逃げか?差しか?その判断こそが大きな隙だ! 作:アマノジャック
僕とアップルは阪神レース場へと来ていた…そう、春のグランプリである『宝塚記念』に出走するためだ。
「ソラ兄!ソラ兄!久々の関西だよ!大阪だよ!G1レースだよ!」
「アップル、ここは兵庫だ…まぁ、『秋華賞』以来だな。」
「うん♪ここなら私は負けないから…ママが勝てなかったこのレース…絶対に勝ってみせる!」
「…親父やピーチさんの担当が出走する、と聞いてもか?」
「勝つ!!それに…パパってまだこのレースを勝たせれたことないでしょ?『グランプリメーカー』とか呼ばれてるのに。」
「有マを何度も勝たせれる親父が異常なんだよ…」
「ソラ兄もパパのこと言えないと思うけど…でも、私を担当したから先に取れちゃうね♪」
「…あぁ。お前なら勝てる!全力でいけっ!」
「もちろん!そしたら次は『BCクラシック』だね♪」
「…まだ考え中の話だからな。よし、行ってこい!」
「うん♪」
先月、アップルが出走しようとした香港のレースは脚部不安により回避した…芝へと戻すための調整が原因だ。親父には芝にするか、ダートにするか、どちらかにはっきりした方がいいんじゃない?、とは言われたが…僕はアップルの好きに走らせるだけだ!
コンコンコン
「すみません、アップルならもうパドックに…」
「元気そうねソラさん。」
「キ、キングさん!どうしてここに?」
「ちょっとイクイノックスさんに会っていたの。あなたの顔を見ようと思って…」
「嬉しいです!あぁ、一流のスーツの着こなし…一流に整った綺麗な髪…一流の香水の匂い…」
「ってナチュラルにセクハラをするんじゃありません!後、今日は香水付けてないからね!」
「それでそんないい香りが…流石はキングさん!」
「うぅ…何で私はこんな変態を受け入れたのかしら…」
「一流だからです!」
「自画自賛しないの!」
「いえ、キングさんのことですよ!」
「え?そ、そう?…おーっほっほっほ!当然よね!」
何この一流…チョロ可愛い。
「コホン、ソラさん!…キングが来たということはどういう意味か分かる?」
「うまぴょいのお誘いですか?」
「おばか!そんな訳ないでしょ!」
「3割冗談です。」
「半分以上本気じゃない!」
「さて…本音はさておき…」
「おかないの!…やっぱり、今はいいわ。」
「…僕の成長を見る、でしたね。」
「えぇ!ソラさんがトレーナーとなり、アップルさんを指導することで一流になる、だから…その…こ、こい…」
「結婚してくださいと言いました!」
「おばか!話がとびすぎよ!」
「まずはティアラ3冠を取りました!」
「…この時点でキングの一流を凌駕してるだけど?」
「僕の中ではまだです!ですので海外のG1レースで1着を取りました!」
「超一流じゃない!!」
「…まだです。親父が担当してるイクイノックス…彼女にまだ勝てていません!」
「いやいやいや!彼女は現在、世界最強のウマ娘よ!勝つ気なの!?」
「はい!ですので勝てたら結婚してください!お願いします!」
「………本気なの?私、スカイさんと…あなたのお母さんと同じ年齢よ?」
「愛の前に年の差は関係ありません!…では、一流を見せに行ってきます!」
「ちょっ!キングの話はまだ終わって…」
さぁアップル…僕のために勝ってくれ!
ーーー
俺の担当ウマ娘であるイクイノックスは今日、『宝塚記念』に出走する。そして、トレーナーとなったオウゴンドラゴン(ついでにピーチも)と一緒にレースをみていた。
「父よ、まだ新人の私がここにいてもいいのだろうか?」
「ドラ、君もトレーナーになった以上はここに立つ日も来るよ。だから、早めに経験しておいて損することはないよ。」
「そうそう。イブキが女連れ込んでるなんていつもことだから…気にしたら負けよ。」
「母、そういう話ではない。…周りがベテランばかりで怖いのだが?」
「皆いい人たちよ…んー、ソラ君の所に行く?」
「いや…もうメロンたちに囲まれてくっ付ける所が無いからここでいい。」
「そっか…まぁ、慣れて。」
「ピーチ、ドラ…レースが始まるぞ。」
イクイノックスたちがゲートに収まり…レースが始まった。
ーーー
『最後の直線!
先頭に立ったのはブラックアップル!
一気に前へと突き抜ける!
イクイノックスは届くのか?届くのか?
…届かない!
逃げきったぞブラックアップル!!
グランプリに輝いたのは3冠ウマ娘のブラックアップル!
母キタサンブラックが勝てなかったこのレースで復活の大勝利だ!』
(ワアァーーーッ!!)
「勝った…勝った勝った勝った!!勝ったあぁぁぁぁ!!」
勝利したアップルが大声で叫ぶ…世界一となったイクイノックスを…天皇賞(春)を勝ったジャスティンパレスを…ここに揃った強豪ウマ娘たち全てを…僕の愛バが春のグランプリでねじ伏せたのだ。
「…おめでとうソラ。息子に先を越されたか…」
「ソラ君…おめでとう…」
「ソラ!お前は本当にすごいよ!…私にはまだ遠い先の話だとは思うが…担当した娘がグランプリレースに出れるようになりたい。」
メロンスカイたちを払いのけ、その場を急いで離れようとすると親父やピーチさん、オウゴンドラゴンが僕に声をかけてくる。…今は話しかけて欲しくないのだけど?
「ソラ…君は…泣いているのか?」
「…悪いかよ。親父だって担当がG1勝つ度に泣いてたって聞いたぞ。」
「いや、泣いたことは無いからな。」
「嘘だろ?」
「ソラ君が泣いてるのは…大好きなアップルちゃんが勝ったから、だよね?」
「なっ!ソラ!私もお前が大好きだぞ!」ダキッ
「ドラ…くっつかないでくれ…」
ウマ娘だから力強くて痛いんだよ。
「…よしっ!ソラとアップルがグランプリ勝ったことだし今日はお祝いをしよう!とびっきりのアップルパイを作ってやる!」
「本当!?嬉しいわ!」
「いや、母じゃなくてアップル用だろ?」
「安心しろ!ピーチの分もドラも分もしっかり作ってやる!とりあえず、リンゴを50個買って帰るとして…あれ?ソラ?どこいった?」
「アップルちゃんの所じゃない?私もボンドちゃんとリアちゃんの所に行ってくるわ。ドラちゃんはどうする?」
「母について行こう。」
「りょーかい!イブキ、あんたもさっさと担当の所に行きなさい。」
「いや、行くけどさ…ってピーチとドラももういねぇし。…イクイノックス…大丈夫だといいんだけど…」
………
僕が合流すると同時にアップルは某宇宙生物の如く抱きついてきた。
「ソラ兄!!」
「頑張った!本当によく頑張った!」
アップルは今、どんな顔をしているのだろうか?とりあえず、頭をわしゃわしゃと撫でる!
「アハハ…くすぐったいよ!…ソラ兄。」
「どうした?」
「私、『BCクラシック』に出たい!」
「…お前がドバイで負けたあのウマ娘も出るらしいぞ。それでも出たいのか?」
「出たいっ!」
「…分かった。明日からダートに向けた調整を行っていこう。」
「本当?ありがとう!」
「あと、最後にビッグニュース!」
「ん?」
「僕、結婚するよ!」
「………はぁ!?」
アップルのドスの利いた声を初めて聞いた。
ーーー
俺がイクイノックスの所に行くと、彼女は黙ったまま下を向いていた。
「トレーナーさん…」
「お疲れ様、イクイノックス。ダービー以来だね…負けてどんな気持ち?」
「く、悔しいです!有マでなめたこと言った相手に負けて…ただ、悔しいです!」
「…君の実力は今回の出走ウマ娘の中でも間違いなくトップクラスだった。それは事実だ。だが負ける時は誰だって負ける…今日はその日だった。…イクイノックス、俺と一緒にもっと強くなってくれるか?」
「…はい!」
「…ところでこの後、アップルパイを焼く予定だけど…イクイノックスも来る?」
「行きます!」
その後、イクイノックスらと共にアップルパイを食べた…そして、ソラの衝撃的な報告も聞くこととなった。
▼ブラックアップルのデータが更新されました