『G』の日記   作:アゴン

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今回、あるフラグがへし折られます。

ヒントは眼鏡。


その6

 

◇月F日

 

今日も仕事に精を出していると、不機嫌オーラ全開のシオニー外務大臣が店に訪れてきた。

 

この間までどことなく機嫌良かったものだから気になって訊いてみたら、近い内にここリモネシアでとある映画の撮影が行われると言うのだ。

 

それの何処が悪いことなのですかと訊くと、まるで自分の国が観光位しか取り柄がないみたいだと強く言い返してきたのだ。

 

なんでも、訪れる撮影のメンバーは最近別世界の宇宙から時空震動で現れたフロンティア船団の人達らしく、その撮影メンバーの大部分が若い人達で構成され、年相応にキャピキャピしているその人達に苛立ちを感じているのだとか。

 

……まぁ分からない事もない。シオニーさんは若くして外務大臣という役職に就いた事で、若い時代の青春とは縁遠い立場になってしまっているのだから。

 

けど、だからといって相手を逆恨みをする様な真似は良くないと思う。シオニーさんが苦労して大臣の座に就けた様に、そのフロンティア船団の人達だって何らかの苦労をしている筈なのだ。

 

若くして国の代表になれたシオニーさんの事を自分は尊敬している、あまり知った事を言いたくはないが、ここは国交を司る大臣として、広い心で迎えてやるのが良いのではないだろうか。

 

すると自分の言葉に耳を傾けてくれたのか、シオニーさんは俯きながら頷いた……が、表情を見せない所を見ると、やはりまだ気持ち的に思う所があるのだろう。

 

けれど、今回の事はある意味チャンスなのかもしれない。今回のその映画の撮影とやらに積極的に協力すれば、それはリモネシアの世界に対する良い宣伝になるのかも知れないのだから。

 

そうなれば映画の撮影場所に興味を持った人達がリモネシアに観光に来るかもしれないし、その時に上手く対応すれば国連から悪い目で見られる事はないと思う。

 

何事も前向きに考えてみた方がいいと、そうすれば気分も少しは晴れやかになりますよと、そう言うとシオニーさんは終始俯いたまま「そうね」と掠れる声で呟いていた。

 

流石に口が過ぎたかな、最近顔を合わせるものだからどこか友人感覚で接していた気もするから、これは怒られるかなと覚悟していたが、帰り際にお酒の所為かほんのり頬を紅くさせたシオニーさんがありがとうと感謝してきた事から、どうやら彼女との関係は悪くなっていない様で安心した。

 

 

 

◇月V日

 

どうやら今日が撮影の日だったらしく、居酒屋でしかなかったウチの店もスタッフさん達の拠り所として、午前から営業している。

 

フロンティア船団の“S,M,S”という部隊の人達も来ていたし、バルキリーも結構な数を見かけたから、相当な規模の映画になりそうだなと今から期待する思いだ。

 

というか、バルキリーの搭乗者達は皆揃いも揃って若い、全員が自分よりも年下ばかりだった。十代でも戦闘機に乗れたりするんだなと思う一方、観光気分で盛り上がっている彼等を見て、少しばかりモヤモヤした気持ちにもなったりした。

 

そりゃシオニーさんも荒れる訳だ。けれど先日彼女に対してあれほど大口叩いたのだ、彼女のこれからの仕事を少しでも軽減させる為に、自分も出来るだけの事をしようと張り切って頑張ろうと思う。

 

───そろそろ休憩時間が終わりそうなので、日記は一度中断する。

 

 

 

 

 

午後も仕事に励んでいると、これまたエラい人が店にやってきた。その名も“シェリル=ノーム”銀河の妖精と謳われるこの人は初対面の人にもハキハキとしている。彼女は自分をウェイターとして呼び出し、ここのオススメメニューを寄越せと殆ど命令口調で言ってきた。

 

そんな時、ボディーガードの人がやってきてシェリルさんを戒めていたのだが……いやー、凄い美人さんだった。声がちょっと太くて体格がガッシリしてた気がしたけど、それが全く気にならない程に綺麗な人だった。

 

美女二人も前にしていては緊張してしまうもので、自分はシェリルさんの言われたオーダーを担当の者に伝える為に一度厨房に引っ込んだのだが……その時、イヤな連中が姿を現した。

 

“次元獣”次元の向こうから現れる災害の獣、その群が此方に近付いているという話を受けて、自分はシェリルさんと近くで突然の事態に混乱している緑の髪の少女───ランカ=リーさんを連れて近くのシェルターに避難させた。

 

そして自分はというと、グランゾンを置いてある海底付近でいつでも出られるよう準備していた。物陰に隠れていたとはいえ、すぐ近くでスーパーロボット達が戦っているのにそれを平然と見学出来ている辺り、 自分にも相当な度胸が付いてきたなと実感してしまう。

 

そして、自分の心配は結局は杞憂に終わり次元獣は殆ど全滅。白い牛みたいな次元獣だけはどこかへと逃げていったが、スーパーロボット達が帰投していく様を見て、危険がなくなったと思った自分は深く安堵し、店に戻ってシェリルさんからリクエストされた料理を作る作業に戻った。

 

因みに料理の名は激辛麻婆豆腐。その辛さに一部の人から絶大な人気を誇る一品である。そして何気に自分の得意料理でもある。

 

ボディーガードの人は口から火を吐いてぶっ倒れた。ミシェルとかいう軟派な人も試しに食べてみるが、火を吐く代わりに眼鏡が割れてダウン。その場は一時期カオスな空気となった。

 

………そんなに辛いかな? 美味しいのに。

 

 

 

×月I日

 

突然だが、そろそろここを発とうと思う。暫くここで働いた事で資金は結構溜まったし、当分の生活には困らない位には稼げたと思う。

 

既に店長には話した。流れ者の自分にここまで良くしてくれた店長を裏切るような事をして大変心苦しいが、自分には目的がある。

 

シュウ博士を探し出してグランゾンの返還、そして自分を元の世界に返してくれるよう説得する事。

 

……ぶっちゃけて言えば最近この事に若干諦め掛けている自分がいるが、せめてシュウ博士の存在の有無だけでも確認しないとグランゾンの扱いに悩んでしまう。

 

だから明日にでもリモネシアから出ようと思う。当てのない旅になるが、既にこんな経験はこれで三回目、寧ろマトモな別れを言ってから旅立つのでこれまでよりは大分マシだと思う。

 

店長にはやるべき事があるからこれ以上いられないと伝えた。そんな不義理とも言える自分の言葉を店長は「部屋はそのままにしておいてやる」とだけ言ってきた。

 

……久し振りに泣いたと思う。店長の暖かさに、背中で語る男の姿に自分は静かに泣きながらまた来ますとだけ返し、店を後にした。

 

気持ちの良い人だった。将来働くのだったらあんな人の所で働きたいなと思いつつ、明日グランゾンの所へ向かう事にする。

 

……けど、一つだけ心残りがあった。結局あれから一度もシオニーさんは店に来ることなく、別れも言えないままだ。

 

店長の方から言っておくとあったが、やはり名残惜しいモノがある。せめて次に逢う時はその事をキチンと謝りながらシオニーさんの愚痴を肴にお酒を一緒に飲めたらなと思う。

 

まだ未成年だけど……ま、いいか。こういう時はノリと勢いが大事である。明日の店長との再度の別れの際、店長もシオニーさんの愚痴を訊いてやって欲しいという台詞を考えつつ就寝に入る。

 

 

 

×月N日

 

リモネシアを離れて数日、最初の頃とは違って落ち着いてこの世界を見ることが出来たが……想像以上に混沌とした世界情勢に思わず目を覆いたくなった。

 

次元獣はまだ分かる。アレは次元震が主な原因で唐突に出現する謂わば災害だ。暴れ回る災害を前に人々が怯えるのも分かる。自分もそれとなく見つけてはグランゾンで撃破している。

 

だが、問題はそれ以外だ。“WLF”とかいう世界なんちゃら戦線とかいう組織を筆頭に多くのテロリストが現在の世界情勢に反感を抱き暴れ回ったり、それを小国達が便乗してアストラギウスの傭兵を雇ったりして戦火を拡大。日々、世界のどこかでは必ずといって良いほど戦争が行われていた。

 

そして大国は大国で、自身の領土を獲得する為に毎日画策を練る為だけに軍備を強化していたりする。

 

まぁそんな訳で、軍は戦火を鎮圧するのに少しばかり後手後手で、テロリスト達が好き勝手ばかりするもんだから……ちょっとイラッとしてしまってね。

 

やっちゃいました。えぇ、その時そこにいたテロリスト達を一機残らずグランゾンでやっちゃいました★

 

はい、反省はしています。以前もう少し考えてから行動すると言っておいて、衝動的にテロリスト達を攻撃しちゃいました。

 

しかもその時の騒動を聞きつけて人革連の軍隊に追いかけ回されたりしました。……特にピンクのティエレンにはこれでもかって追いかけ回されました。

 

まぁ、グランゾンの推進力を以てすれば逃げ切ることは容易いんだけどね。

 

お陰でワームスマッシャーも実戦で使えるようになったし、操縦技術の経験にもなれたから一石二鳥である。

 

……はい。調子に乗ってすみません。以後もっと気を付けます。

 

さて、そんな慌ただしい毎日を過ごしている自分だが、先日、ある物が自分の目に止まったので思い切って買ってみました。

 

白いロングコート。偶々洋服店にあったから買ってみたけど……いいよねコレ、白い生地がシュウ博士ぽくてコスプレしている気分になる。

 

ロングだから体格も隠せるし、これで仮面を被ってみれば………うん、普通に不審者だこれ。

 

つかコートと仮面って合わないのな。違和感バリバリの格好に苦笑いがこぼれたぞ。

 

さて、そんなこんなで世界を巡ってみたのだけど、シュウ博士の存在は今の所確認できていない。やはりどこか大きい研究所とかで話を聞くしかないのかな。

 

けどそんなコネなんぞ自分にはある訳ないし、下手に軍施設に向かおうとすればすぐさま不審者として逮捕されてしまう。

 

やはりもう一度グランゾンの力でネットに介入し、ポツポツと情報を集めるしかないのか……。

 

いっその事、噂のZEXISに会って話し合ってみるのも手なのか──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきからドカンドカンと、一体何なんだ?」

 

現在地中に隠れていた自分は、さっきから上の方から聞こえてくる大きな爆発と振動に、これでは日記を書く事に集中できないと悪態を吐く。

 

もしかしてどこかの国が演習に来ているのか? だとすればいい加減ここから離れた方がいいのかもしれない。

 

グランゾンは目立つ機体だ。目撃されたらしつこい程に追われる事だろう。何とか一瞬の離脱を試みようと、自分はグランゾンと一緒に地中から出てみると……。

 

「……ふぁっ!?」

 

目の前の光景に思わず変な声が出てしまった。見渡す限りの軍兵器、砂漠を埋め尽くさんばかりの機体の数に、自分は全身から血の気が引いていく音を聞いた気がした。

 

瞬間、砲撃の雨が此方に降り注いでくる。ヤバいと思い“歪曲フィールド”をグランゾンに纏わせ、最初の攻撃を何とか退ける。

 

よく見れば軍隊の中にフラッグやティエレン、イナクトの機体もあるし……しかもその中にはいつぞやのピンク色のティエレンの姿もある。

 

他にも赤いイナクトや白いKMF、黒くて如何にも精鋭っぽいフラッグ集団、そしてトドメには後ろで最近噂のスーパーロボット軍団が控えているではないか。

 

突然すぎる事態に目を回すがもうじき三大国家+αからの一斉攻撃が再び襲ってくる。ここでやられる訳にはいかない。そう思った次の瞬間、俺はある武装を起動させ……。

 

「……グラビトロンカノン、発射!」

 

高重力の雨が降り注ぎ、全ての軍隊を地に叩き伏せた。

 

少しやりすぎた感があるが、下は砂漠だし……大丈夫だよね?

 

 




現在、原作(?)の第20話に当たります。

結構飛ばしてますが次回はもしかしたら会話メインになるかも……。


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