逃げか?差しか?その判断こそが大きな隙だ! 作:アマノジャック
『3人がもつれあったままゴールイン!
日本のメロンスカイは4着…』
『ゴールまで数メートルのところで外から差されたので悔しいですね。敗因はやはり直線で伸ばせる末脚を残せなかったことだと思います…』
『初の海外で頑張ってくれました。緊張はなく、リラックスした走りでしたね。今回は展開こそ向きませんでしたがアメリカでも同じ走りをしてくれればなと。…本当に頑張ってくれました。』
「…誰あの芦毛?」
「メロンちゃんだよ。」
「あんなクラス委員長なメロン姉をわたしは知らない…」
「流石にテレビの前だからね。」
時は3月末の深夜。メロンちゃんがドバイシーマクラシックへ出走したものの4着に敗れた。そのままレース後のインタビューを見ていたグレープちゃんだったけど…いつもとキャラが違うメロンちゃんに開いた口が塞がらなくなっていた。
「トレーナーの人が泣いてる?メロン姉のキャラが真面目に変わったから?」
「それはまた別の話かな~」
ヨコテトレーナーのトラウマになっていたドバイの地でメロンちゃんが完走したから、と言ってもグレープちゃんにはまだ伝わらないだろう。
「ソラ兄ソラ兄!メロン姉って凄かったんだねっ!」
「僕も驚いてるよ…!入学前に見た走りとは何もかもが違い過ぎる…!」
ソラ君の膝の上からレースを見ていたアップルちゃん。深夜だというのにまだ元気そうだ。
「ほら、メロンのレースは終わったんだ。ホットミルクのコップは俺が回収するから…全員、歯を磨いてすぐに寝る!」
『はーい!』
そして、イブキさんの鶴の一声でその場は解散となった。
………
「まま、あのね…ちょっといい?」
「グレープちゃん?どうしたの?」
「その前に…ぐへへへ…♡」シュルッ
ウミちゃんへの
そして、口端からヨダレを滴しながら尻尾でイブキさんの服の中をまさぐり始めた。まぁ、これくらいなら目くじらを立てるほどじゃないかな…おもいっきりパンツの中まで入ってるけど。満足したのか尻尾を抜いて自分の顔まで持っていき、その匂いを嗅ぐとホクホクした顔になる。そして私の方へ向いたかと思えば…急に真顔になる。
「わたし…トレセン学園入れるかな…」
「大丈夫だよ~。実力はイブキさんが保証してくれてるし~…」
「…それでもドラ姉はダメだった。実力だけじゃダメ。あと、ぱぱのコネもダメだったのでしょ?」
「何で知ってるのかな…」
目覚めたイブキさんがグレープちゃんの下から喋ってきたが…今は無視しよう。
「ゲート試験の合格率は全体で9割を超えるよ。つまり…ドラちゃんは運が無かったってこと。」
「わたしもその1割の可能性がある…」
「もう大丈夫なんだけどな…」
「何で?」
「パパに聞けば分かるよ~、そもそもママはウミちゃんにご飯あげてる途中。だからパパを連れてあっちにいったいった。」
「???よく分からないけど…とりあえず、今からぱぱに聞くね。それじゃあ。」ガシッ
グレープちゃんはイブキさんを担ぐと部屋を後にした。まだ子供と思っていたけど流石はウマ娘…大の大人1人を持ち上げれるんだ。そんなことを思いつつ私はウミちゃんにミルクを飲ませる。
ちなみに大丈夫な理由についてだけど…この家って実際のレースで使われるゲートが置かれる部屋があるんだよね。昔、ドラちゃんとメロンちゃん、グレープちゃんとでそれを使って遊んでたのだけど…ドラちゃんだけが入れなくて、何とか入れてもその場でうずくまったまま動けなくなってしまったことがあった。
…その後もドラちゃんは何とか克服しようとしたのだけどダメだった。その時の様子をイブキさんがスマホのカメラで撮っていたので、それをグレープちゃんは見ることになるだろう。その日以降、グレープちゃんは毎日ドラちゃんと近くの河原で走るようになっていた。
───
『勝ったのは日本のメロンスカイ!
7番人気のメロンスカイが逃げ勝った!
アメリカの地でシーザリオ以来の日本のウマ娘によるG1勝利!』
『先頭はメロンスカイだが…ここで後退。
後続のウマ娘たちが次々かわしていく。
先頭のウマ娘が今、ゴールイン…!
メロンスカイは6着の入線か。』
『日本のメロンスカイが先頭!
大きくリードを取ったまま…最後のコーナーを曲がった!
後続迫る!
しかし、これはセーフティリード!
ダービーウマ娘メロンスカイ、逃げ切った!
アメリカの地で2つめの…合計3つのG1勝利!!』
メロンちゃんは3度アメリカのレースを走り…2度も勝利した。…それは私のG1勝利数を超えられたことを意味するのだ。とはいえ、この戦績なれば目標であるBCターフへと出走できるだろう。こんな感じに嬉しいと悔しいの感情が混ざる中、イブキさんより電話が来る。
「もしもしイブキさん?どうされました?」
『あぁ、えーと…その…』
「?」
何か言葉に詰まってる?メロンちゃんについてだとは思うけど…国際通話だし時間をかけられるのもちょっと…
「話す内容がまとまってないようでしたら後でも…」
『子供が出来た。』
「…はい?もう一度いいですか?」
『子供が出来た。』
子供が出来た…うん、理解が追い付かない。イブキさんが誰かの子供を妊娠したってこと?アメリカって凄いな…男のイブキさんでも妊娠出来るんだ。そんな私の思考を他所にイブキさんは話を続けた。
『…俺とゴアとの間に子供が出来た。ピーチにはもう言ってあるけど…君とキタサンにも伝えるべきだと思ってね。』
「…お酒を飲まされました?それとも力ずくに押し倒されました?」
『…ゴアからお願いされて…それに俺が答えた。ゴアがトレーナーを辞めてアメリカに戻ったのは知ってるよね?』
「えぇ。お母さんの介護のためとか…アメリカだと家族による介護が一般的でしたよね?」
『そうなのだけど…ゴアの実家ってさ、結構な名家なんだよね。ゴアの姉と妹、さらには母も祖母もG1ウマ娘だし。だからゴアの母って質のいい介護サービスを受けてるんだよね…』
「へー…」
…あれ?じゃあ、何でトレーナーを辞めたのかな?
『それはゴアだけが結婚してなくて…母の体調が悪くなったと聞いて、自分が介護しないとと勢いで辞めたからで…』
「私の心読まないでくれます?」
『まぁ、実際に介護士がいない間はゴアが支えてるよ。いる時は姪っ子と遊んでるかな。』
「…」
ますますイブキさんと子供が出来た理由が分からない。
「それで…どうしてイブキさんとの間に子供が出来たのですか?ウミちゃんが出来た時みたいに性教育の一環として姪っ子ちゃんたちの前で…なんてことはないですよね?」
『いや、あれは部屋のカギを閉め忘れた君が悪いだろ?』
「違いますよ!最初からイブキさんのベッドの下にいたんですって!流石の私もグレープちゃんの前で解説しながらとか恥ずかしかったですからね!?」
『お陰でかなりのマセ娘になってしまったよな……んんっ!話を戻そう!ゴアの母が言ってたんだよ…ゴアの子供は見れないのかって。これがゴアにとって大きなショックだったらしくてな…』
「それで子供を…」
『そうなんだよ。とはいえ、実行する前にピーチには言ったんだよな…』
「…はい?」
何でやねん。絶対に反対されたよね?何で分かってて聞いたのだろう?
『ゴアの説得に折れてくれた。』
「ピーチちゃん…チョロすぎでしょ…」
『それで4月にアメリカへ着いたその日に…フルネル○ンでシた。』
「…私に変な性癖を植え付けようとしていません?」
『君に植え付けるのは俺の子種だけだよ。』
「別に上手くないですよ。」
『最後にシた時はあんなに乱れたくせに…』
「なっ…!そういう意味じゃないです!」
確かに激しくされたけど…私、物凄い顔になってたらしいけど。あぁ…ムラムラしてきた。イブキさんが帰ってきたらまたシたい♡とりあえずピーチちゃんで…いや、今日はブラックちゃんにしよう。お風呂で背中を洗うふりをして…♡
『セイ?おーい、聞こえてる?おーい!』
「…っ!すみません、聞こえてます聞こえてます。」
『…とにかく、ゴアとの間に子供が出来た。その子はゴアの実家で育てられるそうだ。俺はアメリカにきた時に顔を見せるくらいになるだろう。』
「他人事みたいに言いますね…」
『…ゴアからそうするように頼まれた。それでも養育費は送るつもりだ。』
「必要ないでしょうけど…まぁ、イブキさんが納得するならいいんじゃないですか。ってことでこの話は終わり!」
『そうだね。キタサンにも伝えないと…』
「電話せずとも後で私が伝えますけど?」
『大丈夫だよ…それにこれは俺の口から言うべきことだから。』
真面目な人だな…やったことは不真面目なのに。
『次に帰国するのは11月過ぎになる。』
「メロンちゃんのBCターフが終わった後ですね。」
『あぁ、俺のプロジェクトの集大成だ…必ず日本ウマ娘初のブリーダーズカップ勝利を達成させる!』
「えぇ、楽しみにしてますよ…メロンちゃんに私も応援してると伝えてくださいな。」
『分かった、伝えておくよ。』
電話越しでも伝わってくる熱い声。トレーナーとしても父親としてもメロンちゃんが大舞台を走ることが誇らしいのだろう。
しかし、メロンちゃんは直前で脚部不安になってしまい…BCターフへの出走は叶わなかった。それによりイブキさんは予定より早い帰国となったのだ。