逃げか?差しか?その判断こそが大きな隙だ! 作:アマノジャック
「セイ!そろそろ…」
「は…はいぃぃ♡」
………
……
…
俺とセイは…一緒のベッドで横になっており、互いに心地好い疲労感に包まれていた。
「イブキさん、今日はいつもよりも激しかったですけど……何かありました?」
「ちょっと、消化不良でな…」
思い返すは天皇賞(秋)後のこと…キタサンに絞められ気絶した俺はイクイノックスにホテルへと運ばれ、目が覚めると大の字で拘束されていた。あぁ、最初に結論を言っておこう…イクイノックスと
「痛みによる気絶でなかったのが唯一の救いか…」
「今でもアタシたちの相手が出来るイブキさんが異常ですからね。最初が
「何でドラクエで例えるの?」
あの後、生殺し状態のまま手首足首の関節を外して何とか手錠から抜け出し、タクシーで気絶したイクイノックスをトレセンの美浦寮まで送り、アップルへ引き渡すと…そのまま帰宅して、晩飯の代わりにセイを食べたのだ。
「いや~、
「それだと君がスライムになるのだけど?」
「やだな~、せめてメタルスライムにしてくださいよ~」
「確かに
「逃げないからってレベルアップしすぎですよ…そのせいでピーチちゃんとしばらく2人では出来なかったでしょ?」
「うぐっ…!?」
痛いことを言う。確かに体力的にはウマ娘の方が有利なのだが…テクニックはそうもいかない。バテたピーチの隣でセイとシてて………んん!やっぱり最初が肝心だ!初回にリードを譲ってしまったセイとキタサン、オグリとネイチャは今でもそうしようとしてくる。…いや、最近のキタサンは微妙だな。お酒が入らないかぎりは俺にリードを譲ってくれるし。明日にでも…いや、イクイノックスの件を考えると…しばらくキタサンはお預けだな。
「イブキさん?他の女の子のこと考えてるでしょ?」
「…ごめんなさい。」
「もういいですー、セイちゃん1人でお風呂入って寝ますー。」
「待ってくれセイ!もっとシたい!」
「じゃあ…次は久々にコッチで♡さっき、ほぐしておきました♡」くいっ
「──!?」ムクっ
「ニャハハ…そっちも準備万端ですね♡」
俺のアレは後10年くらい現役でいれそうだな…♡
───
「…ごめんなさい。」
週明け…トレーナー室の扉が開く。それと同時に頭を下げたイクイノックスの謝罪が聞こえてきた。
「…」
「…」
沈黙がその場を支配する…俺から何か返事を言うべきなのだろうけど…言えることは無い。
「…」ガクガクッ
「…」
不安により自身の勝負服よりも顔を青くして身体を震わせるイクイノックス、それを無言で見る俺………はぁ。
「イクイノックス、30分後に私服に着替えて校門前に来て。カフェの店で君の話を全部聞くから。」
「…はい。」
もう…意地になるのは止めだ。
………
翌日、満面の笑顔のイクイノックスがトレーナー室へと入ってきた。
「こんにちはトレーナーさん!今日もよろしくお願いします!」
「うん…それにしても寒くなってきたね。風邪とかは大丈夫?」
「はい!それよりもトレーニングがしたいです!あと……うまぴょいも♡」
「はい、減点。」
「あっ!?待ってください!嘘です!いや、嘘では無いのですけど…」
「減点追加、と。」
「あぁ!?」
契約解除の発言は撤回した。正確には…月毎に減点していき、それが一定以下になったら解約だと言うことで話をまとめたのだ。問題無ければ、月始めに何かご褒美を用意することも約束した。卒業までそれが続けば………今それを考えるのは止めよう。
「きょ…今日のトレーニングは?」
「今日は器具を使った筋トレ…負荷は前より1ランク下げるつもり。」
「下げる、ですか?」
「うん…アスリートとしての君の成長はもう止まっている。あとはどれだけ落ちるのを緩和させるかの話になってくる。ドリームに入ったけどトゥインクル並のトレーニングで身体を壊したウマ娘も少なくないからね。」
「…」
「心配かな?大丈夫…俺はドリームも指導してきことあるから…現に前のレースで勝ったし。」
「衰えがまだ無かったからでしょ…」
「それでも君がトップレベルに強いことのには違いないから大丈夫だよ。冬のレースでまた勝てるさ!」
「ですよね……はい!よろしくお願いします!」
笑顔を見せるイクイノックス♤いや、赤いから若干薄目だね♢はぁ、そんなに見つめられると……興奮しちゃうじゃないか♡………ん!?何故か某狩漫画の奇術師が出てきたぞ。
───
俺はいつもの病院で…ピーチの出産を見届けていた。今回もゴールドシップが担当なので心配する必要は無いのだが………予定よりも早くなったため非常に不安である。
「おぎゃあぁぁ!」
「よしよし…元気な男の子だな!」
「ピーチ、身体は大丈夫?」
「問題…ないわよ…」
「おいコラァ!ゴルシちゃんが担当してるんだぞ!100%問題ねぇに決まってんだろ!」
「ゴルシ…ありがと…」
「ありがとう…本当にありがとう!」
「いい大人が子供の前で泣くなよ…ほら、赤ん坊洗ってくるからいつもの所で待ってろ!」
ドラ、リク……弟が出来たよ。早産だったけど…ちゃんと無事に生まれてきてくれたよ。
「父よ、私もリクもここにいるぞ?」
「ドラ姉、空気読もう。」
………
「母も赤ん坊も無事だった。」
「あぁ。今は2人とも眠ってる。今夜は俺がそばにいる予定…」
「まっ…一安心だな。ったく、この年で母さんからの弟が出来るとは思いもしなかったけど。」
「…」
「婆ちゃんがもうすぐ着くってさ。あ、母さんと親父、両方のな。今回の名前はどんなのだ?」
「"トウキチ"と付けようと思っている。ピーチには特に言われなかったけど…ドラとリクは何かある?」
「"ダイチ"だ!俺と似た名前がいいと思ってな…まぁ、親父が付けた名前の方がいいと思うわ。」
「私も父の付けた名で良いと思う。」
「それじゃ、"トウキチ"にしようか。」
ガチャっ!
「お待たせ!」
「まだ生まれてないわよね?」
赤ちゃんの名前が決まると同時に入ってくる俺のお袋とピーチの母『ストームシード』さん。
「もう生まれた。父は泣いていたぞ。」
「ドラ、要らんことは言わんでいい…」
「ふふ、お優しいのねイブキさん。でも、今回も立ち合えずか。」
「ここまで遠いからねえ。とはいえ、その様子だと無事に生まれたのかしら?」
「最高の助産師がいたから当然だよ。」
「良かった良かった。それで名前は決まっているのかしら?私から"ハードパパイヤ"と言う名前を…」
「お袋、生まれたのはウマ娘じゃなくて男の子だ。だから…ピーチから桃を取って"トウキチ"って名前にしようと思ってる。」
「あっ…いいんじゃないの。ねぇ、シードさん?」
「えぇ、イブキさんの考えた素敵な名前だと思いますわ。ふふっ…それにしてもリク君…大きくなったわね。」
「シード婆ちゃん、それ前にも聞いたぞ?」
「彼女は出来た?」
「4人から5人になった。」
「モテモテね…ちゃんと全員を幸せにするのよ?」
「分かってるよ~」
シードさんはリクの頭を撫でる…リクはそのまま受け入れた。
「ドラちゃん、トレーナーの仕事はどう?この前の菊花賞のインタビューみたけど…担当の子とは上手くいってそうね。」
「険悪では無いが…あの時は母の代打をしただけだ。ほぼ母が指導してた子をレース場に連れていっただけで…」
「卑屈にならないの。あなたは立派な中央のトレーナーなんだから!」
「し…しかし、私は何度も試験に落ちて…」
「そんな人いっぱいいるわよ!夢が叶っているのでしょ?楽しみなさいな!」
「うぅ…婆…」
「それで、男の人との出会いはどう?」
「そんな物は無い。」
一方でお袋はドラと話をしていた。何だかんだでドラはいつもよりリラックスしているように見える。
「あー、お袋。今年も忙しくて年末と元旦はそっちに行けそうに無い…悪いな。」
「いいのよ。時々、こうしてアンタらの顔が見れれば十分…しっかし、アンタからいつも色んな女の臭いがするねぇ。不倫とかしてんじゃないでしょうね?」
「ウマ娘を担当してるから当然だって。もし、本当にしてるならとっくにトレーナーをクビになってるよ。」
「「…」」
ドラとリクの冷たい目線が刺さる…お願い!明日にでも好きなデザート作るからお袋には何も言わないで!!
「イブキさん、またピーチちゃんと時間が出来た時に何時でもおいで。ウチは家族が多いからなかなか来れなくても寂しく無いから。」
「シードさん…ありがとうございます。」
今さらだが…ピーチは実は18人いる姉妹の長女だったりする。だから、ピーチの実家に行くと義妹(+何人かの旦那)たちに囲まれ…デザートをせがまれる。また、レースが好きで走りを見てほしいと言われたこともあったな。マンゴスチンちゃんとライムちゃんが重賞を勝ち取ってくれた時は泣いた。
「さて…それじゃあ、今夜はシードさんと一緒にアンタの所に泊めてもらうわ。」
「………は?」
俺の家に泊める?いや…待って!?今までそんなことしてこなかったのに何で?
「あ!えーと、その…今は…お客さんがいっぱい泊まってて…」
「まぁまぁ、そうでしたか。」
「いや、2人くらい増えてもいいでしょ?」
何もよくないのだけど!?
「えーと、その…火事で焼けちゃって…」
「お客さんがいるのに?イブキ…アンタねぇ…そんな誰でも分かる嘘をつくんじゃないよ!」
「違っ…その…」
「父よ…」
「親父…」
「「見苦しい。」」
ゲシッゲシッ!
「痛っ…!」
ドラとリクが同時に俺の尻を蹴ってきた。普通に痛い。2つに割れそう…
「婆ちゃん、行こうぜ!」
「タクシーは手配した。」
「ちょっ!リク?ドラ?」
悶える俺を無視して病院から去ろうとする4人…待て待て待………え?何か身体が羽交い締めされてたのだけど!?
「イブキ…お前よぉ…ピーチを残して帰ろうとしてんじゃねぇよ!」ガシッ
「は…離せゴールドシップ!このままでは俺の20年隠し続けたの苦労が…」
「それ以上のメリットがあると言ったら?」
「メリット?何の話だ?」
…いや。ゴールドシップのことだ。何か意味があるのかもしれないし、無いのかもしれない。とりあえず、話を聞こう…決して背中から伝わる温かく柔らかい感触を楽しんでいるわけではない。…ん?それにしてもこの感触はおかしい気が…すごくすごいフワフワで…
「…ゴールドシップ、今の君ってノーブ…」
「デビルゴルシちゃんと相乗りする勇気はあるか?」
「…」
もう、どうにでもなれ。最初が肝心だったよな…
………
……
…
ストームシードについて
欧字表記:Storm Seed
品種:サラブレッド
性別:牝
毛色:芦毛
生誕:1990年3月30日
死没:???
父:ストームキャット
母:ホワイトシード
母父:スペクタキュラービッド
生国:米国
競走成績
未出走
繁殖成績
・ストームシードの1995
名前:ラウンドピーチ(牝)
父:イージーゴア
成績:13戦9勝(有馬記念などG1を6勝)
→繁殖牝馬(G1産駒にユーズトップガン(父:マヤノトップガン)、メロンスカイ(父:セイウンスカイ)、キングマンゴー(父:キングヘイロー)、グレープスカイ(父:セイウンスカイ)、スペシャルオレンジ(父:スペシャルウィーク)、その他重賞産駒が3頭)
→2015年死亡
・ストームシードの1996
名前:エンペラーデーツ(牡)
父:シンボリルドルフ
成績:40戦3勝→登録抹消
・ストームシードの1997
名前:???(牡)
父:シンボリルドルフ
成績:セレクトセールで落札されたが、未出走のまま行方不明
・ストームシードの1998
名前:カシスブライアン(牝)
父:ナリタブライアン
成績:15戦2勝→繁殖牝馬
・ストームシードの1999
名前:スイカブライアン(牡)
父:ナリタブライアン
成績:3戦2勝(朝日杯FSにて3着)→現役中に死亡
・ストームシードの2000
父:ビワハヤヒデ
成績:不受胎
・ストームシードの2001
名前:メジロライチ(牝)
父:メジロマックイーン
成績:8戦0勝→繁殖牝馬
・ストームシードの2002
名前:ラックドリアン(牡)
父:マチカネフクキタル
成績:27戦3勝→登録抹消
・ストームシードの2003
名前:レモンサンデー(牡)
父:サンデーサイレンス
成績:10戦0勝→登録抹消
・ストームシードの2004
名前:エアマンゴスチン(牝)
父:エアシャカール
成績:12戦4勝(中山牝馬Sを勝利)
→繁殖牝馬(エアジョーカー(高松宮記念を勝利、父:キングマンゴー))
・ストームシードの2005
名前:ダークライム(牡)
父:ダンスインザダーク(福島記念を勝利、天皇賞(秋)で5着)
成績:13戦6勝→乗馬
・ストームシードの2006
名前:カボスロード(牡)
父:ナリタトップロード
成績:28戦3勝→乗馬
・ストームシードの2007
名前:ミラクルゴレンシ(セ)
父:ヒシミラクル
成績:69戦8勝(大井での移籍分も含む)→現役中に死亡
・ストームシードの2008
名前:カルフォニアフィグ(牝)
父:マンハッタンカフェ
成績:2戦0勝→米国に繁殖牝馬として輸出
・ストームシードの2009
名前:グレープインパクト(牡)
父:ディープインパクト
成績:11戦0勝→登録抹消
・ストームシードの2010
父:ディープインパクト
成績:不受胎
・ストームシードの2011
名前:パパイヤインパクト(セ)
父:ディープインパクト
成績:33戦3勝→乗馬
・ストームシードの2012
名前:アップルインパクト(牡)
父:ディープインパクト
成績:24戦2勝→プライベート種牡馬
・ストームシードの2013
父:ディープインパクト
成績:不受胎
・ストームシードの2014
名前:???(牝)
父:ディープインパクト
成績:未出走→米国に繁殖牝馬として輸出
・ストームシードの2015
名前:スモモノカンムリ(牝)
父:オルフェーヴル
成績:1戦0勝→繁殖牝馬
概要
キーンランドのセールにてイージーゴアの仔を受胎した状態で出品されており、後のラウンドピーチの馬主が120万ドルで購入し、日本に輸入された。
非常に大人しく、馬にも人間にも猫にも穏和に接し、全く手のかからない生活を送っていた。そして、ラウンドピーチを出産後も繁殖牝馬の役割を全うし、離される娘を最後まで見届けた。
その後、3冠馬や菊花賞馬を中心に交配させたもののラウンドピーチ以降目立った産駒は無く、繁殖引退を考えた矢先にエアマンゴスチンが重賞を勝利。また、ダークライムも重賞を勝利したことで産める間は繁殖牝馬を続けることになり…計18頭も産駒を出産。
高齢のため、スモモノカンムリの出産を最後に繁殖牝馬を引退…功労馬として現在ものんびりと余生を過ごしている。