逃げか?差しか?その判断こそが大きな隙だ! 作:アマノジャック
「アイちゃん、どの水着が……これ、アイちゃんね♡」
「…え?えぇ!?まだ全然見てないけど!?」
「いや、びびびってきちゃったから!アイちゃんに100億パー似合うから!ね?お願ぁい♡ね?」
「う、うぅ…そんな目で見られたら…」
私たちは今…
「ピーチさん!これなんてどうですか!」じゃーん
「ぶーっ!?ただの紐じゃないの!却下よ却下!!」
「イブキトレーナーなら喜んでくれますって…グヘヘヘ。」
「マンゴーが見たいだけでしょうが!この栗毛フェチ!」
水着を買いに専門店へと来ていた。
「フフフ…皆さん、楽しそうですね。」
「車を出してもらってありがとう…『シーザリオ』さん。」
「いえいえ。折角のお休みですから…目一杯に羽を伸ばして欲しいです。」
シーザリオ…元チームアスケラのメンバー。現在は結婚しており、ウマ娘の子供が何人もいる。その中の1人である『エピファネイア』が現在、ドリームトロフィーシリーズにて活躍中だったりする。今回は合宿場へと顔を見せにきていて…車を出してくれた。少し前に話を戻そう。
───
そこにはイブキさんとゴアさんの担当ウマ娘たちに加え、チームアスケラのキング、フサイチパンドラ、キングマンゴーの姿があった。…キングとキングマンゴーって名前を並べるとややこしいな。
「やだやだやだ!下ろしてくださいキング先輩!」
「…マンゴー?いい加減にしないと私、怒るわよ?」ゴゴゴ
キングは暴れるフサイチパンドラを担いでおり、ピーチちゃんはキングマンゴーにアイアンクローをしていて…そんな状況でイブキさんは2人にデザートを渡す。
「お疲れ様、キングヘイローにキングマンゴー。ココナッツミルク…はまだ冷えてないな。とりあえず、ブコサラダでも食べる?」
「へー、いつもデザートを作っている貴方にしては随分ヘルシーなメニュー…ってあら?全然角切りじゃないような…というかこれってデザートよね?」
「キングさん、
「…デザートの名前にサラダって付けないでよ!ややこしい!」
コブサラダ…初耳だね。それはそうとデザートは受け取るんだ。
「美味しいです…暑さとトレーニングで疲れた身体に染み渡ります…」
「うぅ…早くパンドラさんを連れて帰らないといけないのに…スプーンが止まらないわ…」
「お代わり♡」
「パンドラさん!アナタ、少しは遠慮しなさいよ!」
アスケラの3人がデザートを食べてる間にイブキさんは電話を掛けており…
「さて、今からあるリゾート施設に行こうと思うけど…参加したい人は挙手して。」
「「「…リゾート施設?」」」
「あ、今いるアスケラの3人も対象ね。"ユイチ"から伝言…『とりあえず、パンドラが気にしている事を片付けましょう…トレーニングはそれからね。私が運転するからすぐに戻ってくるように。』…だってさ。」
「流石トレーナー♡分かってるぅ♡」
「またそうやってパンドラさんを甘やかして…後で説教よ!」
ユイチトレーナー…チームアスケラのトレーナー。つまりはキングたちの担当である。とりあえず、そのリゾート施設が気になるので挙手をする。その場の全員も同じく挙手をしていた。そして…
「お姉さま!お姉さまの美しさを引き出すにはやはりこのぴっちりとしたフロントジッパータイプが…」
「峰不○子じゃないの!?いや、そこまで胸のサイズは私に無いけど…ってうるさいわね!」
「1人で何を言ってるのですかピーチさん。カワカミさん、ピーチさんといえばお尻でしょ!それを表現するにはTバ…」
「…マンゴー、アンタが選んだのは絶対に採用しないから持ってこないでくれる?」
「そんな…」がーん
リゾート施設の前に水着の専門店へと来ていた…何でだろ?
「屋内プールだから…イブキトレーナーはそのままの格好でいけるわね。まぁ、無理に水着じゃなくてもいいけど。」
「そのつもりだったけど…ピーチに『一緒にいて』とお願いされた。果たして恋人と保護者の両立ができるかな?」
遠くでユイチトレーナーとイブキさん、ゴアさんが喋りながら私たちを待っていた。
「堂々と担当と恋愛してることを公言してるのはイブキくらいよ。普通は学生相手にそんな関係にはならないわ。」
「でもまぁ…イブキトレーナーの場合だとその方がいいんだよな。」
「何でだ?」
「流石に分かりなさいイブキ…」
恋人がいることで下心を持つ生徒を遠ざけるためなのだろうけど…はぁ。どうせセイちゃんはそんなことを気にしない図太い生徒ですよ。
「…スカイさんは水着…どうされますか?」
「あ、カフェさん…って結構持ってますね。」
「…えぇ、折角のリゾート施設ですから。……私は買う水着を決めましたが……どうするおつもりで?」
カフェさんの両手には10着くらいの水着があり…その中から選んだようだ。
「んー、正直ぴんと来たのが無くて…どうしようかなーって感じです。」
「…早くした方がいいかと…トレーナーさんが時計を見てます。後はアナタとピーチさんだけです。」
「本当ですか!?ヤバいな…」
気付けばピーチちゃんの所へと走っていた。
「ピーチちゃん…水着が決まってないのは私たちだけみたい…」
「…えぇ!?早くしないと…えーと、えーと…セイちゃんはどんなのがいいの?」
「それはその…ショートパンツとか?ピーチちゃんはどうなの?」
「私は露出が少ないのを…」
「とりあえず、見に…」
「アナタたち、まだ決まってないのかしら?」
「「キング(ちゃん)…!」」
そうだ!キングはどんなのを着ているのだろう?質問しようとすると先にピーチちゃんの口が動いていた。
「キングちゃんの水着ってどんなの?」
「はぁ?どんなって…」
「こんな感じですよ。」すっ
「シーザリオさん!?」
シーザリオさんがスマホから写真を見せてくれた…緑のビキニだ。この破壊力、まさに…
「一流…」ごくり
「当然よ!特注なんだから!」
「キングちゃんがデザインしたの?」
「ま、まぁ…そうなるわね…」
「他にもある?」
「もちろんよ!これとか…これもね。まだまだたくさん…」
「「これだ!!」」
キングのスマホから見せてきた水着で気に入ったデザインを指差すとピーチちゃんも別の水着を指差していた。
「キングちゃん、私これがいいな~」
「私はこっち~、サンプルとかある~?」
「ここには無いわよ!あったとしてもサイズが合うかなんて……」
「ありますよ。」
「シーザリオさん!?」
またしてもシーザリオさんだった。
「沢山あってどうしようって言ってましたので……」
「だからって普通、ここに持ってくる!?」
「まぁまぁ、試着してもらえるならいいじゃないですか。」
キングがデザインにかける情熱は私もピーチちゃんも……そして、シーザリオさんも分かっているだろう。だからこそ気軽にそう言っている感じだが……うん、ピーチちゃんと目が合う。考えていることは一緒のようなので……ごり押すとしましょう。
「キングちゃん、試しに着てみていい?」
「サイズが合ったらそのまま着たいな~」
「それはまだ試作段階なのよ!?」
「でもキングちゃん、誰かに着てもらわないと完成させられないんじゃない?」
「うっ……」
「私たちなら感想も言えるよ~?」
「うぐっ……」
おっ、効いてる効いてる。
「……分かったわよ。ただし!ちゃんと着心地とか気になった部分を教えなさい!」
「「はーい!」」
「返事だけは一流ね……」
こうして私とピーチちゃんは、キングがデザインした水着を借りることになった。
………
「お待たせ~」
「……ど、どう?」
試着室から出ると、待っていたキングが私たちを上から下まで確認する。私が選んだのはオレンジのショートパンツと組み合わせた動きやすいタイプ。ピーチちゃんは露出を抑えつつも谷間を見せた黄緑のキーホールだった。
「……悪くないわね。」
「おぉ、キングから一流判定をいただきました~」
「まだ言ってないわよ!スカイさんは……もう少し肩回りを調整した方が良さそうね。ピーチさんは……」
「ど、どう?」
「思っていた以上に似合ってるわ。少しだけ待って。気になったところをメモするから。」
「ふふっ、ありがと。」
さっきまで慌てていたのに、一度デザイナーの顔になると真剣そのものだ。何だかんだ言いながら、キングって本当に服を作るのも好きなんだねぇ。
「素敵ですピーチさん!やっぱり黄緑って所がいいですよね!勝負服と同じ色ですし!」
「確かに私とアンタの勝負服ってピンクと黄緑の組み合わせだけど…」
「何はともあれ、とっても似合ってますよ!」
「……ありがとう。」
ピーチちゃんがキングマンゴーを相手に照れた!?
「みんな、そろそろ決まったかな?」
遠くで待っていたイブキさんがこちらへやって来た。
「あっ、イブキさん。私はこれにしました~」
「へぇ、似合ってるね。動きやすそうだし、セイに合ってると思うよ。」
「……!」
……。この人、本当にそういうことをサラッと言うんですよねぇ。
「トレーナー!私は!?」
「ピーチも似合ってるよ…流石は俺の愛バだ。」
「そんな…可愛いお嫁さんだなんて…」
「言ってないよ?時間の問題だろうけど。それじゃ、2人とも会計に行こうか……あ、まとめて俺が払うよ。」
「「「え?」」」
一瞬、周囲が静かになった。
「……何?」
「何じゃないわよ!」
キングの声が店内に響いた。
「結構な人数いるのよ!?まさかと思うけど担当ウマ娘全員分払っていたの?」
「俺が行こうって言ったんだし、それくらい普通じゃない?」
「普通じゃないわよ!」
「そうなの?」
「そうよ!!」
イブキさんが本気で分からないという顔をしている。……こういうことを自然にするから、惚れる娘が増えるんですよ。まぁ、私も人のことは言えませんけど。
「その…トレーナー。私とセイちゃんのはキングちゃんがデザインしたサンプルで…」
「そうなのか!?凄いなキングヘイロー。普通に売ってても違和感ないよ。」
「と、当然でしょう?」
「じゃあ、2人の分は君にデザイン料を…」
「待ちなさい!一流を目指す以上、この程度で満足するつもりはないわ!だから…今回は払わなくて結構よ!寧ろデザートを頂いたからそれで満足してるわ!」
「いや、あれはそんなつもりじゃなくて…」
そして、イブキさんとキングが少し揉めたものの…結局は後日にチームアスケラへ手作りスイーツを差し入れることで話がまとまった。
───
「ママー!まだー?」
「あら、ごめんなさい。もう少し待ってくださいね。」
店の入口から小さな声が聞こえた。見ると、シーザリオさんのところへ2人のウマ娘の子供が駆け寄っている。
「紹介しますね。こちらが『キングリア』。そして、この子が『キングジョン』です。」
「こんにちは!」
「……こんにちは。」
へぇ、この子たちがシーザリオさんの……。キングリアちゃんは私たちを見るなり、何かに気付いたように目を輝かせた。
「あっ!異次元の英雄!」
「え?私?」
指差されたピーチちゃんが自分の顔を指差す。
「知ってるの?」
「うん!ママからいっぱい聞いた!凄いウマ娘なんでしょ?」
「ふふん♪そうよ!アナタたちのママより先にアメリカのG1レースを勝ったんだから♪」
「そうなんだ!凄い!」
ピーチちゃん、分かりやすく嬉しそう。
「もう、リアったら……すみません、ピーチさん。」
「いいのいいの!ねぇ、キングリアちゃん。将来はトレセン学園に入るの?」
「入りたい!それでいっぱい勝つ!」
「そっか。頑張ってね。」
「うん!」
ピーチちゃんが頭を撫でると、キングリアちゃんは満面の笑顔を浮かべた。一方、キングジョンちゃんはというと……。
「……おじちゃん。」
「お、おじ…!」がーん
イブキさんの前にいた。おじちゃんと言われたことにショックそうな反応。
「甘い匂いする…お菓子屋さん?」
「トレーナーだよ。」
思わず吹き出しそうになった。まぁ、今日だけでも大量のデザートを作ってたし、そう思われても仕方ないか。
「この人がピーチお姉ちゃんのトレーナー?」
「そうよ。」
「じゃあ、この人みたいなトレーナーだったら強くなれる?」
「うーん……」
ピーチちゃんが少し考えてから、イブキさんを見る。
「……悔しいけど、トレーナーとしての腕は確かよ。」
「悔しいって何!?」
「事実でしょ?」
「いや、褒めてるのか貶してるのか分からないよ!えーと、君たちが憧れてるウマ娘はいるかな?」
「「うん!」」
「誰かな?やっぱりお母さんのシーザリオ?」
「「キングマンゴー!!」」
「…そうなるか。」
……ちなみに、この時の私たちは当然知る由もなかった。キングリアちゃんが何年も後に、本当にトレセン学園へ入り……ピーチちゃんの担当ウマ娘になることも。
そしてキングジョンちゃんもピーチちゃんのチームへ加入し、ピーチちゃんの娘でサブトレーナーとなったドラちゃんと契約するということも。人の縁というものは、本当に分からないものですねぇ。
「それじゃあ、そろそろ行きましょうか。」
「「はーい!」」
シーザリオさんの声で私たちは店を出た。
───
「到着しましたよ。」
シーザリオさんの車から降り、目の前の建物を見上げる。そこには大きな看板が掲げられていた。
『バブリーランド』
「バブリーランド……?」
「屋内プールを中心に色々遊べるリゾート施設だってさ。」
イブキさんがパンフレットを開く。
「流れるプール、波のプール、スパ……ボウリングもあるのね。」
「カラオケもありますよ!」
「トレーニングルームは……」
「アイちゃん?」
フサイチパンドラが笑顔のままアイちゃんの肩を掴んだ。
「今日は、あ・そ・ぶ・の♡」
「……分かったわよ。」
おぉ、ついに折れた。
「やったぁ♡じゃあアイちゃん、一緒にプール行こ!」
「引っ張らないで!自分で歩けるから!」
2人が先に入口へ向かっていく。
「それじゃあ、私たちも行きましょうか!」
「はい!お姉さま、参りましょう!」
「プリンちゃん、押さないでってば!」
「世界最強の私がエスコートしましょう。」
「マンゴー、その称号をこんなことで使わない。」
みんなが次々と施設へ入っていく。…忘れていた訳じゃないけど、キングマンゴーってG1を19勝してる怪物なんだよね…それを軽く流せるピーチちゃん凄っ。そんな感じで歩いている途中、私はパンフレットに載っていた一枚の写真に目を止めた。
「……ジェットスライダー?」
続きはまた後日に…