「ハア……ハア……」
「…………龍臣」
「雪美、大丈夫だ。必ず救う」
俺は只今フィリピンマフィアと殺り合ってる真っ最中だ。
こうなった理由は……。
対フィリピンマフィア1ヶ月前
九龍街のあるキャバクラでは抗争真っ只中だった。
原因はフィリピンマフィアが店を荒らし、ケツ持ちしてる桐生組が対応したからだ。
最も龍臣、加藤、佐川の精鋭殺戮部隊だ。
負ける要素はない。
リーダー以外を殺し、いざリーダーを殺そうとした時、相手は取引を申し出た。
取引内容はこちらに有利な内容だったので、一旦父に持って行った。
それを聞いた父は承諾。フィリピンマフィアと交渉に入った。
交渉は驚くほどスムーズに進んだ。
龍臣はここで違和感を覚えた。あまりにもこちらが有利すぎるのだ。
龍臣の頭の中で警報がけたたましく鳴らされた。
交渉役にも注意を送ったが、不審な点はないという。
龍臣は一旦確認すべきと思いフィリピンへ飛んだ。
龍臣はちなみに英語やロシア語など複数言語話せる。
尋問やチャカの取引の時必要だったりするのだ。
フィリピンマフィアのアジトは立派な建物だった。
その中で話し合いは行われた。
話し合いは友好的に行われた。
差し出すシマの広さ、どれくらいのシノギか等、
相手は好条件と言ってもいい位の条件を提示した。
それでも相手を疑う龍臣は即答を避け、一度父に報告に戻った。
「好条件だな」
「そうですね」
「若! 何故即答しなかったのです! またとない好条件ですぞ!」
「真田。だからこそ怪しいのだ」
「龍臣のいう通りだ。この案件、何か裏がある」
「これは餌だね。これだけ出しても九龍街にシマを持ちたい何かがあるはずさ」
「姉御もこれは何かあると?」
「ああ。上手い話程裏がある。昔から言われてる通りさ」
「龍臣。衣と阿久津も今度は連れていけ」
「父上は今度は抗争になると?」
「ああ。一種の勘だがな」
「承知しました。何もなければそのまま協定を結びますが?」
「ああ。組の利益が最大になるようにしてくれればいい」
龍臣は衣、阿久津を伴ってフィリピンに向かった。
「あっち~すね」
「でも果物は美味しいわよ」
衣と阿久津が各々愚痴る。
「お前等、今日は取引だと分かっているか?」
「俺は英語わかんねえですし」
「私は日常会話レベルね。交渉の主体は若ですし」
「全く」
龍臣達は車を拾うと、フィリピンマフィアのアジトへと向かった。
アジトに着くと、フィリピンマフィア達は笑顔で龍臣達を出迎えた。
「あ~、冷房効いてますね」
「ちょっと阿久津。少しはシャキッとしなさい」
「お前達は黙ってろ。交渉は俺がやる」
こうしてフィリピンマフィアとの交渉が始まった。
龍臣は集中していた。
海外のマフィアに仁義何て物はない。
相手の一挙手一投足、言葉、書類に集中するのだ。
フィリピンマフィアは前回と同じ条件を提示してきた。
恐らく相手の最大の譲歩だろう。
言葉には恐らく嘘はない。書類も正式な物だ。
だがなぜだ? 何故辞めろと警告が出ている?
そう思いつつ、サインしようとした時、小さい声が聞こえた。
「助けて」
そのか細い声は龍臣が集中していたから聞こえたのだ。
「二階を見せてもらいたい。日本人がいるな?」
龍臣が二階へ行こうとすると、フィリピンマフィアが一斉にチャカを龍臣に向けた。
「あんたに見せる必要はないな」
「人身売買か?」
「知らない方がいいよ。このチャカ相手に勝てるかい?」
「衣、阿久津。この糞共を殲滅しろ!」
龍臣からは凄まじいまでの剣気が立ち昇る。
衣達も見たことが無いほどだ。
「『紫電』」
龍臣が呟くと同時に、複数人のフィリピンマフィアが切断される。
正に見えない斬撃。
その頃には衣と阿久津も援護に回る。
「撃て! 刀を持ってる奴を撃て!」
衣達が援護に入ってる時には、龍臣はさらにフィリピンマフィアを斬っていた。
しかし数が多い。
龍臣にフィリピンマフィアの弾が数発命中する。
しかし、龍臣は意に介せず刀を振るう。
「『雷迅』」
一瞬で距離を詰め、フィリピンマフィア達を葬った。
「若! 弾が!」
「三発食らっただけだ阿久津。急所は外れている。問題ない」
「問題ないわけないでしょ……」
「それより二階に行くぞ」
龍臣達は二階に向かった。
二階にもフィリピンマフィアがいた。
そして檻の中に子供達が閉じ込められていた。
一人の日本人の少女が引き出されていた。
「何をしている?」
「お前等こそ何なんだよ!?」
「俺はお前等みたいな下種を処分してんだよ!」
龍臣は凄まじいまでの踏み込みで、フィリピンマフィアに殺到する。
フィリピンマフィアが反撃する間もなく、龍臣は切り裂いた。
龍臣は少女に近づく。
「君、名前は?」
「…………雪美」
「ありがとう」
龍臣は雪美を抱きしめた。
「君が助けを求めなければ助けに来れなかった。ありがとう」
「…………ううん。私こそありがとう。…………ケガしてる!」
「気にするな。急所は外れている」
「…………それでも…………ありがとう」
「若。闇医者を手配しました。子供達の保護も。
しかしフィリピンマフィアは何を狙ったのでしょう?」
「衣。恐らく九龍街の一角を利用しての人身売買だ」
「人身売買の利益は莫大。あの条件でも問題ない」
「俺達は危うく利用されかけた訳だ」
「やはり海外マフィアは仁義がありませんね」
その時雪美が裾を引っ張った。
「…………また会える?」
「いや。会わない方がいいさ。これは悪い夢と思って忘れるんだ」
「…………名前、何?」
「桐生龍臣」
「…………龍臣にまた会いたい」
「…………言ったろ。これは悪い夢さ。夢から覚めるんだプリンセス」
龍臣はそう言うと刀を仕舞った。
「とまあそんなことがあったわけだ」
「撃たれたとこ大丈夫なのかよ!?」
奈緒が血相を変えて聞いてくる。
「今は麻酔で痛みを止めてるよ。戦闘は問題ない」
「死なないでよ本当に」
「はは、加蓮。気をつけるよ」
「…………あ」
とてとてとこちらに近づく音がする。
龍臣は振り向いた。
「…………龍臣」
「雪美? なんでここに?」
「……私……アイドル」
「そうなのか」
「…………私、お礼したい……かがんで」
「こうか?」
龍臣が頭を下げると、唇に柔らかい感触がした。
「……これが私からのお礼……それじゃ」
そう言って雪美は去っていった。
「桐生さん今のって……」
「奈緒。落ち着こう。子供のしたこと何だから」
しばらく奈緒をなだめるので龍臣は大変だった。