逃げか?差しか?その判断こそが大きな隙だ! 作:アマノジャック
「う、うぅ…!」
「セイ!もう少しだ!」
「セイちゃん!頭!頭見えてるよ!」
「しっかりしろセイウンスカイ!…よし、無事に出てきたぞ!」
「おぎゃー!おぎゃー!」
「はぁ…はぁ…本当にウマ娘だ…」
「あぁ!君と同じ毛色の……いや、茶色だね?」
「鹿毛かしら?」
「芦毛だ芦毛。数年経てば分かっから……へその緒、よし。イブキ、ピーチ…お前らは休め。後はゴルシちゃんに任せろ。」
「ゴールドシップ?君も疲れて…」
「出産直後の何時間かは経過観察…これがゴルシちゃんの仕事だ。」
「…分かった、よろしく頼む。」
日本にいるお母さんへ…このアメリカの地で2人目が生まれました。今は茶色だけど芦毛のウマ娘です。何故かゴールドシップさんもアメリカにいたため助産師をしてもらいました。
「ちなみに名前は決まってんのか?」
「イブキさんとピーチちゃんからそれぞれ案があって…」
「どんなのだ?」
「イブキさんからは『メロンスカイ』。みんなで食べたピザのことを思い出したとか。」
「…てっきり、スカイの胸で決めたと思ったわ。」
「まぁ、実際にピザを作ってもらう前にメロンを胸に入れてましたけど…」
「オメーはオメーで何してんだよ!」
後にイブキさんに聞いたけど効果は抜群だったらしい。
「ピーチちゃんからは『スカイチャン』。カレンが生まれてる赤ちゃんはウマ娘だ、って予想が当たってたから彼女の名前を入れようってことらしい。」
「ふーん…で、スカイはどっちがいいんだ?」
「メロンスカイかな~、メロンちゃんって名前の方が呼びやすいし。」
「そんな理由かよ…」
名前は『メロンスカイ』に決めました。レースを走るかはまだ分からないけど…イブキさんが指導してる姿は見せたいかな。
───
アメリカに来てどれくらいの月日が流れたか…まぁ、家からあまり出なかったし日本にいた時とあまり変わらないけど。変わったのはご飯かな…朝はシリアルを食べるようになったくらい。
朝はピーチちゃんと一緒にイブキさんを見送って…家事と育児をピーチちゃんと毎日交代でこなししつつ、お昼ご飯を私が用意する。たまにピーチちゃんが近くのスーパーで買い物に行ってくれる。
午後は3人とも寝てるので私も寝たり、ピーチちゃんと映画を見たり…好きに過ごしている。キングやカレン、フラワーからのLANEの返事をするもこの時間だ。…日本とは半日くはい時差があるからね。
子供たちが起きたらピーチちゃんに育児を任せて、私は晩御飯の準備をする。日にもよるけど絵本の読み聞かせが多く、たまに私たちのレースを見せている。
夜になり、イブキさんが帰ってきたらみんなでご飯。ソラ君とドラちゃんがご飯を食べながらイブキさんへと今日のことを話し、みんなで笑い合う。
イブキさんが食器を洗っている間に子供たちをお風呂に入れる…私はメロンちゃんを入れてるのでソラ君をピーチちゃんに任せることがほとんどだ。
そして、全部が終わったら……大人の時間です♡
そんなある日、ゴアさんに誘われてイブキさんがレース場で現役ウマ娘たちを指導する姿を見に行くこととなった。
『もっとスピードを維持して!今の君ならそれが出来るから!』
『はいっ、イブキ教官!』ダッ
『次っ!』
『はい!』
『君はラップタイムを意識して身体に覚えさせること!そしたらもっと速くなれるから!いっていって!』
『いきますっ!』ダッ
イブキさんは30人ほどのウマ娘を指導しており…気に入ったウマ娘がいた契約するという話ですけど、結局誰ともしていません。
『イブキ教官!…貴方の指導により、この前のG3レースを勝ちました!是非、私と本契約をお願いします!もっと強くなりたいであります!』
『イブキ~、ワタシはG1に出走してたんだよ~。ワタシと本契約してよ~』
『G1はG1でも、あなたはターフのG1でしょう?イブキ教官、私の次走はダートのG2でしてよ。是非とも私と本契約を…』
その中には当然イブキさんと契約したいと思っているウマ娘は沢山いたよ。けれど…
『こらっ!イブキはもうすぐ日本に帰るの!ずっと、アナタたちと一緒にいれる訳じゃないのよ!』
『『逃げろ~、ハードゴア鬼教官だ!!』』ダッ
『誰がハードゴアよ!?待ちなさいっ!』ダッ
イブキさんにその気は無く、毎回ゴアさんの一喝により散っていく。
「ピーチちゃんピーチちゃん。ゴアさん大変そうだね~」
「本当よ…イブキが強く言わないから…」
「イブキさんの顔が満更でも無さそうなのが何とも言えないね~」
「これ以上増やすなんて絶対に認めないわよ!」
そんな光景を私とピーチちゃんは眺めていた。それにしてもアメリカって実際に走るレース場でトレーニングしてるんだ。何かためになった。
『今日のトレーニングはここまで!居残り練習の希望者は……4人か。分かった。今日は20分だけ認めるよ…でも戸締まりは忘れないように。みんな、お疲れ様。』
『『はいっ!お疲れ様でした!』』
トレーニングが終わり、ゴアさんと一緒にコースを後にするイブキさん。とりあえず合流するとしますか。
「ゴア、今日は俺の家でご飯食べる?」
「いいねいいね。けど毎回
「本当?じゃあ、ピーチたちに言わないとな…お!いたいた!」
私とピーチちゃんはスーツから着替え終わったイブキさんと合流した。ゴアさんとの2人だけの会話だからか英語から日本語に戻っており、何かを話していた。
「あ、ピーチとセイ。今日はゴアが晩飯をご馳走してくれるみたいだよ。」
「何処かのレストランに寄るつもりかしら?」
「ノンノン!寄るのはスーパーマーケット…チーズフォンデュに合う具材を買って帰るわよ。」
「いいですね~、チーズフォンデュ~。」
ゴアさんの助けもあり、こんな毎日を過ごしていた私たちだったけど…もうすぐ終わる。イブキさんの長期出張と同時にピーチちゃんの産休も終わり…日本で復職するからである。
………
いよいよ、帰国の日となった。
「ソラ、ドラ、メロン。もうすぐ日本に帰るからな…食べたいものを考えておいてね。」
「にほん!ボクねボクね、"おこめ"ってのをたべたい!にほんのあじ!」
「わたしは"おそば"!ずるるるってたべるんでしょ?」
「あー…?」こくん
「俺のデザートじゃないんだ…」ずーん
イブキさんは沈みつつもそう言うと順番にソラ君とドラちゃん、メロンちゃんの頭を撫で…最後に私のお腹を優しく撫でた。そこには3人目の生命が宿っており…ピーチちゃんが『何でまた出来てるの?』って顔で睨んでくるけど気にしない気にしない。
「キタサンにも早く直接会いたいな…」
「そうね…あの娘にはずっと寂しい思いをさせてるわ。」
「お酒ばっかり飲んでなきゃいいけど…」
実はブラックちゃん…かなりの酒豪です。学園を卒業して家で暮らし始めた数日後、ドリーム引退記念に実家から送られ来た一升瓶の日本酒を缶ジュース感覚で一気に飲んだ姿に私たちは唖然となった。成人してるから法的には大丈夫だけど…これは流石にね?
その後、ビール瓶を片手に(まだ飲むの!?)尻尾でイブキさんを捕まえて部屋へと戻り…その直後に家全体が揺れたりもしたな…。そして、ソラ君とドラちゃんを泣かせてしまいピーチちゃんの拳骨を貰うブラックちゃんとイブキさん…懐かしいな。
「ゴア、その…また会えて嬉しかった。」
「それは私も同じよ…ピーチとスカイとキタサン、全員ちゃんと幸せにするのよ?」
「もちろんだよ!また写真でも送るよ…後、俺たちで指導した子たちの活躍を教えて欲しいかな。」
「勝ったレースは送ってあげる…じゃないとキリが無いわよ。それにあんたもあんたでこれから日本で忙しくなるでしょ?」
「まぁ、そうだけど…」
「頑張りなよ!」パンッ
「…っ痛!」
「ゴアさん…本当にお世話になったわ!だからまた日本に来て!私たちで歓迎するわ!」
「日本の料理を用意しますから~」
「ありがとうピーチ、スカイ!その時はLANEするわっ!」だきっ
「わっ!?」
「アハハハ…」
最後にイブキさんの背中に闘魂を注入したゴアさん。そして、私たちへ強めのハグをした。こうして、私たちのアメリカ生活は終わり迎えたのでした。