『G』の日記   作:アゴン

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早くグレイス&リボンズ戦書きたいなー。(微笑み


その52 中編

 

 

───爆発が、響く。轟音が、轟く。

 

エリア11という旧日本の地、時空震動で二つに分かたれた二つの内の片割れの地。ブリタニア帝国によって支配されたこの地で、国全体を揺さぶる程の轟音がフジの周辺地域より発せられていた。

 

『─────』

 

モビルドールシステムを搭載された無人の機動兵器、デストロイが目の前の魔神に向けて一斉射撃を行う。大地を穿ち、深々と旧日本の地を割るその威力は最早戦略兵器級の威力を持っていた。

 

デストロイ一機だけで街一つを占拠できる制圧力を持つ。それが、地を埋め尽くすほど存在していると知れば、誰だって戦意を失うだろう。

 

だが、目の前の“蒼”は違った。深い蒼、深海を思わせる暗い闇色に近いソレは、デストロイという黒の巨人の攻撃を受けても傷どころか塵一つ付いてはいなかった。

 

デストロイはモビルドールシステムを搭載された無人機、故に目の前の存在に対する畏怖は感じないし、そもそも人間が乗っていない為、感情で動くことは絶対に有り得ない。

 

舞い上がる砂塵の中で佇む蒼き魔神。その姿を認識するとデストロイは再び胸部にエネルギーを収束させる。しかし───。

 

『───フッ!』

 

魔神の目が一瞬光ったと思われた瞬間、デストロイの足は横に切り裂かれ、黒の巨人は収束させたエネルギーをあらぬ方向に打ち込み、空を見上げながら倒れる。

 

その時、新たに煌めく二振りの縦横の斬撃がデストロイの胴体を四つに切り裂く。魔神の追い打ちを受けた巨人はそのまま物言わぬ鉄屑に成り下がり、爆発と共に砕け散った。

 

『フンッ!』

 

そして魔神は手にした剣をそのまま握り締め、横に薙ぎ払う。その攻撃を受け、周囲にいるMS達をまとめて両断。爆砕させて見せた。

 

だが、どんなに凄まじい力を見せつけた所で感情の無い機械人形が怯む筈もなく、モビルドールの機械人形は魔神の周囲を固め、一斉に集中砲火を浴びせた。遠距離から近距離、お構いなしに弾丸、ミサイルの雨を降り注がせるモビルドール達。そんな中で魔神は───。

 

『ワームスマッシャー』

 

ただ一言、武装の名を呟き魔神の胸部が輝いた瞬間、集中砲火を浴びせてきたモビルドール達を光の槍でまとめて刺し貫いた。

 

上から下から、左から右から、縦横無尽に広がるワームホールを危険察知能力の無い機械人形に読める筈もなく、無抵抗に魔神の放つ光の槍に貫かれて爆散していく。

 

周囲の機体を巻き込んでの爆発はより強い爆発となって戦場を炎で染め上げる。舞い上がる炎、爆風に乗って灰色の空へと消えていく火の粉、凄惨たるその光景の中で未だ無傷の魔神が佇んでいた。

 

『……さて、コッチの方は上手く行っているけれど、ルルーシュ君達は上手くやってくれているかな?』

 

既にシュナイゼル軍の三割を削る事に成功したグランゾン、その魔神を操る魔人として知られる蒼のカリスマ改めシュウジ=シラカワは、目の前に広がるMSだったものの残骸を眺めながら仮面の奥で一人呟く。

 

戦闘開始となって既に三十分。敵を引き付ける役として戦場を掻き乱しているが、如何せん此方は剣とワームスマッシャーのみでの戦いだ。戦いの効率も今までと比べて悪くなっている。

 

ディストリオンブレイクという高威力の武装は旧日本を深く傷付けてしまう恐れがあるので、最初の時以降使っていない。比較的自然に優しいグラビトロンカノンも、あんまり乱発してはこの地の地層に影響を及ぼす可能性があるため使用はなるべく控えるべきだと考え、シュウジは出来る限り剣による接近戦とワームスマッシャーでの支援射撃(自分に対してだが……)だけを心掛けて戦っている。

 

尤も、先の陰月での戦いで“ネオ”に至った為か出力も上がり、二つの武装だけでも十分対応可能だから問題はない。

 

『……あ、グランビーム発射!』

 

今、思い出した様にグランビームを発射し、列となったモビルドールを貫く。二つから三つに戦闘手段が増えた事で先程よりも戦いやすくなり、空を飛ぶKMF達を撃ち落としながらシュウジはアヴァロンにいるセシル達に通信を繋ぐ。

 

『セシルさん聞こえますか? 此方はグランゾン。現在敵勢力の三割を削りました。他のモビルドール達の位置、及びゼロ達の状況を教えて下さい』

 

『はい。現在ゼロとC.C.、並びに枢木スザクとジェレミア機の全機がダモクレス付近の位置でKMF達と交戦中、フレイヤ弾頭が発射されていない所をみると、やはり彼等のいる位置がダモクレスの懐となっているようです。尚、モビルドールについてですが此方もグランゾンに群がる様に接近しています』

 

『了解しました。此方はこのままモビルドールの殲滅に移行します。此方が片付き次第、私も彼等の所に向かいます。また、彼等がナイトオブラウンズと接敵しても作戦を続行するよう伝えて下さい』

 

『了解です。御武運を……』

 

 此方を心配してくれる口振りを最後にアヴァロンとの通信を一度切る。そうしている合間にも敵は次々と此方に向かって押し寄せており、残り僅かとなったデストロイを盾にモビルドール達は前進してくる。

 

そんな連中に対し、シュウジはグランゾンと共にもう一度突貫する。主砲を発射するデストロイの胸部にグランワームソードを投擲し、黒い巨人の胴体に風穴を開ける。そしてそのままシュウジはグランゾンのスラスターに火を入れて超加速と共に残りのデストロイと肉薄する。投擲したグランワームソードをワームホールを開いて手元に呼び寄せ、グランゾンの手に握らせると共に跳躍。デストロイの頭上にまで飛び上がった所で……。

 

『チェストォォッ!』

 

勢いを乗せて剣を叩き付けてデストロイを両断。そのまま他のモビルドール達も纏めてワームスマッシャーで一掃し、シュナイゼルの軍隊を着実に減らしていく。

 

この調子ならルルーシュ達との合流も近い。勢いに乗ってこのまま敵を全滅してみせようかなと意気込んだ矢先、突然ダモクレスから通信が送られてくる。何だと思い回線を繋いでみれば、そこには相変わらず何を考えているのか分からない笑みを浮かべたシュナイゼルが映し出されていた。

 

『やぁ、こうして君と話をするのは中華連邦の時以来だね。シュウジ』

 

『……やっぱり俺の正体を分かっていたか』

 

自分の正体が見破られたというのに比較的に落ち着いた様子で対応するシュウジ。これまでに多くの人から自分の正体を知られた事である程度の耐性を得る事が出来た彼は、仮面の奥でも冷静な表情でモニター越しの皇子に視線を向ける。

 

『いやはや、流石はブリタニアとアロウズの混合部隊を単騎で壊滅させた魔神だ。その戦い振りにまずは賞賛の言葉を送らせてもらうよ』

 

『そんな社交辞令よりも降伏宣言をして欲しい所だな。……アンタも薄々は分かっているんだろ? アンタとアンタの軍じゃ俺には勝てないって』

 

『………』

 

シュウジの指摘にシュナイゼルは何も言い返さない、何故ならシュウジの言葉が真実だからだ。蒼のカリスマ───否、シュウジ=シラカワとその愛機グランゾンは、単騎でありながら地球最強の独立部隊“ZEXIS”と同等以上の戦力を有しているからだ。

 

彼が単騎で暴れたりしないのは、ダモクレスにいるナナリーを助けると決意するルルーシュ達の意思を尊重したのと、旧日本の大地を必要以上に壊さないと決めた配慮によるもの。もしグランゾンが本来の力を発揮し、全ての敵を殲滅する事を目的に行動していたら……シュナイゼルの軍は魔神一機に半刻も経たずに全滅していた事だろう。

 

故に、シュウジはシュナイゼルに申し込む。戦闘を止め、直ちに投降しろと。ダモクレスとフレイヤ弾頭を放棄し、此方に降れと、半ば脅し気味にシュナイゼルに申し込む。

 

『もう止めようぜシュナイゼル。アンタは俺を友達だと言ってくれた。社交辞令とは分かっているけど、中華連邦でああ言ってくれた時、俺は嬉しかった。俺は友達相手に力を揮いたくはない。頼む、降伏してくれ』

 

説得というよりも懇願するかのように、シュウジはシュナイゼルに降伏するよう呼び掛ける。この世界に来て早一年以上が経過し、漸く出来た大事な友人とこれ以上戦いたくないと言うシュウジに対し……。

 

『ふ、フフフ……やはり私の思った通りの人間だね、君は』

 

『……なに?』

 

シュナイゼルは不気味な微笑みと共にシュウジの説得をはねのけた。表情を変えず、絶えず微笑みを浮かべているシュナイゼルを訝しげに思った時───後方の安全圏に下がっている筈のアヴァロンから火の手が上がった。

 

『な、何だと!?』

 

バカな!? と、シュウジは内心で叫ぶ。あそこには敵影の姿なんてなかった。アヴァロンに向かおうとしていた機体は全て自分達が叩き落とした筈。信じられない光景を目の当たりにして目を見開くシュウジだが、現実はアヴァロンが炎を上げながら墜落していく事実から変わらない。考えるよりも先にグランゾンを走らせ、アヴァロンを重力制御でゆっくりと地上に降ろすと、シュウジはアヴァロンに対しで通信を開いて呼び掛ける。

 

『アヴァロン、アヴァロン! 応答してくれ! セシルさん、ロイドさん、大丈夫ですか!? 返事をしてくれ!』

 

『あ、アイタタタ……うん、何とかコッチは無事~。うえ、頭切っちゃった』

 

『私達は何とか無事よ。アヴァロンもエンジン部分を少しやられただけだから、急いで消火作業に入れば大丈夫だと思うわ。……けど、残念ながら今回の戦線には復帰出来そうにないみたい。ごめんなさい』

 

ロイドとセシルの無事を知らせる報告にシュウジは安堵するが、どうにも解せない。シュナイゼルの軍は自分達が戦っているもので全てのようだったし、増援の気配もない。一体どこからの攻撃なのだと辺りを見渡した時、シュウジはその目を驚愕に見開く事になる。

 

『インサラウムの無人偵察機……だと?』

 

アヴァロンを攻撃したとされる位置に見える白い機体、それがインサラウムの無人偵察機だと知るとシュウジはグランビームを発射し無人機を破壊、仮面越しで睨みながらモニターの向こう側にいるシュナイゼルを睨みつけた。

 

仮面を被っていても分かる蒼のカリスマの怒気、それを前にしてシュナイゼルの隣に控えるディートハルトは頬をひきつらせるが、当の本人はその笑みをより深く、その瞳をより細くさせて蒼のカリスマを見つめている。

 

『シュウジ。私はね、どうしても君に勝ちたいんだ。最強と言われる君を、私の予想を悉く覆してきた君を、私はこの手で超えたくなったんだ。その為なら、私は喜んで地球の敵とも手を交わそう。そして、君に勝つためなら君自身の美徳をも利用しよう』

 

『俺の……美徳だと?』

 

『君は、君自身が思っているよりもずっと優しい人間だと言う事に気付いているかね? 大事なモノを守る為なら自分に罪が被ろうが構わない。そんな事を思った事は……一度や二度程度じゃないんじゃないかな? 事実、君は世界から徐々に認められつつあるのに君自身は何も言わない。何故なら、君は大事なモノを守れるなら他はどうなっても構わないという無頓着な部分があるからだ』

 

(そ、そうだったの?)

 

シュナイゼルから聞かされる自分の人物像をシュウジは他人事に聞いていた。確かに身に覚えのある事が幾つかあるだけに否定仕切れないが、それでも数回しか会った事のない人間に対してこうも冷静に分析するシュナイゼルにシュウジは内心で若干引いていた。

 

『自分よりも他人を優先する傾向のある君が、果たしてこの状況で彼等を見過ごせるか? 答えは否だ。喩え相手が何者だろうと、君は誰かの為に戦える、戦えてしまう。だからこそ、私はそこに勝機を見出すしかなかった』

 

無人偵察機の群がアヴァロンごと魔神に攻撃を仕掛けてくる。槍を携えて突貫してくる連中をシュウジは舌打ちをしながらワームスマッシャーを放ち、インサラウムの尖兵を撃破していく。

 

だが、奴等の増援はこれだけでは終わらなかった。無人偵察機を全機破壊した途端、今度は次元獣の群がアヴァロンとグランゾンを囲むように出現する。

 

ギガ・アダモンなど上級の人工次元獣の姿はなかったが数が多い。今まで倒してきたモビルドール達の数を埋め合わせる程の数の次元獣達の群を、シュウジはウンザリとした気持ちで眺めていた。

 

『シュウジ、君の力は確かに強い。アロウズの戦略兵器を防いだ事、世界を相手に一歩も引かない所、その強さは現在の地球人類の枠組みを越え始めている。だから私は君の強さとは無縁の所で戦うしかなかった。君の人間としての本質、そこを見抜き、突くしかなかった。嘗て無い戦い方に流石の私も苦労したよ。君は自分より他者を優先とする人間だ。今の時世ではそれは尊い人種なのだろう、だが、その人間では個は救えても世界は救えない。───だから』

 

『───ゴチャゴチャと、ちょっと五月蠅いよお前』

 

『っ!』

 

アヴァロンという枷を使用し、魔神に勝利するまであと一歩、漸く掴みかけた王手への一手が、グランゾンから放たれる強力な重力操作によって次元獣諸共粉砕される。

 

恐らくは破界事変で引き起こした当時の国連軍を全滅させたような高重力を発生させたのだろう。アヴァロンだけはその影響を受けず、インサラウムの尖兵だけが圧壊されゆく光景に、シュナイゼルは頬から汗を流して息を呑んだ。

 

『さっきから聞いているとさ、俺の事を俺以上に分かった様に言ってるけどさ、それってそんな大事な事か? 他人が大事? 別にそんな大袈裟な話じゃないだろ。満員電車に乗って、お年寄りに席を譲ったり、木の枝に引っかかった風船を取ってやる位の……そんな誰にでも出来そうな話だろ? お前さ、スゲェ難しい事を言っているけどさ、実は結構バカだろ?』

 

『───っ!』

 

シュウジからシュナイゼルに言うバカの一言。その言葉を耳にしたシュナイゼル達は絶句し、セシルは卒倒しかけ、ロイドは爆笑する。混沌とした空気の中、グランゾンは手にした剣をダモクレスのいる方向に突きつけ、一言付け加える。

 

『待ってろ。今そっちに行ってその固い頭を叩いて直してやる。友達のよしみだ。力の加減は八割程度に抑えてやるよ』

 

そこまで言い切ったシュウジはシュナイゼルの通信を切る。これ以上互いに語る言葉はない。続きは自分がダモクレスに乗り込んでからだと、シュウジは襲い来る次元獣達に向き直る。

 

不敵に笑い、再びグランゾンの胸部を開いてエネルギーを収束させる。もう一度ワームスマッシャーで同時攻撃を与えてやろうと発射体勢に入ったとき───背後から、衝撃が貫いた。

 

『───なんだ?』

 

歪曲フィールドを展開していたおかげでダメージは通らなかった。シュウジは今の状況にデジャヴを感じ、辺りを見渡すが……次元獣やモビルドールの大軍以外目立つ所はなかった。

 

もしかしてまた別の援軍か? シュナイゼルが相手だからその可能性も考えられるが、それはないとシュウジは断言する。何故なら……似ているからだ。リモネシアにZONEを置かれ、インサラウムに対して怒りを覚えた時、奴はこうして自分の油断を突いてきている。

 

『いるんだろ? 出てこいよ、アイム=ライアード!』

 

『フフフフ、流石は魔人蒼のカリスマ。私のやる事は全てお見通しという事ですか。ですが、その聡明ぶりもここまでです』

 

シュウジの呼び掛けに対し、地面から生える様に姿を現すアイム=ライアードとその愛機“アリエティス”だが、その様子はコレまでと違っていた。

 

グランゾンを囲む12の影、それらが全てがアイムの駆るアリエティスだと認識するシュウジは言葉を失って面食らう。

 

“偽りの黒羊”嘘吐き男の駆るマシンが魔神に向けて一斉攻撃を開始する。

 

 

 

 

 

 





シュナイゼル『私は貴方に勝つためならどんな手段も厭わない!』

シュウジ『だったら、まずはそのふざけた幻想をブチ殺す!』


現在二人の関係は大体こんな感じ。


次回もまた見てボッチ!


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