逃げか?差しか?その判断こそが大きな隙だ!   作:アマノジャック

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キングヘイロー、誕生日おめでとう!


トリックスターは語りたい19

「…セイ、また秋にアメリカに行くことになったのだけど…今回は付いてきてもらってもいいかな?」

「えーと、メロンちゃんがブリーダーズカップのBCターフに出るんでしたっけ?」

「ドリーム部門でね。後もう1人、ドリーム部門のBCクラシックに挑戦することも決まったよ。」

「へー、良かったじゃないですか。」

「それだけじゃないけどな。」ぼそっ

「ドリーム部門とはいえブリーダーズカップですよ!」

「トゥインクルシリーズの方での成果を期待されていたんだけどね…それでセイ、付いてきてもらってもいい?」

「私はいいですけど…ゴアさんの所ですよね?」

「いや、今回は学園が用意してくれたホテル。今のゴアはちょっと家がゴタゴタしてて…俺が来るともっとややこしくなるらしい。」

「…そうですか。」

 

何て話があったのが数ヵ月前。現在、私はアメリカにいて…メロンちゃんともう1人のウマ娘の併走トレーニングを眺めていた。

 

「"カジノドライヴ"、もっと足を使えない?」

「はぁ…はぁ…!…これで全力です。」

 

カジノドライヴ…現在ドリームトロフィー所属のウマ娘。トゥインクル時代はアメリカへと遠征し、G2レースを勝ち、無敗の状態でBCクラシックへと挑んだウマ娘。ピーチちゃんも果たせなかったブリーダーズカップ出走を達成するも順位は最下位…それ以降は重賞勝利は無くトゥインクルを引退。ただ今も現役を続けていることまでは知らなかった。

 

「…よし、今日はここまでだ。メロン、君はクールダウンしたら帰ってよし。」

「オケマル~!」

「カジノドライヴ、君は俺とミーティングね。本番でのペース配分について調整するから5分後にここにまた集合。差し入れのアップルクランブルがあるから食べながらしようか。」

「…I see、よろしくお願いします。」

 

LANEが鳴る…メロンちゃんをホテルまで送って欲しいとのこと。了解と返信した。…カジノさんに手を出したりしないか不安になったけど、流石に大丈夫だと思いたい。

 

………

 

『じゃあ、お願いするね。"ジャジル"、"ラグズトゥリッチズ"。』

『『イエスサー、イブキ教官!』』

『…え?お姉様?…えぇ!?教官!?』

 

後日のトレーニングにて。イブキさんはアメリカにいた時に指導していたウマ娘を2人連れてきたのだが…なんとカジノさんのお姉さんたちだったのだ。予想外の出来事に頭から煙を出すカジノさん。

 

『マ?ジャジルンとラグズンってカジノンの姉ちゃんだったの?ウケるんだけど!』

『君はあの時の少女か…大きくなったな。』

『てか日本とアメリカでのレース全部みたよ。強くなったよね!』

『へへっ!でしょでしょ?ってことで併走トレーニングよろしくお願いしまーす!』

 

対してメロンちゃんは人懐っこくも丁寧な英語で挨拶をする。そのままカジノさんの手を引き、コースへと向かう。トレーニングが始まった。

 

『メロン、そのペースをキープだ。カジノドライヴを離さずに、でもスピードを落とさないように!』

『りょ!』

『ジャジル!君はまだ仕掛けないでくれ!今回は後方のまま我慢だ!』

『分かりました!』

『ラグズトゥリッチズ、内からカジノドライヴにプレッシャーをかけろ!』

『はい!』

『カジノドライヴ…ここをどう対処するか見せてみろ!』

『ここで…!…くっ!』

 

イメージが出来ているが思うように動けていないカジノさん。イブキさんも何かメモをしているようだが…どうなるのか。

 

………

 

「セイ、今からカジノドライヴとご飯に行くので晩御飯は要らないから。それじゃあ、相手を待たせる訳にもいかないし行こうか。」

「よろしくお願いします。」

 

何か最近…

 

「カジノドライヴ、今日は会う人はクラシック3冠達成したトレーナーでね…」

「What!?そんな人とも知り合いなのですか!?」

 

イブキさんって…

 

「買い出しに来るならこの店かな。日本の物も揃ってるし。」

「なるほどなるほど。」

 

カジノさんと仲良すぎません?

 

………

 

「ママさ、なんか機嫌悪くね?どしたん?話聞こか?」

「別に何にも。」

「いやいやいや。どうせパパのことでしょ?カジノンにジェラってんじゃん?」

 

まぁ、普通に分かるよね…よし!愚痴るか。

 

「イブキさんってば私をアメリカに誘っておきながら酷くない?昨日も夜遅く帰ってきてさ…疲れてるからって5回しか私を抱いてくれなかったんだよ?まぁ、アレの濃さから一線は越えてないのは分かるけどさ……何でカジノさんとずっといるんだろうね?」

「何ママ?惚気たい感じ?私はグレープほどませてないしさ、親のXX事情とか普通にうげーってガチテン下げなんだけど~」

 

…返ってきたのはメロンちゃんの冷めた目とガチトーンの解答。イブキさん、帰ってきたら私の心を暖めて…。

 

「…ママにとっては重要なことなの。で、メロンちゃんは何か知ってるの?」

「んー、ざっくり言うと…引継ぎ的な?」

「引継ぎ?」

「そそっ!カジノンってば、このレースで現役ガチ引退するらしくて…パパの"BCプロジェクト"をやりたいんだって。」

「トレーナーになるってこと?」

「さあね~?そこまでは詳しくは知らんけど、パパ的にも人手増えるの嬉ピらしくてさ~、ノリノリで協力的らしいよ~。」

 

ということは…アメリカに行く度にカジノさんが同行するってわけか。不安になってきたな。

 

───

 

『はあぁぁあ!!』だっ

 

『いいぞ!…何とか形になってきた。』

『凄いよカジノちゃん!』

『それな!内も外もどっちからでも伸びるようになったし!』

『カジノちゃんの本格化は終わってる筈だけど…まだ成長出来たの?』

『正確に言うと違う。慣れないバ場で出来てしまったカジノドライヴの余分な動きを極限まで減らしたんだ。何より本番のレース場でトレーニング出来るのがアメリカの良いところだよね。』

『パパ、私は?』

『メロンはずっと指導してきたから大丈夫。現状維持をしていく方針で。』

『りょ!』

 

ドリーム版ブリーダーズカップまで後少し。今日もトレーニングを見に来た私だったが、メロンちゃんもカジノさんも…全体的にピリピリしている。

 

「どうですかスカイさん…貴方の娘の調子は?」

「─っ!?ヨコテトレーナー!?」

 

何故か私の隣にメロンちゃんの担当トレーナーの姿があった。

 

「何故って顔ですね。まぁ、彼女がいなくて寂しくなったので来た…でどうでしょうか?」

「いや、『どうでしょうか』って言われましても…」

「しかし、カジノドライヴ…日本にいた時と全然動きが違います。イブキトレーナー、彼の指導のお陰でしょうか。ここで教官として指導した中にはG1ウマ娘が何人も出てきましたし…やはり、彼はアメリカでの指導適性が高いようですね。素晴らしい。」

「そうですね…」

 

鋭い目でイブキさんを見定めるヨコテトレーナー。そういえば、アイリちゃんにもこんな視線送ってたな…。

 

「トレトレ~♡もう来てたんだ~♡」だきっ

「メロンちゃん!?」

「メロンさん、元気そうで何よりです。」

 

気付けばメロンちゃんがそばにいてヨコテトレーナーへと抱きついていた。トレーニングはいいのかな?

 

「レースさ、絶対に勝つからさ!ちゃんと最後まで見といてね!」

「えぇ、貴方とイブキトレーナーの成果…しっかりと見させてもらいますよ。」

「うぇーい↑やる気とテンション爆上がりなんだけどー↑ふぅー↑んじゃ、パパの所に戻るわ!」

 

メロンちゃんがトレーニングへと戻るとダートコースからターフコースへと移動していた。どうやらここからはメロンちゃんメインのトレーニングも始まるようだ…私とヨコテトレーナーは無言でそれを見守った。

 

──

 

『逃げるメロンスカイ!

しかし、フリントシャーも伸びてくる…とらえた!

とらえたとらえた!

フリントシャー、メロンスカイをとらえてゴールイン!

世界を股に掛けたフリントシャー、このレースを勝ちました!!』

 

………

 

『強い強い!

アメリカンファラオ、圧倒的強さで今ゴールイン!

3冠ウマ娘アメリカンファラオ、ドリームでもこの強さは健在!』

 

───

 

本番のレースが終わる…メロンちゃんは2着、カジノさんは5着という結果だった。

 

「トレトレ…ごめん。私、勝てなかった…」

「お疲れ様ですメロン。貴女の走りはとても立派なものでした…誇ってください。」

「トレトレ…!」

 

『カジノちゃん、頑張ったね!!』

『しっかりと食らいつけてたし…かっこ良かったよ!!』

『ジャジル姉様…ラグズ姉様…』

「カジノドライヴ、ミス無く走れたな。」

「Mr.Ibuki…はい、私の全てを出せたと思ってます。とはいえ、相手はそれ以上でした。」

「そうだね。今回のトレーニングはこの舞台専用の付け焼刃だったけど…それで君は掲示板に入れた。本当によくやった!」

「はい!ご指導本当にありがとうございました。」

「…後の事は任せるね、後輩(カジノドライヴ)。」

「何から何までありがとうございました、先輩(イブキさん)!」

 

レースとウイニングライブが終わり、2人が戻ってきた。メロンちゃんのところにはヨコテトレーナーが、カジノさんのところにはジャジルさん、ラグズさん、イブキさんと…

 

「ところでMr.Ibuki、その抱いているBabyは…?」

「…え?あ、あー…ゴアの子供。」

「…だっ!」

『えぇ!?ゴア教官、子供いたの!?』

『…私も初耳!?』

 

イブキさんの腕の中に1人の赤ん坊がいた。確か名前は…"ジャック"だったね。

 

『何でイブキ教官がゴア教官のお子様を預かっているの?』

『ゴア教官ってここに来てるのですか!?』

『私も興味がありますね。』

『…。い、家がバタバタしてて預かって欲しいって言われて…』ダラダラ

 

大量の汗を流しながら弁明するイブキさん。けど私は知っている…無理言って会わせてもらったことを。

 

「いいんですかゴアさん。あんなこと言われてますけど?」

「別にいいわよ…イブキってば日本にいてもジャックのこと忘れてなかったみたいだし。」

 

私の隣にはゴアさん本人がいるわけで…微笑ましい顔でイブキさんとジャック君を見ていた。

 

「はぁ…前にあなたのことチーター(浮気相手)って言っちゃったけど、私も人のこと言えなくなったわね。」

「あれってそういう意味だったんですか。てっきりアメリカ版泥棒猫的な意味かと思ってました。」

「アメリカにチーターはいないわよ。」

「それにしてもゴアさんもイブキさんのこと好きだったのですね。」

「えぇ、否定しないわ。…あと、ベッドの上の彼…凄かったわね。完全にねじ伏せられて…本当に人間?って思ったわ。」

「…多分、原因は私です。」

 

同棲し始めてからずっとシてた訳で…はい。クソ雑魚のピーチちゃんはともかく、それに負けなかったキタちゃんの頑丈さとスタミナにも驚いています。

 

「とはいえ、もうイブキがアメリカに来なくなると思うと寂しいわね…」

「え?どういうことです?」

「知らないの?イブキがメインのBCプロジェクト…だっけ?今回で終わるみたいよ。凱旋門の方に力を入れるからとか聞いたけど…イブキもそっちに協力するんじゃないかしら。カフェちゃんを走らせた実績もあったし。」

「…初耳ですけど。」

 

うーん、まぁ家にいてくれると考えれば良いことなんだけど…大丈夫かな。このプロジェクトを任せられた時はかなり張り切ってた訳で…でも、私から言えそうなことは何も無い。こうして、私とイブキさんのアメリカでの生活が終わった……あんまり、一緒に過ごせなかったな。

 

───

 

「晩御飯の準備完了~。ふぅー、久々に張り切っちゃったな。」

「セイちゃんのご飯、久しぶりね…お疲れ様。夕飯前だけどバームクーヘン食べる?」

「スカイママ、コーヒーだ。」

「ありがとうピーチちゃん、ドラちゃん。」

 

帰国してグッタリしてる私にお菓子と飲み物を差し入れてくれる2人。日本に帰ってきたなと実感が沸いてきた。

 

「そういえばピーチちゃんは知ってたの?BCプロジェクトが終わるってこと。」

「ん?別にイブキが担当しなくなるだけでプロジェクトそのものは終わらないわよ。」

「…はい?」

「トレセン学園とアメリカのURAが結んでいた契約が終わるとのことだ。よって、父は普通の担当トレーナーに戻ることになる。」

「で、メロンちゃんと一緒にブリーダーズカップに出走してたカジノドライヴって子がイブキの後を引き継いでくれるんだって。」

「へ、へー…」

 

結局よく分からなかったけど…イブキさんが日本にずっといるって解釈でいいのだろう。

 

「ドラちゃん…何かやつれた?」

「…そんなことは無いぞスカイママ。」

「本当?ちゃんと寝てる?来年こそソラ君に追い付けそう?」

「無論だ!今度こそ失敗するわけにはいかないからな…」ぐっ

「力入り過ぎだって…」

 

話題は別のに変わり、参考書を持ったドラちゃんへ心配の言葉をかける。現在のドラちゃんは3年目の浪人生…表情には出さないもののかなり焦っているのが伝わってくる。ちなみにソラ君は研修が終わり…入学したアップルちゃんと契約したらしい。兄妹でとかありなんだ…。

 

「ただいま~」

「お父さん♪お帰りなさい~♪」

 

「父が帰ってきたな。」

「ウミちゃんが迎えにいったわね。」

「んじゃ、晩御飯の用意を始めましょうか。」

「手伝おう。」

「じゃあ、私も…」

「「ピーチちゃん/母 は大人しく座って待ってて。」」

 

その後、イブキさんが"イクイノックス"というウマ娘と契約したことを知った。さらにその子はピーチちゃんの契約しているディープボンドと同様にキングの親戚ということも知った。

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