逃げか?差しか?その判断こそが大きな隙だ! 作:アマノジャック
今回も没の話です。その理由は…競走成績をやり過ぎたところですね。何でもほどほどが1番です。では、どうぞ!
「ピーチの様子がおかしい?」
「はい、そうなのです。」
俺は今、ピーチの同室であるファレノプシスから相談を受けていた。おそらくだが…
「…夜中にピーチが急に叫んだことと何か関係があるのかな?」
「あれは本当に驚きました。ですが、本人は覚えてないそうで…」
ピーチが栗東寮で就寝中に急に大声を出したらしい…。それにより寮の半分くらいのウマ娘が起きてしまったとのこと。
「どうしたのだろう?」
「分かりません…ただ、苦しそうにしていました。悪夢でも見てたのかもしれません…」
「…俺の方で出来ることをしてみるよ。」
「よろしくお願いします。」
ーーー
「ぐるるる…はぁ…はぁ…」
「よし、ストップだ!…ピーチ、大丈夫か?」
「ごめん、トレーナー。今日はもう帰るね…みんな、お先に失礼。」
「お疲れ様です。」
「ピーチ先輩、お大事に!」
「ゴア、寮まで送ってやってくれ。」
「了解!ピーチちゃん、行くよ!」
「ありがとうございます…」
ピーチの調子は悪いようで、今日は早めに帰ってしまった。付き添いたいが、ゼンノロブロイの菊花賞があるので、今は離れる訳にはいかないのだ。
………
休憩の間に俺は占いをしているマチカネフクキタルを訪ねていた。
「マチカネフクキタル、うちのピーチについて占って欲しいのだが…」
「お任せあれっ、です!あの件ですよね!と言いますか私も起こされた身ですので、既に占ってる途中です!もしかすると何かが憑いてるかもしれないので!」
「何か、って何?」
「むむっ!見えてきました!ややっ!この方は…!?」
「え?嘘だろ……カフェ!?」
彼女の水晶に映りこんだのは…俺の担当ウマ娘の1人、マンハッタンカフェだった。
………
「今日はここまでだ。クールダウンをしておけよ!…あー、悪いがカフェは少し残ってくれ。」
『はい!』
「それで…何でしょうか?」
「そのね、ピーチの体調が悪いのに何か分かったりしないか?」
「ピーチさん…ですか?何故私に?」
「そのね、言いにくいんだが、マチカネフクキタルに占ってるもらうと水晶に君が…?」
水晶に映ったマンハッタンカフェに違和感が出てくる。
「カフェ、勝負服は今持ってるか?」
「えぇ、持ってますが…」
「着替えてきてくれ!今すぐ!」
「は、はぁ…?分かりました。」
………
「お待たせしました。」
「…!ちゃんと黒だ!」
「?何度も見ているでしょ?」
「右足が白い君が見えたんだ!」
「ーー!!『お友だち』がついに貴方にも見えたんですか?」
「マチカネフクキタルの水晶に、だがな。…何か覚えは無いか?」
「すみませんが分かりません。最近、『お友だち』の姿が見えなくて…」
「最後に見たのは何時だ?」
「1週間ほど前にイージーゴアさんの側で見たのが最後です。」
「ゴアの?…分かった、時間を取らせて悪かった。ありがとうなカフェ。」
「いえ…何か分かればまた言いますので。お疲れ様です。」
ーーー
「ピーチは…今日も休みか。ロブロイ、君は今日はカフェとの並走だ。ゴアはダイワスカーレットとキタサンブラックの練習を指導してくれ。ウオッカとカワカミプリンセスは今日は俺が直接指導する。では始めていこう!」
『はい!』
今日も今日とて、俺はチームのみんなを指導していく。
………
『え?右足の白いウマ娘ですか?』
「ピーチが悪夢をみている原因かもしれないんだ?」
『分かりました、ピーチちゃんが起きてる時にそれとなく聞いてみます。』
「頼んだぞ、ファレノプシス。」
………
練習が終わり、みんなを帰し、ゴアに残ってもらった。
「ゴア、…右足が白いウマ娘って何か知ってるか?」
「…はぁ。イブキ、あんたは私のトラウマを掘り返すことが好きなの?でもサンちゃんか…懐かしいな…」
「サンちゃん?」
「サンXXサXXXスでサンちゃんよ。」
「ん?聞き取れない…」
「だから、サンXXサXXXス!私のクラシックはほとんど彼女に取られたんだから!」
「…やっぱり聞き取れないな。ピーチの体調が悪いのと関係あるらしいのだが…そのウマ娘と連絡とれたりとか出来るか?」
「…無理よ。だって彼女…引退後に亡くなってるから。」
「は?」
亡くなってる?じゃあ、まさか本当にピーチは取り憑かれて…
「イブキ!?顔色が悪くなったけど大丈夫?」
「トレーナー、今よろしいでしょうか?分かったことがありまして…」
「…カフェ?」
「そういえばカフェちゃんって彼女にそっくりよね。」
「ー!」バタン
『イブキ(トレーナー)!?』
「遅かったですか…」
「カフェちゃん!どうなってるの?」
「おそらくですが…トレーナーの意識はピーチさん同じ世界にいるでしょう。」
「ねぇ?その、『お友だち』の名前って…」
………
今、カフェの『お友だち』の正体が分かった。そのウマ娘がカフェから離れ、ピーチに悪夢を見せていたのだろう。…しかし、俺に何が出来る?除霊か?専門家でも呼ぶか?
「トレーナー!?どうしてここに?」
「ピーチ!ここは…ベルモントパークの…?」
俺が目を覚ますとアメリカのレース場にいた。ピーチが『サバーバンH』を走ったレース場だ。が、出走ウマ娘どころか観客さえもいない違和感あるレース場だ。
「トレーナー、彼女に勝つ方法を教えて!」
「彼女って…カフェ!」
「………」
「違う違う!名前は分からないけど、凄く強いウマ娘なんだよ!…ダートの2000mで何度も戦ってるけど勝てないんだ。」
「何回競走したんだ?」
「20回してからは数えてない。」
「20回以上も?え?そんなに走ってるの?」
そこには水晶に映っていた右足が白いカフェ似のウマ娘がいた。黙ったまま、こちらを見ているだけだ。
「…まずはレースを見せてくれ。」
「分かった…作戦は"逃げ"でいくね。よろしくお願いします!」
こうして、ピーチとカフェ似のウマ娘とのレースが始まった。
………
「負けた…」
「………」
そして、あっさりと負けた。見たところ、最終コーナーで加速されてゴール直前に差されている。王道な先行タイプなようだ。
「"差し"でも見てみる?」
「…連続で走るつもりかよ。大丈夫?」
「全然疲れてないよ。お願いします!」
………
「…負けた。」
「………」
ピーチはカフェ似のウマ娘にずっと後ろについていたが最終コーナーで差を広げられ、あっさりと負けた。ピーチの脚質がどちらも通じていないのだ。
………
「で、どうしたら勝てる?」
「正直、純粋なスピードの差だね。今の君では勝てない…そもそも君はダート経験が少ないでしょ?」
「でも、それじゃあ、あの娘に勝てない!帰れない!」
「追い込め。」
「え?私は"逃げ"か"差し"しかしたことないけど…」
「何度も出来るのだろ?あのウマ娘を見てる感じ…同じ"先行"は論外として、勝てる可能性があるのは"追い込み"かな?最終コーナーで10バ身以上離れないように意識しつつ…ゴアの真似をしろ。」
「ゴアさんの!?」
「溜めて溜めて…一気に放てば勝てる可能性はある!ホイットニーHを思い出せ!」
「距離が200mも違うけど…分かった!信じてるからね!」
アドバイスをしたのち、ピーチは再びあのウマ娘へと挑戦した。で、普通に負けた。
………
何度も敗れては何度も挑戦…5回目くらいしただろうか?
ダンッ
「やぁぁぁ!」
「……!」
「嘘だろ?」
5バ身ほどひき離し、ピーチはゴールした。本来、ラウンドピーチは末脚が弱い。故に差を広げる"逃げ"か、スタミナ切れと隙を狙う"差し"だった。しかし、今回ピーチの末脚は…追い込み型を得意とするウマ娘にも並ぶレベルだった。
「勝った!?やったー!ぐるるる!」
「………」
「ねぇ?あんたはどうして私とレースをしたの?」
「………」
「あれ?何か引っ張れるような…」
「ピーチ!?」
ピーチはレース場から消えていった。カフェ似のウマ娘がこちらに来る。
「………」
「君はサン…」
「………」グッ
「ー!?」
「………」フルフル
カフェ似のウマ娘は俺の口を抑えて首を横にふる。そして…
「アイツの血と俺の血が合わせれば間違いなく最高傑作になったのにな。」
「は?」
「何てことはねぇ。俺はただこの世界を見てるだけだ。しかし、アイツの娘がここまで活躍してる世界とはねぇ…やはり、ただの良血坊っちゃんじゃなかったってことか。」
「君は何を言って…」
「時間だ。負けた以上は大人しく退散する。…俺の子や孫たちをこれからも頼んだぜ。」
「子?孫?」
「1人くらいならお前が食っちまってもいいからな?じゃあな!」
そういうとカフェ似のウマ娘は笑って消えていった。
………
「ん?」
「ー!目が覚めました!」
「イブキ!?良かった!」
「…どれくらい寝ていた?」
「5分程です。」
「カフェ、君の『お友だち』と会ってきた。本当に君にそっくりだったよ。」
「ー!顔は?どんな顔でした?」
「あぁ、…あれ?見たのに思い出せない?今、近くにいない?」
「?ずっと、貴方の手を握ってる方がそうですよ?」
「ヒィィ!それって大丈夫なの?」
確かに誰に掴まれるな。ゴアが心配してるがとりあえず…
「えい!」グイッ
『ー!』
「よし、捕まえ…ダメか。逃げられたか…。触れるんだな。」ダキッ
「あなた、本当に変なことをしますね…」
「見えないものを捕まえようとしないの!」
「まぁ、感触的にカフェと似てることが分かったしな。」
抱きつくと胸が小さかったし。
「今、失礼なこと考えました?」
「姿が見えないんだから許してくれよ。でゴア、サンちゃんのレース映像とか写真とかってあったりする?」
「ごめん、レース映像は私の顔すらボヤけてて、写真は1枚もないの。撮った瞬間から燃えたらしくて…」
「そうか…」
ピピピピピ…
「電話だな…はい。」ピッ
『イブキさん!ファレノプシスです。ピーチちゃんの件ですが解決したようですね!寝息が安定してきて、顔色が戻りました!』
「そうか、報告ありがとう。ついでにピーチの寝顔の写真も撮って送ってくれ。」
『分かりました。はだけたバージョンもいりますか?』
「それはいいや。後で殺されそうだし。」
『了解です。それは私個人で楽しみます♪では、失礼しますね。』プツッ
「ピーチの件は解決したようだな。2人ともありがとう。」
「あっ、トレーナー!後ろ…」
「へ?」
バキッ
「痛っ!」
「イブキ!?」
「『お友だち』がお怒りのようです。」
「抱きついて悪かったって!ちゃんと全員レースで勝たせるから!大人して見守っててくれ!」
「…納得したみたいです。」
こうして、ピーチの悪霊事件は終結した。
………
次の日からピーチは普通に登校してきた。そして、模擬レースで"追い込み"を披露したのだが…
「何で伸びないのよー!」
「ピーチ先輩、力が入り過ぎっす。芝が抉れてるっす。」
芝では全然活用出来なかった。
ーーー
2006年12月24日/G1/有馬記念
『スイープトウショウがゲート入りを嫌がってますね。
おや、急に大人しくなりました。
…どうやら彼女が唸ったようです。
レモンサンデー、唸る彼女は絶好調…ディープインパクトとの最後の対決となります。
さて、レモンサンデーがゲートインして…スタートしました。
スイープトウショウが出遅れたか?
先頭争いはアドマイヤメインとレモンサンデー。
ディープインパクトは後方から3番手でスタートしております。』
………
『最後のコーナー、先頭は大きく前に出ているレモンサンデー!
他の馬たちも早めにあがってきた!
ここで大外からディープインパクト!
ディープインパクトが大きくあがってきた!
届くか?届くか?
レモンサンデーに届くか…届けー!
並んだゴールイン!
これには審議のランプ!』
『1着は…レモンサンデー、レモンサンデーだ!
ディープインパクトは最後まで2着!
両者の戦いはレモンサンデーの5戦全勝、まさに最強無敗の3冠牝馬!』
ーーー
レモンサンデーについて
欧字表記:Lemon Sunday
品種:サラブレッド
性別: 牝
毛色:栗毛
生誕:2002年3月24日
死没:???
父:サンデーサイレンス
母:ラウンドピーチ
母父:イージーゴア
生国:日本
競走成績
25戦25勝
獲得賞金 21億8762万円+560万$+1710万香港$
出走レース(全て1着)
2004
2歳新馬戦、京王杯2歳S、阪神JF
2005
チューリップ賞、桜花賞、NHKマイルC、優駿牝馬、ユニコーンS、ローズS、秋華賞、エリザベス女王杯、有馬記念
2006
フェブラリーS、高松宮記念、天皇賞(春)、ヴィクトリアマイル、宝塚記念、スプリンターズS、天皇賞(秋)、ジャパンC、有馬記念
2007
ドバイシーマC、安田記念、凱旋門賞、香港C
ラウンドピーチとサンデーサイレンスの産駒。体格がかなり大きく、気性難で自身の領域に入ってきた小動物を踏み殺すなど残虐性が高い。しかし食べることが好きで1度でも食べ物を与えていればその人に従順になり、厳しい調教も行えた。唸るだけで周りの全ての馬が道を譲るなどボスとしてのカリスマも非常に高い。日本、そして世界に最強を示すため、2桁以上のレースに出走したにも関わらず全て勝ち取り、無敗のまま引退。繁殖牝馬になるも、どの競走馬と交配させても受胎せず結局引退し、功労馬としてラウンドピーチの馬主の牧場で過ごしている。
・本来のレースの勝者(重賞レースのみ)
京王杯2歳S…スキップジャック
*デザートモーニング枠での出走
阪神JF…ショウナンパントル
*クロユリジョウ枠での出走
チューリップ賞…エイシンテンダー
*コリンナ枠での出走
桜花賞…ラインクラフト
*テイエムチュラサン枠での出走
NHKマイルC…ラインクラフト
*マルターズビクター枠での出走
優駿牝馬…シーザリオ
*ピューマカフェ枠での出走
ユニコーンS…カネヒキリ
*コウジンアルス枠での出走
ローズS…エアメサイア
*ハツネドオゴ枠での出走
秋華賞…エアメサイア
*トウカイルナ枠での出走
エリザベス女王杯…スイープトウショウ
*メモリーキアヌ枠での出走
有馬記念…ハーツクライ
*コイントス枠での出走
フェブラリーS…カネヒキリ
*ニホンピロサートでの出走
高松宮記念…オレハマッテルゼ
*ゴールデンキャスト枠での出走
天皇賞(春)…ディープインパクト
*ハイフレンドトライ枠での出走
ヴィクトリアマイル…ダンスインザムード
*ショウナンパントル枠での出走
宝塚記念…ディープインパクト
*チャクラ枠での出走
スプリンターズS…テイクオーバーターゲット
*キーランドスワン枠での出走
天皇賞(秋)…ダイワメジャー
*トリリオンカット枠での出走
ジャパンC…ディープインパクト
*ユキノサンロイヤル枠での出走
有馬記念…ディープインパクト
*トーセンシャナオー枠での出走
ドバイシーマC… Vengeance of Rain(ヴェンジェンスオブレイン)
*Laverock(レイヴロック)枠での出走
安田記念…ダイワメジャー
*シンボリエスケープ枠での出走
凱旋門賞…Dylan Thomas(ディラントーマス)
*Yellow Stone(イエローストーン)枠での出走
香港C…Ramonti(ラモンティ)
*1枠追加での出走
*ウラ話
レモンサンデーは人に慣れるまで母ラウンドピーチにベッタリとくっついていたが、引退後に母に再会した後も変わらなかった。放牧から戻す時に柵を飛び越え母の側に甘えにきた時は牧場にいた人全員が舌を巻いたという。なお、柵は飛び越えれないよう高く頑丈な物へと変更された。