『G』の日記   作:アゴン

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今回も長くなりそうなので分ける事にしました。


その52 前編

 

 

 

 

エリア11、フジ周辺。旧日本に於けるこの地は、嘗てサクラダイト鉱石が世界でも随一の生産量を誇り、当時の旧日本の新たなエネルギーを採掘する開拓地となっていた。

 

そのサクラダイト鉱石を巡ってブリタニアは旧日本に戦争を仕掛け、その圧倒的な力で旧日本を力ずくで叩き潰し、理不尽な役割を押し付けるようになっていった。“極東事変”長く続く旧日本の、イレブンと呼ばれる旧日本人の長い暗黒時代の始まりである。

 

ブリタニアと旧日本、互いに因縁深いこの地で一つの大軍隊が押し寄せてきていた。地を抉りながら突き進む巨大モビルスーツ、“デストロイ”本来この世界には無いはずの戦略級の兵器であるその機体が大挙を成して地を進み、上空には空を埋め尽くそうと広がっているKMFの群。

 

その他にデストロイ以外にモビルドールシステムを搭載したMSの大軍、まるでこれから世界を相手に戦争を仕掛けるような布陣に、全世界の誰もが注目していた。

 

圧倒的軍勢の中、後方に控えるように聳え立つ浮遊の城。ダモクレスと呼ばれる飛行要塞、これこそが世界に宣戦布告したシュナイゼルの本陣であり切り札でもある。

 

コントロール室でただ静かに自陣の布陣の様子を映したモニターを見つめるシュナイゼル。そんな彼を不思議に思った元ジャーナリストのディートハルトは、彼の様子を怪訝に思いシュナイゼルに問い掛けた。

 

「あ、あの殿下、一体この地で何を待っておられるのです? 今世界中の勢力が疲弊している今、殿下が世界を治めるチャンスなのだと私は思うのですが……国連本部に向かわなくて宜しいのですか?」

 

エリア11のこの地に来てから、まるで誰かを待っている様に進軍を停止させるシュナイゼルが、ディートハルトにはどうしても理解できなかった。先の陰月の戦いで、世界に存在する各勢力の戦力はすぐには回復出来ない程に疲弊し、削られている。

 

そんな状況の中、イノベイター達に悟られないよう綿密に練り上げられてきた今回の電撃作戦。他の勢力が回復出来ていない今こそシュナイゼルが世界を掴む好機だというのに、その当の本人が興味も無さそうに頬杖を突いて画面を眺めるばかり。

 

あのZEXISも戦線に出られない今こそが絶好のチャンスだというのに、本人がそのチャンスを潰している。いい加減声も荒げてしまいそうだと今まで大人しくしていたディートハルトが、遂に我慢の限界に達した時。

 

オペレーターの一人が前方から機影を感知したという報告があった。

 

「殿下、六時の方向より機影を確認しました。これは……あ、アヴァロンです! 我がブリタニア軍の元航空艦アヴァロンが真っ正面から近付いてきております!」

 

「……遂に来たか。やれやれ、待ち合わせ時間に遅れるとは、彼には女心が理解出来ないと見えるね」

 

オペレーターの報告にシュナイゼルの頬が吊り上がる。その様子に目を見開いたカノンは以前シュナイゼルと交わしたあの会話を思い出し、次の瞬間まさかと目を剥いてモニターを凝視する。

 

アヴァロンから出て来る四つの機影。モニターを光学カメラに切り替え、目の前に現れる四つの機体を確認した時、シュナイゼルを除いた全員が驚愕に表情を歪ませた。

 

黒の騎士団の総帥、ゼロの操る機体“蜃気楼”嘗てナイトオブラウンズとして名を馳せ、ブリタニアに忠誠を誓っていた筈の……通称裏切りの騎士と呼ばれる枢木スザクの操る“ランスロット”しかもその機体は第9世代と呼ばれており、現存するどのKMFを凌駕する性能を持つ機体が蜃気楼と並び立つ様に宙に浮かんでいる。

 

そしてその背後にはピンク色のランスロットと奇っ怪な形をした巨大KMF。オレンジ色に施されたカラーリングからブリタニアの騎士達はまさかと戦慄する。

 

「殿下、まさか彼等が殿下の仰る敵ですか? なら、何もここまで戦力を有する必要はなかったのでは?」

 

彼等の登場は確かに驚かされる。まさか行方不明だった枢木スザクとゼロが手を組んでシュナイゼルの前に立ちふさがるとは思わなかった。だが、それでも彼等の戦力はたったの四機。数で圧倒する此方の軍と比較しても負ける要素が何一つ見当たらない以上、カノンの心配は杞憂に終わった。……と、思われたが。

 

「違うね、間違っているよカノン。私が待っていたのは彼等じゃない。確かにルルーシュ達が出て来るのは予想外だったが、それでも許容の範囲内だよ」

 

「殿下? 一体何を?」

 

笑みを浮かべながらモニターを見つめるシュナイゼル。彼の頬に一筋の汗が流れた時、カノンは呆然としながらモニターの映像に向き直り、そして……先程以上に大きく目を見開かせた。

 

モニターに映し出される四つの機影、そこに新たな機影が加わった時、シュナイゼル軍はまさかと息を呑んだ。

 

四体の機体の前に現れる蒼い機体。禍々しく、そして猛々しい魔神の姿に戦場の空気が一気に凍り付く。世界の半分の戦力を破壊し、ブリタニアやアロウズに甚大な被害を齎した怪物“グランゾン”

 

魔神が彼等の前に降り立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリア11にあるフジ周辺。どうにか全ての準備を終えた自分達はシュナイゼル軍のいるフジに辿り着く事が出来た。準備に手間取ってしまい来るのが少し遅れてしまった為、既にシュナイゼル軍はフジを通り過ぎた後かと焦ってしまったけれど、そんな事がなくて取り敢えず一安心。

 

周辺の住民も既に避難が終えているのか人っ子一人見当たらず、これでここが戦場になっても民間人が巻き込まれる事はない。もしかしてシュナイゼルが予め避難するよう指示をしていたのかな?

 

『やれやれ、覚悟はしていたがまさかこれほどまでとは……本当に私達だけで大丈夫なのか?』

 

目の前に広がる大軍勢を前に、C.C.さんがうんざりとした表情で通信を開いてくる。モビルドールシステムを搭載したデストロイを始め、数多く存在するMS達。空にはそんなMSに劣らないもの凄い数のKMFが此方に銃口を向けている。天と地を埋め尽くす程の軍勢に対し此方は僅か五体、確かにこれは中々厳しい状況だが……まぁ、何とかするしかないだろう。

 

『確かに戦力の差はありますが、それでも陰月での戦いに比べたら大分マシですよ。加えて月の落下という追い詰められた状況でもないわけですし、少しは肩の力を抜いて行きましょう』

 

『バカかお前は。相手はインベーダーやアンチスパイラルの尖兵達とは違って自ら考える知能を持ち、更にあのシュナイゼルが率いる軍勢だぞ。そんな甘い考えでは奴の搦め手に翻弄されるのが落ちだな』

 

勿論シュナイゼルの動向には最善の注意を払うつもりだが……別にそこまでキツい言い方しなくてもいいじゃん。ちょっと緊迫した空気を和ませようとしただけじゃん。最近ルルーシュ君てば自分に対する容赦が無くなってきている気がする。

 

けれど、確かに相手がシュナイゼルなだけに注意は常に向けておいた方がいいだろう。肩の力を抜いてとは言ったが、相手が相手なだけにここはもう少し気を張り詰めて行くとしよう。

 

被った仮面の奥で目を瞑り、軽く深呼吸を繰り返す。そうしている内に今度はスザク君から通信が入り、神妙な顔付きで自分に提案を出してきた。

 

『シュウジさん。いや、蒼のカリスマ。ジノとアーニャ、ナイトオブラウンズの相手は僕に任せてはくれないか?』

 

『それは助かりますが、大丈夫ですか? そのお二人は貴方とご同輩なのでしょう? しかもナイトオブラウンズの中にはあのナイトオブワンもいるようですし、貴方に掛かる負担が大きくなりますが……』

 

『構わない。けれど、どうか二人には手を出さないで欲しい。彼等とは僕がちゃんと向き合わなければならないから……』

 

通信越しでも分かるスザク君の固い決意に、自分は分かりましたと了承する。スザク君にとってジノ君やアーニャちゃんはラウンズの中でも歳の近い者同士。よく一緒に連んだり、休みの日には遊んだりしたこともあるのだろう。ラウンズに入って共に過ごしてきた仲間として、彼にも思う所はあるのかもしれない。なら、彼等の相手はスザク君に任せた方がいいだろう。

 

時間もいよいよ迫ってきた。目の前の軍勢も此方に向かって徐々に近付いている事だし、自分は昨日皆で立てた作戦プランの概要をもう一度再確認する。

 

『……では、そろそろこちらも動くとしましょう。ルルーシュ君、例の少女から譲って貰ったデータは?』

 

『既に準備は完了している。後は向こうがフレイヤ弾頭を撃ってきた所を見計らって瞬時に入力、その時はスザクとタイミングを合わせたいのだが……』

 

『任せて、その時までには間に合わせる』

 

『宜しい。ならばジェレミア卿と自分が先陣を切り、C.C.おば──ゲフンゲフン、C.C.さんはルルーシュ君の援護を、アヴァロンは出来るだけ離れ状況の伝達だけは怠らないようお願いします』

 

『フレイヤ弾頭はどうする~?』

 

『使いません。てか、使ったら拙いでしょ。此方までフレイヤを使ったらそれこそ向こうは際限なくフレイヤ弾頭を容赦なく使ってきます。此方の持つフレイヤはあくまで抑止力として扱って下さい』

 

『了解しました』

 

『承知。見せて差し上げよう。我が忠義の嵐を!』

 

『おいボッチ、貴様今なにを言い掛けた?』

 

ブリタニアとの事実上最後の決戦。目の前の大軍勢の前に気負った者は一人もいない中、自分はグランゾンのコックピット内で操縦桿を握りしめる。

 

───そして、遂にシュナイゼルの軍が動き始めた。押し寄せてくる敵の軍勢、デストロイの群が、地上の部隊が動くと、土煙が舞い上がり、空を茶色に染め上げていく。

 

圧倒的。デストロイという黒い壁の向こうにも続く敵の軍勢に普通ならそれだけで相手の戦意は砕かれる事だろう。無数のモビルドールにブリタニアの軍、更にそれらをまとめるナイトオブラウンズの存在と軍隊の全てを束ねるシュナイゼル。

 

生半可な軍では対抗する事も難しい軍勢に対し、此方はたったの五機。到底勝てる見込みの無い戦いだが……なに、心配することはない。

 

此方には黒の騎士団の元総帥であるゼロと、ナイトオブラウンズの一人であったスザク君。そして忠義パワーという理不尽で人間ではないナニカになりつつあるジェレミアさん。

 

C.C.さんもKMFの扱いはZEXISでは四聖剣に次ぐ実力者と聞いているし、なにより……頼れる相棒グランゾンがいる。博士から言われた自分の専用機、これまで何度も共に修羅場を越え、助けとなってくれた愛機。今回も頼りにさせて貰うと呟き、改めて眼前の軍勢を睨みつける。

 

シュナイゼルを止める。こんな戦いをするアイツをブン殴ってでも止めてみせる。仮にも皇子相手に何を言っているのかと思われるが、自分は既にあのトレーズ閣下と殴り合いをしているのだ。皇族だろうが皇帝だろうが今更関係ない話である。

 

『では……いきますよ!』

 

自分の戦闘開始の合図を切っ掛けにルルーシュ君達の機体は隠れるように自分とグランゾンの後ろに下がる。眼前に広がるデストロイ、巨大な黒い壁が迫り来る光景に……。

 

『この武器は空間と時間、全てを歪曲し、破壊する。……さぁ、覚悟は出来たか?』

 

『ディストリオン……ブレイク!』

 

自分はグランゾンの胸部部分を展開し、極光の槍を敵陣営に向けて叩き込んだ。光に呑み込まれ、爆散していく敵機体。敵の陣形のド真ん中に風穴を開けた。

 

オープニングは此方が先制。敵陣形に穴を開けた事を皮切りにルルーシュ君達も行動を開始する。相手が膨大な戦力を有するに対し此方はたったの五機、戦力差では圧倒的に此方が不利だが、戦い方によってはまだやりようがある。

 

『ではルルーシュ君、露払いは私に任せて君達はシュナイゼルを……いや、ナナリー皇女を頼む』

 

『無論そのつもりだ。お前も、下手を打つんじゃないぞ』

 

『スザク君、ナイトオブワンは手強いぞ。心して掛かるといい』

 

『あぁ、分かっている。そっちも気を付けて!』

 

ルルーシュ君を先頭に敵陣営のど真ん中を往くKMF達。そう、ここでの自分の役割は囮。敵を多く引きつけてその上で暴れ回り相手の戦力を削いでいく。そしてその合間にルルーシュ君達はダモクレスがフレイヤ弾頭を迂闊に打ち出せない所にまで接近し、タイミングを見計らいながら戦う事になる。

 

暴れ回るだけでいい自分に対し、ルルーシュ君達の役割はシビアなものだ。だが、今は彼等に任せるしかない。……いよいよ危なくなった時は“ネオ”になるのも辞さない覚悟で、自分はルルーシュ君達の後を追おうとするモビルドール達の先回りをして立ちはだかる。

 

『ここから先は通しはしない。さぁ、始めるとしようじゃないか!』

 

自分という存在を障害と認めたモビルドール達が一直線に自分に向かってくる。相変わらず一人で戦う事になってしまっているが、今はこの戦法が最も有効なのだと理解し、自分もモビルドールの群に向かって突貫するのだった。

 

───本音を言えば、チョッピリ寂しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ククク、遂にこの時がきましたか。私の因子が高ぶり、最も強い力を得られるこの時が! 蒼き魔神グランゾン、そして蒼のカリスマ、貴方達はここで果ててもらうとしましょう。この私のスフィアの力によってね……ククク』

 

フジの山頂付近で嘘吐きの羊が笑みを零す。

 

 

 

 




戦いは開幕ブッパが基本(白目





───NGシーン───


ワン『我がギアスは未来を読む! 如何に貴様といえどこの目からは逃れる事は出来ん!』

蒼『成る程、それは困ったな』(ワームスマッシャー全方位)

ワン『(゜ω゜)』

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