『G』の日記   作:アゴン

90 / 266
今回は本編開始前なので短めです。


時獄篇
その72


 

 

 

/月/日

 

マーティアルなる組織とそれに連なる者達の調査の為に中東方面へと乗り込んで二日、取り敢えず現段階で分かっている事を書いていこうと思う。

 

まず、マーティアルはその組織だけでなく、アマルガムといった別組織の手も借りて、順調に組織の規模を拡大しているようだ。戦いが全てと教義しているだけあって、支部の教会に複数のATやらアームスレイヴ(略してAS)が配備されてあるし、連中には相当な資金が集まっているようだ。

 

そしてこのマーティアルなる宗教結社にもトップと呼ばれる存在はいるらしく、そいつは法王……つまりはマーティアルの教義を教え説く人物が事実上のマーティアルのトップという事になる。しかしこの法王というのは世襲制ではなく、意外にも多数決といった民主的なやり方で次代のトップを決めているようなのだ。

 

戦いを教えとして活動しているのだから、てっきり幹部同士が戦ってその中で一番強い者が教皇になるのかと思っていたから、ちょっぴり肩透かししてしまった。……まぁ、裏では汚い事を色々やってるんだろうけどね知らないけど。

 

マーティアルの支部の一教会に訪れて既に二日経過しているが……もうね、色々と限界だわ。ここら辺一帯はあまりにも戦いに染まっている。右を向けども左を向けども戦い戦いと口にする人々にいい加減ウンザリしてくる。一般人である自分にとっては何とも頭が痛くなる光景だ。

 

これ以上有益な情報は得られないだろうし、そろそろここから離れるべきだろう。何やらここの所物騒な連中も集まってきているみたいだし。

 

あの顔に傷がある男……ガウルンって言ったっけ? 他にも秩序の盾とかいうマーティアルお抱えの戦闘集団がいる事だし、感づかれる前にずらかろうと思─────(日記はここで途切れている)

 

 

 

/月α日

 

ヤバかった。まさか自分以外にもここに侵入してきた奴がいるとは思わなかった。お陰で戦闘に巻き込まれてしまい、谷底なんかに落ちてしまうなど得難い経験を体験してしまったではないか。

 

まぁ実際は爆発に巻き込まれた様に見せかけて自分から飛び降りただけなんだけどね。そんなデンジャーな目に遭ったお陰で何とか追っ手を撒けたからいいんだけど。……いや、よかないか。

 

つーか、あのATマジなんなの? 見かけない機体だったから戸惑ったという事もあったけど、それにしたってあの性能は異常だろ。従来のATとは比べ物にならないぞアレ、もしかしてあの機体を有している部隊が例の“秩序の盾”とかいうマーティアル自慢の部隊なのだろうか? あんな連中が一機だけじゃなく四機編成で追撃してくるとか、悪夢としか言いようがないだろ。

 

しかもこの時にこれまた奇妙なASも一緒になって追いかけてくるし……つーか、あの機体も大概おかしな機体だよね。何あのヘンテコシステム、アサルトライフルで幾ら撃ってもバリアみたいなので防がれるんだけど? インチキシステムもいい加減にしろって話である。そんな奴等を相手に馴れないスコープドッグで足止め位しか出来なかった自分だが、割と善戦した方ではないだろうか?

 

 

グランゾンで相手をするならば話は別だが、今ここで騒ぎを起こすのは個人的には拙いので、近くにあったスコープドッグで脱出を試みた。結果は最初に記した通り、殆ど何も出来ずに終わった自分は、奴等によって崖っぷちに追い詰められてしまった。

 

危うく殺され掛けた自分だが、自らスコープドッグごと崖に飛び降りる事で奴等からの追撃を回避し、ついでにこの時乗っていた機体を自爆させる事で身投げの自殺を演出してみせた。この時既に機体から脱出した自分はグランゾンを呼び出すことで、特に傷を負うことなくあそこの一帯から抜け出す事に成功した。短いつき合いだったとは言え、あのスコープドッグには悪いことをしてしまった。

 

……こう箇条書きにすればイマイチ実感が湧いてこないが、今思い返すと割とハードな日々を送ってるな俺。最近ハリウッドのアクションスターでもやっていけるんじゃね? 等と考える自分がいる。

 

つーかホント、連中なんなのかな? 明らかに普通じゃないATと明らかに普通じゃないシステムを積んだAS、自分が掴んだ連中の尻尾は自分が思ってる以上に長そうだ。

 

 

 

/月β日

 

昨日マーティアルの支部教会で激しい戦闘を繰り広げた自分は体力回復と治療の為に、今日一日は海底でグランゾンと共にゆっくり過ごす事にした。

 

治療といっても連中と戦闘した時、肩を少し掠っただけなんだけどね。流石はAT乗りの棺桶と呼ばれるスコープドッグだ見事なまでの紙装甲である。……いや、機体の装甲の隙間を的確に狙ってきた連中が凄まじかっただけか。

 

つーか良く生き残れたな俺。戦いのプロ、それもその組織の精鋭相手にグランゾン無しで生き残るとか割と運に恵まれているのかもしれない。そう言えば再世戦争の頃に不死身である事で有名なコーラサワーさんと一緒に戦った事があるから、もしかしたら彼の加護やら恩恵が自分を守ってくれたのかもしれない。今度どこかで出会ったらそれとなく礼を言った方がいいかもしれない。

 

しかし、アマルガムといいマーティアルといい、最近の機動兵器というのはどうも突飛なモノが多い気がする。まぁ、デタラメ具合で言うのならZEXISも人のこと言えないから何とも言えないんだけどね、特にアクエリオンとか。

 

取り敢えずアマルガムとマーティアル、この二つの組織が裏で繋がっているという事実が判明しただけでも良しとしておこう。特にアマルガムの方では奇妙なカラクリを搭載させたASを開発している事も知られたのだから、初めての調査にしては上々の成果と言えるだろう。

 

ただ、この情報を活用出来る手段がないんだけど……どうしよう。シュナイゼルとかにこの事を知らせても駄目だろうなぁ、アイツ最近ナナリーちゃんの助手みたいな仕事で忙しいみたいだし、下手に情報を与えたらナナリーちゃんにまで危害が及ぶ可能性が出てくる。

 

地球連邦には地球至上主義を掲げる輩が潜んでいる様だし、何とももどかしい事である。

 

いっその事宇宙に出てみようかな? まだネオ・ジオンと地球連邦が真っ正面から対立していない事から、今が彼等の情報を入手する数少ないチャンスなのかもしれない。

 

グランゾンのワームホールを介しての転移なら誰かに目撃される事もないし、民間のコロニーなら派手なドンパチは早々起こらないだろう。

 

そうと決まれば善は急げ。傷が治り次第行動することを決めた自分は治癒を高める為に今日の日記はここまでにする。

 

 

 

 




日時をはっきりさせている時獄篇ですが、本作ではこれまでどおり○月×日など曖昧な表記で書いていこうと思います。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。