逃げか?差しか?その判断こそが大きな隙だ! 作:アマノジャック
やりました!クロワデュノール!!
「…あれ?動けな……いっ!?」ぎちっ
「やっと起きたわね。」
自宅にいた筈の私だが…今はイブキさんの家で縛られていた。より正確にいうと椅子に座らされた状態で、目の前にいるピーチちゃんに包丁を向けられている。いつものツンとした睨みではなく…今にも私を殺しそうな…本気の目である。
「ピ…ピーチちゃん…」
「とりあえず、私の質問に答えてくれる…イブキはどこ?」
「イ…イブキさん?き…昨日、飲み会に行ってたことは知ってるけど…」
「…」さっ
ピーチちゃんが取り出しのは酔ったイブキさんと肩を組んで、ホテルへと入る私の姿。それを認識した直後に写真の裏から包丁が刺され、私の写った部分に穴が空く。
「イブキはどこ?」
「…はぁっ、はぁっ……はぁ…!」
さっきよりもドスの効いた冷たい声が響く。私は声が出ず…息が乱れ、冷や汗が身体中から溢れ、下から別のものが漏れていた。いつもの威圧ではなく、凍えるよう感覚…ここまでの殺気を向けられるのは生まれて初めてだ。ピーチちゃんはさらに私へと詰め寄り…乱暴に頭を掴み、包丁を目の前へと突きつけてきた。
「イブキはどこ?」
「し…知ら…ない。お…起きたら…逃げ…られ…て…」
「…そう。」
何とか声を絞り出す。ピーチちゃんは私から離れ…包丁を台所へとしまった。…何がどうなっているのだろう?
「ピーチちゃん、その……え?」
「…」
状況を聞こうとする私だったが言葉が詰まる…その場でピーチちゃんがポロポロと泣き出したからだ。
「イブキが行方不明になったの………あんたのせいでね!!」
───
あの後、私は昨日のことを話した後に解放され…家へと帰っている途中だ。ピーチちゃんの状態から流石にホテルでのことまでは話していない。
ポケットには財布やスマホはあったものの…下着とズボンが濡れているため電車やタクシーを使うに使えず、家までこそこそと歩いて帰っている。ピーチちゃんへの罪悪感はもちろんある…けれど覚悟の上で一線を越えたんだ。直接包丁で刺されなかっただけまだ………電話だ。イブキさんが見つかったのだろうか?
「…はい、もしもし。」
『セイちゃん無事!?』
「アイリちゃん…?」
『今、貴女の家にいるの!昨日の話聞こうと思って来てみたら、玄関が破壊されてて、部屋も荒らされていたの!警察呼ぶ?』
おそらくピーチちゃんだろう。しかし、アイリちゃんには何と言うべきだろうか?
「あー、今帰ってる途中で…」
『場所を教えて!すぐに車で拾いにいくわ!』
とりあえず…
「部屋からパンツとズボン…持ってきてくれない?」
誰かに見つかる前に着替えておきたい。その後、近くの公園で無事にアイリちゃんと合流し…今までのことを全て話した。アイリちゃんは真っ青な顔をして謝ってきたけど…私は気にしていない。寧ろ、感謝しているけど…今はイブキさんを探さないと。とりあえず、カレンにお願いしてみよう。
───
何だか身体がダルいので病院へと足を運ぶ…
「おめでとうございます、一ヶ月ですね。」
「…はい?」
内科から産婦人科へと案内され…イブキさんとの間に子供が出来ていたことが分かった。どうやら、あの日は私のXX日だったらしい。
………
「…ということになりました。」
「嘘…ここまでのことになるなんて…あぁ、本当にどうしよう…どうしよう…」
「おめでとうございますスカイさん♪それじゃあ、早くイブキさんを見つけないといけませんね♪……これでカレンも早くお兄ちゃんとの子供を…ふふっ♡」
アイリちゃんとカレンにだけ妊娠のことを話すと、青い顔でガタガタと震えたアイリちゃんに対してカレンは笑顔で祝福してくれた。…また、カレンは私の家へと来てイブキさんを捜索する配信を始めてくれた。集まってくる情報は私とホテルに入ったことばっかりだったけど…担当トレーナーだったから介抱してただけだろうとカレンはフォローしてくれ……あれ?XX線のXX駅で見た?ここって何年も前に利用者がいなくなって無人駅になった……まさか!?
「どこに行く気ですかスカイさん?」
「イブキさんの所!どこか分かったかもしれない!」
「では場所だけ教えてください…今のスカイさんにどこか行かれては困りますので。」
「カレンお願い!時間が無いんだって!」
「ダメなものはダメ!…カレンとここで待ってるのと、ピーチさんと会って地獄絵図になるの、どっちがいいか考えなくても分かるよね?」
「…たとえピーチちゃんに殺されても…私はイブキさんを探しだすんだ!!」
「…スカイさん、カレンと『お話』しよっか♪」
後でアイリちゃんから聞いたけど、私はずっと『カワイイカレンチャン』を連呼し続けていたとのこと。私が正気に戻った時にはもう…イブキさんはブラックちゃんにより保護されていた。
………
ピーチちゃんに呼び出され、イブキさんの家へと行く…イブキさんは入院しているため、今はいない。チャイムを鳴らすとピーチちゃんが扉を開けて…無言のまま、手招きをしてきた。
「…」ことっ
「…ありがとう。」
案内されるがままにダイニングへと座ると、お茶を渡され1口飲む…お湯の味だった。
「…」
「…」
いつもみたいに睨むわけでも、この前みたいに殺気のあるものでもない。ただ、私をじっと見つめていた。そして、口が開く。
「あの…その……ごめんなさい!!」
「…ん?」
聞こえてきたのはまさかの謝罪。…いや、包丁向けられた原因はそもそも私が悪い訳で…
「あの時の私…本当に混乱していたの。理事長からはイブキを最後に会った時に焼きそばのハガキを渡された、とか言われてさ…その後からずっと来ないなんて思わなかったの。それで色々と調べてたらあんたとイブキがホテルに入ってた情報を掴んで…それでイブキが浮気してそのままあんたと駆け落ちしたと思ったの。それで感情が爆発してセイちゃんに酷いことを…」
「ピーチちゃん…」
「セイちゃんは普通に酔ったイブキを介抱してくれただけでしょ?けどイブキがセイちゃんの説明を聞かず罪悪感で逃げた…って所でしょ?それなのに私…」
「…」
ピーチちゃんの純真さが胸に刺さる。普段はあんなに私を警戒してるのに…何で今回はここまで信頼してるの?色々と大丈夫?
「その…ピーチちゃん?非常に言いにくいことなんだけど…」
その後、波乱な展開になったことは言うまでもない。
………
さらに後日、ピーチちゃんに呼び出されるとそこには退院したイブキさんと……何故かブラックちゃんの姿もあった。2人は既に正座をしており、私も無言で正座をする。イブキさん、私、ブラックちゃんの順でピーチちゃんへ今までのことを説明した。……え?イブキさん、ブラックちゃんとも関係持っちゃったの!?
「ふーん、それが私のいなかった間に起きたことなんだ?」
『その通りです…』
「まぁ、セイちゃんはいつかするって思ってたよ。…引退したら本当にメロンになってるし。」
…確かに我ながら凄く大きくなったな…イブキさんもチラチラと見てくるし…いや、それはピザを食べた後に襲った日からずっとか。
「にゃはは…アイリちゃんにチャンスだって言われたからね。」
「笑うな。」ゴゴゴ
「はい…」
…とりあえず、ピーチちゃんから目をそらし、口を閉じる。
「しかし、キタちゃんは意外だったな…」
「すみません…でも好きなものは好きですので!」
「でもダメなものはダメでしょ?」
「はい…」
…やっぱり、ブラックちゃんもイブキさんのこと…好きだったんだ。もう体つきからして負けて…いや、胸はまだ勝ってるはず…うん。テレビみてて何となく察してはいたけど…本当に凄く成長したよねブラックちゃん。成長痛とか大丈夫だったのかな?
「イブキ、あんたもあんたよ。何で私に何も言ってくれなかっての?私、ヤンデレかもしれないけどメンヘラではないわよ。」
「違いがよく分かりません…」
イブキさん
「とにかく…私は別にあんたが隠さなければいいの。浮気しようが真面目なあんたが他の女に取られるなんて思ってないし。」
『むぅ!』
あの時は凄く私を求めて来てたし!いくらピーチちゃんといえど、それは聞き捨てならな……い?
「よし!今からやるか!」ゴゴゴ
ちょっとピーチちゃん!?私とブラックちゃんを縛って何を…んぐっ!?何か口に嵌められたんだけど!?声が出せな……あぁ!?私とブラックちゃんへ見せつけるようにイブキさんとヤり始めた!…覚えてろ…絶対に寝○って私だけの物にしてやるんだから!!
………
かくして私は…イブキさんの家へと住むことが決まりました。ピーチちゃんはもう少しだけ実習があるので…イブキさんとは暫く2人きり…
「それでアイってば将棋で私に勝つまで帰らないとか言ってきてさ…いい子なんだけど勝つために限界以上を追い込んできてね…とりあえず、三手詰の課題をクリアするまで勝負はお預けって話にしたわ。」
「スカーレットみたいに真面目な子なんだね。」
「私のG1勝利数を超えたいって…ジャパンで最多勝利のオペラオーちゃんたちを超えるつもりかしらね。」
「目標は大きいほどいいだろう?」
「それはそうだけど…」
訂正、ゴアさんが結構遅くまでいる。彼女はイブキさんにそういう感情は無いみたいだけど…それはそれでおかしく気も。ま、まぁ…チャンスを待つとしよう。
「それじゃあ、私はここで帰るね…ジェラシーましましのチーターちゃんもいるようだし。」
「あ、あははは…」
「チーター?」
「グッナイト、イブキ。今日は眠れるといいわね。」
「お、おう?」
気を使わせてしまったな…とはいえチャンスだ!
「さてセイ…俺らもそろそろ寝…」
「…」ぷちっ
「せ…、セイ?」
「一緒に寝ませんか?」ぷちっ
「…」
パジャマのボタンを外して…自慢の胸へと視線を誘導する。
「…ずっと1人で寂しかったですよね?」ぷちっ
「…」
「…今なら気持ちのいいサービスも付けちゃいますよ?」ぷちっ
「…」
無言のまま、私の身体を見つめるイブキさん…もう少しか。これで最後…
「待ってセイ!」
イブキさんに言われ、手が止まる。最後のボタンはおへその下にあるので、首からそこまで露出した肌がバッチリと見えているだろう。
「…どうしました?」
「ずっと言いたかったことがある!セイ…前に君は俺に自分のことをどう思ってるか聞いたことがあったよね?」
「…えぇ、その返答が気に入らなくて…無理やり分からせた訳ですが♡あの日からずっと私にメロメロでしたよね~♡」
「…。コホン、あの時はそういう目では見ていないと言ったけど実は…無防備に寝る君を何度もみてて…意識してたんだ。パンツ見えてたし。」
「チョロいですね。」
「…そうだね。でも1番はピーチだ。それだけは絶対に変わることはない…セイ、君はそれでもいい?」
「はい、大好きな貴方とずっと一緒にいられるのであれば…」
「…ありがとうセイ、俺も君のことが大好きだ。」
最後のボタンはイブキさんにより外された。彼からキスをされたのは…初めてだった。