『G』の日記   作:アゴン

81 / 266
いよいよ再世篇も終わりが見えてきました。

この調子でいこうと思います。


その67

 

 

 

破界事変から続く戦乱の時代。激動の裏で蠢いていた闇達を討ち果たした地球最強の部隊“ZEXIS”彼等の活躍によりもうじき平穏の時を迎えようとしていた地球圏だったが、最後に彼等に挑む者達が現れた。

 

“聖インサラウム王国”別の次元、別の世界からの来訪者である彼等はアイム=ライアードの奸計に巻き込まれ、破界の王ガイオウに破れ、滅びた自分達の世界を捨て、新天地であるこの世界の地球に侵略者として現れた。

 

スフィアを巡る争いに巻き込まれ、自分達の世界を捨て去ったインサラウムの人々。最早後戻りは出来ない所まで来ていた彼等の王は最期の戦場を前に、静かに目を閉じてこれまで己が行ってきた数々の愚行を思い返していた。

 

一体どこで間違えたのだろう。思い当たる事は多々あるが、最大の原因の一つは己自身に他ならないだろう。

 

アンブローン一人に政権を委ね、差し伸べられた手も払いのけ、他者に言われるがまま、己の責務を果たさなかった事、それこそが王である自分の最大の過ちだ。

 

せめてもの報いとアイム=ライアードを自分の手で討った所で自分の罪が贖えるとは思わない。だが、これから行われる最期の戦いでインサラウムの民達の行く末は切り開く。

 

ただそれだけの思いを胸に、インサラウム国王ユーサー=インサラウムは火星の地でZEXIS達と対峙する。

 

『よくもここまで来たものだ。だが、貴様等の快進撃もここまでだぞ、ZEXIS!』

 

『ユーサー=インサラウム、やっぱりやり合うつもりか!』

 

『当然だ。二つのスフィアを使いこなしつつある今、最早余に敵はいない。有象無象の雑兵共よ、覚悟するがいい!』

 

“尽きぬ水瓶”と“偽りの黒羊”のスフィアからもたらされる力の恩恵は大きい。聖王機であるジ・インサーから溢れ出る力の衝動は、これまでとは桁違いのモノとなっている。これなら残り自分だけとなったこの戦場でも、ZEXIS相手に大立ち回りが出来る事だろう。

 

だが、それを引き替えにユーサーの肉体に掛かる負荷は大きい。一瞬でも気を抜けば意識は途切れ、視界も時々酷く歪になる。自分の命がもうじき消える事を自覚しながらも、ユーサーは懸命に耐えて見せた。

 

『さぁ、始めようではないかZEXIS! ソナタ達と余、どちらがこの世界を統べる者に相応しいか……いざ勝負!』

 

『……上等だぜユーサー=インサラウム。お前さんの最期の意地、付き合ってやろうじゃないか!』

 

ユーサーのその言葉を口火にインサラウムとZEXISの最後の戦いが幕を開ける。全ては己の不始末を払い、民達に道を示すだけ、気力と死力、残された力を振り絞りながら、ユーサーはジ・インサーと共に戦場を掛けた。 

 

(マリリン殿、アンブローン、ウェイン、ジェラウド、そして余の為に散ってくれたインサラウムの騎士達よ。願わくば、どうか最期に余の力となってくれ!)

 

最早今の自分にはなにもない。アンブローンとマリリンは先に逝き、残されたのは自分のみ。裸の王と理解しながらもユーサーは己の最期の使命に殉じる為、たった一人の戦い───最終決戦を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ワームスマッシャー!!』

 

火星圏から少し離れた宙域。エクサ・アダモンとなったアンブローンにより宇宙へ強制的に連れてこられたグランゾンは、目の前の金色に輝く獣の群に向かって無数の光の槍を放つ。

 

次元獣が張る特殊な防壁、次元干渉のD・フォルトを光の槍で容易く撃ち貫くと、金色の次元獣は悉く爆発し、消滅していった。

 

色だけ違う雑魚、最初こそは金色の次元獣に対し蒼のカリスマことシュウジはそんな風に思っていたが、中には光の槍をはねのけて迫ってくる次元獣に、その考えは間違っている事を思い知らされる。

 

『成る程、これまでの次元獣とは違うという事か……しかし!』

 

迫り来る次元獣を異空間から取り出したグランワームソードで両断する。手応えからしてこれまでの次元獣とは明らかに違う事を確信するシュウジだが、そんな事などお構いなしに次元獣に剣を振るう。

 

確かにこの次元獣達はこれまでと違って明らかに異質だ。防御も堅ければ俊敏さも増している。力の方も恐らくは上がっている事だろう。

 

油断ならない相手だ。───しかし。

 

『力を得ているのは……何もお前達だけじゃない』

 

シュウジ=シラカワの駆るグランゾン、この機体もまたネオという力を得て本来の力を取り戻している。そんなグランゾンを相手に“奴”の尖兵に過ぎない次元獣が……果たして相手になるのだろうか?

 

答えは────否である。

 

『収束されたマイクロブラックホールには、特殊な解が存在する。剥き出しの特異点は時空そのものを蝕むのだ』

 

『何人たりとも、重力崩壊からは逃れられん! ブラックホールクラスター……発射!』

 

撃ち出されるグランゾンの必殺の一撃。その射線上に存在する次元獣達は悉く重力崩壊に呑み込まれ、塵芥も残さずに消滅していった。

 

撃ち出された先に在る要塞型次元獣“リヴァイダモン”黄金色に輝く怪物は漆黒のエネルギーの塊に呑み込まれ、周辺の次元獣諸共消し飛んだ。

 

今の一撃により殆どの大型次元獣は消滅。残るは大した力の持たないモノばかりだが、シュウジはそんな次元獣達に攻撃はせず、深い溜息と共に奴の名を口にした。

 

『……いい加減、姿を見せたらどうなんだ? ガイオウ』

 

次元獣と自分達以外存在しない筈の人物の名を呼ぶ。本来なら虚しく響いていくだけな筈なのだが、グランゾンの前の空間が突如として歪みだし、その奥から玉座の次元獣に座る破界の王、ガイオウが姿を現した。

 

『クッハッハッハッハ! まさか本当に見つけられるとはな。どうやら前の時とは比較にならない程力をましているようだな。嬉しいぜ、シュウジ』

 

『お前があの一撃程度でやられるとは思わなかったからな。……それで、一体お前はなんのつもりでここにきた』

 

『お前との決着を付ける為……じゃ、納得しねぇか?』

 

『…………』

 

頬を吊り上げ、不敵に笑うガイオウにシュウジは黙り込む。……確かに、ガイオウは自分にとって敵とも呼べる存在だ。その目的や思想はどうであれ、自分と奴の間には決して埋まらない筈の溝が出来ているのだから……。

 

けれど、脳裏に浮かんでくるホットドックを頬張るガイオウを見て、シュウジの奴に対する印象は変わっていった。

 

ホットドックを初めとしたファーストフードを幸せの味と呼び、道を歩く人々を慈しむような目で見ていたり、人に余計なお節介を焼いたり、旅を楽しみ、人生を謳歌するガイオウの姿は……シュウジには極々普通の人間に見えた。

 

だから、本来ならここで問い詰めるべきなのだろう。何故だと、こんな事をする意味はなんだと、───お前とは戦いたくないと、そんな事を言えば良かったのだろう。

 

しかし、シュウジはそんな事は口にしない。

 

 

────何故なら。

 

『いいぜ、ならトコトンまで付き合ってやる! かかってこいよ、ガイオウ!!』

 

『なら付き合って貰うぜシュウジ=シラカワ! このガイオウ、次元の将の最期の喧嘩に!!』

 

『『上等!!』』

 

不敵に笑うガイオウの顔には悲哀と希望に満ちたモノ───宇宙要塞バルジで見たトレーズと同じ表情をしていたのだから……。

 

火星近海宙域、二つの巨大なエネルギーが最後の戦いを飾るべく激突する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぐっ、ま、まさか……これほどとは』

 

『殿下!』

 

火星の大地、巨大ZONEの前で行われる聖インサラウム王国との最後の戦いは、聖王機ジ・インサーが地に膝を付く事によって幕を下ろした。

 

二つのスフィアを用いて嘗て無い力でZEXISを相手に圧倒するユーサーだったが、逆境に強いZEXISの反撃と、スフィアの力に耐えきれなくなった事により、ユーサーは戦闘不能。動かなくなった聖王機を前に、ZEXIS達は自分達の勝利を確信した。

 

搭乗者が力尽きた事により動かなくなった聖王機、崩れ落ちるジ・インサーに、嘗ての忠臣マルグリットが主であるユーサーを助け起こす為に、パールネイルで聖王機を支えた。

 

『殿下、ご無事ですか!? しっかりして下さい!』

 

『マルグリット、こんな余を……まだ、主と呼んでくれるのか?』

 

『当たり前です! 喩え裏切り者だと呼ばれようと、私はアナタを……!』

 

それ以上は、何も言えなかった。ボロボロになった聖王機を前に感極まったマルグリットは口元を手で抑え、ポロポロと涙を零し、泣き声を出さないようにするだけで精一杯だった。

 

元来、ユーサーという男は争い事から縁遠い人間だった。誰よりも優しく、誰よりも他人を思いやれる彼は正しく王の器足り得ていた。戦火を広げる覇者としてではなく、民から……そして忠臣達から慕われる彼はまさしく統治者として足る人間だった。

 

一体、どこで歯車は狂ってしまったのだろう。命が燃え尽きようとしているユーサーを前に、マルグリットはただ謝る事しかできなかった。

 

『殿下、申し訳ありません。あの時、私が皆を、インサラウムを守る事が出来れば……』

 

『……泣くな。マルグリットよ。綺麗なソナタの顔が台無しだぞ。私は愚かな王。民の声に耳を傾けず、ただ無意味に戦火を広げた愚者だ。罵倒こそすれ、同情の涙は必要ないぞ』

 

『いいえ、いいえ! アナタは優しいお方です。アナタがいたから私は今まで戦ってこれた。アナタがいたからインサラウムは……!』

 

涙を流しながらマルグリットは自嘲の笑みを浮かべるユーサーを否定する。アナタがいたからインサラウムはここまで生き残れたのだと、アナタがいたからインサラウムの民はガイオウに居場所を破壊されても希望を絶やさずにいてくれた。

 

これまでユーサーはやり方を違えても、その事実は変わらない。

 

───嗚呼、これで終わった。自らの使命に殉じ、満足したように目を細めるユーサー。これでもう思い残す事はないと静かに目を閉じた……その時。

 

『見事だったよ。ユーサー=インサラウム、けれど残念。狩りの時間だ』

 

『っ!?』

 

音もなく、気配もなく、そいつは現れた。手にした剣を携え、漆黒の死神はユーサーの背後に現れた。

 

『アサキム、テメェ!!』

 

『尽きぬ水瓶のスフィア、いただくよ』

 

迫り来る黒い影、アサキムからユーサーを守ろうとするマルグリットだが、次の瞬間ユーサー自身の手によってパールネイルは横に突き飛ばされてしまう。

 

殿下! そう口にした時、ユーサーは笑いながら目の前の死神を見据えた。漸く大事な人を一人、守る事が出来た。ここへ来てその想いが果たされた時、ユーサーは笑って死を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『全く、油断も隙もありゃしないな』

 

 

 

 

 

 

 

目の前の光景に誰もが言葉を失った。ZEXISやマルグリット、アサキム……そして、ユーサーも、目の前に立つ魔神を見て、絶句していた。

 

『……どう、して?』

 

最初に言葉を紡いだのはユーサーだった。彼から憎まれていた筈の自分が、その彼自身の手によって守られている事実に、ユーサーは理解出来なかった。

 

その問いに魔人は応えない。目の前の死神を振り払う様に剣を振るうと、次の瞬間、彼はその剣をアサキムと……その背後に佇む破界の王に向けて突きつけた。

 

『お互い、ウォーミングアップはここまでにしとこうか』

 

『だな、んじゃ……第二ラウンド、始めるとするかぁ!!』

 

『マハーカーラ解放!!』

 

『ヴィシュカーラ解放!!』

 

『オン・マケイシヴァラヤ・ソワカ!』

 

『ウオォォォォッ!!』

 

高まる二機の覇気。魔人が言葉を紡ぐと魔神は日輪を背負い真の姿を露わにし。

 

破界の王が全ての力を解放させると、玉座の次元獣と融合し、白銀の姿を顕現させる。

 

『アサキム=ドーウィン、そしてガイオウ、いい加減俺達の因縁もここまでにしとこうぜ!』

 

『……いいだろう。望むところだ』

 

『ハハハッ! 楽しくなってきたぜ!』

 

白銀の王と蒼き魔神、そして黒の死神。破界事変から続く因縁に今、終止符が打たれようとしていた。

 

 

 

 





アサキム『お前のスフィアいただくよ』

ガイオウ&主人公『と思っていたのか?』

大体こんな感じの話。

次回もまた見てボッチ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。