逃げか?差しか?その判断こそが大きな隙だ! 作:アマノジャック
フォーエバーヤングは…流石にピークアウトかな。それでも立派に走ったと思います。無事に帰国してください。
今日は天皇賞(秋)…クロワデュノールとセイウンハーデスに頑張って欲しい。
ダノンデサイルか…大外だったけど凄かった…
『スカイさん!アナタ、明日以降で空いてる日はあるかしら?』
「え?明日がいいなら空けておくけど…」
『ありがとう!じゃあ、今から送るLANEのカフェに10時集合ね!詳しくは明日言うけど…軽く変装しておいて!』
「え?えぇ…?」
女子会が終わった数日後…キングからそんなことを言われた。
───
翌日、言われた店へと入ると既にキングの姿があった。
「来たわねスカイさん…10分前よ。」
「遅刻してないからいいじゃん。それで…急にどうしたの?」
「…ウララさんのことは覚えているかしら?」
「ウララ?えーと、メイクデビューでアイちゃんに勝った子かな?今は結婚して生まれた子供が佐賀と岩手のトレセン学園に入学したってフラワーから聞いたけど…」
「そっちじゃない!ハルウララさんよ!」
「あー、そっちのウララか!」
ハルウララ…懐かしいな。私がドリームに移籍した時点でもう卒業してたから少し忘れてかけていた…ごめんウララ。そういえば、今はどうしているのかな?
「顔と声は思い出したよ。それで…ウララがどうしたって?」
「彼女が卒業した後も知らないのね…」
「キングは同室だったから今も繋がってるかもしれないけど、私はあまり絡まなかったからね?」
何なら私は同室だったローレルさんとは何年も連絡を取ってないからね。
「ウララさんね、卒業後は介護の仕事に就職したの。持ち前の明るさで元気に働こうとしたけど…ダメだった。」
「ダメだった?」
「詳細は省くけど、クソ同僚やクソ老人どものパワハラやモラハラで鬱になって退職したそうよ。」
「キング、怒りが漏れすぎて言葉が汚くなってるよ。」
「…んん。とにかく、今のウララさんを調べるとそんな状況らしくて…こっそりと彼女の様子を見に行ったの。」
「キング、どんどん発言がアウトになってきてるよ。」
「気付けば何ヵ月も連絡送ってくれなくて!しかもこっちが送ったらスマホ変わったとかで反応なし!調べるに決まっているでしょ!」
力説してるところ悪いけどキング、やってることはただのストーカーだよ。しかし、あのウララがそんな状態になっていたとは…社会って怖いな。私は出たことないけど。
「それで、どうだったの?あ、地元の高知に帰ってたとか?」
「いえ、普通にここから1時間で行ける所にいるわ。ただね、グラスさんもそこにいたわ…2人の子供もね。」
「…はい?」
「グラスさんが抱いていた赤ちゃんはこの前の女子会で見せてくれた子よ。そしてもう1人は…ママって呼びながらウララさんに抱きついていたわ。それで買い物したであろう荷物を持って…みんなで同じ家へと入っていったわ。」
何故かグラスちゃんがここで出てきた。グラスちゃんって確か…うん。ある既婚者の愛人ってピーチちゃんが…うん。つまり…
「グラスちゃんとウララは竿しm…」
「お黙りなさい!」
「でも2人は遊んでいた雰囲気じゃなくて、帰宅した雰囲気だったってことでしょ?」
「そうだけど!そうなのだけど…もう!キングだってどうしたらいいか分からないわよ!」
「普通にまたウララと連絡取ればいいんじゃない。」
「どんな顔して話せばいいのよ!」
「じゃあ、グラスちゃんを通せばいいんじゃない?とりあえず、電話でもかけてみるよ。」
スマホをもって通話を始める…出ない。でもLANEは来た。今は仕事をしてますので昼休みまで待ってください…あ、今日って平日だった。
「グラスちゃんはお昼頃にかけ直す…だって。」
「だって…じゃないわよ!計画も立てずに勝手に話を進めないでよ!」
「ウララの連絡先が欲しいのでしょ?計画も何も無いでしょ?」
「あるでしょ!ほら…心の準備とか…」
「私は出来た。じゃあ、お昼まで私の家でのんびり待とうか~」
「ちょ…スカイさん!?」
会計済ませて、キングを連れて家まで帰った。
………
あれ?誰か帰ってるのか靴がある?ドラちゃんは今日、予備校の筈だけど……あ、ソラ君のだ。珍しくソラ君が家へと帰っているようだ。キングにリビングで待ってもらいつつ、ソラ君の部屋へと足を運ぶ。
「ソラ君~、いるの~?」
「げっ!?母さん!?」
気まずそうな顔で本棚へと手を伸ばすソラ君がいた。持っているのは…学生時代の参考書?
「必要な物があるなら連絡くれれば送ったのに…」
「別に母さんの手をかける程のことじゃないし…取ったからさっさと学園に戻る。」
「もしかしてアップルちゃんが補習でピンチとかそんな感じ?」
「…何でそんなに察しがいいんだよ。」
まぁ、うん。お母さんですから。それにスペちゃんがそうだったからアップルちゃんもそうかもしれないと思った次第。
「そうだキング。折角だから紹介するよ…長男のソラ君でーす。」
「──!こんにちは!!」
「ふーん、しっかりしてそうな子ね。」
「こっちはキングヘイロー。私とピーチちゃんと同期のウマ娘だよ~。」
「知ってるから!ピーチさんがよく話してたから!それにしても…綺麗な方ですね。」
「…へ?お…おーっほっほっほ!当然よ!キングは一流のウマ娘なんだから!」
「はい!
「あ、ありがとう…」
照れるキングと…普段よりも10倍くらい機嫌のいいソラ君。…あれ?キングの手をみてる?
「その…僕とお付き合いをしていただけますか?」
「ソラ君!?」
「…は?え?ちょちょちょ…ちょっと待ちなさい!」
え?ソラ君、キングを口説いてる?指輪をしてなかったから?キングもキングで満更でもなさそうな顔をしないでくれる?
「んん!落ち着きなさいソラさん!キングは…私はアナタのお母さんと同じ年齢よ。もっと若い子にするべきよ!」
「ウマ娘なので年の差は気になりません。」
「ぐっ!やるわね!」
別に何もやらないけど?え?じゃあ、キングの年齢がありなら私やピーチちゃんもストライクゾーンに入るの?
「何と言いますか…キングさんをみてるとムラムラします。」
「そ、そんなに褒めたって……嬉しいけど!嬉しいのだけど…色々と待ちなさい!」
褒めてない褒めてない。あー、こりゃ間違いなくイブキさんの血を引いてるわ。最低なことを言っても、相手は好意的に受け止めている…イブキさんが不機嫌なピーチちゃんや酔ったブラックちゃんを一言でメスの顔へと変えたよく見た光景だ。
「…んん!ソラさん、落ち着いて聞きなさい。アナタはこれからまた多くの出会いがあるわ…故にキング1人に絞るのはまだ早いと思うの。」
「キングは出会いあったの?」
「スカイさん、お黙りなさい!」
無かったんだね。
「つまりキングさん…こういうことですね。一流デザイナーのアナタに釣り合うためには僕も一流トレーナーになれ、と。」
「私はまだデザイナーとして一流じゃないのだけど…」
「店に並べるが出せる時点で一流です!」
「や…止めてよ。もう…」
「どうすればアナタの納得する一流になるかは分かりませんが…まずは担当にG1勝たせます!」
「…ソラさん。アナタ、自分が何を言っているのか分かってる?」
ここでキングの雰囲気がシリアスなものへと変わる。…初G1勝利まで10回もの敗北を重ねてきたキングにとっては…その発言は地雷だよソラ君。
「出走出来るだけで全体の上位5%…それを勝つとなれば上位1%にも満たないと言われてます。」
「そうよ。担当したウマ娘全員をG1ウマ娘にしたアナタのお父さんがいかに凄いの分かっている?」
「親父は関係ないでしょ!…いえ、女にだらしないとはいえ…トレーナーとして凄いのは認めているのですよ。それでも僕は…僕は…親父を…」
キングもキングでイブキさんというソラ君の地雷を踏む。しかし、ソラ君は冷静な状態で…
「超える!」どんっ
「──っ!?」
キングへと壁ドンを決めた。顔が赤くなるキング…一体、私は何を見せつけられているのだろう?
「…今の僕が何を言ったところでアナタへは響かないでしょう。」
「そそそ…そうね…」
「響いてる。もの凄く響いてるよ。」
「ですのでこれからの僕と担当の活躍を待っていてください…これ、僕の連絡先です。」
「…ありがとう、楽しみにしているわ。」
「それではまた。」
メモに自身の電話番号を書いて渡すソラ君…後でLANEの連絡先も送ってあげようかな。そんなことを思っていると、ソラ君はそのまま家を後にした。
「あ、あわわわ…わあ。」
その場には私と茹でダコ化したキングが残されたのだった。
───
「キング、落ち着いた?」
「えぇ…話を戻すわね
「まだみたいだね…」
「うるさいわね!」
深呼吸を繰り返すキング…あ、グラスちゃんから電話が来た。
「もしもしグラスちゃん。」
『はいグラスワンダーですよ。セイちゃんからかけてくるとは珍しいですね…どうしました?』
「私というより…キングが気になっていることがあるみたいでさ。」
『キングちゃんが?』
「ス…スカイさん?キング、まだ心の準備が…」
ワタワタしているキングを無視してグラスちゃんとの会話に集中する。
「何かウララと連絡取れないことが気になって、ストーキングしたらグラスちゃんと一緒にいる所を見たんだって。」
「スカイさん!言い方!」
『あー、そういうことでしたか。確かに私とウララちゃんは…その…同じ立場であると言いますか…』
「キングから聞いた感じだと、ウララって辛い目にあったのでしょ?今は大丈夫なの?」
『…はい、最初は私も心配でしたが家に来てからとても元気になりました。私と同様にあの人に愛されており…子供まで生まれました。』
「元気なら良かったよ。出来ればウララにキングが連絡とれなくて心配してたって伝えてくれない?」
『分かりました…必ず伝えておきましょう。』
「こっちも元気だったよ、って伝えておくね…急にありがとうグラスちゃん。また今度、女子会とは別にご飯でも行かない?」
『いいですね…それではまた。』
電話が終わる。キングへと顔を向けると頭を下げていた。
「ありがとうスカイさん。」
「いや、大袈裟過ぎるから。とりあえず、キングの気持ちはグラスちゃん越しとはいえウララに伝わると思うから…安心して。」
「本当にありがとうスカイさん。」
それでも頭を下げ続けるキング…よほど嬉しかったのは分かった。とりあえず、お昼ご飯の時間だし…何か作ってあげるとしましょう。
その後、ランチとして出したナポリタンを気に入られ…キングと一緒に作ったのはまた別の話。