逃げか?差しか?その判断こそが大きな隙だ!   作:アマノジャック

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漆黒の摩天楼

俺とイクイノックスはURAからのとある依頼を受けたのだが…理事長らトレセン学園関係者には極秘で、とのことで学園で依頼業務をする訳にはいかず、悩んだ末、カフェの喫茶店を使用させてもらうこととなった。URAとカフェ本人から許可はもらっているが…念のため、普通の客を装い俺たちは店へと入る。

 

「…いらっしゃいませ。…ご注文は?」

「ブレンドとアメリカン…あと、ワッフルを2人前。ミルクと砂糖はどっちも付けてくれるかな。」

「…かしこまりました。」

「長時間いる予定だけど…いいかな?」

「…問題ありせまん、ごゆっくりどうぞ。」

「トレーナーさん、あの人…」

「あぁ、俺が担当していたマンハッタンカフェだよ。よし、じゃあ…この色紙にサインをしてもらおうかな。」ドサッ

「うわぁ…これ、何枚あるのですか?」

「500枚くらいかな…」

「…分かりました。では、早速…」

 

その後、サインを書き終えたイクイノックスは大量のスイーツを注文し…俺はカフェを手伝った。たくさん食べろよイクイノックス。また、サインの1枚はカフェへとプレゼントされ…店内の壁へと飾られた。

 

───

 

今日はマロンが何処か大人なお店に行きたい、とのことで…カフェの店へと連れて来た。マロンとカフェは前に仮装大会で会ったことがあるから悪いことにはならないだろう。

 

「…いらっしゃいませ。…イブキさん、また来ていただけましたか。」

「こんにちは、お姉ちゃん!」

「…こんにちは、可愛いお嬢さん。…どこかにお出かけですか?」

「うん!お父さんとデートなの!マロンの魅力でメロメロにして、お母さんたちのからマロンの物にしちゃうの!」

「…マロン、どこでそんなの覚えた?んん、まぁ…ここが落ち着くから。」

「…人がいないからですか?」

「い、いや!そういうわけでは…」

「冗談です。…それで、ご注文は?」

「ブレンドとアイスココアと…マロン、何が食べたい?」

「パフェ!!」

「じゃあ、このいちごパフェを2つ。」

「…かしこまりました。」

「わぁ…コーヒー淹れるお姉ちゃんカッコいい!理想の大人な女性って感じ!」

「…ありがとうございます。」

 

その後、マロンが誤って俺のコーヒーを飲み悶絶したが…いちごパフェとココアで何とかした。

 

───

 

平日の夕方…定時で帰っていると電話でセイからお使いを頼まれた。また、そのまま歩いていると同じく帰宅中のスダチと会い、俺とコーヒーを飲みたいと言われ…お使い前にカフェの店へと入る。

 

「いらっしゃいませ!」

 

小学生くらいの男の子が玄関前へと歩いてきた。

 

「ん?カフェの……弟?」

「…息子です。」

「え?結婚してたの?」

「してないよ!ママはシングルマザー、ってやつらしいよ!」

「…お客さんが来たから…奥で遊んでなさい。」

「は~い!」

「…」

「ぱぱ、変なこと考えてるでしょ。」

「…いや、何も。」

「…ご注文は?」

「ブレンドと…スダチ、何がいい?」

「ぱぱと同じやつで。」

「ブレンド2つ…ミルクと砂糖も付けて。あとは、ハニートーストも2人前。」

「…かしこまりました。」

「ストレートじゃないんだ。」

「うん、スダチに合わせようかなって。」

「私はストレートで飲めるわよ!…多分。それより、この後にお店で買うものちゃんと覚えてる?」

「スマホに全部メモしてあるから大丈夫だよ。他にスダチが欲しい物があったら教えてね。」

「そうやって、また私を子供扱いする…」

「いくつになろうと君は俺の子供だよ。」

 

その後、コーヒーに2人分のミルクと砂糖を入れるスダチがいた。まだ早かったね…

 

───

 

珍しいこともあるものだ。今日は俺を除く全員が用事でいないらしく…家には俺1人。冷蔵庫一杯のデザートを作ってしまい、やることの無い俺は…近場のレース場へと向かっていた。

 

「…」

「…イブキさん…今日はお一人で?」

 

目の前にカフェがいる。…ここってカフェの店の中?

 

「…ん?あれ?…無意識で来ちゃったみたい。」

「…帰られますか?」

「一杯、飲んでいこうかな…カプチーノをお願い。」

「…かしこまりました。」

 

コーヒーを淹れるカフェの姿を見る…身体は現役時のままで…ん?何かがおかしい。

 

「…どうぞ。」

「ありがとう…」

 

渡された飲み物を飲む俺。うん、温かくて美味しいな…

 

「ふぅ…」

「…お疲れですか?」

「いや…そんなことは…今はまだ忙しくないし…」

「…憑いてますよ?」

「ん?『お友だち』的なやつ?」

「いえ…もっとドロドロした…負の感情のような…」

「…これを飲めばそんなの吹き飛ぶよ。」ゴクゴク

 

そのまま、カップを傾けてカプチーノを飲みきった。さて、そろそろ帰ろう。

 

「カフェ、お会計を頼むよ。」

「…」

「…カフェ?……いや、誰だお前は!?」

「……キヒッ!」

 

突然に目の前のカフェの姿が店のエプロンから現役時の勝負服へと変わる…右足が白い。気がつけば周りは暗く、どこか原っぱのような何も無いところに俺とカフェ(?)はいた。そして、カフェ(?)はニヤニヤした顔で俺へと向けてきた。

 

「『お友だち』…いや、"サンデーサイレンス"か。久々過ぎて忘れていたよ…」

「おいおい…ひでぇな!これでも俺はお前のことも見ていたんだぜ?」

「…それで、俺に何の用?」

「いやー、お前の女癖の悪さは本当に面白い。キタサンブラックの他にあの良血坊っちゃん(イージーゴア)も食っちまうとはなぁ!」

「何が言いたい。」

「ゴアはどうでもいいが…キタサンは俺の孫だよ。まぁ、数えてたらキリがねぇくらいいるけどよぉ!」

「孫?」

「前に1人だけなら許すと言った…だが、それ以上は認めねぇ!」

「だから何の話だ!!」

「俺には1000を越える子がいる。カフェもその内の1人だ。」

「キタサンとカフェの家族は親戚とかでは無いはずだぞ!」

「さっきも言ったろ…キタサンは孫でカフェは子…お前になら1人だけなら許すと。お前…カフェに"そういう"欲求を向けたろ?」

 

怒りを向けてくるサンデーサイレンスだが…全く身に覚えが無い。ダメだ…話にならない。

 

「俺は既に7人もの女性と…そういう関係になってしまった。これ以上増やそうなんて思わないし…思ったらダメなんだ!」

「…お前には無理だ。」

「第一、カフェには子供がいた。同じ子供を持つ親として、子供の幸せを奪うことなんて絶対にしてはならない!」

「休日も忙しい親父を持つ子供は幸せか?」

「…」

「綺麗事を言おうが現実はそんなもんよ。それでもお前は家族を大切にしようとしている…立派な心がけだと思うよ、うん。だが、お前も人間だ…欲望はある。お前、何でトレーナーになった?」

「ウマ娘を活躍させるため…」

「違えだろ。お前好みに育てたウマ娘を…食うためだろ?」

「それこそ違う。俺は…」

「よし、試験を突破してトレーナーになれたぞ!なった以上は周りに覚られたら困る。いい面だけを見せないと…ちっ、人間の女はどうでもいい。離れろ…はぁ、面倒くせぇ。早くいいウマ娘、寄ってこねぇかな?……ハッハッハ!すげぇ欲望だ!」

「だから違う!適当なことを言うな!」

「ラウンドピーチ…いい女じゃねぇか!俺の子の中でも強いスペシャルウィークに最後に勝ちやがってよお!はぁ、アイツは何故俺の世界にいない!俺が食えば…最強の子供が出来たってのによぉ!」

「知らないよ!…けど、ピーチには手を出させない!」

「人の心配をしてる状況か?周りを見ろよ。」

 

俺とサンデーサイレンスの元に向かって何百ものウマ娘が歩いて迫ってきている。中にはスペシャルウィーク、ゼンノロブロイ、ネオユニヴァースなど俺の知っているウマ娘もいた。

 

「何をするつもりだ!」

「お前の大好きなウマ娘たちに……圧し潰されて死ね。」

「ぐっ…!」

 

人間である俺が迫るウマ娘たち真正面から抵抗できる術は無い。この状況で出来ることは…

 

「おりゃっ!」スポッ

「……は?お前、何して…」

「お前も脱げ!」

「なっ…やめ!くそっ、人間なのに力強っ…うわぁ!!」スポッ

 

当然の俺の行動に動きが止まるサンデーサイレンス。周りのウマ娘たちはその場でピタッと停止していた。

 

「傷だらけの身体か…だが、それもいい。」

「みるな!お前…俺は男だぞ!」

「いや…どうみてもウマ娘だろ。…このまま食ってやる。」

「本気か!?やめろ…分かった!カフェに手を出すことを許す!だから、くそ!離れ……んっ!?」

「…」

「─!」ガブッ

「…」

 

噛みついてくるか…口の中が血の味になる。こんなXXXは初めてだ。けど、そんなの関係ねぇ…これでなら俺はウマ娘相手でも戦える!何としても押しきってやる!

 

「…」れろっ

「──!?」ビクッ

「……ぷはっ。覚悟しろ…サンデーサイレンス。」

「ぐっ…や、やめ…!あぁーー!!」

 

───

 

「──はっ!?」

「…イブキさん!……良かったです。」

 

目の前には現役時よりも色々と成長したカフェ…悪夢から覚めたようだ。

 

「ここは…?」

「…私のお店です。…玄関前で倒れていたので、運びました。」

「すまない、営業の方は?」

「…臨時休業しました。」

「本当にすまない。」

「いえ、元々貴方以外のお客さんは来ませんし…それに『お友だち』がトイレに籠ってしまい…一般のお客さんが使えないので。」

「…そっか。………カフェ、1つ聞いていい?」

「どうぞ。」

「今…幸せか?」

「…はい?…何故、そのような質問を?」

 

カフェが困惑した顔を見せる…いきなり、そんなことを言われればそうなるか。宗教の勧誘っぽい感じになっちゃった。

 

「店が赤字続きのシングルマザー……どうしてもネイチャを連想してしまってな。ネイチャはかなり無理してたから…君もそうじゃないかと心配になった。」

「……幸せですよ。…自分のお店を持ち、子供も元気に成長している。…あの人からの養育費で…生活も問題はありません。」

「…あ、普通に考えればそうだよな。うん…ごめんなカフェ。勝手に踏み込もうとしていたわ。」

「…いえ、…元担当とはいえ……ここまで思ってもらえるのは嬉しいことです。」

「困ったことがあったら何でも言ってくれ。多分、大体のことは叶えれるから。」

「…では、1つお願いが。…店の奥に来てください。」

「ん?あ…あぁ、分かった。」

 

俺はそのままカフェに付いていき、店の奥へと入った。

 

───

 

今日はジャックとマロンを連れて、久々にカフェの店へと入る。何かが焼けるいい臭い…あ、今日はカフェの子供もいるようだ。

 

「いらっしゃいませ!あ、いつものおじさんだ!」

「おじ…!まぁ、そうなるが…直接聞くとショックだな…」

 

さっそく、マロンとジャックが話しかけにいく。

 

「こんにちは!わたしはマロンネイチャ!こっちはジャック兄さん!」

「外国人?」

「そうだ、うまれたのはアメリカだ、よろしくな!えーと、なまえは?」

「僕はマメスケ!…そういえば、前におじさんと芦毛のウマ娘さんがいたけど…お姉さんかな?」

「芦毛?メロン姉さん?グレープ姉さん?」

「いや、イブキとこういうところにいきたがるのはスダチだけだろ。」

「…へー、いっぱい兄弟がいるんだね。」

「お母さんは違うけどね~」

「マロン、あんまりそとでそういうこといっちゃダメ。」

「ううん、僕の家庭もそうだから。僕以外でもそういう家庭はあったんだね。でも、ママだけで見ると僕は1人っ子だよ。」

「おれもだよマメスケ。マムからはおれだけ。」

「マロンはね、ちょっと前にお姉さんになったの!」

「そうなんだ…でも、実は僕もお兄さんになるんだ!」

「おぉ!よかったなマメスケ!したのきょーだいはたいせつにしろよ!」

 

「子供ってすごいな。もう仲良くなったよ。……出来ていたんだね。」

「……えぇ、名前を……考えています。……貴方から何か……ありせまんか?」

「少し考える…とりあえずブレンドとアメリカンとアイスココア…砂糖とミルクは無しでいい。あとデザートは…例のやつを。」

「……かしこまりました。…もう一度焼くだけですのでしばらく……お待ちください。」

 

カフェはそのまま厨房へと入っていった。俺は…子供たちの様子を眺めることにしよう。

 

「おまえ、プロレスはすきか?」

「うーん、ごめんね。あんまり、そういうのは…でもゲームなら得意だよ!」

「ゲーム!マロンね、うまブラが得意だよ!マンノウォーがすごく強いの!」

「僕はセントサイモンかな…」

「おれはアリダーつかうけど…そんなにうまくはない…」ズーン

「ねぇ、マメスケ君!うちに来てやってみる?」

「いいの、やったー!家だと僕しかゲームしてなくて…寂しかったんだ!」

「他にもプロレスのリングやバスケのゴールもあるぞ!ほかのきょーだいもつれてくるいいよ!」

「う、うん!すごい家だね…」

 

笑顔を見せるマロンとジャックとカフェの息子…友達が増えるのはいいことだ。先にコーヒーが届く…ジャックは普通に飲んでいるな。マロンはお喋りに夢中で飲む気配がないが…まぁ、いいだろう。そうこうしているとカフェが大皿に乗ったデザートを持ってきた。チェリーパイだ。

 

「これ!おれのだいこーぶつ!イブキがたのんだのか!」

「す、すごい!でもお父さんのも負けてないよ!」

「おじさん、おじさん!おじさんがママに教えたんだよね!」

「…まぁ、ね。マメスケ君、さくらんぼは好きかな?」

「うん!でも、これって僕の知ってるさくらんぼじゃないような…」

「そういえばジャパンのチェリーってうすくてちいさかったなぁ。」

「アメリカのさくらんぼも種類は色々あるけど…日本だとこの"ビング"を見ることが多いかな。とっても肉厚な果肉だからジャムにしても美味しいよ。おっと、豆知識はここまでにして冷めない内にいただこうかな。」

「…どうぞ。」

 

切り分けたチェリーパイを小皿に乗せて、それぞれの前へと置くカフェ。

 

「いただきます…わぁ、美味しい!お姉ちゃん、とっても美味しいよ!」

「…ありがとうございます。…貴方のお父さんには……まだまだ及びませんが…」

「いやいやカフェ!本当に美味しいからね!」

「うまい!どうだマメスケ、アメリカのチェリーもうまいだろ!」

「…うん、すごくボリューミーで美味しい。僕以外のみんなにも食べて欲しいな。ママ、今度また作ってよ!」

「……えぇ、約束します。」

「今度はスダチとウミを連れてこようかな。」

「それより、お母さんたちは連れていかないの?」

「……そうですね。…ピーチさんの顔が……見たくなってきましたね。」

「わ、分かった…そ、そうしよう。」

「…ふふっ、いつでもお待ちしております。」

 

淡い笑みを見せるカフェ…不覚にもドキッとしてしまったのはここだけの話。なお、カフェの子供の名前は俺の提案した『カフェチェリー』に決まったらしい。

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