『G』の日記   作:アゴン

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今回は開幕編という事で短めです。

次回も結構飛ばす予定です。




その65

 

 

─────火星。

 

太陽系に存在し地球に近しい性質を持つとされる太陽系第四の惑星。荒れ果てた広大な大地、人の手が加わっていない未開の地で、あるモノが建造されていた。

 

“ZONE”インサラウム国が保有する次元力を星から抽出する装置であり、次元力を吸い出す対価にその星を死の星へと変える最悪の超常の兵器。これまでの地球に設置されたモノとは違い、火星に置かれたZONEは巨大なものだった。

 

一つの大都市並に巨大なその装置。青く輝くドーム状の結晶体はただ静かに空の向こうからやってくる一団を見据えていた。

 

幾度となく地球の危機を救い、世界の裏に隠れていた巨悪を討ち果たし、世界最強の部隊と呼び声の高いスーパーロボット軍団“ZEXIS”

 

既に艦から出撃し、戦闘態勢を整えた彼等は己の分身である機体と共に火星の大地に降り立ち、そんな彼等から少し離れた位置に別の一団が降り立った。

 

黒の騎士団の元総帥ゼロと元帝国最強の騎士、枢木スザクを始めとしたナイトオブラウンズと桜色のランスロットを駆る魔女C.C.。

 

そして、そんな一団を纏め上げる事実上彼等のトップ、蒼き魔神ことグランゾンと破界事変から騒がれる希代のテロリスト“蒼のカリスマ”

 

ZEXISと共に火星に降り立った彼等は周囲に気を配りながら辺りを見渡すと、リーダー格である蒼のカリスマにそれぞれ通信を送り始める。

 

『見た所、あのデカい奴以外敵性反応はないな』

 

『伏兵、どこかに隠れてる?』

 

『それはないだろう。彼は自ら決戦を伝えに来たんだ。丁寧に日時まで教えに来た位だ。今更騙し討ちする必要もないんじゃないかな』

 

『少しばかり短絡的過ぎる考え方だが、相手の気質を考えれば確かにそうだろう。……警戒を強める事に違いはないが』

 

『全く、この捻くれ坊やは口を開けばこうだ。で、お前はどう考えてるんだ? 蒼のカリスマ殿?』

 

挑発的な口調で魔人を試す魔女、端から見ればハラハラものの遣り取りだが、魔人と恐れられる蒼のカリスマはそんな事気にもしないでいつもの態度で応えた。

 

『いずれにしてもここが決戦の地である事には変わりありません。彼等が奇襲を仕掛けてこようが、正面から来ようが私のやる事はただ一つです』

 

淡々としながら、それでもその言葉に明確な怒りを滲ませている事に気付いたのは魔女ことC.C.のみだった。長年生きることを強いられてきた彼女は様々な人間を相手にしてきており、それ故に仮面を被っていようと言葉の隅に隠された魔人の感情に気付くことが出来ていた。

 

そして、その彼女の思案通り蒼のカリスマは怒りを滾らせていた。リモネシアを焼き、ZONEというデカ(ブツ)まで建設し、リモネシアを死の大地にしようとした連中を、今回の戦いで漸く討ち果たす事が出来る。今まで冷静を装ってきた彼だが、その胸中の奥底ではグレイス=オコナーに対する憤怒に近しい感情を抱いていたのだった。

 

現在の魔人の駆るグランゾンは例のネオと化してはいないが、相手側の対応次第では躊躇なくその力を揮う事になるだろう。バジュラとイノベイターの二つの軍勢を相手に蹂躙を果たしたネオ・グランゾンの力は絶大。果たしてそんな怪物を相手に、ユーサー=インサラウムはどう戦おうというのだろうか。

 

そんな時。各機体の索敵レーダーに反応が感知され、次の瞬間インサラウム最後の軍勢が姿を現した。無数の人工次元獣とアークセイバー達、そしてインサラウムの母艦であるパレスインサラウム。母艦まで出張って来たのを確認し、ZEXIS達はここが最後の決戦地だという事を確信した。

 

『どうやら、(やっこ)さん達の言うことは本気だったらしい』

 

『あぁ、ドイツもコイツも覚悟を決めた様な顔をしてやがる。……手強いぜ、これは』

 

アークセイバー達の放つ静かな闘気、機体を通して滲み出てくる彼等の覇気に、ZEXISの面々も覚悟を決める。

 

『フフフ、よくぞここまで来たな。この世界の最強の戦士達よ』

 

『こ、この声って!』

 

『アンブローン=ジウスか』

 

インサラウムの宰相、アンブローン=ジウスの登場により戦場は更なる緊張に包まれる。アイム=ライアードに唆され、地球を侵略しようとした事実上インサラウム側の黒幕。

 

己の知識的欲求を満たすために幾度となく王であるユーサーの死を望んできたアンブローン。そんな老婆がこの決戦の場に自ら前線に出て来るのはZEXIS達からすれば意外に思えた。

 

『インサラウムのNo.2が出て来るとはな、ユーサーの奴はどうした』

 

『ふん、貴様等の相手などこの婆だけで十分。殿下のお手を煩わせるまでもないというだけじゃよ』

 

『……へぇ、随分強気じゃねぇか。その程度の戦力で俺達とやり合おうってのかよ』

 

真ゲッターの搭乗者である竜馬の言葉を皮切りにZEXISの面々の気合も高まっていく。インベーダーにアンチスパイラル、暗黒の王と様々な脅威から地球を守ってきた彼等にとって、インサラウムの軍勢は危険なモノだが脅威とは成り得なかった。

 

真ドラゴン、大型艦と融合する事が可能となったグレンラガン。数多の激闘を経て強くなってきた彼等の前には、インサラウムの戦力だけで構成された軍勢程度では今更足止め程度にしかならなかった。

 

ジェラウドやウェイン、ハイナイトと呼ばれるインサラウム側の強者がいなくなった今、それは揺るぎない事実となっていた。そして、そんなインサラウムの不利を決定付けているのが────蒼き魔神グランゾンの存在である。

 

このままでは足止め程度にしかならない。自分達の不利を覆すには、日頃から研究を進めていた“アレ”を使うしかない。

 

既に覚悟は決まっている。アンブローンはパレスインサラウムに搭載されたあるシステムを起動させようとするが、その前に一度戦場に佇む魔神を見つめた。

 

(蒼き魔神グランゾン。……口惜しいのぉ、アレだけの存在を次元獣に出来たら殿下の心強い獣へとなれたであろうに……)

 

僅かに残った心残り、それを首を横に振って捨て去ったアンブローンはパレスインサラウムに組み込んだシステムを起動させ、自ら母艦と共に次元獣へと変異していくのだった。

 

これまでとは全く桁違いの存在感を放つ次元獣“エクサ・アダモン”パレスインサラウムと共に次元獣へと変異したアンブローンは、自らの自意識を核に最強の人造次元獣を誕生させるのだった。

 

『アンブローンおば様。その覚悟、しかと見させて頂きました』

 

そんなエクサ・アダモンの背後に現れる黒い影、パールファングを操るのは元ファイヤバグのリーダーでありクロウ=ブルーストの上司だった女性、マリリン=キャットだった。

 

地球では最悪の放火魔として知られる彼女だが、次元獣となったアンブローンを見つめる目は慈しみで満ちていた。愛する殿下の為に身も心も差し出した一人の女性の最期の在り方に、マリリンは心の底から敬意を評していた。

 

『意外だぜマリリン。まさかお前が最後まで残っていようとはな』

 

『ウフフ、そういうフラフラちゃんも意外ね。私から逃げ出した癖に余程そこが居心地いいのかしらん?』

 

『まぁな。お前ん所の肥溜めみたいな所よりは遙かに居心地がいいのは断言出来るぜ』

 

クロウの言葉にマリリンは仮面を被る。残忍で冷徹、狡猾にて残虐、最悪の放火魔であるもう一人の自分の仮面(ペルソナ)を。

 

『さぁ、これで舞台は整ったわ。始めましょう。ZEXISと魔神御一行様。このマリリン=キャット、盛大にもてなして差し上げましょう』

 

仮面を被った黒猫が妖しく微笑む。その言葉を皮切りに今回の争乱における最後の戦いが開始されるのだった。

 

 

 

 




漸く始まりました再世篇の終盤。本当は破界篇の様にパッパと書いていくつもりが書きたい内容が多くて時間を掛けてしまいましたが、今回の話以降一気に進める予定です。(リアルが落ち着いたなら)

取り敢えず再世篇までは書き続けるつもりですので、最後まで宜しくお願いします。



インサラウムVSスーパーロボット軍団&グランゾン


……可哀想とか思っちゃダメ。


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