が思わぬ形で埋まった事にルルーシュは仮面の奥で静かに笑う。

 

(早く戻ってこいシュウジ=シラカワ! でないとお前の見せ場が丸ごと無くなってしまうぞ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────外から閉ざされた隔絶宇宙。何人も干渉する事も触れることも許されない、人工的に生み出された別の外宇宙。そんな桁外れの力を有するアンチスパイラルと呼ばれるこの宇宙の創造主は、目の前の光景から目を逸らす事が出来なかった。

 

今、この宇宙には様々な怪物達で溢れている。餓える破壊魔や火の時代に現れた宇宙怪獣なるもの、更にはアンチスパイラルの主戦力である“ハスタグライ”“パダ”“アシュタンガ”等を無数に向かわせているのだ。

 

たった一つの存在相手に余りに過剰な戦力。無量大数に等しい軍勢が一つの存在をかき消す為に動いている。その事実だけでも信じられないというのに、目の前の魔神はそんな数をまるでモノともせずに蹴散らしていく。

 

『ネオグラン……ビーィィィィムッ!』

 

魔神の額から一筋の閃光が放たれる。それに触れ、或いは巻き込まれた破壊魔達は蒸発するように消滅し、群の中に巨大な空洞を作り上げる。

 

すぐにその穴を埋めようと破壊魔達は次から次へと魔神に襲い掛かるが、手にした剣を横に薙いだ瞬間、破壊魔達は横に両断され、爆発と共に消滅する。

 

舞い上がる爆炎の中から姿を現す魔神。禍々しさと神々しさを併せ持ち、新たな姿となった魔神はこれまでとは次元が違うほどに変わっていた。

 

『グラビトロンカノン、発射!』

 

奴が武器を放つ度に破壊魔達が空間ごと破壊される。圧壊し、粉砕され、消滅していく破壊魔達を前に黒いヒト……アンチスパイラルは忌々しそうに空虚な目を鋭くさせる。

 

そんな魔神の所に巨大な手足が雪崩れ込む。パダ級とハスタグライ級の群がそのサイズと質量を活かし、物量で魔神を押し潰そうと一気に襲いかかる。

 

『──っ!』

 

違いすぎるサイズの差とそれによる物量での強襲。これには流石の魔神も手が出せないのか、抵抗することなく空間の下へと押し込まれる。

 

このままどこかの惑星にぶつけて終わらせるのか、巨大な手足達が魔神を彼方へと運ぼうとする……が。

 

『……ククク、ワームスマッシャー!』

 

パダ級とハスタグライ級達が揃って内側から光の槍によって貫かれ、爆散して消滅する。これまで多くの螺旋族を絶望に叩き込んだ軍勢が瞬く間に消されていく。未だ破壊魔達は減る様子はないが、向こうも特に目立った疲れは見せていない。

 

だったらこれならどうだと、アンチスパイラルは二体のアシュタンガ級に魔神撃破の命令を下す。それを了承したアシュタンガは近くにあった惑星を鷲掴みにすると、魔神に向けて投げ放ってきた。

 

最早何でもありすぎる光景。星をまるで野球ボールの様に投げ付けてくる規格外の化け物に魔神を操る魔人は、晒した素顔でアングリと口を開かせる。

 

だが、次の瞬間彼の口元が不敵に歪む。絶望の欠片も感じられない不貞不貞しい態度の笑み。けれど当然アンチスパイラルからはそんな彼の様子など分かる筈もない。

 

迫り来る星々の数。ここまでの規模の戦いになるともう機体の速さなんて関係無くなってくる。避けられる所なんて見当たらないと分かると、魔神はその背中に背負った日輪を輝かせ、星々達に向けて剣を突き立てた。

 

『……なんだと?』

 

その光景にアンチスパイラルは目を丸くする。魔神にもうすぐぶつかりそうだった星々が、奴に剣を向けられた瞬間動かなくなったのだ。

 

『そら、返すぞ!』

 

魔神が剣を横に薙ぐのと同時に星々はアシュタンガに向かって跳ね返るように突き進んでいく。投げ込まれた天体全てが返された事によりアシュタンガは避ける暇もなく星々の海に呑み込まれ爆発。人知を超えた戦いが繰り広げられ、遂にアレだけの数のいた破壊魔や宇宙の怪獣、そして自分の手足達が全滅させられた。

 

その事実にアンチスパイラルは更に表情を憤怒に染め上げる。これまでの戦いとは違いたった一つの存在にこうも手こずらされた事に、アンチスパイラルは己の不手際に憤りを感じていた。

 

そんな彼の前に魔神が降り立つ。ワームホールを開いて造作もなく距離の概念を消し飛ばす目の前の魔神をアンチスパイラルは彼を自らの障害と認めた。

 

たが、魔神を駆る魔人、蒼のカリスマことシュウジ=シラカワはめんどくさそうな声を上げてこう言った。

 

『……なぁ、もうこれで止めにしない?』

 

『なんだと?』

 

『イヤだってアンタさっきから俺の方を見てるだけでちっとも自分から動こうとしないんだもの。俺を潰す気ないんだったらいい加減返してくれないかな? 早く戻って皆と合流したいんだよ』

 

まるで今までの戦いで飽きたと言うような魔人の物言いにアンチスパイラルが面食らう。溜息と共に吐き出されるシュウジの不満は、やがてアンチスパイラルの琴線に触れ……。

 

『……どうやら、今のを片付けただけで随分調子に乗っているようだから言っておく。この隔絶宇宙の中において我々の力は絶対だ。故に!』

 

瞬間、先程以上の数のインベーダー達が過程を省いて、いきなりネオ・グランゾンを囲むように出現する。“光あれ”嘗てそう言って世界に光を灯した神のように力を際限なく揮うアンチスパイラルに、シュウジは何も反応を示さずに周囲を見渡す。

 

『この程度の事など我々にとっては造作もないこと。理解したか? これが貴様と私達の力の差だ!』

 

そう言ってアンチスパイラルは全ての者達に魔神破壊の命令を下す。餓える破壊魔と宇宙怪獣、そして更なる力を得たアシュタンガ達は今度こそグランゾンを潰そうと一斉に襲いかかる。

 

───と、そんな時だ。

 

『……分かった、ならば自力で出ることにしよう』

 

グランゾンの各部位が光を放ち始めると、魔神はゆっくりとその場から上昇する。魔神を破壊しようとインベーダー達は構わず追いかけるが……。

 

『さぁ、これで終幕だ』

 

魔神から放たれる衝撃波にインベーダー達は吹き飛ばされる。突然の魔神の力の急な上昇にアンチスパイラルが目を見開いた瞬間、グランゾンの背中にある後光“バリオン創出ヘイロウ”が輝きを放った。

 

『相転移出力、最大限。縮退圧、増大……』

 

まるで呪文を唱えるように言葉を紡ぐ魔人。奴から異常な重力の変動を感じたアンチスパイラルはまさかと更に目を剥いた。

 

『重力崩壊臨界点、突破……』

 

魔神の胸部が開き、そこから覗かせる三つの球体が輝きを放つと、今度は三つの黒球が出現し、それらを一つにしようと周囲の空間ごと重力の圧縮を開始した。

 

星が、大気が、重力が、時間すらもその一点に凝縮し、圧縮されていく。あり得ない。あんなモノを創り出すには最低でも恒星の8倍のエネルギーを必要とする桁違いの代物だ。

 

そんなバカなと否定するアンチスパイラルだが、魔人ことシュウジはそんな彼を見透かした様に言葉を紡ぎ出す。

 

『確かに、この状態の縮退星を創り出すには太陽の八倍のエネルギーを必要とする事だろう。アンタの気持ちは理解できる。しかし──』

 

 

 

 

 

 

“このネオ・グランゾンの力をもってすれば、造作もない事なのだよ”

 

 

 

 

 

 

瞬間、空虚なアンチスパイラルの瞳に映ったのは神々しい光の中に浮かぶ魔神の姿。一瞬その姿に見惚れてしまったアンチスパイラルは、次の瞬間その表情を驚愕の色に染め上げ───そして。

 

『縮退砲、発射!』

 

落ちてくる超重力の塊がインベーダー達の中心に落とされる。その球体を目にしたアンチスパイラルはすぐさま転移、効果範囲から逃れる為にその場から逃げ出した。

 

重力力場の嵐がインベーダー達を巻き込む様に広がり、次の瞬間───。

 

 

 

 

 

 

 

 

天地開闢の一撃が数光年に渡って広がり、インベーダー達は星々の海ごと……塵すら残さず溶けていった。

 

 

“近い内、こちらから出向いてやるさ。その時こそケリを付けよう”

 

 

魔神の放った一撃により隔絶宇宙の一部が崩壊する。その最中アンチスパイラルは確かに魔人からの挑戦状を受け取った。

 

『良いだろう。ならばその時こそお前を完全に抹消してやろう。待っているぞ、シュウジ=シラカワ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぃー、一時はどうなるかと思ったけど、何とかなって良かったぁ。俺のグランゾンも遂にネオへと至れた事だし、これで博士も一応俺の事認めてくれるようになるかなぁ。

 

なんだかあの人にはお世話になってばかりだし、今度会う時は何かお礼を用意した方がいいのかもしれないなぁ。

 

けど、あんな不思議空間でお礼とか渡せるのか? やってみない事は分からないし、今度お中元の品を持ってコックピットに乗り込んでみようかな。

 

……え? 今お前は何処にいるんだって? はい。どうやらあの一撃で隔絶宇宙とかいう空間の一部が崩壊したお陰か、どうにか元の世界に戻る事が出来ました。あの時自分が消えたと思われる座標にそのまま戻ってこれたから間違いないと思う。

 

どうやらここのインベーダー達も引き上げた様だし、地球も無事みたいだし、陰月の姿も無いことからどうやらルルーシュ君達が上手くやってくれ───

 

『シュウジ! シュウジ!! こんの、返事くらいしなさいよ! どうしてアンタがそこにいるの? なんでルルーシュ達がアンタと一緒に行動してるのよ! 答えなさい! 聞こえているんでしょ!?』

 

────どうやら、自分が現実逃避出来るのはここまでのようだ。先程から通信の向こうで騒いでいるカレンちゃんを始め、ヨーコちゃんやキタンさん達ZEXISの面々が自分に事情説明を求める通信を一方的に叩きつけてくる。まさか彼等が戻っているとは欠片も予想出来なかった自分はカレンちゃん達からの通信を切って、アヴァロンにいるルルーシュ君達に助言を求めた。

 

『……どうしよう?』

 

『知るか。というか俺もお前に対して言いたいことがある。さっさと戻って生け贄になれ』

 

『少しは言葉に優しさを持とうよ!?』

 

ふてくされた表情で通信を切るルルーシュ君。その後ろではスザク君やセシルさんの苦笑いの姿が確認できたから、どうやら彼等は全員無事のようだ。

 

……取り敢えず、今日の所は自分達の勝ちという事にしておこう。一部とはいえ奴の宇宙を破壊したのだから当分は此方に手出ししない筈だ。

 

そう思うと安心して眠たくなってきた。グランゾンはここに来る前に戻しておいたし、他の連中には自分に切り札が残されている事を知られていない筈だ。──アサキムの奴は微妙だけど。

 

兎に角、今は眠ろう。自分という存在を賭けたりトンでもない化け物達を相手にしたりしたものだから流石に疲れた。

 

未だにコックピットに鳴り響くZEXISからの通信をBGMに俺は少しばかりグランゾンの中で休息を取ることにした。

 

その最中──。

 

『お疲れさまです。今はゆっくりと休みなさい。我が半身、シュウジ=シラカワよ』

 

 

 

優しい声色で博士が自分にそう言ってくれた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公の機転でグランゾンの真の姿はまだ皆に知られておりません。

え?ではいつやるのかだって?

ヒント

つ“ifルートの58話”

次回もまた見てボッチ!

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