逃げか?差しか?その判断こそが大きな隙だ! 作:アマノジャック
「イ…イブキちゃん…これ…多分来た…」
「分かった。ゴールドシップ、聞こえるか?すぐに来てくれ!」
「う、うぅ…!」
「マヤノ…大丈夫だ。俺がいる!」
………
「おぎゃあぁぁ!!」
「…ふぅ。元気のいいウマ娘の赤ん坊だな…洗ってくるから、いつもの所で待ってな。」
「マヤノ!大丈夫か?」
「はぁ…はぁ…も、もう…終わったの?」
「あぁ…そして、これから母としての君が始まるんだよ。」
「そっか…えへへへ。マヤ…ママになったんだ…」
「マヤノ、みんなにも伝えようか。」
「…うん!」
───
年が明け…マヤノが無事に子供を出産した。名前は『プラムトップガン』…栗毛のウマ娘だ。現在、病室にはネイチャとテイオー、マロンが来ており、マヤノを労っている。特にマロンはプラムを抱っこして新たな妹の誕生を喜んでいた。
「それで、何で君がプラムを連れてきたのかな…イクイノックス?」
俺の元担当ウマ娘のイクイノックスは再びゴールドシップへと化けていた。前回はそんなこと気にも止めていなかったが…身長が違うから普通に分かる。
「アハハ…バレちゃいましたか。まぁ、本物のゴルシさんは急患の対応に当たっていましてね…」
「君の卒業後の就職先はここになった、でいいのかな?」
「いえいえ~、キタサンブラックさんと同じURAですよ。部署はどうなるか分かりませんけど。」
「君なら何でも出来るだろうからね…」
「褒めてもこれ以上あなたにプレゼント出来るのは……赤ちゃんがありましたね。というか、何でこの前ので出来てないのですか?」
「俺に言われても…」
俺とイクイノックスはドリームトロフィーでのラストラン後に…ホテルでうまぴょいをした。しかし、イクイノックスの1ヶ月溜まった欲求を発散しただけで、子供は出来なかったようだ。
「ゴルシ~、今度はボクも見てくれる?」
「分かってる分かってる。でもでも…今年は怪しいぞ~?」
ゴールドシップの振りをしながらテイオーを相手するイクイノックス。…分かってないと本当にゴールドシップに見えるなコイツ。
「何で…はっ!?もしかして、またドイツかアメリカに研修で行く予定が…」
「違ぇよ!…コイツとの子供を生む予定だからな…ゴルシちゃん以上に可愛い子になっても嫉妬するなよ~?」
「しないよ!?サブトレーナー…マヤノとの赤ちゃんは勿論だけど、ピーチやネイチャ、キタちゃんの赤ちゃんもいること、忘れてないよね?」じー
「分かってるから…」
「…なら、そんな話にはならないよね?」じー
「一切してなかったからな!イク……ゴールドシップがスケベなだけだからな?」
「誰がスケベなウマ娘だコラっ!」
本物のゴールドシップが来たのだけど!?と、とりあえず…知らない振りをしないと!
「あ、あれれ~?ゴールドシップが2人~?」
「ゴルシが増えた!?どっちが偽者!?」
「どう見てもこっちが偽者だろうが!明らかにゴルシちゃんよりも小さいだろう…がっ!!」ぐいっ
「きゃっ!?」スポッ
イクイノックスのウィッグと変装メイクが剥がされ…素顔が晒される。…本当にイクイノックスって可愛い顔だよね。
「イ…イクイノックス~!?」
「オメーもオメーで下手な芝居はいい。最初から気付いてんだろ?」
「い、いや…流石に分からないって…」
「…今、本当のことを言ってくれたら…今度ゴルシちゃんがお風呂で全身ご奉仕してあげちゃうぞ♡」
「本当は最初から気付いていました!」
「素直だな、このムッツリクソチョロ◯男♡」
「トレーナーさん!?」
すまないイクイノックス…これに抗うのは男して無理だ。
「ったく、勝手に赤ん坊を連れていくなよな…今、どこだ?」
「マロンが抱っこして…あ!」
「「Zzz…」」
マロンはマヤノのベッドのすぐ隣で眠っており…プラムもマロンの腕の中で眠っていた。そのまま、イクイノックスが2人を抱っこして…ゴールドシップへと渡す。
「へー、もう赤ん坊の抱っこの仕方を分かってるとは…」
「前にシドウが生まれた時にちょっとな…」
「おうおう♪いい感じに撮れてるじゃねぇか♪」
スマホから見せたシドウとマロンの写真に笑顔になるゴールドシップ…本当に子供が好きなようだ。ゴールドシップはプラムだけを抱き上げると…そのまま戻っていった。
「あれー?プラムちゃん、帰っちゃったの?」
「確認することがまだあったんだって…」
「てゆーか、何でイクイノックスがここにいるの?」
「え?ネイチャちゃん、気付いてなかったの?さっきのゴルシちゃんはノックスちゃんだったよ?」
「えぇ!?アタシだけ気付いてなかった感じ!?」
「いや、ボクも気付いてなかったけど…サブトレーナーはともかく、マヤノは気付いてたんだ。」
「気付かれていたのですね…」
マヤノの観察力に全員が丸くする…ちなみに俺もマヤノが気付いているとは思っていなかった。
「まっ…マヤノは天才だからな。」ポンッ
「もう、イブキちゃん!マヤを子供扱いしないでよ…ママになったばっかりなのに…」
「ママとしてはテイオーやネイチャと比べると子供だよ。…だから、遠慮なく頼ってくれよ?」
「本来ならサブトレーナーが一番頼られる立場だからね?何人もの女の子を侍らせてさ…」じー
「…アタシはイブキ家の立場的には新米になるし…先輩面させてもらうとしますか。」
「ネイチャちゃん、家族としてその発言はどうかと思うよ?…マヤとしては1人じゃないのがすっごく嬉しいのだけど…」
…あ、可愛い。
「とりあえず、退院後には家に来てもらうよ。君の部屋も準備してある。」
「…何でネイチャとかオグリが増えたのに、まだ部屋の余りがあるの?」
「……うん。不動産に言われるがままに…もの凄く大きな家を買っちゃって…俺とピーチとセイとキタサンの家族を呼ぶ、とか学生の貸部屋にしよう、とか考えたのだけど有耶無耶になり…ただ余らせるだけの結果になったんだ。それで年一くらいに専用の業者を呼んで掃除してもらってた。」
「あのー、私の部屋は?」
イクイノックス…忘れてた訳じゃないのだけど…
「君は俺のベッドの下で十分だろ?」
「そうですけど…」
「「「肯定した!?」」」
「流石に冗談だよ。場所は決めてあるけど…卒業までは必要ないでしょ?」
「それは…はい。」
納得してくれたならヨシ。
「それじゃあ、アタシとテイオーはそろそろ帰るわ…マヤノも初めての出産で疲れてるだろうし…」
「イクイノックス、君も美浦寮に…」
「ごめんなさい、少しだけマヤノさんと2人でお話させてもらえませんか?」
「…分かった。部屋の外で待ってるから…マロン、ママがそろそろ帰ろって。」
「……はっ!?赤ちゃんは!?」ぱちっ
「また、今度ね。」
「うぅ…はーい…」
ネイチャ、マロン、テイオー、俺とが部屋を後にする。そのまま3人を見送り…イクイノックスが部屋を出るのを待つ。そして、顔を赤くしたイクイノックスが逃げるように出ていったので入れ替わるように部屋へと入ったのだ。中には楽しそうな顔のマヤノがいた。
「マヤノ、どんな話をしてたのかな?」
「秘密~♡」
どこか子供の面影を思い出す顔のマヤノ…まぁ、深くは聞かない方がいいのだろう。
「あー、マヤノ。あんまり、プラムの顔を見れなかったから…歩けるようになったら一緒にじっくり見に行こうな。」
「…うん!」
その日、母になったマヤノは最高の笑顔を俺に見せてくれた。