僕らが奏でる異世界交響曲   作:気まぐれな富士山

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第2話 エルフと歌と渇望

「マイヤー!おかえりー!」

「お土産持ってきた〜?」

「マイヤ!あそぼあそぼ!」

「元気だな〜お前たち。少し待ってなさい。後で遊んであげるから。」

「あらマイヤ。お帰りなさい。みんな待ってたのよ。」

「おやマイヤかい?アンタ、心配しとったんだよ。」

 

子供にも大人にも人気がある様子のマイヤ。

どうやら旅に出ていたようだ。

 

「ユウイチロウ、君を我が家に招待しよう。」

「え、いいんですか?」

「構わないさ。旅は道連れ世は情け、と言う言葉を聞いたことがある。」

 

1件の家の前に止まる。

二階建ての一戸建て。恐らく誰かと住んでいるのだろう。

 

「ミシュラ、ただいま。」

「マイヤ!お帰り。」

 

ミシュラと呼ばれたエルフの女性。

外見は正しく絶世の美女であり、元の世界ならプロモデルにでもなれそうなプロポーションだ。

 

「あら、そちらの方は?」

「紹介するよ。ニホンという国から来た、ユウイチロウくんだ。」

「滝裕一郎です。お邪魔します··········」

「あら、珍しいわね。こんな所に人間族だなんて。獣に襲われなかった?」

「はいもう、盛大に歓迎されました··········」

「そこを私が助けたのだ。」

「なるほど。ふんふん··········」

 

やけにジロジロと見つめられる裕一郎。

黄金色の眼がキラキラと輝いている。

 

「あの··········何か付いてますか?」

「あらごめんなさい。そういうつもりじゃないのよ。··········うん。ケガレはそんなに付いていないわ。この子は大丈夫よ。」

「そうか·····。良かった。」

 

ホッと胸を撫で下ろすマイヤ。

 

「何かあったんですか?」

「ああ。人間族はエルフより感情で魔力が変化しやすいからな。ミシュラは魔眼持ちで、闇魔力を見分けられるんだ。」

 

マイヤの話をまとめると、こういうことだ。

 

魔力には聖魔力と闇魔力の大きく2つに別れ、闇魔力に支配されると、闇人(アビス)と呼ばれる廃人になってしまうそう。

ミシュラの魔眼はそれを見つける、祓う、予防することができるらしい。

魔眼については、わかっている事が少ないらしく、ただ2つだけ、本人にだけ効果が見えるということ、眼に星を浮かべる者には強力な魔眼を保有している、ということらしい。

 

「じゃあ、魔法とかもあるんですか?」

「我々の一族だと魔法を使える者はシャーマンの血族だけだが、人間族なら、魔法学院に入れば殆どの者が魔法を使える様になるそうだ。ただ、入学にはそれなりな費用と、適性が必要らしいがな··········」

「魔法のことも知らないなんて、珍しい人ね。」

「あはは··········」

 

滝の事情を知らないミシュラは、不思議そうに目を丸くしていた。

 

「兎も角、しばらくの間ユウイチロウくんを住まわせてあげたいんだが、構わないか?」

「貴方が言うなら、悪い人じゃないわね。構わないわ。でも、ちゃんと仕事はしてもらうからね?」

「は、はい!ありがとうございます!」

「うん!いい返事ね。」

 

 

 

「ユウイチロウ、薪割りはできるかしら?」

「やったことないです··········」

「そう?うーん、今は稲刈りの時期でもないから、そこまで仕事ないわね。」

「すみません··········」

「いいのよ。あ、じゃあ子供たちと遊んでくれるかしら?あの子たちも遊び相手が欲しいところだったのよ。」

「あ、それならできます。」

「よし。じゃあ、行きましょうか。」

 

 

 

子供は風の子、なんて言うが、実際は台風のようだ。

走り回る子供たちについて行くのがやっとだ。

 

「ぜェ、ぜェ··········」

「お前弱いぞー!もっともっと!」

「はいはい、お兄ちゃんはちょっと疲れてるのよ。向こうで遊びましょ。」

「わーい!」

「··········すみ、ません。ぜェ··········」

「いやいや、きっと何か、出来ることがあるわよ。その内見つかるわ。」

「ミシュラ姉ちゃん!早く早く!」

「はいはーい、ちょっと待ってね〜!」

 

情けない姿を見せてしまった、と少々落ち込む。

フッと、子供たちの方を見ると、一人だけ友達の輪から外れている女の子がいた。

 

「ねぇ、君は遊ばないの?」

「あ···············うん。」

「それはまた、どうして?」

「··········好きじゃないの。縄跳びしたり、鬼ごっこしたりするの。だって、疲れちゃうんだもん。」

「じゃあ、何が好きなの?」

「··········お歌。でも、みんなの前で歌うのは恥ずかしいの···············」

 

歌が好きで、友達の輪に入れない女の子。

アーティストとして、見逃すことは出来なかった。

 

「じゃあ、お兄ちゃんの歌。聞いてくれる?」

「··········うん。」

「うん。ありがとう。じゃあ、行くよ。」

 

子供の頃から聞いていた歌が、鮮明に浮かんでくる。

夢を見る子供を支える歌。

 

「聞いてください。」

 

 

『心の中 いつもいつも 描いてる』

 

 

「この声、何?」

「あそこだ!さっきのお兄ちゃんだよ!」

 

 

『夢を乗せた 自分だけの 世界地図』

 

 

「面白い歌〜!私も歌う!」

「僕も僕も!」

「お、俺も!」

 

 

『ドアを開けてほら 行きたいよ今すぐ』

 

 

「あら、この声··········?」

「ユウイチロウくんの様だな。」

「行ってみましょうか。」

 

 

『大人になったら 忘れちゃうのかな』

 

『そんな時には思い出してみよう』

 

 

「シャララランラ〜♪僕の心に〜♪いつまでも、輝く夢〜♪ドラえもん、世界中〜に♪夢を、そう、あふれさせて〜♪」

「わぁ··········すっごい綺麗··········」

「不思議な歌〜。」

「ドラえもんって何〜?」

「お兄さん、もっと歌って!」

「いいよ。じゃあ次は···············」

 

いつの間にか、子供たちが滝の周辺に集まっていた。

 

「もう馴染んでしまった様だな。」

「ええ。それにしても、綺麗な歌声··········」

「ああ。彼には吟遊詩人の才がある。」

 

大人も子供も、心地よい歌声に耳を傾けていた。

彼の歌声が、東エルフの森に木霊していた。

 

 

 

「木々が喜んでる··········何?」

 

東エルフの森にそびえる老大樹。

その枝の上で座り込む一人の少女。

 

「この声、歌?」

 

細い四肢に、華奢な身体、未発達の胸。

蒼空色の髪が風になびく。

 

「歌っているのは··········エルフじゃない。」

 

光に照らされ、キラキラと輝く深緑の瞳。

 

「人間?人間がどうして··········?」

 

その瞳に宿る、遥かな五芒星。

 

「迷宮を攻略しに来たのかしら。だとしたら··········」

 

滝は、彼女の瞳にどう映ったのか。

 

 

「本当に、お母様のように··········?」

 

期待、渇望だった。

 

「本当にそうなら··········期待してる。タキ・ユウイチロウ··········」

 

 

 

 

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