携帯が故障してしまい、更新が大幅に遅れてしまいました。
申し訳ありません。
火星で行われていたインサラウムとZEXIS。今回の争乱の最後の戦いを締めくくる戦いは意外な形で継続される事になった。
スフィアを狩る呪われた放浪者アサキム=ドーウィン。ZEXISとインサラウム国王であるユーサーの戦いに紛れ、尽きぬ水瓶を狙っていたこの男。疲弊しきり、満足に動くことも出来ない彼の状態を見計らっての奇襲。突然過ぎる強襲に誰もが反応出来なかった。
スフィアが狩られ、アサキムの手に奪われようとした時、奴らが現れた。“蒼き魔神グランゾン”と“破界の王ガイオウ”火星圏の外側から戦っていた両者達の介入により、この地での最終決戦はアサキムを巻き込んで更なる激闘の幕を上げていた。
「こ、これって……援護とかしなきゃいけないのか?」
目の前の戦いを前にZEXISの一人、ガロードは呟く様にその言葉をもらす。繰り広げられる三体の機体による壮絶な戦い。真の姿を現した破界の王、ガイオウは玉座型の次元獣と融合し、翼の生えた白銀の人型へと変貌している。
本来の力を発揮し、超絶な力で戦う様はまさに圧巻の一言。一撃でも直撃してしまえば塵芥も残らず消滅してしまう。
そんなガイオウに対しアサキムは持ち前の速さで翻弄。“知りたがる山羊”と“夢見る双魚”二つのスフィアを持ち合わせている事により常軌を逸した力を手にしたアサキムは機体を疾風の如く加速させ、ガイオウの攻撃を避けている。
手にした魔王剣でガイオウの機体を切り刻むが、凄まじい回復能力で瞬時に受けた傷を修復させる。この驚異的な能力でガイオウはお構いなしにアサキムのシュロウガに殴りかかる。
パワーはガイオウ、スピードはアサキム。両者一歩も引かない戦いだが、ここに第三の戦力が介入する事により戦況は大きく変わる事になる。
グランゾン。破界事変の頃より存在するガイオウと並ぶ謎の多いその機体、背中に日輪を背負い、これまでとは明らかに異質な存在となった蒼き魔神に誰もが言葉を失った。
互角に渡り合うアサキムとガイオウの間に割って入り、手にした禍々しい剣で白銀の王と真っ正面から打ち合う。
両者が激突する度に火星の大地は砕かれ、火星の空は裂かれる。ガイオウの拳とグランゾンの剣、それぞれの一撃が星を揺るがす程激しい打ち合いをする中、アサキムは打ち合う両者に向けて攻撃を仕掛ける。
シュロウガの機体から出現する小さなソレ。
振り抜かれる剣、それを寸での所で避けるシュロウガ。どうせ避けられると分かっていたシュウジは異空間を通して撃ち出されるワームスマッシヤーでシュロウガの行動を狭めさせる。
縦横無尽、全方位から繰り出される光の槍をアサキムはシュロウガを更に加速させ、僅かな隙間を目掛けて飛翔していく。
一つでも間違えれば即串刺しになる状況の中を、アサキムは笑顔を浮かべて突破する。初めて目撃するワームスマッシャーを破った瞬間にZEXISの面々は目を大きく見開かせるが……。
『残念、ここから先は行き止まりだ』
目の前に先回りされていたガイオウの出現に、アサキムは悔しげに舌打ちをする。これまで仕掛けてきたワームスマッシヤーは全てブラフ、ガイオウの前に誘き出すための誘導に過ぎない事を悟ったアサキムはシュロウガの手に剣を持たせ防御の体勢をとる。
『砕けろォォォッ!!』
打ち出されるガイオウの拳、防いだ瞬間伝わってくる衝撃を緩和仕切れず、アサキムはシュロウガと共に地面へと叩き落とされる。
砂塵を巻き上げた地面に向けて追い打ちを仕掛けようとするガイオウだが、横から現れるグランゾンによる剣の一撃により、追撃は叶わず弾き飛ばされる事となる。
一分にも満たない攻防。だが、それと比例し戦いの舞台となっている火星の大地はZONEのある所以外は悲惨なモノへとなっていた。
荒野だった大地は陥没し、裂け目が広がり、天空は三者のぶつかり合いの衝撃によって荒れに荒れている。たった三機の機体が激突しただけで火星という星が荒れ果てたという現実を前にZEXISは不用意な手出しはせず、彼等の戦いを見守る事しかしなかった。
いや、出来なかったという方が正しい。彼等の戦いは熾烈を極めている為手出し出来ないという事もあるが、同時に手出ししてはいけないという意志が感じられたからだ。
ニュータイプとしての第六感でもGN粒子や脳量子波での思考接続でもない。彼等から感じられる気迫が手出しは無用だと訴えてきているのだ。
アサキムのシュロウガを挟んで向かい合う
『クハハハッ! 堪らないなオイ。破界の王と呼ばれていた俺がまさか圧されるとはな、前の時よりも随分力が増しているじゃねぇか、テメェの魔神は』
『ヌかせよ。お前だって破界事変の頃より数段パワーが上がっているじゃねぇか。あの時陰月で戦った時は手を抜いていたのかよ』
蒼のカリスマ───いや、シュウジの口から零れる破界事変の裏側の戦いの真相を耳にしたZEXISは騒然となった。
予想はしていた。インペリウムの移動拠点であるグレードアクシオンと破界事変最後の決戦を繰り広げている最中、陰月から離れた宙域からは凄まじいエネルギーを感知していたのだから……。
だが、実際その事実を耳にしてZEXISは改めて驚嘆する。そして、シュウジ=シラカワ本来の人格と性格を知るカレンとヨーコは複雑そうに表情を歪めていた。
インペリウムを始めとした人類の脅威と戦い、希代のテロリストの汚名を被せられ、世界中の人間から敵視されても、たった一人で戦い続ける。
人は一人では生きてゆけない。前と今回、両方の戦いを通して知った彼女達は、一人で戦い続けるシュウジの姿が……酷く、歪に見えた。
いつか、彼のそんな戦いの日々が終わることを願うヨーコとカレン。恐らくは地球で魔人一行の帰りを待つナナリーも同じ気持ちだろう。
尤も、彼が一人で戦うのは半分自業自得なのは秘密である。本来ならZEXISの面々と助けたり助けられたり、そんな友情的なやりとりを本人が切実に願っている事を彼女達は知る由もなかった。
そんな彼女達の想いに気付く筈もなく、彼等のやりとりは続いた。
『あの頃の俺はまだ記憶を取り戻して間もなかったからな、本来の力を十全に扱い切れなかった。……とはいえ、テメェとやりあった時は八割程マジだったんだぜ? それなのに真っ正面から叩き潰されるとは思わなくてな~、ショックだったぜ 思わず復活するのを躊躇った位だ』
『してもらわなくても結構だよこっちは、そのまま永久に寝てればいいモノを』
『連れないこと言うなよ。……なんだ? もしかしてまぁだホットドック取られたこと根に持ってんのか? いけねぇなぁ、ネチっこい男は嫌われるぞ?』
『はっ、言ってろ』
殺し合いをしているとは思えない程の軽口の言い合い。まるで悪友同士の会話に聞いているZEXIS達は呆然とするが、彼等の放つ殺気は本物。これ以上火星の大地が破壊される前に何とかしなくてはと彼等が思考を巡らせた時、再び彼等は動き始めた。
『さて、楽しい談笑もここまでにして……そろそろ終わらせるか』
『……だな』
これで言葉を尽くすのは終わり。この一手で全てが決まる。ZEXISが固唾を呑んで見守る中、シュウジはネオ・グランゾンの胸部装甲を展開させる。
『収束されたマイクロブラックホールには特殊な解が存在する』
魔神の両腕に集まる総数六つの球、それらがグランゾンの胸元に収束されると、球体は禍々しい輝きを放ち、漆黒の大玉となって顕現する。
『剥き出しの特異点は、時空そのものを蝕むのだ』
臨界点を越えつつある重力の渦。大地を抉る重力の奔流に巻き込まれないよう、ZEXISは後退を余儀なくされる。
『何人も、重力崩壊からは逃れられん!』
そして、必殺の一撃が放たれようとした───その時。
『悪いが、させないよ』
背後に回り込んだ黒い影、アサキムの駆るシュロウガが、手にした刃で以てグランゾンを貫いた。
(…………え?)
その光景にカレンの思考は停止する。ホンの一瞬前まではガイオウの前にいたシュロウガがグランゾンの背後に回り込み、その剣でグランゾンを貫いているのだ。
有り得ない。そう思いながらも膝を付いて崩れるグランゾンを前に、ZEXIS達は信じられない現実を直視する。
『特異点を自在に操り、そして武装にする君のグランゾンの力は確かに脅威的だ。その力を前にしてしまえば如何なる速さも君達には届かない。……しかし』
『太極の欠片でもあるスフィアを二つ所持し、且つ使いこなしつつある僕の前では、その力は意味を成さないよ』
微笑みを浮かべながら崩れるグランゾンを見つめるアサキム。
これで憂いは断たれた。後はガイオウの相手を適当に済ませ、残ったスフィアリアクターを狩る。アサキムの思考は既に次の段階へと達していた。
────しかし。
『おやおや、戦闘中の余所見は関心しませんよ』
『…………なに?』
次の瞬間、横からの途方もない衝撃にシュロウガは吹き飛んでいく。何が起こった? アサキムは衝撃のあった方に視線を向けると……。
『全く、まさかこの場面で私を出させるとは、我が半身も思った以上にがめついですね。まぁ、この前の借りを返すという意味では、ちょうど良かったのかもしれませんね』
『………バカな』
『う、嘘だろ』
『おいおいおいおい、勘弁してくれよ……』
今し方背後から刺して倒した筈の魔神ネオ・グランゾン。
その圧倒的とも言える機体が三体。アサキムの前に姿を現した。
誰もが理解出来なかった。ZEXISもアサキムも、ガイオウですら、信じられない様子で呆然としている中で。
『さて、皆さんは遍在という言葉をご存じでしょうか?』
魔神の中でシュウ=シラカワは笑みを浮かべるのだった。
さぁて、次回のシラカワさんは?
博士の重力講座
ボッチの意地
アサキム沈む
の三本です。
次回もまた見て下さいね、ジャンケンポン(グー)
………ククク(CV博士)