逃げか?差しか?その判断こそが大きな隙だ! 作:アマノジャック
うん。完走はしましたね…うん。
「さーて、ソラ君…着いたよ。」
「…?」こてんっ
「ここはどこかって?ここはね…中山レース場だよ。」
「なー?」
「うん。なー、だよ。」
「…ぱっ!ぱー!」
「ちゃんとパパもいるよ~………頑張れブラックちゃん。」
私はソラ君を連れて、中山レース場へと来ていた。その理由は…
『先頭はキタサンブラック、早めに仕掛けてきた!
これに対して後続のウマ娘たちはどう動くのか!』
「いけっ!キタサンブラック!」
「またトゥインクルでの引き際を見せてくれっ!!」
「──っ!?」ダッ
ドリームトロフィーにおけるブラックちゃんのラストランを見るためである。
「頑張れー!!」
「ところで…カレンは誰の応援を?」
「オルフェさんです♪プリンスちゃん、最後まで一緒に応援しようね~♪」
「おー!」
隣には葦毛のウマ娘の赤ちゃんを連れたカレンもいた。レースはいよいよクライマックス。
『先頭はキタサンブラック。
しかし、キングマンゴーが2番手から虎視眈々と前を狙ってる!
後方からオルフェーヴルが仕掛けてきたか、大外から捲り始めてきた!』
「アタシは…アタシは…勝つんだ!!」
「いけー!キタサンーッ!!」
「いけるよキタちゃーーん!!」
「イブキさん、ピーチさん…はあぁぁぁ!!」ドンッ
『キタサンブラック、ここでさらに仕掛けた!!
3番手以降を大きく離す!
2番手のキングマンゴーだけが食らいつく!
先頭はキタサンブラック!
キングマンゴーも外から並びにかかる!
キングマンゴー速い!
キタサンブラックとキングマンゴーが完全に並んだ!
キタサンブラック粘るが…キングマンゴーが差しきってゴールイン!
1着キングマンゴー、2着キタサンブラック!
3着に今、オルフェーヴルが入ります…素晴らしいレースでした!
キングマンゴー、今年のドリームトロフィーウインターカップのマイル、中距離、長距離部門、全て総取りです!!』
「はぁ…はぁ…はぁ……う、ううう…うわぁぁぁ!!」
ブラックちゃんの泣き声がターフへと響いた。
「キタさん、惜しかったですね…」
「最後のレースだけあってかなり身体を仕上げて来たのだけど…勝った娘が強かったね。」
「"キングマンゴー"…ドリームトロフィー無敗のウマ娘か…カナロアもマイル部門で負けて悔しそうにしてたな~。まぁ、スプリンターだから無理にマイルに来てまで挑まなくてもとは思ったけど。」
「マイル以上は全て適性距離だとか聞いた……正直、私も一緒に走りたくないよ。」
「でもでも~、プリンスちゃんとスカイさんの次の赤ちゃんが挑んでくれるかもしれないですよ~♪」
「…そこまで走ってくれてるかな?と言うか次も男の子かもしれないし。」
「んー、これはカレンの勘だけど…スカイさんの次の子はウマ娘だと思うな~♡ね、プリンスちゃん?」
「ねー!」
カレンの連れている娘の名前は『カレンプリンス』…『カレンモエ』か『カレンプリンス』の選択の末、後者を選んだとのこと。カレンモエは次に生まれたウマ娘に付ける予定らしい。そんなカレンプリンスちゃんはというと、何かもう雰囲気とかがカレンにそっくりだ。私は自分のお腹へと軽く手を当てる…次はウマ娘かもしれない、か。
「…」
「…まー?」こてんっ
「ふふ…ソラ君はもうお兄ちゃんになるんだな-って。」
「…?」こてんっ
「楽しみにしててね。」
可愛く首をかしげるソラ君の頭を撫でる。
「スカイさんはもう2人目か…いいないいな。カレンもお兄ちゃんともっと頑張らないと~」
「…夫をお兄ちゃんって呼ぶのはどうかと思うな。」
「いいんです。あの人は…それでカレンに興奮してくれますから。」
「いや、そんな理由!?」
「さて、楽しいお喋りタイムはここまで!キタさんの最後のウイニングライブ…見に行きましょうか♪」
「かー!」
「そうしますか~。」
「かー!」
「「かー!」」
小さな手を向け合う2人…めちゃくちゃ可愛い。
「プリンスちゃんとソラ君、息ぴったりですね!もしかしたら…将来結婚したりして。」
「えー、流石にそれは気が早すぎるって…」
…まぁ、私とイブキさんを反面教師にして不倫しない大人にはなって欲しいかな。
その後、ウイニングライブを見届け…ブラックちゃんはファンに惜しまれながらレースから引退した。
───
「キタサンブラックです!イブキさん、ピーチさん、スカイさん……改めてよろしくお願いします。」
ブラックちゃんの引退によりイブキさんのチームメンバーが全員学園を卒業し……今日からブラックちゃんもこの家で暮らすこととなった。
「えーと、まずは何をしましょうか?」
「君の荷物の整理と、トイレとかお風呂とか部屋の案内かな…空室含めて部屋が物凄くあるしね。俺が依頼した結果だけど…」
「…あんただけのせいじゃないわ。あの場で私も賛成してたしね…」
「は、はぁ…?」
「とりあえず、トイレとリビングと俺の部屋は教えておこう。次に君が使う部屋に案内して荷物の整理かな。」
「はい!」
「…ごめんねキタサン。来たばっかりなのに…1人で過ごしてもらうことになって…」
「いえいえ!仕事である以上はしかたのないことですよ!」
チームメンバー全員が卒業したためイブキさんはしばらくアメリカへと転勤することとなる。何でもチームから数多くG1ウマ娘を出したためアメリカ版URAの偉い人が直々に引き抜きを行ってきたのだが1人では決めれず…理事長が『海外プロジェクト』の名目で数年間行くと話を纏めたのだとか。もちろん、私とピーチちゃん、ブラックちゃんと全員が付いていくつもりだった。ただ、無職の私と育休中のピーチちゃんはともかく…ブラックちゃんはURAに就職したため日本で留守番することになった。
「私だけでも残って良かったのだけど…」
「セイちゃん無しだとイブキも私も生きていけないから…」
「ピーチ、大袈裟……でもないのが事実だな。本当にごめんねキタサン。」
ちなみにブラックちゃんはイブキさんのチームメンバーをずっと支えてきたのもあり、1人でも家事とか大抵のことは出来る。…本当に凄い娘だな。
「いえいえ!あたしも落ち着けばいきますので…みなさんはお気にならさず!それに…スカイさんはもう1人生まれますしね。イブキさんの近くでいた方がいいですよね!」
「…うん。」
先ほども軽く触れたけど私のお腹にはもう1人の命が宿っている。おそらくはアメリカで生むことになるだろう。
「俺も帰れる時は帰るから…」
「イブキさん……その分、今夜はいっーぱいアナタを感じさせてくださいね♡」
「お手柔らかに…」
その夜、ブラックちゃんのパワーと声量は凄まじく、家全体を揺らす程に激しく、聞こえる声に私とピーチちゃんは眠れず、ソラ君とドラちゃんが泣き出すくらいうるさかった。それにより、ピーチちゃんがぶちギレてブラックちゃんに口枷をつけ、イブキさんの寝室は耐震工事とより強い防音工事が行われることとなった。ついでにイブキさんとシてるブラックちゃんに私も混ざってみたものの…ピーチちゃんほどの興奮はなかった。いや、普通に気持ち良かったけどね。
そして、私とイブキさんとピーチちゃんは子供たちを連れてアメリカへと旅立った。
カレンプリンスについて
欧字表記:Curren Prince
品種:サラブレッド
性別:牡
毛色:芦毛
生誕:2015年2月9日
死没:???
父:キングマンゴー
母:カレンチャン
母父:クロフネ
生国:日本
競走成績
3戦3勝
獲得賞金
2億6200万円
主な勝ち鞍
G1
・東京優駿(2018)
G3
・日刊スポシンザン記念(2018)
出走レース
・2017年
2歳新馬(1着)
・2018年
日刊スポシンザン記念(1着)、東京優駿(1着)
3冠馬キングマンゴーとカレンチャンとの間に生まれた牡馬。キングマンゴーの初年度産駒であり、カレンチャンにとっても初の産駒となる。
非常に大食いであり、デビュー戦の時点で馬体重は530kgを超え、前にいながらも上がり最速という衝撃的なデビュー戦となった。しかし、脚部不安が出たため翌年までは放牧されることも決まった。
年の明けたシンザン記念、馬体重は540kgとツヅミモンと同じであり、共に重馬場の中、10頭を引き連れて先頭を走った。最後の直線で仕掛けると後続を大きく離し…追い込みをかけたアーモンドアイの末脚から半馬身逃げ切って勝利した。しかし、脚部不安が再び現れ…皐月賞は回避となった。
何とか調整を済ませて東京優駿へと出走、馬体重は555kgまで増幅。皐月賞馬エポカドーロと共に先頭を走る。最後の直線、最内から仕掛けて先頭に立つとそのまま全馬をねじ伏せるが如く誰も抜かせずに勝利。最高馬体重かつ最短レースでのダービー馬となった。
レース直後に屈腱炎を発症、そのまま引退して種牡馬となる。ただし、受胎率が悪く2021年よりラウンドピーチの馬主の牧場にてプライベート種牡馬に転用された。代表産駒はレパードSを勝利したヘビースネーク。