『G』の日記   作:アゴン

63 / 266
漸く第三次Zのシナリオをコンプリートしました。

そして今回はキリの良いところで終わった為短いです。



その53 前編(仮)

 

 

 

『……いきなり出て来ておいて随分勝手な事を口にするじゃないか。ええ? アサキム=ドーウィン』

 

アイム=ライアードという乱入者によって混乱しつつある戦場。唯でさえシュウジとグランゾンが手を焼いている所に、アサキム=ドーウィンという新たな乱入者の出現により、戦線はより混迷していく。

 

アイムのアリエティス、アサキムのシュロウガ、そしてシュウジのグランゾン。この三機の機体による三竦みの様な状況を、遠くでアヴァロンを修理しているロイドとセシルは生唾を呑んで見つめていた。

 

いつ戦い始めてもおかしくない。そんな張り詰めた空気の中、シュウジはアサキムを問い詰める。遠回しに邪魔をするなと言うシュウジに、アサキムは笑みを浮かべて答えて見せた。

 

『悪いが、今の君では彼の相手にはならないよ。彼の使うスフィアは“嘘”を司る代物だ。仮に超火力で粉砕したとしても、次の瞬間には再生しているだろうさ』

 

『…………』

 

『尤も、真の姿に戻れば話は別だけれどね。如何にスフィアといえど天地開闢の一撃には耐えきれないだろう。けどね、だからこそ困るんだ。全てのスフィアはいずれ僕が狩るモノ、太極に至る前に欠片を壊されてしまったら、僕の道も閉ざされてしまうからね。それだけは防がないといけない』

 

『お前、やっぱり……』

 

知っていたのか。“ネオ”へと至り、新たな力を手にしていた事を。知られていた事に対し、シュウジは動揺する事なく睨み付ける。

 

相変わらず此方の事はお見通しな奴を気に入らないと思いながらも、シュウジは焦らずシュロウガの動きを警戒する。

 

元より目の前の男と機体はアイムよりよほど得体の知れない存在だ。何を考えても無駄というのなら、どんな奇襲を仕掛けられても対応出来るよう常に気を張っていた方が賢明だ。

 

『フフフ、呪われし放浪者よ。アナタにそれが出来ますか? 大罪を犯し、死ぬことも許されない罪人のアナタにこの高まった力を持つ私を葬ることなど───』

 

『……確かにね。君の因子の高まりは予想を上回っていたよ。しかし、何事も絶対は存在しない。君も知っているだろう? スフィアにはそれぞれ因果関係が存在している。インサラウムの皇子とクロウ=ブルーストがそうであるように』

 

『っ!』

 

『あの皇子とクロウさんに……因果関係だと?』

 

不敵な笑みをこぼしながら説明するアサキムにアイムの表情が僅かに曇る。スフィアに関する新たな謎にシュウジが混乱する中、シュロウガから光が放たれる。

 

『君のスフィアを狩る前に、まずは君に罰を与えよう。“知りたがる山羊”よ、奴の嘘を暴け!』

 

光が強烈に放たれシュウジが目を眩ました次の瞬間、シュウジの目の前にはある映像(ヴィジョン)が映し出される。どこかの研究機関の一室かと思われるその場所に、奴はいた。

 

『イヤだ、今のポジションを失うのはいやだ! 折角嘘を吐いてまでこの席に座れたというのに、それを失うなんてイヤだ!!』

 

そこには自分の知るアイム=ライアードではなく、ハーマル=アルゴーと呼ばれる青年がみっともなく喚いている姿が映し出されていた。より高い地位に登り詰める為、他者より優遇されたい為に、嘘を吐き、嘘を続け、その果てに得たスフィアの力。

 

“偽りの黒羊”嘘を重ねることによって戻る事が出来なくなった男、それがアイム=ライアードの正体だった。

 

ほんの一瞬の出来事。刹那的な合間に見ていた映像が終わると、そこには凄まじい力を発揮していたアイム=ライアードの姿などなく……

 

『ち、違うんです教授、私は完璧な人間なのです。う、嘘など吐いておりません! 私の言う事を信じて下さい!』

 

必死に過去に縋るハーマル=アルゴーの姿があった。嘘や虚飾を祓い、強制的に真実を暴く“知りたがる山羊”これがアサキムの持つスフィアの力なのかと、シュウジは仮面の奥で一滴の汗を流す。

 

相反するスフィアの力で力を失ったアイム。今こそスフィアを狩る時だとアサキムはシュロウガを走らせようとするが……。

 

『やらせん! 我がインサラウムの仇である奴は私が討たせてもらう!』

 

新たに現れる別の機体。インサラウムの王であるユーサーの突然の乱入にシュウジやアサキムが一瞬驚くが、その合間にユーサーの聖王機はアイムのアリエティスの間合いにまで踏み込み。

 

『我が民達の怒り、思い知るがいい!!』

 

『っ!!!』

 

一閃。横に薙いだ一撃にアリエティスは両断され、アイムは悲鳴をあげる事なく機体の爆発と共に消滅していった。呆気ない幕切れに一瞬惚けてしまうが、インサラウムの親玉が出て来た事により状況は更に緊迫したモノとなる。

 

息継ぐ暇もない。そう思いながらも、シュウジはアサキムとユーサー、それぞれの動きを見逃さないよう警戒を続けている。

 

するとどうだろうか、爆散するアリエティスから淡く光る何かが出てくると、聖王機に吸い込まれる様に消えていくではないか。あの光がスフィアと呼ばれるモノなのだろうか? 初めて目の当たりにするスフィアというものにシュウジが驚いていると、グランゾンのモニターがある部隊の接近を感知する。

 

(これは……ZEXISか。まだ完全に機体調整が終わっていない筈なのに無茶をする)

 

だが、正義感の強い彼等の事だ。世界の命運を握る戦いが起こっていると言うのならば、黙って見ている事なんて出来はしないのだろう。

 

『我が民達よ。ひとまず、我等の祖国の仇は討った。今は眠るといい』

 

『見事でしたよ陛下、ユーサー=インサラウム。アナタが彼を討った事によりアナタの世界の民は安心して眠れる事でしょう。アナタのスフィアの覚醒には彼も随分と手間取ったみたいだからね』

 

『こんな、こんなものの為に我が国が、民達が……』

 

『だけど気にする事はない。それはアイム=ライアードがやらなくても僕がやっていた事だ。どちらにせよ、君の国が滅亡する事には変わりはないよ』

 

『この、悪鬼めが!』

 

『…………』

 

ケタケタと笑いながら挑発するアサキムにユーサーは憎悪を持って睨みつける。一つの国を滅ぼす事になんの抵抗も感じていないアサキムを悪鬼と呼ぶユーサーは間違っていない。シュウジも内心でアサキムを軽蔑しながら見つめていると、ここにはもう用がないのか、アサキムはシュロウガのバーニアに火を灯し始めた。

 

『では、またお会いしようユーサー=インサラウム。次に会う時は君のスフィア“尽きぬ水瓶”と“偽りの黒羊”を狩ることにしよう。……そして』

 

『……あ?』

 

『魔神グランゾンとシュウジ=シラカワ、君達との決着も近い内に付けるとしよう。僕がこの呪いから解き放たれる為に……』

 

それだけを残してアサキムとシュロウガは戦場から離脱する。音よりも速く去っていく奴に声を掛ける暇もなく、残されたユーサーとシュウジはその場で立ち尽くす事しか出来なかった。

 

『……では、私も引くとしよう。蒼き魔神よ、そなた達とも何れ決着を付けよう』

 

ほんの僅かな合間睨み合う両者、先に視線を逸らしたユーサーは仇を討てたことで目的を達成出来た為、アサキム同様その場から去ろうとするが……。

 

『待てよ』

 

『…………』

 

シュウジによって呼び止められてしまう。自分の知る蒼のカリスマとはまるで違う雰囲気にユーサーは何となく気になったので聖王機の足を止めるが、次の瞬間、前以上の覇気を纏う魔神に一瞬寒気を感じた。

 

『……お前が皇子で、今は王様で、それがどんなに大変で決意の要る立場なのかは俺には分からない。けどな、どうしてもお前に言っておきたい事がある』

 

『…………』

 

『覚悟って言葉はあくまで言葉に過ぎない。何でもやっていいという免罪符じゃないって事、覚えておけよ』

 

『………覚えておこう』

 

シュウジから告げられる警告を受け、刻む様に頷くユーサー。次元転移で去ろうとする彼を追おうとせずに見送りながら、シュウジは消え行く聖王機とユーサーの背中を見つめ続けていた。

 

と、そんな時だ。ふと感じた視線に振り返ると、一瞬赤い髪とデカい図体が特徴な“奴”の姿が見えた気がした。だがそこには何もなく、何の変哲もない大地があるだけ。

 

気の所為だったのだろうか? 幻を見た自分に疲れているのかと不安に思ったその時、ダモクレスの方角から大規模なエネルギー値を観測し、次の瞬間桜色の光が戦場の一部を呑み込んだ。

 

『今の、フレイヤ弾頭か!』

 

『ランスロット、蜃気楼、ジークフリート、そしてフロンティアの全機の無事を確認、ですが!』

 

『殿下がその気になった以上、長引かせるのは危険じゃないかな?』

 

『分かりました。では自分も敵を殲滅しながらルルーシュ君達と合流します。ロイドさん達はその間にアヴァロンの修復を急がせて下さい。場合によっては戦域からの離脱も視野に入れての行動を』

 

『はいは~い』

 

『了解です』

 

ロイド達に最後の指示を伝えると急いでバーニアを噴かせ、ルルーシュ達と合流すべくグランゾンを加速させる。アサキムやユーサー、そしてスフィアと、色々考える事が増えた気がするが、今はそんな事を言っている場合ではない。

 

この戦いを止める。友人であるシュナイゼルを止める為、シュウジは残りの敵戦力を潰しながら彼等の元へ急ぐのだった。

 

 

 




次回こそシュナイゼル編を終わらせたいと思います。

こんなに長くなるとは思わなかった……。


PS.

今回の話を書く際、最初実はロスカラのライ君も出すつもりでいました。

その時の主人公の立場はライの後見人兼保護者的な立場でしたが、なんだか黒幕臭が半端ないのでボツになったんですよね。

いつかはそんな時の短編も書けたらなと思います。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。