龍と華   作:ヘルメス・トリスメギスタス

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初ライブ

 ライブ当日。

奈緒は控室で緊張していた。

ドアがコンコンと鳴らされる。

「奈緒、いいか?」

「桐生さん? 大丈夫だよ」

返事をすると龍臣が控室に入ってきた。

「……緊張してるな」

「そりゃ初ライブだもん」

「まあ、そりゃそうか」

「桐生さんはこんな風に緊張したことあるの?」

「……人を殺した時かな」

「え?」

「初めて人を殺した時だ。あの時は極限に緊張した」

「桐生さん……」

「それに比べれば奈緒が今感じている緊張は、いい緊張さ」

龍臣は悲しい笑顔で応じる。

「ライブ会場を見てみるか?」

「え?」

「お客さんを舞台のすそから見てみるんだ。

どうする? 見るか?」

「……うん。見てみたい」

「それじゃ行こうか」

二人は舞台袖に向かった。

 

 「人、結構来てるね」

「それだけ期待してるってことさ」

「ここで私歌うんだ」

「ああ。楽しんで歌えばいい」

二人は一度控室に戻った。

「どうだった?」

「緊張した。でも……」

奈緒は顔を上げる。

「楽しみになってきた」

「……それでいい」

ああ。いい笑顔だ。やっぱり渡世には関わらせたくないな。

「すいません。そろそろ本番です」

二人は舞台袖に移動する。

「俺が出来るのはここまでだ。行って来い」

龍臣は奈緒の背中を押す。

「うん!」

奈緒は舞台へ飛び出した。

 

 ライブ後

「お疲れ様」

龍臣は奈緒に水を渡す。

「ありがとう」

奈緒は受け取った水を飲む。

「どうだった初ライブは?」

「緊張した。でも最高に楽しかった」

奈緒が笑顔を見せる。

「それならいい。これからが本番だからな」

「わかってるよ」

「ならいい。何か食べに行くか?」

「桐生さんのおごり?」

「ああ。奈緒の初ライブの記念だ」

明日からはまたレッスンの毎日だが、

今日位はこんな日もいいだろう。

その時、龍臣の電話が鳴った。

「もしもし……何、真田が!?」

龍臣は表情を変え、電話を続ける。

そして電話を終えると、奈緒に向き合った。

「奈緒、すまない。食事は中止だ」

「どうしたの?」

「友人の葬儀に出ていた親父を守って真田が撃たれた」

「真田さんは大丈夫なの!?」

「一命は取り留めた。しかしよりによって不文律を破りやがって!」

「不文律?」

「襲名、葬儀、引退の慶事の襲撃はご法度だ。

これをやると全ての組織から総スカンを食らうことになる」

「そうなんだ」

「ああ。桐生組舐めてやがる。全面戦争だ。

そういう訳だからすまないが食事はまた今度にしてくれ」

「わかった。桐生さんも気を付けてね」

「ああ。ありがとう」

そう言って龍臣は部屋を出た。

 

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