『G』の日記   作:アゴン

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今回は日記要素皆無。


その79

 

 

 

「……………え?」

 

白目を剥いて仰向けに倒れる碇シンジ君を見て、つい口から間の抜けた声を出してしまった。突然気を失って倒れるシンジ君に仮面の男は勿論の事、彼の前にいたルルーシュ君も、信じられないといった様子で固まっていた。

 

一体何がどうしてこうなったのか、混乱する蒼のカリスマの頭に次に浮かんできたのは……このままでは色々拙くね? というどこか達観したモノだった。

 

諦めの極地、人はそれを現実逃避という。

 

「何をしているんだお前はぁぁぁぁっ!?」

 

「ウェイッ!?」

 

「これから大事な作戦が始まるというのになんつー事しでかしてくれたんだ! どうするんだコレ! どうするんだコレェェッ!?」

 

「ま、ままま待つんだルルーシュ君。大丈夫、まだそんなに慌てる時間じゃない。人間余裕を失ったら視野狭くなるぞ?」

 

「……あと10分で作戦開始なのにか?」

 

「起きたまえシンジ君! 世界の未来は君の双肩に掛かっているのだぞ! つーか人の顔見るなり気絶するとか何気に失礼だぞ君!」

 

オメェが仮面被って出てくるからだろうが。ルルーシュはそんなツッコミの言葉を飲み干し、気付けの往復ビンタをシンジに食らわしている蒼のカリスマを見下ろす。

 

「ヤベェよ。この子目ぇ醒まさない。つかどうしてこんなに叩かれても起きないのこの子? 眠りの深い子なの? 疲れが溜まっていたの? ていうか俺と面と向かって顔を合わせるのがそんなに衝撃的だったのかよ!? 逆にこっちがショックだわ!」

 

既に膨れ上がった風船張りに頬を張らしている碇シンジ、ヒリヒリと熱を帯びて顔は真っ赤になっているというのにその表情は何処か安らかに見えた。

 

「えへへ~、そんなダメだよ綾波ぃ~、僕たちまだ中学生だよ~」

 

「どうしようルルえもん! この子現実から逃げだしちゃった!」

 

「その元凶を生み出した貴様が何を言う。えぇい貸せ! 今度は俺がやる!」

 

お前には任せられないとルルーシュはシンジを蒼のカリスマ───シュウジから奪い取り、横に寝せる。その後もバケツ一杯の水をぶちまけたりするが、それでも起きる様子のないシンジに二人揃って焦りだした所に更なる追撃が加わった。

 

『シンジ君、聞こえてる? こちら本作戦の指揮官葛城ミサトよ。そろそろ作戦開始時間だけどもうEVAに乗っちゃったかな?』

 

シンジの手元に置かれた通信端末の声に二人の動きが停止する。その額に大粒の汗を幾つも流しながらその通信端末に視線を向けると。

 

「「……………」」

 

『もしまだ乗っていないならちょっち聞いてくれないかな。───あんなに怖い思いしたのにまたEVAに乗る決心をしてくれてありがとう。NERVの代表として、そして私個人として貴方にお礼を言わせて頂戴』

 

思ってた以上に大事な話に二人の流れる汗が加速度的に増えていく。すんませんミサトさん、碇シンジ君は絶賛夢の世界で意中の女の子と乳繰り合ってます。

 

『貴方には辛い役目を押し付ける事になったけど……忘れないでね。貴方は一人じゃない。甲児君やアルト君、Z-BLUEの皆が貴方を守るから。───って、ちょっと聞いてるシンジ君? 流石にノーリアクションだと恥ずかしいんだけど? シンジ君?』

 

もしもーしと通信端末の向こうから返事を求めている声に、二人の汗の量は尋常じゃないモノとなる。滝の様に流れる汗を拭う事すらしないで二人は互いの顔を見合わせる。

 

お互いの目を見て互いにアイコンタクトを取った二人、シュウジが通信に応える事で時間を稼ぎ、その間にシンジを覚醒させる作戦。高鳴る鼓動を抑えながらシュウジは慎重に端末を手に取り───。

 

「もっちろ~ん、頑張らせて戴きますよミサトさん! 大丈夫、今回の作戦は全てこの碇シンジに任せんしゃい! あんな青い菱形なんて一発でシトメちゃいますよ~! あ、でもでもやっぱり不安になる事もあると思いますので~、応援してくれると嬉しいかな?」

 

ニコッ☆と、碇シンジという中学生を成りきったシュウジが最後にそう締めくくると、辺りに静寂が包み込んだ。剰りにも静かな為に時間が止まったかとすら思われたその時───。

 

警戒警報の鐘の音が一帯に鳴り響いた。

 

その後NERVの人間が碇シンジの下へ赴くとそこにはシンジ以外誰もおらず、目を醒ました彼から説明を求めても本人は何も覚えておらず、頬が腫れている事以外を除けば身体に特に問題はなく、作戦は継続する事になった。

 

記憶の抜け落ちているシンジに不安を覚える一同だったが、そんな彼らに対し碇シンジは晴れやかな気分だった。何だか良い夢を見たらしく気力が充実している少年はそのままEVAに乗り込み作戦開始の合図を待った。

 

そんな彼らに対し、唯一一部始終を見ていたとある少女は……。

 

「……こんな時、どんな顔をすればいいの?」

 

鼻で笑えばいいんじゃね?

 

様々な思いが重なる今回の戦い、ヤシマ作戦が始まる二分前の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『くそ! あしゅら男爵め、地球が滅んでも良いっていうのかよ!』

 

戦場となっている第3新東京市で兜甲児が叫ぶ。今回発令されたヤシマ作戦は事実上人類にとってラストチャンスになる作戦だ。市街地から離れた所にいるシンジとEVA初号機を守る為に盾という役割を買って出たZ-BLUEだが、作戦開始と同時に現れた機械獣軍団とアブダクターの予想外な襲撃に遭い、Z-BLUEは今現在押されている状況にあった。

 

乱戦となってしまっている第3新東京市、どうにかしてこの混戦を打破しなければならないという状況に陥ったZ-BLUEに、更なる追撃が押し寄せてくる。

 

『て、敵影接近! こ、こっちにくる!』

 

『しまっ!?』

 

己の機体にいまだ付いてこられずにいたヒビキに複数のアブダクターの無人機が押し寄せてくる。回避行動を取ろうにも未だ操縦に慣れていないヒビキでは間に合う筈もなく、無人機達は群がる様に青い機体───ジェニオンに押し寄せてくる。

 

直撃コース。無人機の放とうとしているエネルギー弾、ヒビキに決断が迫られたその時、頭上から降り注がれる光の矢が無人機の群をそれぞれ貫き、爆散させた。

 

今の攻撃はなんなのだと、ヒビキが……Z-BLUEの面々が頭上を見上げた時。

 

『まさか、アレは!?』

 

『あの報告は本当だったのか……』

 

夜の空から流星の如く舞い降りる一機の青い機体。それは再世戦争の時に戦った元ZEXISの面々にとっては忘れる事の出来ない機体だった。

 

“トールギスⅡ”武装や細部の部分は違うけれども、再世戦争の際にOZの総帥が駆ったとされる機体と瓜二つなMSの登場に、Z-BLUEの面々は驚きを隠せずにいた。

 

 

 

 




次回からはあの話に移る予定。


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