逃げか?差しか?その判断こそが大きな隙だ! 作:アマノジャック
時系列は…2001年後半…『後日談2:トリックスター』の後です。…どうぞ!
俺とピーチはドリームでの初勝利を祝うため、ちょっと豪華なケーキ屋にきていた。が、時間を間違えて開店時間よりもかなり早く来てしまい、待っている間にミーティングという名の雑談をしていた。
「で、トレーナー?キングちゃんとは次いつ並走できるの?」
「1ヶ月後だ。」
「えー、長いよ…その間には誰が入ってるの?」
「明日はエルコンドルパサー、3日後にセイウンスカイ、5日後はグラスワンダー…次の週はマンハッタンカフェとセイウンスカイとスペシャルウィーク、その次の週はマヤノとセイウンスカイとファレノプシスだ。」
「…セイちゃん率高くない?」
「相手のスケジュールの都合もあるからな…それにあの娘もドリームデビューしたばかりだからな…」
「それはそうだけど…」
アイリから毎日並走してくれと頼まれ、週一で妥協してもらったとは言えないな。
「あら?もう誰かいましたの!?」
声に気が付き振り向くと芦毛のウマ娘がサングラスとマスクの姿でいた。
「メジロマックイーン!こうして話すのはエリザベス女王杯以来だね!」
「な、バレてますの!?」
「いや、普通に分かるけど…」
「メジロマックイーンさん、おはようございます!」
「ラウンドピーチさん…ご機嫌よう。お二方…もしかしなくても狙いは…」
「ん?俺は入ってから決めよう…」
「はい、1個限定の国産生ライチケーキです!」
「…」ズーン
メジロマックイーンが崩れた。
「メジロマックイーン?」
「いえ、何でもありませんわ!では私はこれで失礼しますわね!」
メジロマックイーンはそういうと去っていってしまった。
「…どうしたんだろ?」
「トレーナー、あれは限定スイーツを食べたかった顔だよ。…メジロマックイーンさんも会員か…スイーツ好きなんだ。」
「その限定スイーツって美味しいの?」
「うん、ここのVIP会員だけに情報が送られてくるスペシャルなケーキなの!大体が1個だけとかが多いから早い者勝ちになるんだ!」
「だから、俺たちを一瞬見て帰る人たちが多かったのか…」
「私はトレーナーとならずっといられるからね♪カップルケーキも一緒に食べようか♪あーん、ってしてあげる♪」
「食べ過ぎだ!今回はその限定ケーキだけにしときなさい!」
「はい…」しゅん
「というか…君はここのVIP会員だったのか…知らなかったよ。何か教えればとちょっと下調べした自分が恥ずかしい…」
「人間がウマ娘に敵うわけ無いでしょ?」
「それ、意味が違うからな?」
そうこう話しているうちに開店時間となり、ピーチはライチケーキを、俺はピーチケーキをそれぞれ味わった。また、ピーチからライチケーキを1口貰ったが…美味しかった。
………
『マンハッタンカフェが先頭をかわしてゴールイン!
1着はマンハッタンカフェ!』
(ワアアァァァーッ!!)
菊花賞をマンハッタンカフェが勝利した。彼女はついに重賞…それもいきなりG1に手が届いたのだ!
「トレーナーさん…」
「よくやったな、マンハッタンカフェ!」
「ようやく、答えが見えてきた気がします…」
「答え?」
「えぇ、『お友達』がこのチームへ導いた答えです。もっと長距離のレースはありますか?」
「G1だと春の『天皇賞』が長いな…よし、君の次の目標は『天皇賞(春)』だ!」
「はい、頑張ります。」
「その間に『ジャパンC』と『有マ記念』も入れようと思う…いけるか?」
「ちょっとイブキ!?G1レースを入れ過ぎじゃない?」
ゴアに止められるが…決めるのはあくまでマンハッタンカフェだ。
「…?ー!なるほど…」
「マンハッタンカフェ、どうかしたか?」
「…次は『有マ記念』でお願いします。」
「ピーチに憧れたか?」
「…違います。」
「まぁ、任せろ!俺は有マ記念限定の勝利の女神だからな!」
「その次なのですが…『日経賞』を…」
「貴方は男でしょ、ってツッコミは無しか…。んー、『阪神大賞典』ではなく『日経賞』ね…中山の2500mに惹かれたか?まぁ、君が走りたいレースを選んでくれたのならそれに合わせたトレーニングを行うまでだ。」
「よろしくお願いします。」
「あ、ティラミスあるけど食べる?」
『いただきます!』
「いや、マンハッタンカフェの分だけだからね?で、食べる?」
「いただきます!」
「いつもそれくらいのテンションだったらな…」
そこにはいつもは動かない尻尾を散歩を待つ犬のように激しく振るうウマ娘がいた。少しは絆が深まったかな?
ーーー
カフェは見事にテイエムオペラオーらが出走した『有マ記念』を勝利したが、『日経賞』では6着に敗れた。だが明らかに普通の走りじゃなかった…そこでカフェの足を調べるとケガではなかったものの爪に異常があったのだ。
「カフェ、すまない!俺のせいだ!君を年度代表ウマ娘に出来なかったことに焦っていて、君の足の状態をちゃんと把握していなかった!」
「…謝らないでください。トレーナーはずっと私に問題は無いか聞いてくれていました。それにちゃんと答えれなかったせいですので。」
「だが…」
「トレーナー、私はあなたの指導のお陰でG1レースを…それも2勝することが出来ました。あなたに不満を持つことなんてありませんよ。私は…もう満足です。レースを続けてもいいですし、いつでも引退していいとも思ってます。」
「…『天皇賞(春)』。」
「はい?」
「次の『天皇賞(春)』にだけ出てくれないか?最後に君のスタミナを活かしたレースをどうしてもみたい。もしケガをしたり、最悪走れなくなったとしたら…俺の一生を掛けてその責任を負う。レース出走後は君がどうしたいか決めて欲しい。」
「…トレーナーが願うなら出ますよ。ですがトレーナーは私以外にも担当するので、本来であれば私をここで終わらせるべきだと思いますがね。」
「君はどうしたい?それに…まだ『お友達』からの答えが出てないのだろ?」
「ー!?」
「まずはその足を治そう。」
俺はスマホを取り出し…
「テイオー、頼みがある!」ピッ
………
テイオーより、とあるウマ娘とアポを取ってもらった。
「あなたでしたか。で、私に何のご用ですか?」
「うちのマンハッタンカフェの足を治して欲しい。」
「…なぜ私に言うのでしょうか?普通に病院に行けば良いでしょう?」
「テイオーを早く治してもらったからと…天皇賞(春)に勝ちたいからだ!」
「そちらがメインでしたのね…。」
「メジロマックイーン、君の天皇賞にかけていた気持ち…知らないわけじゃない!そのためにケガを乗り越えたことも知っている!」
「…」
「治してもらった後に…カフェと並走して欲しい!」
「それは私のトレーナーさんに言ってくださいまし!ちなみにそれで、私にどんなメリットが…」
「生ライチケーキ…」
「ー!そんな物、メジロ家の力でいくらでも手に入れれま…」
「高貴な君はそんなことしないだろ?自ら並んで手に入れようとするのだが…今でも食べてれたことはない。しかし、何かをしての対価であれば…並んだからではなく、ウマ娘を助けたからの理由で食べれる…どうだ?食べたいものを食べるのには十分な理由にならないか?」
「…う、うぅ…分かりました。その条件…飲みましょう。」
「では、早速キッチンを少しお借りするね。」
「これから貴方が作るのですか!?並んで買ってくるでは無くて!?」
「いや、俺VIPじゃないし、せっかく持ってきた生ライチが傷むじゃん。」
「今、持ってましたの!?」
ライチケーキはメジロマックイーンに好評だった。その後、半年間、月一のペースで何かスイーツを作りに(こっそりと)メジロ家へ行くこととなった。ちなみに並走の件はメジロマックイーンのトレーナーからあっさりオーケーが貰えた。
………
足を治したカフェはメジロマックイーンとのトレーニングを重ねて、力を付けていき…ついに天皇賞(春)を迎えた。
「ついに来たな。」
「トレーナー、今更ですがなぜそこまで私のために…?」
「俺が君の走りを見たいから、それだけだ。」
「…それ、もしかして誰にでも言ってます?とりあえずレースに行ってきます。」
………
『1着はマンハッタンカフェだ!
菊花賞に続いて長距離レースを制した!』
(ワアアァァーッ!)
カフェはナリタトップロードら強豪を抑え、見事天皇賞(春)を勝利した!
「カフェ!おめでとう!」
「…トレーナー。答えが出てきました。」
「それは…?」
「今は秘密です。ですが、これだけは言わせてください。」
「???」
「私は…このチームに入って、貴方がトレーナーで良かったです。」
「これからどうする?」
「かなり早いですが、ドリームへ行こうと思います。…ピーチさんとロブロイさんの指導と平行しつつ、これからもよろしくお願いします。」
「あぁ!これからもよろしくなカフェ!」
こうして、俺にとっては2人目の担当ウマ娘がトゥインクルを卒業した。しかし、ドリームでも走り続ける彼女を俺はこれからも指導し続けるだろう。
「あ、パウンドケーキあるけど食べる?」
「(…紅茶の匂いがする。)要りません。」
「えぇ!?」
ーーー
2005年10月30日/G1/天皇賞(秋)
「スタートしました!
キングストレイルが少し出遅れか?
先頭はタップダンスシチー、2番手にベヴンリーロマンス!
おっと、ストーミーカフェが先頭になった!」
………
「最終コーナーをカーブして最後の直線!
先頭はストーミーカフェでリードは2馬身。
ゼンノロブロイと大外からスイープトウショウが追い込んでくる!
ここで抜け出したのはダンスインザムードとメジロライチ!
へヴンリーロマンスとゼンノロブロイから逃げ切れるか!?
先頭はメジロライチ。
馬身差がドンドン詰まっていく…が、ここでメジロライチがゴールイン!
春秋盾連覇!」
メジロライチについて
欧字表記:Mejiro Lychee
品種:サラブレッド
性別: 牝
毛色:芦毛
生誕:2001年1月9日
死没:???
父:メジロマックイーン
母:ラウンドピーチ
母父:イージーゴア
生国:日本
競走成績
24戦5勝
獲得賞金 7億1092万円
主な勝ち鞍
G1
・優駿牝馬(2004)
・天皇賞(春)(2005)
・天皇賞(秋)(2005)
G3
・函館2歳ステークス(2003)
出走レース
2003
2歳新馬(1着)、函館2歳S(1着)、デイリー杯2歳S(4着)、阪神JF(2着)
2004
クイーンC(2着)、桜花賞(7着)、フローラS(3着)、優駿牝馬(1着)、宝塚記念(8着)、ローズS(4着)、秋華賞(2着)、エリザベス女王杯(5着)、有馬記念(10着)
2005
京都記念(3着)、阪神大賞典(5着)、天皇賞(春)(1着)、宝塚記念(7着)、京都大賞典(2着)、天皇賞(秋)(1着)、エリザベス女王杯(10着)、有馬記念(5着)
2006
京都記念(2着)、阪神大賞典(4着)、天皇賞(春)(2着)
ラウンドピーチとメジロマックイーンの産駒。ラウンドピーチにとっての初産駒にして初重賞馬。オークス母娘制覇、天皇賞(春)父娘制覇を達成した。さらにその年の天皇賞(秋)も勝利し天皇賞を完全制覇したため『盾の女帝』と呼ばれた。そして、2006年の天皇賞(春)にて連覇を目指すもディープインパクトに敗れ、引退する。ライバルはスイープトウショウで8戦4勝。引退後は繁殖牝馬としてディープインパクトやXXXゴールドとの産駒を計8頭産むが何れも気性が荒過ぎたため、デビューすることはなかった。繁殖牝馬引退後はラウンドピーチの馬主に引き取られ、母ラウンドピーチのいた場所でのんびりと過ごしている。
・本来のレースの勝者(重賞レースのみ)
優駿牝馬…ダイワエルシエーロ
*シルキーフレンド枠での出走
天皇賞(春)…スズカマンボ
*アクティブバイオ枠での出走
天皇賞(秋)…へヴンリーロマンス
*メイショウカイドウ枠での出走
函館2歳ステークス…フィーユドゥレーヴ
*スピードデステニー枠での出走
・おまけ(2011年版ver)
2005年、天皇賞(春)
メジロライチ、親子4代制覇。
『この運命は、どこまでも受け継がれる。』
天皇賞(春)がくる
「メジロライチ!メジロライチだ!メジロライチが先頭…」
*ウラ話
メジロライチ産駒でデビューしたのはマンハッタンカフェとの『アナエロビック』、アグネスタキオンとの『フォトンクリスタル』のみ。このうち『アナエロビック』が2013年の天皇賞(春)にてゴールドシップとフェノーメノを抑え勝利している。