逃げか?差しか?その判断こそが大きな隙だ! 作:アマノジャック
煩悩を取り払い、かなりの日が経った。オグリやマヤノがドリームを引退し、セナも寿退社をした。ピーチも近いうちに引退することになるだろう。しかし、俺はまだまだこのチームを離れることはない。なぜなら…ついにキタサンの『本格化』が始まったからだ!
「よし!いいタイムだ!」ポチッ
「はぁ、はぁ…本当ですか!?」
「あぁ、少し遅くなるが半年後にはデビューでいいだろう。それまでどんどん伸ばせるところを伸ばしていくぞ!」
「はい!」
今日も今日とてキタサンを鍛えていく。
………
「ピーチちゃん!今日は並走よろしくね!」
「うん!スペちゃんと走ると何か闘走心がすごく燃えるんだよね!ぐるる…」
「ヒィィ!」ビクッ
「コラコラ、スペちゃんをあまり怖がらせないの。」
「…あ、ごめん!そんなつもりじゃ…毎回こうなっちゃうみたいで…」
「私も慣れなくてごめんね。」
「はい、そこまで!練習していきますよ、ではお先に~」
「待ってグラスちゃん!」
「逃がさないよ!」
………
「よし、ここまでだ!」
「まだです!坂路を後5周ほど走らせてください!」
「君がタフなのは知っている。が、これ以上はオーバーワークだ!ただでさえ君への練習量は他のウマ娘よりも多い!ケガをすれば元も子もない!」
「でも…もう少しで何かを掴めそうなのです!…ダメでしょうか?」
「…足の状態で決めよう、寝転んで!」
「はい!」ゴロン
「…」グイグイ
「…」
キタサンの足をみていく…ふむ、この熱であればもう少しだけ行けるな。だが、5周は多すぎだ。
「3周までならいい。」
「…」
「キタサン?」
「…は、はい!何でしたっけ?」
「大丈夫か?3周までならと言ったんだ。で、走るのか?」
「はい!走らせていただきます!」
むぅ、またか。この娘は練習中にたまにボーとする癖がある。調子が悪い訳ではないのだが…お手伝いのやり過ぎか?だが、このタフさがあればスピードを重視した練習へと切り替えれる日も近いかな。
………
「はぁ、はぁ…」バタン
「ふぅー、ふぅー…」バタン
「2人とも大丈夫ですか?」
「張り切り過ぎた…」
「ピーチちゃんから逃げるのに疲れた…」
「あらあら…ん?あなたは?私たちに差し入れですか?ありがとうございます…え?もう行ってしまわれるのですか?名前は…分かりました。レース、応援させていただきますね~。差し入れ、ありがとうございました~」
「グラスちゃん?」
「その袋は?」
「あの娘からの差し入れで…あ、オレンジジュースが入ってます。ビタミンCがたっぷりですよ♪」
「あんな娘いたっけ?」
「来年、トゥインクルにデビューするそうですよ。名前は…『スペシャルオレンジ』ちゃんという名前らしいです。」
「スペシャル…スペちゃんの知り合い?」
「ううん、初めて聞いた名前だよ。あ、このジュース美味しい!」ゴクゴク
「どれどれ…うっ!酸っぱい!あの娘には悪いけど…スペちゃん、あげる。」ゴクゴク
「本当!?じゃあ、遠慮なく!」ゴクゴク
「あ…」
「ん?グラスちゃんも欲しかった?」
「ごめんね、全部飲んじゃった…」
「…」ゴゴゴ
「グラスちゃん?何か怖いよ?もしかして貰ったのに全部飲まなかったこと怒ってる?」
「違いますよ~、そうだ!今度は私と2人で並走しませんか?疲労回復の飲み物たくさん用意しますので…」ゴゴゴ
「謝るから!あの娘にちゃんと飲まなくてごめん、って謝るから!」
「だから違うと言っているでしょう?」ゴゴゴ
「ヒィィ!」ビクッ
「グ、グラスちゃん?ピーチちゃん怖がってるよ!」
カシャ
「…父さん、母さん、みていてください!私が…勝つところを!」
ーーー
2015年10月25日/G1/菊花賞
「スタートです!
何と!?スティーグリッツが大きく出遅れた!
注目先行争いはリアファルとスピリッツミノル!
1番人気無敗の変則2冠牝馬スペシャルオレンジは先頭集団の後方だ!」
………
「最後の直線!
先頭はミュゼエイリアンとスペシャルオレンジ!
ムチに答え、スペシャルオレンジが抜け出してきた!
先頭はスペシャルオレンジ!
しかし内からキタサンブラック、外からリアファル!
スペシャルオレンジ逃げきれるか?
まん中からリアルスティールが伸びてくる!
スペシャルオレンジがかわされた!
キタサンブラックとリアルスティールがゴールイン!
無敗のスペシャルオレンジ敗れる!
キタサンブラックか、リアルスティールか?」
ーーー
スペシャルオレンジについて
欧字表記:Special Orange
品種:サラブレッド
性別:牝
毛色:栗毛
生誕:2012年1月8日
死没:???
父:スペシャルウィーク
母:ラウンドピーチ
母父:イージーゴア
生国:日本
競走成績
13戦7勝
獲得賞金 5億4703万円
主な勝ち鞍
G1
・桜花賞(2015)
・皐月賞(2015)
・宝塚記念(2016)
G2
・京都大賞典(2016)
G3
・東京スポ2歳S(2014)
出走レース
2歳新馬(1着)、東京スポ2歳S(1着)、白梅賞(1着)、桜花賞(1着)、皐月賞(1着)、菊花賞(3着)、ジャパンC(9着)、有馬記念(6着)、ヴィクトリアマイル(6着)、宝塚記念(1着)、京都大賞典(1着)、エリザベス女王杯(10着)、有馬記念(8着)
馬主の考えでスペシャルウィークとラウンドピーチが出走していたレースを中心に走ることになる。結果、両親が1着取れなかったレースを次々勝利していったためキタサンブラックと違う意味で『親孝行馬』と呼ばれた。また桜花賞→皐月賞と連闘するも両方勝利し、皐月賞でヒデヒカリ以降67年ぶりの勝利牝馬かつ、初のG1→G1連闘勝利馬となった。その後、連闘によりレースをしばらく自粛。そして秋華賞ではなく、父の勝てなかった菊花賞に出走するもキタサンブラックに敗北。その後も敗戦が続くが宝塚記念、京都大賞典で連勝。その勝利を最後に有馬記念で引退した。引退後は繁殖牝馬として過ごすこととなった。半弟グラスベリーとの対決は1勝1敗で終わった。
・本来のレースの勝者(重賞レースのみ)
桜花賞…レッツゴードンキ
*トーセンラーク枠での出走
皐月賞…ドゥラメンテ
*コメート枠での出走
宝塚記念…マリアライト
*タッチングスピーチ枠での出走
京都大賞典…キタサンブラック
*スペシャルオレンジもグラスベリーも1枠追加での出走
東京スポ2歳S…サトノクラウン
*ペガサスボス枠での出走
*ウラ話
ラウンドピーチの馬主はディープインパクトと(キングマンゴーの活躍から)キングヘイローにラウンドピーチを交配させるも受胎せず、ブエナビスタの活躍からスペシャルウィークと交配させた。ラウンドピーチが暴れたり、栗毛嫌いのスペシャルウィークがラウンドピーチを気に入ったのか2回戦をしようするなど波乱の交配であったが無事受胎し出産した。翌年にはグラスワンダーとも交配しており、イベントで3頭が揃った時は真ん中にラウンドピーチ、隣にはうまだっち(意味深)したスペシャルウィークとグラスワンダーの3ショットが撮られた。